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2026/07/07

職場のハラスメントによる心の不調|パワハラ・モラハラの症状と対処を横浜・関内の精神科医が解説

「上司の顔を思い浮かべるだけで、朝、体が動かなくなる」「会社に向かう電車のなかで、涙がこぼれてくる」「これは甘えなのか、それとも心が本当に限界なのか、自分でも判断がつかない」——ハラスメントによる不調のただなかにいる方は、こうした思いを抱えていることが少なくありません。

パワハラやモラハラを受けている人ほど、なぜか「悪いのは自分かもしれない」と考えてしまいます。理不尽な言葉を浴びせられ続けるうちに、判断する力そのものが少しずつ削られていくからです。けれど、眠れない、食べられない、涙が止まらない、体が重い——こうした変化は、あなたの性格が弱いから起きているのではありません。度を越したストレスを浴び続けた心と体が、防ぎきれずに上げている悲鳴です。このページでは、ハラスメントがなぜ心身をむしばむのか、どのような不調として現れるのか、そして精神科・心療内科で何ができるのかを、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医がお話しします。

「読むより先に、まず相談したい」という方へ。当院は関内駅から徒歩2分、土日も診療しており、当日のご予約も承っています。WEB予約はこちら、お電話は045-663-5925(診療時間内)へどうぞ。

はじめに、ひとつはっきりさせておきたいことがあります。このページでお伝えするのは、傷ついた心と体をどう守り、どう立て直していくか、という医療の話です。「その言動がハラスメントに該当するかどうか」の線引きや、労災の申請、会社との交渉といった手続きは、弁護士や労働基準監督署、社内の相談窓口といった、それぞれの専門家の領分です。ここでは、まずあなた自身の健康を守ることに絞ってお話しします。

ハラスメントとは

ハラスメントとは、ひとことで言えば、相手の尊厳を傷つけ、不快にさせ、あるいは不利益をもたらす言動のことです。職場で問題になるものには、いくつかの型があります。

パワーハラスメントは、職場での立場の優位性を背景に、業務として適正な範囲を超えて行われる言動を指します。人格を否定するような叱責、大勢の前での見せしめのような注意、無視や仲間はずれ、こなしきれない量の仕事を押しつける、あるいは逆に仕事をいっさい与えない、といったものが含まれます。セクシュアルハラスメントは、性的な言動によって相手に苦痛や不利益を与えるもの。モラルハラスメントは、暴言のように目立つ形ではなく、嫌味や無視、遠回しな人格否定といった、じわじわと精神をすり減らすいやがらせを指します。

ここで知っておいていただきたいのは、ハラスメントは、わかりやすい暴言や暴力の形をとるとはかぎらない、ということです。むしろ、静かに続く無視や、笑顔にまぎれた嫌味、追いつめるような態度といった、外からは見えにくい形をとることのほうが多いくらいです。だからこそ、受けている本人でさえ「これは自分の受け取りすぎではないか」と迷ってしまう。けれど、判断の物差しは、法律用語に当てはまるかどうかではなく、その言動によって自分の心と体が実際に傷ついているかどうかです。「これはハラスメントなのだろうか」と迷いつづけること、それ自体が、すでに重いストレスにさらされている証でもあります。

なぜ、心と体に不調が出るのか

ハラスメントによる不調は、けっして「気の持ちよう」で片づけられるものではありません。その背景には、はっきりとした体のしくみがあります。

人は強いストレスに直面すると、体が自動的に身構えます。心臓の鼓動が速くなり、筋肉に力が入り、神経が張りつめる。これは「闘うか、逃げるか」という、危険から身を守るために備わった反応で、本来は一時的なものです。嵐が過ぎればおさまり、体はもとの穏やかな状態に戻る。そういう仕組みになっています。

ところが、ハラスメントのように、逃げることも闘うこともできないストレスが来る日も来る日も続くと、この身構えた状態が解けなくなります。緊張のスイッチが入りっぱなしになるのです。すると、体のはたらきを陰で調整している自律神経のバランスが崩れ、気分を支える脳のはたらきにも影響が及んでいきます。眠れない、動悸がする、気分が沈む、何をする気も起きない——こうした不調は、その延長線上に現れます。くり返しになりますが、これはあなたの心が弱いせいではありません。耐えつづけた体が、限界を訴えているのです。ストレスによって自律神経が乱れるしくみについては、自律神経失調症とは?でくわしく解説しています。ストレスが頭痛・胃痛・めまいなどの体の症状として出ている方は、ストレスで体調が悪い(頭痛・胃痛・めまい)――検査では「異常なし」でもつらいあなたへもあわせてご覧ください。

現れやすい心と体の不調

ハラスメントによるストレスは、人によってさまざまな形をとって現れます。次のような状態が続いているなら、心と体からの警告と受け止めてください。

気分の落ち込み・意欲の低下

気持ちが晴れない日がつづく。以前は楽しめたことに、心が動かない。朝、布団から出られない。理由もなく涙がこぼれる。こうした状態が2週間以上つづいているなら、うつ状態に入っている可能性があります。とくに、ハラスメントというはっきりしたきっかけがあって不調が始まった場合は、適応障害が考えられます。適応障害は、そのまま我慢をつづけるうつ病へと進んでしまうことがあり、早めに手を打つほど回復も早くなります。理由もなく涙が出る状態が続く方は、理由もなく涙が出る・気づいたら泣いているもご覧ください。

強い不安・緊張

職場のことを考えると胸がざわつき、動悸がする。手が震える。じっとしていられない。休みの日でさえ、頭のどこかで仕事のことが鳴りやまない。こうした張りつめた不安が、四六時中つきまとうこともあります。

眠れない

布団に入っても寝つけない。夜中に何度も目が覚める。明け方に目が覚めて、そのまま眠れない。そして、これから始まる一日を思うと、ますます目が冴えてしまう。ハラスメントによる不調では、この不眠が、とりわけ多くの方を苦しめます。眠れない状態が続く方は、不眠・睡眠障害とはもご覧ください。

体に出る不調

頭痛、めまい、動悸、胃の痛み、吐き気、食欲が落ちる、体がだるくて動かない。内科で検査を受けても、これといった異常は見つからない。それでも不調が消えない。これも、慢性的なストレスで自律神経が乱れたときによく現れる形です。

燃え尽き

それまで歯を食いしばって働いてきた人が、あるとき糸が切れたように、何もかもへの意欲を失ってしまうことがあります。責任感が強く、まじめで、弱音を吐かずにがんばってきた人ほど、この状態に陥りやすいものです。くわしくは燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?をご覧ください。

「この程度で受診していいのか」とためらう方へ

ハラスメントに苦しむ方の多くが、受診の前で足を止めます。「まだなんとか耐えられている」「自分さえ我慢すればおさまる」「この程度で病院にかかるのは、大げさではないか」。まわりに気をつかい、責任感の強い方ほど、そう考えてしまいます。

けれど、少し立ち止まって考えてみてください。眠れない夜がつづき、涙がこぼれ、体が鉛のように重い。それはもう、心と体が「これ以上は無理だ」と、はっきり信号を送っている状態です。ここで無理を重ねてしまい、本格的なうつ病に至って、回復に何か月も、ときには年単位の時間を要した——そういう方を、診察のなかで何人も見てきました。反対に、早い段階で手を打てた方は、それだけ軽くすみ、立ち直りも早いのです。「この程度で」とためらう、まさにその段階こそ、相談していただきたいときです。受診は、弱さをさらけ出すことではありません。自分の心と体を守るための、まっとうな行動です。

医療機関で何ができるのか

「病院に行ったところで、ハラスメントそのものが消えるわけではないだろう」——そう感じる方もいるでしょう。たしかに、加害者への対応や、職場の体質そのものを変えることは、医療の仕事ではありません。それでも、精神科・心療内科には、あなたを守り、立て直しを支えるためにできることがいくつもあります。

つらい症状をやわらげる

眠れない、不安で落ち着かない、気分が深く沈む。こうした症状に対しては、必要に応じてお薬の力も借りながら、つらさをやわらげていきます。不安や不眠が強い時期には、状態を見きわめたうえで抗不安薬を一時的に用いることもありますし、うつの状態がつづくようであれば抗うつ薬を検討することもあります。お薬は回復を支える手段のひとつであり、その方の状態に合わせて、慎重に選んでいきます。

「休む」という選択を支える

ときには、つらい環境からいったん離れて休むことが、回復への一番の近道になります。医師が必要と判断した場合には、休職のための診断書をお作りします。「本当は休みたい。でも、どう切り出せばいいのかわからない」「休んでしまっていいのか、決心がつかない」——そうした迷いも、診察のなかで一緒にほどいていきます。ストレスの源から距離をとることは、逃げでも怠けでもなく、治療のひとつの柱です。休職や診断書の具体的な進め方は、休職と診断書|もらい方・休職中のお金・復帰の流れでくわしくお話ししています。

休職中の暮らしを支える制度を案内する

いざ休職を、となると、多くの方がまず口にされるのが、お金の不安です。一定の条件を満たせば、休職している間の生活を支える傷病手当金という公的な制度を使える場合があります。そのしくみや申請の進め方については、休職中のお金|傷病手当金のしくみと申請の流れで解説しています。お金の心配で休養そのものをあきらめずにすむよう、制度の面からも支えます。

回復への見通しを一緒に描く

いまの自分の状態がどういうものなのか。これからどんな道すじで回復していくのか。復帰するとして、職場とどう折り合いをつけていくのか。一人で抱え込むと、出口はどんどん見えなくなります。けれど、専門家とともに一つずつ整理していくと、次の一歩が輪郭を持ってきます。その伴走をするのが、私たちの役割です。

家庭内のモラハラについて

ここまで、おもに職場のハラスメントについてお話ししてきました。けれど、ハラスメントは職場だけのものではありません。家庭のなかでも、配偶者やパートナー、あるいは親から、モラルハラスメントを受けることがあります。

家庭内のモラハラは、逃げ場がないぶん、いっそう深く心をむしばむことがあります。人格を否定される、何が起きても「おまえが悪い」と思い込まされる、存在を無視される、行動の一つひとつを細かく縛られる。そうした関係のなかで、気分の落ち込みや不安、不眠、そして「自分には価値がない」という感覚に苦しむ方は、けっして少なくありません。

職場であれ家庭であれ、慢性的なストレスが心身の不調を生むしくみは、まったく同じです。そして、最初にとるべき一歩も同じで、まずは自分の心と体を守ること。「悪いのは自分かもしれない」と思い込まされている、その状態こそがモラハラの特徴だと知っておいてください。一人で抱え込まず、安全な場所で、つらさを言葉にするところから始めれば十分です。当院でも、そうしたご相談をおうかがいしています。

横浜・関内でハラスメントによる不調を相談したい方へ

「会社に向かおうとすると涙が出る」「あの人のことを考えると眠れない」「もう限界かもしれない」「休みたいけれど、どうすればいいのかわからない」——そうしたお悩みは、どうか一人で抱え込まず、まずはご相談ください。みなとメンタルクリニックは、横浜市中区・関内駅から徒歩2分の精神科・心療内科クリニックです。関内・馬車道はオフィスの多い街で、お仕事帰りにも立ち寄りやすい立地です。土日も診療し、当日のご予約にも対応しています。産業医としての視点も持つ医師が、お一人おひとりの事情をうかがいながら、症状をやわらげる治療、必要に応じた休職のご相談、そして制度の案内まで、回復への道のりに寄り添います。

つらさは、歯を食いしばって耐えるものではありません。早めにご相談いただくことが、回復への近道になります。受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約ください。初めて受診される方は初診の方へ、受診前に気になることがある方はよくある質問もあわせてご覧ください。


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この連載では、職場のストレスとハラスメントによる不調を、4回にわたって扱います。次回は、その不調がもっともはっきりした形で表れる「会社に行けない・涙が出る」という状態を取り上げます。「これは甘えなのか」と自分を責めてしまう方に、ぜひ読んでいただきたい回です。

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「職場のストレス・ハラスメント」シリーズ(全4回)


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参考文献・情報源

本記事の内容は、ハラスメントとメンタルヘルスに関する以下の資料を参考にしています。


この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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