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2026/06/10

睡眠障害とは|日本における睡眠の不調と疫学

午前2時。天井を見上げながら、「あと4時間しか眠れない」と計算している。計算すればするほど目が冴えて、隣で規則正しい寝息が聞こえてくると、なぜか少し腹が立つ——。

眠れない夜のつらさは、経験した人にしかわかりません。そして厄介なことに、このつらさは他人に伝わりにくい。「寝不足くらい誰にでもある」と流されて、一人で朝を迎える日が続いていく。

でも、数字を見てみると、その夜のあなたは、まったく一人ではないのです。この記事では、日本人の睡眠がいまどんな状態にあるのかを、統計から確かめていきます。横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。


眠れない夜が続いてつらい方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。平日に休みが取れない方、今夜も眠れないと不安な方は、どうぞお気軽にご相談ください。
WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は初診の流れのご案内をご覧ください。


日本人の5人に1人が、眠りに問題を抱えている

各種の調査で、日本の成人のおよそ20%——5人に1人が、慢性的な不眠の症状を抱えていると報告されています。寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目が覚めてしまう、眠った気がしない。どれかに当てはまる人が、街を歩く5人に1人はいるということです。

そして、この割合は年齢とともに上がっていきます。60歳を超えると、3人に1人が眠りの問題を訴えるようになる。加齢とともに深い眠りが減り、眠りが浅く途切れやすくなるのは、体の自然な変化でもあります。

さらに、日本人はそもそも眠っている時間が短い。OECDの国際比較で、日本の平均睡眠時間は加盟国の中で最も短い部類に入ることが繰り返し指摘されてきました。「眠れない人が多い国」であると同時に、「眠らない国」でもあるわけです。

「眠れない」は、性格でも根性でもない

不眠を訴える方が最初に口にするのが、「気にしすぎなんでしょうか」「考えすぎる性格だから」という自己診断です。でも、眠りは意志で操作できるものではありません。

眠りは、大きく2つの仕組みで支えられています。1つは体内時計。朝の光を浴びてから約14〜16時間後に眠気が来るよう、体は毎日リズムを刻んでいます。もう1つが、睡眠圧——起きている時間が長いほど溜まっていく「眠りたい力」です。この2つが噛み合ったときに、私たちは自然に眠りに落ちます。

不眠は、この仕組みのどこかが狂った状態です。夜勤や時差、深夜までのスマホの光で体内時計がずれる。昼寝や横になりすぎで睡眠圧が溜まらない。そして何より、ストレスで交感神経が張りつめたままだと、体は「戦闘中」と判断して眠りのスイッチを入れません。長時間労働で神経が張りつめたまま眠れない状態は、まさにこれです。気合いで眠れないのは当たり前で、むしろ「眠らねば」と力むほど交感神経は高ぶります。

不眠は、心の不調の入り口でもあり、出口でもある

精神科医として、いちばん伝えたいのがここです。不眠と心の不調は、双方向につながっています。

まず、うつ病の初期症状として最も多く、最も早く現れるのが睡眠の変化です。うつ病の主な症状で書いたとおり、とくに朝4時5時に目が覚めてそのまま眠れない「早朝覚醒」は、うつ病でよくみられるパターン。「気分は落ち込んでいません、ただ眠れないだけです」と受診された方が、話を聞いていくとうつ病だった——というのは、外来で本当によくある展開です。

逆方向もあります。眠れない日が続くこと自体が、脳の回復を妨げ、気分を下げ、うつ病の発症リスクを高めることが知られています。不眠はうつ病のサインであると同時に、うつ病の原因にもなる。この双方向性があるからこそ、「たかが不眠」で済ませてはいけないのです。

不安との関係も同じです。不安症では夜に思考が止まらなくなって眠れず、眠れないことがさらに不安を煽る悪循環に入ります。自律神経失調症双極性障害でも、睡眠は病状を映す鏡になります。

眠れない夜が、昼間に何をしているか

不眠の被害は、夜のつらさだけでは終わりません。

  • 頭が働かない:集中力、記憶、判断力が落ちます。仕事のミスが増えた・集中できないという変化の背景に、慢性的な睡眠不足が横たわっていることは珍しくありません。
  • 感情が不安定になる:些細なことで苛立つ、涙もろくなる。睡眠不足は、感情のブレーキを弱めます。
  • 体への負担:睡眠不足が続くと、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクが上がることが、複数の研究で示されています。
  • 事故のリスク:日中の強い眠気は、運転や作業の安全に直結します。

眠りは、削っても取り返しがつくと思われがちな時間です。でも実際には、削った分の請求書は、翌日以降の頭と心と体に、確実に回ってきます。

それでも、多くの人が病院に行かない

これだけ不眠が広がっていながら、医療機関に相談する人はごく一部です。多くの方は、市販の睡眠改善薬を試したり、お酒に頼ったりして、自分でなんとかしようとします。

とくに「寝酒」は、日本で根強い習慣です。ただ、アルコールは寝つきを早める一方で、眠りを浅くし、夜中の覚醒を増やします。しかも慣れると量が増えていく。眠るためのお酒は、長い目で見れば不眠を悪化させる対処です。

「睡眠薬は怖い、癖になる」というためらいも、受診を遠ざけます。この不安については、睡眠薬の記事一覧で、種類ごとの性質や依存への考え方を丁寧に解説しています。現在の睡眠薬は種類も増え、依存性の低いタイプも登場していて、「昔の睡眠薬」のイメージのままでいるのはもったいない話です。

受診の目安——「週3回、1か月」がひとつの線

どこからが治療の対象なのか。ひとつの目安が、眠れない夜が週3回以上、1か月以上続いていて、日中の生活に支障が出ているという状態です。

「支障が出ている」がポイントです。短時間睡眠でも日中元気に過ごせているなら、それはその人にとって足りているということ。逆に、8時間眠っていても日中がつらいなら、眠りの質に問題があります。時間の長さそのものより、日中の状態が判断材料です。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区を中心に、みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。祝日以外は土日も診療しており、WEB予約は当日予約にも対応しています。当院では自宅でできる睡眠時無呼吸の検査・治療にも対応しています。眠れない状態が続いているなら、それが心の不調の入り口である可能性も含めて、一度ご相談ください。

WEB予約はこちら(当日予約可)

よくある質問

睡眠時間は、何時間が正解ですか?

万人共通の正解はありません。必要な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても変わります。目安として成人では6〜8時間程度とされることが多いですが、大事なのは時間の数字より「日中に支障なく過ごせているか」です。数字にこだわりすぎると、それ自体が不眠のもとになります。

眠れないと、いきなり睡眠薬を出されますか?

いいえ。まず、眠れない背景を確かめます。生活リズム、カフェインやお酒、寝室の環境、そしてうつ病や不安が隠れていないか。背景に手を打たずに薬だけ足しても、根が残ります。薬を使う場合も、必要な期間と、やめ方まで含めて設計してから始めます。

いびきがひどいと家族に言われます。関係ありますか?

大いにあります。睡眠時無呼吸症候群では、夜中に何度も呼吸が止まって眠りが分断され、本人は「眠っているのに疲れが取れない」状態になります。起床時の頭痛、日中の強い眠気、大きないびきが揃うなら、一度検査を検討してください。当院では自宅でできる検査に対応しています。


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監修:田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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