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2026/06/17

会社を休みたいと思ったら|休職を決める前に知っておきたいことを横浜・関内の精神科医が解説

「会社を休みたい」

その言葉を、あなたは何度、飲み込んできたでしょうか。

言えないまま、朝が来る。電車に乗る。席に着く。パソコンを開く。そして今日も、なんとか一日を終える。帰り道、「明日も同じことができるだろうか」と考えながら、歩く。

——このページにたどり着いたということは、その「なんとか」が、そろそろ限界なのだと思います。

この記事は、休職を決める前に知っておいてほしいことを、正直に書きます。休むべきなのか。休んだら、何が起こるのか。休まない選択肢はあるのか。横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。


休職を迷っている方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約・当日受診に対応しています。「休むほどなのか」を判断するのは、あなたではなく私たちの仕事です。迷う段階でお越しください。
WEB予約はこちら(当日予約可)/詳しくは産業医・休職・復職のご相談ページをご覧ください。


「休みたい」と「休むべき」は、違います

まず、この2つを分けて考えましょう。

「休みたい」——これは、誰にでもあります。連休明けの朝。憂うつな会議のある日。人間関係が気まずいとき。気は進まないけれど、支度をして、電車に乗り、席に着く。それが健康な状態です。

「休むべき」——これは、まったく別の話です。

では、その線引きはどこにあるのか。

休むべきかどうかの、判断基準

診察室で私が見ているのは、気分ではなく「機能」です。あなたの体と生活が、まだ回っているかどうか。

① 体が、すでに拒否しているか

これが、最も明確なサインです。

  • 朝、起き上がれない
  • 会社に行こうとすると、吐き気、動悸、腹痛が出る
  • 駅で足がすくむ。電車に乗れない
  • 理由もなく、涙が出る

これらは、意志の問題ではありません。頭では「行こう」と決めているのに、体が拒否している。体は、意志より下の階層で、危険信号を出しています。

そして——体は、あなたより先に、限界を知っています。

② 生活が、崩れているか

  • 眠れない、または眠りすぎる
  • 食べられない、または食べすぎる
  • ミスが増えた、集中できない
  • 身だしなみに、手が回らない
  • 人と会うのを、避けるようになった
  • お酒の量が増えた

③ 休日に、回復しないか

ここが、決定的な分かれ目です。

休日に休んで、月曜には少し回復している——なら、まだ余力があります。

けれど、週末休んでも回復しない。月曜が、先週よりつらい。——これは、消耗が回復力を上回っているということです。

そして、さらに進むと、こうなります。休日でも、気分が晴れない。旅行に行っても楽しめない。好きだったことに、興味が湧かない。

ここまで来たら、それはうつ病です。もう、「休むべきか」を迷う段階ではありません。適応障害とうつ病の違いの記事

④ 「消えたい」と思うか

この考えが浮かんでいるなら、判断基準の話は終わりです。今日、相談してください。

「休むほどではない」——その判断は、あなたには下せません

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

休職を迷う方は、必ずこう言います。

「まだ動けているから、休むほどではない気がして」
「もっとつらい人がいるのに」
「これくらいで休むのは、甘えでは」

——聞いてください。その判断を、あなた自身が下すことに、無理があるのです。

理由は2つあります。

理由①:あなたは、自分に厳しすぎる

うつ病や適応障害になるのは、責任感が強く、手を抜けず、人に頼れない方です。

そういう方が、自分の限界を客観的に判断できるでしょうか。「まだやれる」と言い続けてきたからこそ、いま、ここまで消耗しているのです。

骨折した人に「歩けるかどうか、自分で判断してください」とは言いません。レントゲンを撮って、医師が判断します。それと同じことです。

理由②:判断力そのものが、落ちている

消耗が進むと、思考は悲観と自責に偏ります。「自分はダメだ」「甘えている」——この考え自体が、すでに症状なのです。

その状態で「休むべきかどうか」を判断させるのは、酔っ払いに運転の可否を判断させるようなものです。

だから、判断は、私たちに任せてください。それが、私たちの仕事です。

休むことの、本当のコスト計算

「休んだら、失うものが大きい」——そう考えて、踏みとどまっている方へ。

計算し直しましょう。

いま休んだ場合

  • 収入は減る(ただし傷病手当金で、標準報酬日額のおおむね3分の2が補填されます)
  • 休職期間:数週間から数か月のことが多い
  • キャリアへの影響:ある(正直に書きます)

無理を続けた場合

  • 適応障害からうつ病へ移行する
  • 休職期間:半年から1年以上になる
  • ミスが増え、信頼を失い、結局は評価が下がる
  • 限界まで我慢した末に、ある朝ぷつりと切れて、衝動的に退職してしまう
  • 回復にも、はるかに長い時間がかかる

比べてみてください。

「休まないこと」のコストは、目に見えないだけで、確実に積み上がっています。そして、払うタイミングが遅れるほど、利子がつきます。

早く休むほど、休職期間は短くて済む。これは、外来で何度も見てきた事実です。

休まない選択肢も、あります

ここも、正直に書きます。休職だけが選択肢ではありません。

業務調整という手

  • 残業の禁止
  • 業務量の削減
  • 負荷の高い案件から外れる
  • 配置転換
  • 時短勤務

これらを、医師の診断書・意見書で正式に依頼することができます。「休職はしないが、働き方を変える」——これで持ちこたえられる方も、実際にいます。

診察の結果、「休職せずに業務調整だけで乗り切れる」と判断することも、しばしばあります。

だから、「休職するほどではないから、受診しない」というのは、逆です。受診して初めて、「休職以外の選択肢」が見えてくるのです。

当院には日本医師会認定産業医の資格を持つ医師が在籍しており、職場との調整を見据えた書類の作成に対応しています(産業医・職場連携の記事)。

休む前に、絶対にやってはいけないこと

衝動的に、辞めないでください

これが、この記事で最も強く伝えたいことです。

限界まで我慢して、ある朝ぷつりと切れて、その場で辞表を出す。——これは、回復後に最も後悔される決断です。

収入も、キャリアも、傷病手当金の受給資格も、失う。しかも、環境から離れても、消耗した心身は、すぐには戻りません。

「辞めたい」しか考えられなくなっている——その状態は、視野が極端に狭くなっているサインです。

辞めるかどうかは、回復してから決める。そのために、休職があります。

休職は、「辞めるかどうかを、冷静に考えるための時間」を買う制度でもあるのです。

休職を決めたら——実務の流れ

1. 受診する

診断書は、医師の診察なしには発行できません。「休職を考えている」と、診察の最初に伝えてください。

当院は、診断書の初診当日発行に柔軟に対応しています。詳しくは休職の診断書の流れと費用の記事をご覧ください。

2. 職場に伝える

詳しい説明は不要です。「体調不良で、医師から休養が必要と診断されました」——これで十分です。

上司がストレス因なら、人事や産業医など、別のルートで構いません。電話やメールでも構いません。

そして、連絡窓口を一本に絞ってもらってください。同僚一人ひとりからの善意の連絡が、療養中の心を削ります。

3. お金の手続き

傷病手当金——健康保険から、標準報酬日額のおおむね3分の2が、最長1年6か月支給されます(制度・お金の記事一覧)。

自立支援医療——通院費の自己負担が原則1割になります(自立支援医療の記事一覧)。

就業規則で、休職期間の上限、給与の扱い、社会保険料の支払い方法を確認しておいてください。

4. 療養に入る

ここからが、治療の本番です。過ごし方は、次の記事で詳しく解説します。

受診の目安

  • 朝、起きられない。会社に行こうとすると体調が悪くなる
  • 眠れない、食べられない
  • ミスが増え、集中できない
  • 休日に休んでも、回復しない
  • 「辞めるしかない」と思い詰めている
  • 休職したほうがいいのか、迷っている

「休むほどではない」と思う段階での相談で、まったく構いません。むしろ、その段階で来ていただけるのが理想です。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。祝日以外は毎日診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。女性医師も在籍しています。

WEB予約はこちら(当日予約可)よくある質問初診の方へ

よくある質問

休むほどではない気がします。それでも受診していいですか?

その判断は、あなたには下せません。あなたは自分に厳しすぎますし、消耗によって判断力も落ちています。診察の結果「休職は不要、業務調整で十分」となることもあります。受診して初めて、選択肢が見えてくるのです。

休職したら、クビになりませんか?

休職期間中の解雇は、原則として制限されています。ただし、就業規則で定められた休職期間の上限を超えた場合の扱いは、会社によって異なります。まず就業規則を確認し、不安があれば診察でご相談ください。

休職せずに、辞めてしまいたいです。

いま、決めないでください。その判断は、視野が狭くなった状態で下されています。それに、辞めてしまうと傷病手当金の受給にも影響します。まず休職して、回復してから、冷静に考えましょう。それでも辞めたいなら、そのときに辞めればいい。選択肢は、逃げません。

休職中の生活費が心配です。

傷病手当金で、標準報酬日額のおおむね3分の2が支給されます(健康保険の被保険者の場合。最長1年6か月)。満額ではありませんが、ゼロではありません。「使える制度がある」と知るだけで、眠りが楽になった方を、何人も見てきました。

上司に言い出せません。

上司がストレス因なら、人事、産業医、健康管理室——別のルートで構いません。無理に原因そのものと対峙する必要はないのです。伝え方も、診察で一緒に整理できます。


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参考文献・情報源

  • 厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)|傷病手当金
  • 厚生労働省|こころの耳「働く人のメンタルヘルス」

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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