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2026/07/01

その寝酒、危険かもしれません|睡眠薬とお酒を一緒にしてはいけない理由を精神科医が解説

「睡眠薬を飲んでいるけれど、お酒も飲みたい」「寝酒の習慣がやめられない」「薬とお酒を一緒にしたら、どうなるの?」——睡眠薬とアルコールについて、こうした疑問や不安をお持ちの方は、少なくありません。結論からお伝えすると、睡眠薬とお酒の併用は、思っている以上に危険で、避けるべきものです。そして、お酒そのものも、じつは眠りの質を下げてしまいます。まずは、この記事の要点です。

  • 睡眠薬とアルコールはどちらも脳の働きを抑える——重なると作用が強まりすぎる
  • 記憶が飛ぶ・呼吸が抑えられる・転倒するなど、重大な事故につながることがある
  • そもそも「寝酒」は睡眠の後半を浅くし、かえって不眠を悪化させる
  • お酒で寝つこうとすると、耐性がつき量が増え、依存につながりやすい
  • 飲酒の習慣がある方こそ、そのことを正直に主治医に伝えてほしい

睡眠薬とアルコールの関係は、多くの方が「なんとなく良くない」と感じていながら、その本当の理由や危険性までは、あまり知られていないテーマです。このページでは、なぜ併用が危険なのか、寝酒の何が問題なのか、そしてどうすればよいのかを、公的機関の情報もふまえながら、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックが、できるだけていねいに解説します。睡眠薬そのものについては「睡眠薬とは(種類・作用・依存と安全なやめ方)」、不眠については「不眠・睡眠障害について」のページもあわせてご覧ください。

なぜ、睡眠薬とお酒を一緒にしてはいけないのか

睡眠薬とアルコールの併用が危険な、いちばんの理由はシンプルです。どちらも「脳の働きを抑える(鎮静する)」作用を持っているからです。

多くの睡眠薬、とくにベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系のお薬は、脳のブレーキ役である「GABA(ギャバ)」という神経伝達物質の働きを強めることで、眠りをもたらします。ところが、アルコールもまた、同じGABAの働きを強め、脳を鎮静させます。つまり、両者は「同じ方向に、脳にブレーキをかける」もの同士なのです。

これを一緒にとると、ブレーキが二重にかかり、それぞれ単独のとき以上に、作用が強く出てしまいます。「1+1」が「2」ではなく、「3」にも「4」にもなりうる——これを、専門的には「相乗作用」と呼びます。この効きすぎが、後で述べるさまざまな危険の、大もとになっています。実際、睡眠薬の説明書(添付文書)にも、アルコールとの併用で作用が強まるおそれがあることが、注意点として明記されています。

具体的に、どんな危険があるのか

睡眠薬とアルコールを併用したときに起こりうる、代表的なリスクを挙げます。どれも、「知らなかった」では済まされない、重大なものです。

記憶がなくなる(前向性健忘・もうろう状態)

薬とお酒が重なると、服用後の記憶がすっぽり抜け落ちることがあります。自分では起きて何かをしていたのに、翌朝それをまったく覚えていない——そんな状態です。この間に、無意識のうちに食べる、外に出る、電話やメールをする、車を運転するといった行動をとってしまい、本人がまったく記憶していない、という事例も報告されています。アルコール自体にも、感情や記憶をつかさどる脳の部位を抑える働きがあり、飲みすぎたときに記憶が飛ぶのは、このためです。薬と重なれば、その危険はさらに高まります。

呼吸が抑えられる(呼吸抑制)

もっとも深刻なのが、呼吸への影響です。脳の「呼吸をコントロールする中枢」まで強く抑えられると、呼吸が浅く・遅くなり、最悪の場合、命にかかわることもあります。とくに、お酒を大量に飲んだうえで睡眠薬を飲む、といった使い方は、絶対に避けなければなりません。また、アルコールは、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させることも知られており、呼吸の面から見ても、睡眠には好ましくありません。

転倒・けが

薬とお酒の相乗作用で、強いふらつき・めまいが起こり、転倒しやすくなります。とくに夜中にトイレへ起きたときなどは、足元がおぼつかず、転んで骨折する危険があります。高齢の方では、これが寝たきりのきっかけになることもあり、軽視できません。

翌日への持ち越し・判断力の低下

効きすぎた状態は、翌朝以降にも残ります。強い眠気・だるさ・頭が働かない感じが続き、仕事や車の運転に支障が出ます。判断力や注意力が落ちた状態での運転は、重大な事故につながりかねません。

そもそも「寝酒」は、眠りに逆効果です

「眠れないから、お酒を飲んで寝ている」という方は、とても多くいらっしゃいます。実際、睡眠薬がわりに寝酒を飲む習慣を持つ人は、日本では少なくないことが、国の調査でも指摘されています。たしかに、お酒を飲むと、寝つきはよくなったように感じます。けれど、それは睡眠の「前半だけ」の話で、寝酒はむしろ、睡眠全体の質を大きく下げてしまうのです。

睡眠の前半と後半で、まったく逆の影響が出る

アルコールが睡眠に与える影響は、前半と後半で、まったく異なることがわかっています。飲んだ直後(睡眠の前半)は、たしかに寝つきが早くなり、深い眠りが増えます。ここだけを見ると「よく眠れた」と感じます。ところが、アルコールが体内で分解されていく睡眠の後半になると、逆に眠りが浅くなり、夜中に目が覚めたり(中途覚醒)、明け方に目が覚めてしまったり(早朝覚醒)します。「寝つきはいいのに、途中で目が覚める」「明け方に必ず目が覚める」という方は、寝酒が原因になっていることが少なくありません。この後半の悪化は、お酒の量・性別・年齢を問わず起こることが、研究で報告されています。

分解されてできる物質が、眠りを妨げる

アルコールは、体内で分解される過程で「アセトアルデヒド」という物質に変わります。これが交感神経を刺激し、体を覚醒方向に傾けるため、睡眠の後半が浅くなります。「よく眠るために飲んだお酒」が、その分解産物によって、かえって眠りを妨げてしまう——これが、寝酒の皮肉なからくりです。

利尿作用で目が覚める

アルコールには尿を増やす作用があり、夜中にトイレに起きる回数が増えます。これも、睡眠を分断する一因です。

だんだん量が増えていく(耐性)

お酒で寝つく習慣を続けると、体が慣れて(耐性がつき)、同じ量では寝つけなくなっていきます。すると、量を増やさざるをえなくなり、飲酒量がどんどん増えていく——これが、寝酒のもっともこわい落とし穴です。睡眠のためのお酒が、いつしかアルコール依存につながっていく危険があります。実際、アルコール依存の状態になると、お酒が抜けるときに不眠・手のふるえ・発汗・動悸といった離脱症状があらわれ、それを抑えるためにまた飲む、という悪循環に陥ります。

つまり、寝酒は「その場しのぎ」にはなっても、根本的には不眠を悪化させ、依存のリスクを高めるものなのです。「お酒で寝る」から「治療で眠る」へ切り替えることが、遠回りのようでいて、確実な回復への道です。

「お酒のかわりに睡眠薬」は、正しく使えば安全な選択

ここまで読んで、「じゃあ、お酒も薬もダメなのか」と、不安になったかもしれません。けれど、そうではありません。お伝えしたいのは、「お酒で無理やり寝る」より、「医師の管理のもとで、適切な睡眠薬を正しく使う」ほうが、はるかに安全だということです。

とくに近年は、依存が生じにくいタイプの睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬のデエビゴ・ベルソムラ・クービビック・ボルズィや、メラトニン受容体作動薬のロゼレムなど)も増えています。これらは、脳の機能を広く抑え込むのではなく、覚醒や睡眠のリズムにそっと働きかけるしくみのため、アルコールとは異なる、より自然に近い形で眠りを支えます。寝酒に頼っている方が、まず飲酒をやめ、必要に応じてこうしたお薬に切り替えていく——それは、依存から抜け出し、質のよい睡眠を取り戻すための、前向きな一歩です。

「お酒をやめられない自分はダメだ」と責める必要は、まったくありません。飲酒と不眠の悪循環は、意志の力だけで断ち切るのが難しいもの。だからこそ、医療の力を借りていただきたいのです。

お薬を飲んでいる間、お酒はどうすればいい?

基本は、睡眠薬を服用している間は、飲酒を控えていただくのがもっとも安全です。とはいえ、「付き合いでどうしても飲む機会がある」「晩酌の習慣を急にやめるのは難しい」といった事情も、現実にはあります。大切なのは、そうした事情を隠さず、正直に主治医に伝えることです。

「お酒を飲んでいると言ったら、叱られるのではないか」と、心配される方もいます。けれど、私たちが知りたいのは、あなたを責めるためではなく、安全にお薬を使っていただくためです。飲酒の習慣や量を正確に把握できてこそ、より安全なお薬を選んだり、飲み方の工夫を一緒に考えたりできます。正直にお話しいただくことが、あなた自身を守ることにつながります。

お酒との付き合い方に困っているなら

「寝るために飲む量が、だんだん増えてきた」「お酒を飲まないと、そわそわして眠れない」「飲みすぎているとわかっているのに、やめられない」——もし、こうした状態に心当たりがあれば、それはお酒との付き合い方を見直すサインかもしれません。

不眠とお酒の問題は、深くつながっていることが多く、どちらか一方だけを何とかしようとしても、うまくいかないことがあります。不眠を放置するとお酒に頼りやすくなり、お酒は不眠を悪化させる——この悪循環を、どこかで断ち切る必要があります。当院では、不眠の治療とあわせて、お酒との付き合い方についても、責めることなく、一緒に考えていきます。一人で抱え込まず、まずはお話をお聞かせください。(アルコール依存が進んでいる場合には、専門の医療機関と連携して対応することもあります。安心してご相談ください。)

よくある質問

睡眠薬を飲む前に、少しだけお酒を飲むのもダメですか?

少量であっても、睡眠薬とアルコールの併用は、作用が予想以上に強まることがあり、おすすめできません。とくに、記憶が飛んだり、ふらついたりするリスクは、「少しだけ」でも起こりえます。飲酒した日は、睡眠薬をどうするか、あらかじめ主治医に相談しておくと安心です。

お酒を飲んでから、何時間あければ睡眠薬を飲めますか?

アルコールが体から抜ける時間には個人差が大きく、「何時間あければ安全」と一概には言えません。基本は、飲酒した日は睡眠薬を控えるのが安全です。判断に迷うときは、自己判断せず、主治医にご相談ください。

寝酒をやめたら、余計に眠れなくなりました。

長く寝酒を続けていた方が急にやめると、一時的に寝つきが悪くなることがあります。これは体が慣れるまでの一時的なもので、多くは数日〜数週間で落ち着いていきます。つらい時期を乗り越えるために、この間だけお薬でサポートすることもできます。一人で我慢せず、ご相談ください。

ノンアルコール飲料なら、一緒でも大丈夫ですか?

アルコールを含まない飲料であれば、鎮静作用が重なる心配はありません。ただし、少量のアルコールを含む「微アルコール」飲料もあるため、表示をご確認ください。寝酒がわりにノンアルコール飲料を活用するのは、一つの工夫です。

毎晩の晩酌はしていますが、睡眠薬とは時間が離れています。それでも影響しますか?

時間を大きくあければ相乗作用は弱まりますが、習慣的な飲酒そのものが睡眠の質を下げるため、不眠の改善をさまたげることがあります。晩酌の習慣がある場合は、その量や頻度も含めて、一度ご相談いただくとよいでしょう。

お酒を飲んでいることを、正直に言っても大丈夫ですか?

はい、ぜひ正直にお話しください。責めるためではなく、安全にお薬を使っていただくために必要な情報です。飲酒の習慣を把握できてこそ、より安全なお薬選びや、飲み方の工夫ができます。

当院の特徴|関内駅2分・平日夜間診療・当日予約対応・女性医師在籍

みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分の、通いやすい立地にあります。祝日以外は毎日診療しており、平日は夜19時まで診療しているため、お仕事帰りにも立ち寄っていただきやすい時間帯があります(土曜・日曜も診療)。当日のご予約にも対応していますが、枠の状況によっては、ご希望に添えない場合もございます。できるだけ同じ医師が継続して診療し、お薬についても、ご納得いただきながら進めることを大切にしています。お酒との付き合い方についても、責めることなく、一緒に考えます。女性医師も在籍し、保険適用の心理検査にも対応しています。うつ病、不安症、不眠症、自律神経失調症、適応障害、発達障害など、こころの不調全般を診療しています。

横浜・関内で、不眠やお酒についてご相談したい方へ

「寝酒がやめられない」「お酒に頼らず眠れるようになりたい」「睡眠薬とお酒のことが心配」——どんなことでも、不安や希望をそのままお聞かせください。飲酒と不眠の悪循環は、一人で断ち切るのが難しいものです。だからこそ、私たちが一緒に考えます。お酒に頼らずぐっすり眠れる毎日を、一緒に目指していきましょう。

横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。祝日以外は毎日診療し、平日は夜間まで、土日も診療しています。当日のご予約にも対応しており(枠の状況によります)、みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町エリアからもお越しいただけます。

「こんなことで受診していいのだろうか」と、ためらう必要はまったくありません。眠れないつらさも、お酒の悩みも、我慢するものではありません。初めての方も、緊張されて当然です。私たちは、その一歩を、ていねいにお迎えします。

関連ページ

睡眠薬のタイプ・全体解説

  • 睡眠薬とは(種類・作用・依存と安全なやめ方)
  • 睡眠薬のやめ方・減らし方
  • オレキシン受容体拮抗薬とは(デエビゴ・ベルソムラ・クービビック・ボルズィ)
  • メラトニン受容体作動薬とは(ロゼレム)
  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは(マイスリー・ルネスタ・アモバン)

不眠そのものについて

  • 不眠・睡眠障害について

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)

医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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