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2026/07/13

最近ミスが増えた・集中できない——「仕事ができなくなった」と感じたら疑うべきことを横浜・関内の精神科医が解説

「あれ、自分はこんなに仕事ができなかったっけ」——最近、そう感じることが増えていませんか。

以前なら10分で書けたメールに、30分かかる。読んだはずの資料の内容が、頭に残っていない。単純な入力ミス、送信先の間違い、会議の約束のすっぽかし。ダブルチェックをしても、そのチェックですら抜ける。周囲の視線が気になり、「若年性の認知症では」「自分は実は無能だったのでは」と、検索する夜が増える——。

最初に、大切なことをお伝えします。「以前はできていたことが、できなくなった」——この変化のパターンで最も多い原因は、能力の低下でも認知症でもなく、うつ状態や睡眠不足による、脳の一時的なパフォーマンス低下です。そしてそれは、原因を治療すれば回復が期待できるものです。

この記事は、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックがお届けする「現代の働き方とメンタル不調」ガイドの一記事です。「仕事ができなくなった」と感じたときに疑うべき原因を、頻度と見分け方の順に、精神科医が解説します。働き方による不調の全体像は現代の働き方とメンタル不調——テレワーク・常時接続・成果主義がなぜ心を削るのかにまとめています。

ミスへの不安で追い詰められている方は、WEB予約はこちらから当日のご予約も可能です。土日も診療しています。


いちばん重要な区別——「ずっと」なのか「最近」なのか

原因を考える前に、ひとつだけ自分に問いかけてください。ミスや集中力の問題は、昔からずっとあったものですか。それとも、ここ数か月で明らかに変わったものですか。

学生時代から忘れ物やケアレスミスが多く、社会人になってからも一貫して苦労してきた——それが「ずっと」のパターンで、この場合はADHDなどの発達特性を考えます。特性は治すものではなく、工夫と環境で付き合うものです。このタイプに心当たりがある方、とくに転職を繰り返すほど働きづらさが続いている方は、仕事が続かない・転職を繰り返してしまうのは性格?大人の発達障害(ADHD・ASD)についての解説記事一覧をご覧ください。

一方、「最近、急に」できなくなったのなら、話はまったく別です。大人になってから能力そのものが急に下がることは、基本的にありません。下がったように見えるとき、脳は何かに処理能力を奪われています。その「何か」を、頻度の高い順に見ていきます。


疑うべき原因①——うつ状態による認知機能の低下

意外に知られていませんが、うつ病は「気分の病気」であると同時に「認知機能の病気」です。集中力・記憶力・判断力・処理速度の低下は、うつ病の中核症状のひとつとして診断基準にも明記されており、研究の世界では「コグニション(認知症状)」として、気分症状と並ぶ治療ターゲットと位置づけられています。

そして厄介なのは、本人には「気分の落ち込み」より「仕事ができない」のほうが先に、強く自覚されることがある点です。診察室でも、「気分は……まあ普通です。ただ、とにかく仕事ができなくなって」と話し始めた方が、よく聞けば数か月前から興味の喪失や早朝覚醒を伴っていた、というケースは非常に多いのです。ミスの増加は、うつの入口のサインでありうる——この知識だけで、受診は数か月早まります。

次のサインが並んでいないか、確認してください。ミスや集中力の低下に加えて、①以前楽しめたことが楽しめない、②朝がとくにつらい、③食欲や体重の変化、④眠れない・朝早く目覚める、⑤自分を責める考えが止まらない。2つ以上重なって2週間以上続くなら、うつ状態を強く疑います(うつ病についての解説記事一覧)。頭が働かない・考えがまとまらない感覚が強い方は頭が働かない・ぼーっとして考えがまとまらない——うつと「思考の鈍さ」もご覧ください。

もうひとつ、大切な注意があります。「ミスをした→自分はダメだ→不安と自己監視が強まる→さらにミスする」という悪循環です。ミスへの恐怖で全神経がすり減ると、ワーキングメモリはさらに圧迫され、ミスは増えます。あなたが感じている「無能さ」は、能力の実態ではなく、この悪循環の産物である可能性が高いのです。


疑うべき原因②——睡眠不足・不眠の蓄積

睡眠時間が慢性的に削られている、あるいは時間は確保していても眠りが浅い場合、日中の認知機能は本人の自覚以上に低下します。よく知られた研究では、覚醒が続いた状態の作業能力の低下は飲酒時に匹敵することが示されています。つまり慢性的な寝不足での勤務は、ほろ酔いで働いているのと大差ない状態です。ミスが出ないほうが不思議だと思いませんか。

「眠れているつもり」でも、中途覚醒やいびき(睡眠時無呼吸)で睡眠の質が落ちていることもあります。日中の強い眠気や起床時の頭痛を伴う方は、睡眠自体の評価が必要です(不眠・睡眠障害についての解説記事一覧)。長時間労働で眠れていない方は長時間労働で眠れない・休んでも疲れが取れない——過労のサインと受診の目安もあわせてどうぞ。


疑うべき原因③——過労とストレスによる脳の過負荷

業務量の急増、責任の増加、職場の人間関係の緊張。強いストレス下では、注意資源の多くが心配事の処理に奪われ、目の前の作業に回らなくなります。パソコンにたとえれば、裏で重いアプリが常時動いていて、表の作業が遅くなっている状態です。この状態が続けば適応障害やうつ状態へ進むため、「ミスが増えた」は過負荷の早期警報として扱うべきサインです(適応障害についての解説記事一覧)。管理職になってから判断力の低下を感じている方は、昇進・管理職になってからつらい——「昇進うつ」と役割の重圧もあわせてお読みください。


疑うべき原因④——体の病気と薬の影響

頻度は下がりますが、見逃してはいけないものです。甲状腺機能の異常、貧血、糖尿病などの身体疾患は、集中力低下や倦怠感の原因になります。また、市販の風邪薬・アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)や一部の睡眠改善薬は、日中の眠気と認知機能低下を引き起こすことがあります。当院は内科の診療にも対応しており、必要に応じて血液検査などで身体面の確認も行えます。「心の問題か体の問題か分からない」段階で受診していただいて構いません。


「若年性認知症では」と不安な方へ

働き盛りの方がミスの増加で最も恐れるのが、若年性認知症です。結論として、その年代では、うつ状態による認知機能低下のほうが圧倒的に高頻度です。うつによる認知機能の低下は、かつて「仮性認知症」と呼ばれたほど認知症に似て見えることがありますが、認知症と違って治療で回復が見込めます。見分けには専門的な評価が必要ですが、ひとつの目安として、「もの忘れを自分で強く自覚し、深刻に悩んでいる」のはうつ側に多い特徴です。不安を検索で膨らませるより、一度きちんと評価を受けるほうが、確実に早く楽になります。


今日からできる応急処置と、受診の目安

まず応急処置です。①ミスを責める時間を、記録に変える——いつ、どんな状況で、どの種類のミスが出たかをメモしてください。パターンが見え、受診時の重要な資料になります。②ダブルチェックを増やすより、一度に扱う仕事を減らす——ワーキングメモリが落ちているときに検査工程を増やすと、かえって全体が破綻します。③睡眠時間を、何より先に確保する。

そのうえで、次のいずれかに当てはまるなら受診してください。ミスや集中力の低下が2週間以上続いている。気分・睡眠・食欲の変化を伴っている。仕事の評価や雇用に影響が出はじめている。「ミスくらいで精神科なんて」と思うかもしれませんが、ミスの増加は脳が発する客観的な不調のサインであり、気のせいでも甘えでもありません。原因がうつなら治療で認知機能の回復が期待でき、睡眠なら睡眠を、体の病気ならその治療を——原因の特定こそが、最短の回復ルートです。仕事に行くこと自体がつらくなってきている方は、「仕事に行きたくない」は甘え?受診の目安と背後にある病気も参考にしてください。働きながら会社に知られず通院を続けたい方は働きながら精神科・心療内科に通うには?会社に知られず治療を続けるコツもご覧ください。


よくあるご質問

Q. ミスのことで頭がいっぱいで、うつの自覚はありません。それでもうつなのでしょうか?

A. その可能性はあります。うつ状態では、気分の落ち込みよりも先に、集中力低下・不眠・倦怠感などが前面に出ることがあり、ご本人は「体調と能力の問題」と捉えていることが少なくありません。気分の自覚がなくても、診察で評価する価値は十分にあります。

Q. 会社にミスを報告するたびに叱責され、余計に悪化しています。どうすれば?

A. 叱責と監視の強化は、不安によるミスの悪循環を加速させます。状態によっては、診断書による業務量の調整や配置の相談、場合によっては休職して立て直すことが、結果的に最も早い回復につながります。当院の医師は日本医師会認定産業医の資格を持っており、職場への伝え方も含めてご相談いただけます(休職・復職についての解説記事一覧)。

Q. 発達障害の検査だけ受けることもできますか?

A. はい、可能です。ただし「最近急にミスが増えた」場合は、うつや睡眠の問題が絡んでいることが多く、その状態で特性の検査をしても結果が不正確になりがちです。診察でまず全体像を評価し、適切な順番で検査を進めることをおすすめします。

Q. 平日は休めません。土日に受診できますか?

A. はい。当院は祝日を除く土曜・日曜も診療しています。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅からも徒歩5分です。会社帰りに通える心療内科をお探しの方へもご参考のうえ、WEB予約はこちらから、当日予約も可能です。


まとめ

「仕事ができなくなった」と感じたら、まず「ずっと前から」か「最近急に」かを区別してください。昔からの一貫したパターンなら発達特性、最近の変化なら、うつ状態・睡眠不足・過労・体の病気——いずれも能力の低下ではなく、脳の処理能力が何かに奪われている状態です。ミスの増加は無能の証拠ではなく、脳からの客観的なSOSです。自分を責める時間を記録に変え、2週間続くなら原因の特定に来てください。原因が分かれば、回復への最短ルートが引けます。

横浜・関内エリアで「ミスが増えた」「集中できない」不安を抱えている方は、みなとメンタルクリニックにご相談ください。土日も診療しています。WEB予約はこちらからどうぞ。


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参考文献

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「うつ病」「不眠症」「睡眠と生活習慣病との深い関係」
  • 日本うつ病学会「日本うつ病学会診療ガイドライン」
  • Rock PL, et al. Cognitive impairment in depression: a systematic review and meta-analysis. Psychol Med. 2014
  • Williamson AM, Feyer AM. Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occup Environ Med. 2000
  • 日本精神神経学会「精神疾患の診断と治療に関する資料」

この記事の監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)/医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安症・睡眠障害・認知症などを中心に診療しています。詳しくは田邊陽一郎の理事長プロフィールをご覧ください。