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2026/08/26
「眠らなきゃ」と思うほど眠れない|眠ろうとする努力が逆に働く理由を横浜・関内の精神科医が解説
この記事は、みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)の「場面で出る体の症状について」ガイドの一記事です。全体像は総合ガイドをご覧ください。
23時にベッドに入る。眠らなければ。明日は早い。
0時。まだ眠れていない。あと6時間。6時間眠れれば、なんとかもつはずだ。
1時。あと5時間。5時間だときつい。明日の午後は絶対に眠くなる。あの会議で寝てしまったらどうしよう。
2時。もう、眠れる気がしない。今から眠っても意味がないのではないか。
——このように、時計を見ながら残り時間を計算した夜を、何度も過ごしてこられたのではないでしょうか。
ここでお伝えしたいことは、ひとつです。眠ろうとする努力そのものが、眠りを遠ざけています。
これは根性論でも、精神論でもありません。眠りという現象の性質から、そうなるのです。
▼ 受診をお考えの方へ
当院は関内駅から徒歩圏(馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます)にあり、土日も診療しています。空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。
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眠りは、努力できない数少ないことのひとつです
ほとんどのことは、努力すればうまくいきます。走る、覚える、作る、片づける。頑張れば、頑張っただけ近づきます。
でも、眠りは違います。眠りは「する」ことではなく、「訪れる」ことだからです。
同じ性質のものが、他にもいくつかあります。
- あくび——出そうと思って出せますか
- くしゃみ——出したいときほど出ません
- 忘れること——忘れようと努力すると、かえって覚えています
これらに共通するのは、意識的に努力すると、かえって遠ざかるという点です。眠りも、まったく同じ仲間に属しています。
ですから、「眠らなければ」と強く思うことは、走るのを速くするための努力とは違います。むしろ、目を覚ましておくための努力に近い働きをします。
なぜ、努力が逆に働くのでしょうか
努力するには、緊張が要ります
何かを頑張るとき、体は活動モードに入ります。集中して、注意を向けて、結果を確かめる。これは、交感神経がはたらいている状態です。
ところが眠りは、休息モードでしか訪れません。眠ろうと頑張るほど、眠りに必要な状態から遠ざかる。この矛盾が、努力が効かない理由の中心です。
確かめる行為が、目を覚まさせます
「まだ眠れていない」と確認するには、自分が起きていることを意識しなければなりません。
眠れたかどうかを確かめるたびに、意識が引き戻されます。時計を見る、「あと何時間」と計算する、「まだ眠くない」と点検する。どれも、覚醒を維持する作業です。
計算が、焦りを生みます
残り時間を計算すると、必ず「足りない」という結論が出ます。眠れていない時点で、時間は減っているからです。
そして「足りない」と思った瞬間、不安が生まれ、心拍が上がり、体はさらに活動側へ傾きます。計算するたびに、眠りは遠のいていきます。
失敗の場所として、寝室が記憶されます
眠れない夜を寝室で何度も過ごすと、体は寝室を「眠る場所」ではなく「眠れずに苦しむ場所」として覚えていきます。
その結果、寝室に入った時点で、すでに身構えるようになります。ソファやリビングでは眠くなるのに、寝室に移動すると目が冴える。この現象を経験された方は、まさにこの結びつきができている状態です。
ここで大事なのは、この結びつきは、ほどけるということです。作られたものは、作り直せます。
眠れなかった日の翌日について
眠ろうとする努力を手放すには、「眠れないと大変なことになる」という前提を、少しゆるめる必要があります。ここを正確に見ておきましょう。
実際には、思ったより眠れています
「一睡もできなかった」と感じる夜でも、実際には眠っていることがほとんどです。
これは、眠りの浅い段階では時間の感覚が保たれにくく、眠っていた時間が記憶に残りにくいためです。逆に、目が覚めていた時間ははっきり覚えています。
ですから、体感としての睡眠時間は、実際より短く見積もられます。「まったく眠れなかった」という感覚は、本当に眠っていなかったことを意味しません。
一晩の寝不足は、取り返しがつきます
眠れなかった翌日は、確かにつらいです。集中しにくく、頭が働かない感じがします。
でも、一晩眠れなかっただけで、取り返しのつかないことが起こるわけではありません。多くの方が、寝不足のままでも仕事をこなし、実際に一日を終えています。
それに、体には調整する力があります。眠れなかった翌晩は、眠りが深くなりやすいのです。足りなかった分を、体は自然に取り戻そうとします。
ですから、「眠らなければ」は正確ではありません
正確に言えば、「眠れれば、そのほうがいい」くらいです。この差は小さく見えて、実際には大きな違いを生みます。
「眠らなければ」は、眠れなかったときに失敗になります。「眠れればいい」なら、眠れなくても失敗にはなりません。失敗にならなければ、焦りも生まれません。
逆説的ですが、眠れなくてもいいと思えたときに、眠れるようになります。
今夜から変えられること
時計を、視界から外す
まず、これです。残り時間の計算をやめるには、計算できないようにするのがいちばん確実です。
目覚まし時計は、文字盤が見えない向きに置く。スマートフォンは、手の届かない場所へ。「何時か分からない」状態は、最初は不安ですが、数日で慣れます。そして、確実に楽になります。
「眠らなくていい、休むだけでいい」に置き換える
ベッドに入るときの目標を、変えてみてください。
「眠る」ではなく、「横になって、体を休める」。これなら、横になった時点で達成です。失敗のしようがありません。
横になっているだけでも、体は確かに休まっています。目標が達成された状態でいると、緊張が下がり、そのうち眠りが訪れます。
眠くなってから、布団に入る
「23時になったから寝る」ではなく、「眠くなったから寝る」に変えます。
眠くないのに布団に入ると、寝室で覚醒したまま過ごす時間が増えます。それが、寝室と緊張の結びつきを強めます。多少遅くなっても、眠気が来てから入るほうが結果的に早く眠れます。
20分たったら、いったん出る
眠れないと感じたら、寝室を出てください。時計を見ずに、「だいぶ経った」と感じたらで構いません。
暗めの部屋で、静かなことをして過ごす。眠気が来てから、戻る。眠れなければ、また出る。
これは面倒に思えますが、寝室と眠りの結びつきを取り戻すための、もっとも確実な方法です。「布団は眠るところ」という関係を、体に思い出してもらう作業だとお考えください。
起きる時刻は、変えない
眠れなかった翌朝、遅くまで寝ていたくなります。でも、起床時刻は一定に保つほうが、翌晩の眠りは戻りやすくなります。
起きる時刻がずれると、体のリズムがずれ、次の夜の眠気が来る時刻もずれます。つらいところですが、ここを守ると全体が整いやすくなります。
眠れなかった翌日、埋め合わせをしない
長い昼寝、早すぎる就寝、休日の寝だめ。どれも一時的には楽になりますが、次の夜の眠気を減らしてしまいます。
どうしても眠い場合の短い仮眠は構いませんが、夕方以降は避けてください。
「眠れなかったらどうしよう」への答えを、先に用意しておく
不安の中身は、たいてい「眠れなかった翌日が回らない」という予測です。
ですから、あらかじめ答えを用意しておくと楽になります。「眠れなくても、今までなんとかなってきた」「翌日は重要な判断を避ければいい」「体は次の晩に取り戻す」。
先に答えを持っていると、夜に考え込む必要がなくなります。考え事が止まらない場合の対処は寝る前だけ考え事が止まらないにまとめています。
受診を考えていただきたいとき
- 寝つくのに30分以上かかる日が、週に3日以上ある
- その状態が3か月以上続いている
- 日中の眠気や集中力の低下で、生活に支障が出ている
- 夜になるのが怖い、寝室に入るのが憂うつ
- 眠ることについて、一日中考えている
- お酒の力を借りて寝ることが習慣になっている
- 気分の落ち込みや、朝の不調を伴う
とくに「眠ることについて、一日中考えている」という状態は、ご相談いただきたいサインです。眠りが生活の中心の心配事になってしまうと、そこから抜けるのに工夫だけでは足りません。
お酒で寝る習慣についても、遠慮なくお話しください。寝つきは良くなったように感じられますが、眠りの後半を浅くします。責めるようなことはしませんので、そのままお伝えいただければと思います。
診察では何をするのか
まず、眠れない夜の様子を具体的に伺います。何時に布団に入るか、寝つくまでどのくらいか、そのとき何を考えているか、途中で起きるか、朝は何時か。
ここで大切なのは、「眠れない」という結果より、眠りとどう付き合っているかです。時計を見ているか、計算しているか、眠れないまま粘っているか。ここに手を入れると、変わることが多いのです。
そのうえで、背景を見ていきます。適応障害、不安症、うつ病——いずれも寝つきの悪さを伴います。背景に手を入れることで、眠りも戻ってくることがよくあります。
職場や生活の負荷が大きい場合は、そちらへの調整を検討します。当院理事長は日本医師会認定産業医でもありますので、働き方についてもご相談いただけます。
眠れない状態が続いて日中に支障が出ているときには、お薬で下支えすることもあります。必要な期間だけ使い、落ち着いてきたら整理していく前提でご説明します。眠りが戻ってくれば、眠ることへの不安も自然に下がっていくためです。
不眠が長く続いている場合は、不眠・睡眠障害についての記事群もご覧ください。
よくあるご質問
何時間眠れば十分ですか
個人差が大きく、必要な時間は人によって違います。時間数より、日中に支障が出ていないかどうかが目安です。短くても日中しっかり動けているなら、それがその方に合った長さです。
逆に、「◯時間眠らなければ」という数字が頭にあると、それ自体が焦りの元になります。この時期は、いったん数字を手放していただくほうが楽になります。
眠れないまま布団にいるのは、休息になりませんか
横になっていること自体には、休息の効果があります。ただ、「眠れない」と焦りながら過ごす時間は、休息にはなりません。焦っているとき、体は活動モードのままだからです。
焦りがなく、ただ横になっていられるなら、そのままで構いません。焦っているなら、いったん出たほうが楽になります。
睡眠薬に頼りたくありません
そのお気持ちのまま、お伝えいただいて構いません。お薬を使わない進め方もあります。使う場合も、必要な期間だけという前提でご説明し、診察のたびに調整していきます。
寝酒はだめですか
寝つきは良くなったように感じられますが、眠りの後半を浅くし、途中で目が覚めやすくなります。翌朝の不調にもつながります。習慣になっている場合は、急にやめるのではなく、診察でご相談ください。
平日は仕事で行けません
当院は土日も診療しており、夕方以降のご予約も可能です。会社帰りに通える心療内科をご覧ください。関内駅から徒歩圏で、馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます。
今日つらいのですが、当日でも診てもらえますか
空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。Web予約で当日枠が出ていない場合も、お電話でご相談いただければ調整できることがあります。初診の流れはこちらです。
眠ろうとするのを、やめてみる
眠れない夜を重ねてこられた方は、たいてい真面目です。眠らなければと考え、対策を調べ、時間を管理し、努力を続けてこられた。
その努力の方向が、たまたま合わなかっただけです。眠りは、努力が効かない数少ないことのひとつだからです。
今夜は、時計を伏せて、「眠らなくていい、横になるだけ」と思ってみてください。目標を下げると、かえって近づくことがあります。
それでも変わらないときは、ご相談ください。眠れない夜の過ごし方から、一緒に組み立て直していけます。
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みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)/土日診療・当日予約に対応
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参考
- 日本睡眠学会 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド
- DSM-5-TR(American Psychiatric Association)
- ICD-11(World Health Organization)
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。