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秋に心と体が不調になるのはなぜ?|秋バテ・秋うつ・季節の変わり目のだるさと気分の落ち込みを横浜・関内の精神科医が解説
「涼しくなって楽になるはずなのに、なぜか体が重い」「9月に入ってから朝起きるのがつらくなった」「夏は乗り切ったのに、秋になって気分が沈む」。夏から秋へ季節が変わるこの時期、横浜・関内のみなとメンタルクリニックには、こうしたご相談が毎年増えていきます。
秋は過ごしやすい季節と思われがちですが、実は心と体にとっては「夏の疲れの精算」と「冬への準備」が同時に始まる、切り替えの負担が大きい時期です。この記事では、秋に不調が出るしくみを整理し、「秋バテ」と「秋うつ」の違い、様子を見てよい状態と受診をおすすめしたい状態の見分け方を、精神科医の立場からお伝えします。
夏の不調については夏に心と体が不調になるのはなぜ?|夏バテ・夏うつ・夏の不眠・冷房病を横浜・関内の精神科医が解説でまとめています。この記事はその続き、季節の出口と入口をつなぐ回です。
秋に不調が出るのはなぜ?5つのしくみ
秋の不調は、ひとつの原因で起こるというより、いくつかの負担が重なって表に出てくるものです。診察室でお話をうかがっていると、だいたい次の5つに整理できます。
1. 夏の消耗が「後払い」で出てくる
暑さの中では、体温を保つために自律神経が休みなく働き、寝苦しさで睡眠の質は下がり、食欲も落ちがちです。夏の間は「暑いから仕方ない」と気力で乗り切っていた消耗が、気温が下がって緊張がゆるんだときに、まとめてだるさや眠気として表に出てきます。これがいわゆる「秋バテ」の中心にあるしくみです。夏バテそのものについては夏バテ・夏うつについての記事で詳しく扱っています。
2. 寒暖差と気圧の変動で自律神経が揺さぶられる
秋は一日の中での気温差が大きくなり、朝晩と日中で10度近く違う日もあります。台風や秋雨前線で気圧の変動も頻繁です。人の体は、快適だと感じる温度から5〜7度以上離れると、体温調節のために自律神経を強く働かせなければならなくなります。夏は「冷房と外気」の差が負担でしたが、秋は「朝と昼」「昨日と今日」の差が負担になります。気圧の低下と頭痛やだるさの関連は、片頭痛を中心に国内でも報告があり、天気が崩れる前に調子が落ちる方は珍しくありません。自律神経の乱れ全般については自律神経失調症のカテゴリをご覧ください。
3. 日照時間が短くなり、脳のリズムが後ろにずれる
ここが、秋の不調が「体」から「心」へ広がっていく大きな分かれ目です。東京・横浜では、9月はじめに13時間近くあった昼の長さが、12月には10時間を切るまで短くなります。3時間近い減少です。
朝の光は、体内時計を前に進め、眠りをつくるホルモンであるメラトニンの分泌を止める合図になります。朝の光が弱く遅くなると、この合図も弱く遅くなり、体内時計が後ろにずれていきます。すると、朝はいつまでも眠く、夜はなかなか眠くならない、という状態になります。さらに、日光を浴びる時間と、気分の安定に関わる脳内の神経伝達物質セロトニンの働きには関連があることが海外の研究で示されており、日照の減少は気分そのものにも影響します。
4. 睡眠のリズムが変わり、朝がつらくなる
3のしくみの結果として、秋は「眠れない」よりも「起きられない」「日中も眠い」という訴えが増えます。夏の不眠が「寝つけない・途中で目が覚める」タイプだったのに対し、秋は眠りの量は足りているはずなのに、朝の切り替えがうまくいかないタイプです。気持ちの問題と思われがちですが、光とホルモンのリズムの問題が土台にあります。朝起きられない状態が続くときは朝起きられない状態についての記事もご参考ください。
5. 生活と仕事の節目が重なる
秋は、夏休み明け、下半期の始まり、10月の人事異動や配置換えなど、生活と仕事の環境が動きやすい時期でもあります。ここまでの4つで体の土台が揺らいでいるところに、環境の変化というストレスが乗ると、気持ちの調子が崩れやすくなります。長期休暇明けの不調については夏休み・お盆明けが憂うつで動けない|長期休暇明けの不調の理由と対処を横浜・関内の精神科医が解説で扱っています。
「秋バテ」と「秋うつ」は何が違うの?
秋バテは医学用語ではなく、夏の消耗と寒暖差で出てくる、だるさ・眠気・食欲の変化・頭の重さといった「体の不調」を指す生活の言葉です。多くは、気温が安定し、睡眠と食事が整ってくると、2〜3週間ほどで自然に軽くなっていきます。
秋うつは、こうした体の不調に加えて、あるいは体の不調が落ち着いた後も、「気分が沈む」「何をしても楽しくない」「やる気が出ない」「自分を責める」といった心の症状が続いている状態です。見分けるときのポイントは、次の3つです。
- 期間:涼しくなって3週間以上たっても軽くならない。気分の落ち込みがほぼ毎日、2週間以上続いている
- 広がり:体のだるさだけでなく、興味・楽しさ・意欲・集中力・自分への評価まで影響が及んでいる
- 生活への影響:仕事や家事、人づきあいがこれまでどおりにこなせなくなっている
この「期間・広がり・生活への影響」という3つの物差しは、季節に関係なく、気分の落ち込みを見立てるときの基本です。詳しくは気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線で解説しています。
もうひとつ、覚えておいていただきたい順番があります。季節による不調は、多くの場合、体から先に戻ります。眠れて、食べられて、だるさが減る。そのあとに気分がついてきます。体が戻ったのに気分だけが戻らないときは、季節のせいだけではない可能性を考えたほうがよいサインです。
秋は「冬型の季節性感情障害」の入口でもある
季節性感情障害(季節性うつ病)は、特定の季節にうつ状態をくり返す病気で、日照の少ない冬に症状が出て春に軽くなる「冬型」が代表的です。1980年代にアメリカで報告され、日照の少ない高緯度の地域ほど多いことが知られています。日本での有病率は欧米より低く、報告によりますが1%前後とされています。
冬型の特徴は、一般的なうつ病の「眠れない・食べられない」とは反対に、過眠と過食、とくに甘いものや炭水化物を強く欲しがること、体重の増加が目立つことです。夏ピラーでお伝えした夏型(不眠・食欲低下)とちょうど逆の形になります。
そして冬型の症状は、冬に突然始まるのではなく、日が短くなり始める10〜11月ごろから静かに立ち上がってきます。「毎年この時期になると眠くて、甘いものばかり食べて、気分が沈む」という方は、秋のうちに気づいておくことで、冬の落ち込みを浅くする備えができます。朝の光を浴びる、起きる時間をそろえる、といった生活の工夫はこの病気の治療の柱でもあり、必要に応じて薬による治療も選択肢になります。
「秋はうつが増える」は本当?
ここは少し安心していただきたいところです。インターネットでは「秋はうつ病が増える季節」といった書き方をよく見かけますが、日本のデータを見ると、気分の不調の季節的なピークは春(3〜5月)にあり、秋がとくに注意の必要な季節だという根拠はありません。
秋に増えるのは、正確に言えば「うつ病そのもの」ではなく、「夏の消耗の後払い」「寒暖差」「日照の減少」「環境の変化」という負担が重なって、もともとあった疲れや落ち込みが表に出やすくなる状態です。ですから、秋に調子を崩したからといって、深刻な病気の始まりだと決めつける必要はありません。同時に、「秋だから」で片づけて放っておくのも、回復を遅らせます。大切なのは、季節のせいにするか病気と決めつけるかではなく、上でお伝えした3つの物差しで、いまの状態を落ち着いて見ることです。
秋の不調をやわらげるために、今日からできること
朝の光を、意識して浴びる
秋の不調の土台は、光の減少による体内時計のずれです。起きたらカーテンを開け、できれば朝のうちに10〜15分ほど外の光を浴びることが、体内時計を前に戻すいちばん確かな方法です。曇りの日でも、室内の照明よりはるかに強い光が届きます。
起きる時間をそろえる
寝る時間を早めるより、起きる時間をそろえるほうが体内時計は整いやすくなります。休日も平日と1〜2時間以内の差に収めると、月曜日の朝が楽になります。
体を冷やしすぎない、温めすぎない
寒暖差への対策は、脱ぎ着しやすい服で「差」を小さくすることです。朝晩の冷えで自律神経に負担をかけない一方で、日中の暑さで汗をかいたまま冷えるのも避けたいところです。
食事は「量」より「時間」をそろえる
夏に落ちた食欲が戻ってくる時期です。無理に食べる必要はありませんが、朝食をとる時間をそろえることは体内時計の調整に役立ちます。冬型の季節性感情障害では甘いものを強く欲しがることがありますが、それ自体を責める必要はなく、気づいておくことが大切です。
「夏を乗り切った自分」をねぎらう
秋の不調は、夏をがんばって乗り切った人ほど出やすいものです。だるさや眠気を「怠け」と受け取らず、消耗のあとの回復期だと捉えてくださいね。
受診を考えていただきたい目安
次のような状態があれば、季節のせいと様子を見続けるより、一度ご相談いただくことをおすすめします。
- 涼しくなって3週間以上たっても、だるさや眠気が軽くならない
- 気分の落ち込みや、何をしても楽しくない感じが、ほぼ毎日2週間以上続いている
- 体の調子は戻ったのに、気持ちだけが戻ってこない
- 朝起きられず、遅刻や欠勤が出始めている
- 毎年この時期から冬にかけて、同じように調子を崩している
- 内科で検査を受けて「異常なし」と言われたが、不調が続いている
「夏の不調がそのまま抜けない」という形で秋を迎えている方は、様子見の期限の考え方と受診したら何が起こるかを、シリーズ第6章「夏の疲れ・不調が秋になっても抜けない|受診したほうがよいサインの見分け方」で詳しくお伝えしています。
夜間や休日など、すぐに受診できないときに相談できる公的な窓口もあります。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・通話無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話・SNSでの相談窓口をまとめたサイト
横浜・関内で秋の不調をご相談いただくには
みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩圏内、横浜市中区・馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。土日も診療しており、当日のご予約にも対応していますので、「秋バテだと思っていたけれど、少し長いかもしれない」と感じた時点でお気軽にご相談ください。
診察では、いまの不調が季節による体の消耗なのか、気分の病気が重なっているのか、季節性感情障害の始まりなのかを、お話をうかがいながら一緒に整理していきます。生活リズムの調整を中心に、必要に応じてカウンセリング的なアプローチや薬による治療を組み合わせ、冬に向けて調子を立て直すお手伝いをします。会社帰りの受診については会社帰りに通える心療内科をお探しの方へ|横浜・関内で夜間・土日も診療、当日予約に対応を、初診の流れは横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れをご覧ください。
秋のメンタル不調シリーズ(全6章)
この記事を総論として、秋に起こりやすい不調を次の各章で掘り下げていきます。
- 第1章:秋バテとは?夏の疲れが秋になって出てくる理由と、だるさ・眠気の対処・受診の目安
- 第2章:季節の変わり目の寒暖差・気圧変動と自律神経
- 第3章:日が短くなると気分が沈む|秋うつと季節性感情障害の入口
- 第4章:秋になると朝起きられない・眠くて仕方ないのはなぜ
- 第5章:秋の食欲の変化と気分|「食欲の秋」と冬型の季節性うつの見分け方
- 第6章:夏の疲れ・不調が秋になっても抜けない|受診したほうがよいサインの見分け方
夏の不調については夏のメンタル不調の総論、夏の不眠、冷房病・夏の自律神経の乱れ|クーラーだるさ・寒暖差の対処と受診の目安を横浜・関内の精神科医が解説もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
秋バテは病院に行くほどのものですか?
だるさや眠気が中心で、3週間ほどで軽くなっていくなら、生活リズムの調整で様子を見ていただいて大丈夫です。気分の落ち込みが加わっている、体が戻っても気持ちが戻らない、生活に支障が出ている、という場合はご相談ください。
毎年秋から冬に調子を崩します。予防はできますか?
できます。冬型の季節性感情障害の可能性があれば、日が短くなり始める秋のうちから朝の光と起床時間を整えることで、冬の落ち込みを浅くできることが知られています。必要に応じて薬を早めに調整する方法もありますので、症状が出る前の時期にご相談いただくのがおすすめです。
当日に予約して受診できますか?
はい。当日のご予約に対応しています。土日も診療していますので、平日にお休みが取りにくい方もご利用ください。
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。