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2026/07/07
ボルチオキセチン(トリンテリックス)とは?効果・副作用・認知機能への作用を横浜・関内の精神科医が解説
「トリンテリックスを飲み始めたが、どんなお薬なのか知りたい」「吐き気が心配」「うつのときの頭の働きにくさにも効くのだろうか」——ボルチオキセチンについて、このような疑問を感じていませんか。お薬の名前を検索して、このページにたどり着いた方もいらっしゃると思います。
ボルチオキセチン(商品名:トリンテリックス)は、S-RIMと呼ばれる、日本で最も新しいタイプの抗うつ薬です。SSRIと同じ「再取り込みを妨げる」作用に加えて、セロトニンが結びつく複数の受け皿を調節する、多面的なはたらきを持っています。気分の落ち込みだけでなく、集中力や考えのまとまりといった、うつに残りやすい面にも配慮されたタイプとされています。このページでは、ボルチオキセチンがどのようなお薬なのか、効果、副作用、飲み方、やめるときの注意点までを、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。
なお、ここでご紹介する内容は、お薬を理解していただくための一般的な情報です。実際に使うかどうか、どのくらいの量にするかは、お一人おひとりの症状や体質、これまでの経過をふまえて医師が判断します。自己判断での服用・中止は避けてください。抗うつ薬全体のなかでの位置づけは抗うつ薬(抗うつ剤)とはを、S-RIMというグループについては抗うつ薬 各論(4)|S-RIM(ボルチオキセチン)の特徴もあわせてご覧ください。
ボルチオキセチン(トリンテリックス)とは
ボルチオキセチンは、S-RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬)に分類される抗うつ薬です。商品名は「トリンテリックス」といいます。日本では2019年に発売された、比較的新しいお薬です。
ボルチオキセチンは、国内でS-RIMに分類される唯一のお薬です。SSRIが「セロトニンの回収(再取り込み)を妨げる」ことだけではたらくのに対し、ボルチオキセチンは、その再取り込みを妨げる作用に加えて、セロトニンが結びつく複数の受け皿を調節するという、もう一段複雑なしくみを持っています。保険で使えるのは、うつ病・うつ状態です。
どのように効くのか(作用の仕組み)
ボルチオキセチンのはたらきは、2つの側面から成り立っています。
ひとつは、SSRIと同じく、セロトニンの回収(再取り込み)を妨げること。これによって、神経のすき間でセロトニンがはたらく時間が長くなります。
もうひとつが、ボルチオキセチンならではの特徴で、セロトニンが結びつく複数の受け皿を、それぞれ個別に調節することです。セロトニンの受け皿にはいくつもの種類があり、気分、不安、睡眠、認知機能などに関わっています。ボルチオキセチンは、あるものは刺激し、あるものはふさぐ、という形でこれらを調整します。この受け皿の調節を通じて、セロトニンだけでなく、ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンといったほかの神経伝達物質のはたらきにも間接的に影響します。単にセロトニンを増やすのではなく、脳のいくつものしくみに多面的にはたらきかける——これがボルチオキセチンの効き方です。
うつの「頭の働きにくさ」への配慮
うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、「頭がうまく働かない」「考えがまとまらない」「集中できない」「もの覚えが悪い」といった、認知機能の面での不調が現れることがあります。これは、気分が回復したあとも残りやすく、仕事や家事への復帰をさまたげる要因になることが知られています。
ボルチオキセチンは、こうした認知機能の面にも配慮されたタイプとされています。受け皿を細やかに調節することで、気分の改善に加えて、集中力や思考のまとまりといった面のサポートも期待されているのです。「気分は上向いてきたけれど、頭の働きにくさが残っていて、仕事に戻る自信がない」——そうした方にとって、選択肢のひとつになることがあります。ただし、効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同じように現れるわけではありません。
なぜ「すぐ効かない」のか
ボルチオキセチンも、気分の改善を実感できるまでには、ふつう2週間から数週間ほどかかります。セロトニンの量そのものは服用後わりあい早く増えるのに、効果は遅れて現れる——これは、時間をかけて脳の神経のはたらきが整えられていくためと考えられています。
効果より先に、飲み始めの吐き気が出やすいため、この時期に自己判断でやめてしまわないことが大切です。最初の数週間は、医師と相談しながら乗り越えていきましょう。
ボルチオキセチンの特徴
ボルチオキセチンには、次のような特徴があります。
- 最も新しいタイプ:再取り込み阻害と受容体調節を組み合わせた、多面的な作用を持ちます。
- 認知機能の面にも配慮:集中力や思考のまとまりといった、うつに残りやすい面のサポートが期待されています。
- 副作用が比較的少なめ:主な副作用は吐き気で、性機能への影響や体重増加は比較的少ないとされます。
- 1日1回で続けやすい:飲む時間帯は生活に合わせて決められ、食事の影響も受けにくいお薬です。
どのお薬が合うかは、症状、体質、これまでの経過をふまえて選んでいきます。認知機能の面が気になる方や、ほかの抗うつ薬で性機能への影響がつらかった方などで、選択肢になることがあります。
飲み方の考え方
ボルチオキセチンは、1日1回の服用を続けることで、少しずつ効果が現れてくるお薬です。食事の影響を受けにくいため、飲む時間帯は生活に合わせて決められます。
はじめは効果と副作用のようすを見ながら、必要に応じて量を調整していきます。飲み忘れたときに2回分をまとめて飲むことは避けてください。具体的な量や飲み方は、必ず主治医の指示に従ってください。
注意したい副作用
吐き気
ボルチオキセチンで最も多い副作用が吐き気です。飲み始めの時期に出やすく、量が多いときにも出やすい傾向があります。多くは体が慣れてくると軽くなっていきますが、つらい場合は我慢せず相談してください。あらかじめ知っておくと、あわてずに続けやすくなります。
比較的少ないとされる副作用
ボルチオキセチンは、ほかの抗うつ薬で気になりやすい性機能への影響や体重増加が、比較的少ないとされています。この点は、これらの副作用がつらくて続けられなかった方にとって、利点になることがあります。
その他・注意すべき症状
飲み始めや量を変えた時期に不安・焦りが強まること(賦活症候群)は、ボルチオキセチンでも起こりえます。とくに若い方で注意が必要です。また、高齢の方での低ナトリウム血症、セロトニンに作用する薬との併用によるセロトニン症候群、解熱鎮痛薬などとの併用での出血しやすさにも注意が必要なことがあります。気になる症状があれば、早めにご相談ください。
飲み合わせ・生活上の注意
- MAO阻害薬:一部のお薬(MAO阻害薬)とは併用できません。ほかに飲んでいるお薬は必ずお伝えください。
- 肝臓の酵素(CYP2D6)に関わる薬:ボルチオキセチンはこの酵素で分解されます。同じ酵素のはたらきを強く抑える薬(一部の抗うつ薬など)と併用する場合や、この酵素のはたらきが生まれつき弱い体質の方では、量の調整が必要になることがあります。
- ほかのセロトニンに作用する薬・サプリメント:併用によって、まれにセロトニン症候群が起こることがあります。
- 解熱鎮痛薬・抗凝固薬:出血しやすくなることがあり、併用時は注意します。
- アルコール:飲酒は副作用を強めることがあり、基本的には控えることがすすめられます。
24歳以下の方・ご家族へ
抗うつ薬の添付文書には、24歳以下の方で自殺念慮や自殺企図のリスクが増加するとの報告があることが記載されています。これはボルチオキセチンだけでなく、抗うつ薬に共通して示されている注意点です。使ってはいけないという意味ではなく、リスクとよい面を考えながら注意深く見守って使う、という趣旨です。飲み始めや量を変えた時期は、不安や気分の波が現れていないか、ご本人だけでなくご家族にも見守っていただけると安心です。
妊娠・授乳を考えている方へ
妊娠中・授乳中の抗うつ薬については、お薬の種類や時期によって考え方が異なります。ボルチオキセチンは比較的新しいお薬のため、使用経験の蓄積という点でも慎重な検討が必要です。自己判断で中止すると、うつの悪化、中断症状のリスクがあります。妊娠を計画している方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断で中止せず、必ず事前に主治医に相談してください。
どのくらいの期間飲むのか
ボルチオキセチンは、症状が強い時期に効果を安定させ、その後も再発を防ぐためにしばらく続ける、という流れで使われることが多いお薬です。調子がよくなっても、回復した状態を安定させるために、症状が落ち着いてからもしばらく続けることがすすめられます。良くなった直後にやめると、ぶり返しや再発のリスクが高まるためです。やめるタイミングは、こうした点をふまえて医師が判断していきます。
やめるとき——中断症状と減らし方
ボルチオキセチンは、体から抜けるのがゆっくりしたお薬で、抗うつ薬のなかでは中断症状が比較的出にくいとされます。これは、急にやめても血中濃度が急激に下がりにくいためです。
とはいえ、「出にくい」は「絶対に出ない」ではありません。体がお薬に慣れている状態で急に中止すると、めまいや吐き気などの中断症状が出ることがあります。これは「うつが再発した」のではなく、「お薬が抜けたことによる一時的な反応」であることがほとんどで、ゆっくり減らせば和らげられます。減らすときは、状態が安定したことを確認してから、医師と相談して進めます。自己判断での中止は避けてください。
よくあるご質問(FAQ)
うつのときの「頭の働きにくさ」にも効きますか?
ボルチオキセチンは、集中力や思考のまとまりといった認知機能の面にも配慮されたタイプとされています。効果の感じ方には個人差がありますが、気分は回復してきたのに頭の働きにくさが残っている、という方の選択肢になることがあります。
吐き気が心配です
ボルチオキセチンで最も多い副作用が吐き気ですが、飲み始めの時期に出やすく、多くは体が慣れてくると軽くなっていきます。つらい場合は我慢せず相談してください。量の調整などで対応できることがあります。
性機能への影響が心配で、前の薬をやめました。この薬は大丈夫ですか?
ボルチオキセチンは、ほかの抗うつ薬に比べて性機能への影響が比較的少ないとされています。前のお薬でこの副作用がつらかった方にとって、選択肢になることがあります。気になる点は診察でご相談ください。
お酒を飲んでもいいですか?
飲酒は副作用を強めることがあり、基本的には控えることがすすめられます。心配な場合は主治医に確認してください。
横浜・関内でボルチオキセチンについて相談したい方へ
「トリンテリックスを始めるべきか迷っている」「うつのときの頭の働きにくさが気になる」「副作用が気になる」「いま飲んでいるお薬について相談したい」——そうした不安は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。みなとメンタルクリニックは、横浜市中区・関内駅から徒歩2分の精神科・心療内科クリニックです。一人ひとりの状態や希望をうかがいながら、無理のない治療を一緒に考えていきます。馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。
受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約ください。初めて受診される方は初診の方へ、受診前に確認したいことがある方はよくある質問もあわせてご覧ください。
関連ページ
参考文献・情報源
本記事の内容は、ボルチオキセチン(トリンテリックス)および抗うつ薬に関する以下の資料を参考にしています。個々の薬剤の薬物動態・効能・副作用については、最新の添付文書・インタビューフォーム(IF)を出典としています。
- トリンテリックス錠(ボルチオキセチン臭化水素酸塩)添付文書・インタビューフォーム
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)|医薬品の適正使用に関する情報
- 厚生労働省|こころの健康・こころの病気に関する情報
- 日本うつ病学会|日本うつ病学会治療ガイドライン(大うつ病性障害)
- DSM-5-TR|アメリカ精神医学会による精神疾患の診断基準(抗うつ薬中断症候群を含む)
- ICD-11|世界保健機関による国際疾病分類
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。