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2026/07/04

休職中に退職を考えたら|傷病手当金の継続給付と失業手当の関係を横浜・関内の精神科医が解説

休職が長引いてくると、多くの方の頭に、ある考えが浮かびます。「いっそ、辞めてしまったほうが楽になるのではないか」。会社に籍があること自体が重荷に感じられて、退職すればこの苦しさから解放される気がする——診察室で、本当によく伺うお気持ちです。

そのお気持ちを否定するつもりはありません。ただ、精神科医としてどうしてもお伝えしておきたいことが二つあります。ひとつは、退職のしかたを間違えると、本来受け取れたはずのお金を失ってしまう場合があること。もうひとつは、うつ状態のときは判断力そのものが下がっているので、退職のような大きな決断は、できるだけ回復してからにしてほしいということです。

この記事では、横浜・関内のみなとメンタルクリニックが、退職を考えたときに知っておきたいお金の制度——傷病手当金の退職後の継続給付と、失業手当(雇用保険の基本手当)の関係——を整理してお話しします。


退職しても、傷病手当金は続けて受け取れる場合があります

まず、いちばん大事なところから。健康保険の傷病手当金は、在職中だけの制度だと思われがちですが、条件を満たせば退職後も引き続き受け取れるしくみがあります。資格喪失後の継続給付と呼ばれるもので、支給期間は在職中と通算して最長1年6か月です。

継続給付を受けるための条件は、おおまかに言うと二つです。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
  • 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること

そしてここに、知らないと本当にもったいない落とし穴があります。退職日に出勤してしまうと、継続給付が受けられなくなる場合があるのです。「最終日くらいは挨拶に」と最後の日だけ出勤したために、その日は労務不能ではなかったと扱われてしまう——制度の解説でも繰り返し注意されている点です。退職日は出勤せず、療養にあててください。挨拶や引き継ぎをどうしてもと考える方は、退職日より前の日程にするか、書面などの方法をご検討ください。


失業手当とは同時に受け取れません

次に、失業手当(雇用保険の基本手当)との関係です。ここは誤解がとても多いところなので、しくみから説明します。

失業手当は、「働ける状態にあって、仕事を探しているのに、仕事に就けない」方のための給付です。いっぽう傷病手当金は、「病気のために働けない」方のための給付。前提となる状態が正反対なので、この二つを同時に受け取ることはできません

ですから、順番はこう考えてください。まだ療養が必要な間は、傷病手当金の継続給付。回復して働ける状態になったら、そこから失業手当。療養の時期と求職の時期で、受け取る給付を切り替えていくイメージです。


失業手当の「受給期間延長」を忘れずに

ここで、もうひとつ大事な手続きがあります。失業手当には受給期間という期限があり、原則として離職の翌日から1年以内に受け取り終える必要があります。療養が長引いてから「さあ働こう」と思ったときには、期限が過ぎていた——ということが起こり得るのです。

これを防ぐのが、受給期間延長の手続きです。病気などの理由で引き続き30日以上働けない場合、ハローワークに申請すると、受給期間を最長で通算4年(延長分として最大3年)まで延ばすことができます。退職して療養を続ける方は、離職票を受け取ったら、体調のよい日にこの延長申請だけは済ませておいてください。ご家族による手続きや郵送での申請を受け付けている場合もありますので、管轄のハローワークにご確認ください。

なお、体調を理由に退職した方は、雇用保険のうえで特定理由離職者と認められ、給付の条件が一般の自己都合退職より有利になる場合があります。その判断には医師の意見書などを求められることがありますので、必要になったら診察のときにお申し出ください。


忘れがちな三つの現実的な話

制度の切り替え以外にも、退職にともなって変わるお金があります。

ひとつめは健康保険です。退職すると会社の保険から外れるので、国民健康保険に入るか、それまでの保険を任意継続するか、ご家族の扶養に入るかを選ぶことになります。保険料は収入や自治体によって変わるため、区役所や加入中の健康保険組合で見積もりを比べてから決めるのが安全です。なお、通院の自己負担そのものを軽くする自立支援医療は、退職後もそのまま使えます。

ふたつめは住民税です。住民税は前年の所得に対してかかるので、収入が減った退職後に、働いていたころの税額の請求が来ます。ここを見込んでおかないと、家計の計画が狂いやすいところです。

みっつめは年金です。厚生年金から国民年金に切り替わりますが、収入が減って保険料の納付が難しいときは、免除や猶予の制度があります。未納のまま放置すると、将来の年金だけでなく、障害年金の納付要件にも影響し得るので、払えないときこそ免除の手続きをしておくことが大切です。


いちばん伝えたいのは、「決断は回復してから」ということ

ここまでお金の話をしてきましたが、最後に、精神科医としていちばんお伝えしたいことを書きます。うつ状態のときは、ものごとを実際より悪く見積もる方向に、思考が傾きます。「自分は職場に迷惑をかけている」「もう居場所はない」——その感覚は、症状がつくり出している部分が小さくありません。実際、休職中に固まりかけた退職の意思が、回復とともに変わっていく方を、私たちは何人も見てきました。

だから原則は、大きな決断は、症状が良くなってから。今すぐ結論を出さなくても、傷病手当金や受給期間延長といった制度が、考える時間を確保してくれます。制度は、あなたを急かさないために使うものです。

当院は関内駅から徒歩2分、馬車道・桜木町・みなとみらい方面からも通いやすい場所にあります。横浜市中区の周辺にお勤め・お住まいの方で、退職を迷っている方は、その迷いごと診察室に持ってきてください。辞める・辞めないの結論を急ぐのではなく、体調とお金の両面から、いま決めるべきことと先送りしてよいことを一緒に整理します。WEB予約はこちらから、ご不明な点はよくある質問もご覧ください。


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参考・情報源

本記事は、以下の情報をもとに作成しています。個々のご事情への当てはめは、診察や、健康保険組合・ハローワークでの確認にもとづいて一緒に考えていきます。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)|傷病手当金・資格喪失後の継続給付に関する案内
  • ハローワークインターネットサービス|基本手当・受給期間延長に関する案内
  • 厚生労働省|雇用保険制度(特定理由離職者の範囲)に関する案内

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・発達障害などを中心に診療。産業医として、働き方や職場のメンタルヘルスにも対応。

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