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2026/06/17

休職中のお金|傷病手当金のしくみと申請の流れを横浜・関内の精神科医が解説

「休んだほうがいい、というのはわかりました。でも——生活が」

診断書を書こうとすると、その手前で、必ずこの話になります。

家賃。住宅ローン。子どもの学費。カードの引き落とし。休めば、収入が止まる。止まったら、生きていけない。

だから、無理をして働き続ける。そして、症状はもっと悪くなる。

——ここで、はっきりお伝えします。収入は、ゼロにはなりません。制度があります。そして、その制度を知らないまま無理を続けて、うつ病を悪化させる方が、あまりにも多い。

この記事では、休職中のお金の話を、実務レベルで解説します。横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が書きます。


お金の不安で休職をためらっている方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。傷病手当金の申請書(医師記入欄)も、診察でお受けします。書類をお持ちください。
WEB予約はこちら(当日予約可)/詳しくは産業医・休職・復職のご相談ページをご覧ください。


お金の不安は、「気力」ではなく「情報」で減らせます

最初に、これを言わせてください。

療養中の焦りの、かなりの部分は経済的な不安から来ています。そして、この不安は——気持ちの問題ではなく、情報と手続きの問題です。

つまり、手が打てます。

「使える制度がある」と知るだけで、その夜から眠りが少し楽になった方を、私は何人も見てきました。眠れるようになれば、回復も早くなる。だから、この情報は、治療の一部なのです。

傷病手当金——休職中の生活を支える、中心的な制度

これは、何か

健康保険から支給される、生活保障の制度です。

病気やケガで働けなくなったとき、その間の生活を支えるために、健康保険が給付を行います。うつ病や適応障害も、当然、対象です。

「精神的な病気でも出るんですか」——よく聞かれます。出ます。これは、体の病気と何ら変わりません。

対象になる人

健康保険の被保険者——会社員、公務員など、勤務先の健康保険に加入している方です。

ここは重要な注意点です。国民健康保険には、原則としてこの制度はありません。自営業やフリーランスの方は、対象外となることが多い。この違いを知らずに、後から愕然とされる方がいます。

支給される条件

次の4つを、すべて満たす必要があります。

  1. 業務外の病気やケガで療養中であること(仕事が原因なら、労災の対象になります)
  2. 療養のため、働けない状態であること(医師の判断が必要です)
  3. 連続する3日間を含み、4日以上、仕事を休んでいること
  4. 休んだ期間について、給与の支払いがないこと(一部支給の場合は、差額が調整されます)

「待期期間」について

3つ目の条件が、少しわかりにくい。

最初の連続する3日間を「待期期間」と呼びます。この3日間には、支給されません。4日目から支給が始まります。

この3日間は、有給休暇や公休日でも構いません。「連続して3日休んだ」という事実があればいい。

いくら、もらえるのか

おおむね、標準報酬日額の3分の2が目安です。

満額ではありません。ここは、正直にお伝えします。給与の3分の2程度ですから、生活の見直しは必要になるかもしれません。

ただし——ゼロではないのです。そして、多くの方は「休んだら収入がゼロになる」と思い込んでいます。この誤解が、無理を続けさせている。

いつまで、もらえるのか

支給を始めた日から、通算して最長1年6か月です。

「通算」という点が重要です。以前は「支給開始から1年6か月の期間内」でしたが、制度が変わり、途中で復帰して再び休職した場合、支給された日数を通算してカウントする形になりました。つまり、途中で復職しても、残りの期間を後で使えます。

これは、復職を試みるハードルを下げる、大きな改正です。

申請の流れ——実務

ステップ1:申請書を入手する

勤務先の人事・総務、または加入している健康保険組合・協会けんぽから、申請書を入手します。

ステップ2:申請書には、3者の記入欄があります

ここが、この制度の手続きの要です。申請書は、あなた一人では完成しません。

  • ①本人が記入する欄:氏名、口座情報、療養の期間など
  • ②事業主(会社)が記入する欄:勤務状況、給与の支払い状況など
  • ③医師が記入する欄:病名、療養の期間、労務不能と認めた期間など

ステップ3:医師の記入欄を、埋めてもらう

申請書を、診察にお持ちください。当院で記入します。

注意点があります。医師が記入できるのは、「すでに経過した期間」についてです。未来の期間について「働けない」と証明することはできません。

したがって、申請は、通常1か月ごとに、後から行います。「先月分の申請書を書いてください」という形になります。

ステップ4:提出する

会社経由で提出するのが一般的です。会社が健康保険組合や協会けんぽへ送ります。

ステップ5:振り込まれる

ここが、最も注意が必要な点です。

申請してから振り込みまで、数週間から1か月以上かかることがあります。

つまり——休職を始めてから最初の入金まで、2か月近く空くこともある。

この期間の生活費を、あらかじめ確保しておいてください。これを知らずに、休職後に困窮する方がいます。手持ちの資金、貯蓄、家族の協力——事前に見通しを立てておくことが、精神的な安定にもつながります。

もうひとつの制度——自立支援医療

休職中も、通院は続きます。その医療費を軽くする制度が、これです。

自立支援医療(精神通院医療)——通院にかかる医療費(診察代・薬代)の自己負担が、原則1割になります。

通常3割負担が1割になるのですから、負担は3分の1です。長期の通院が必要な場合、この差は大きい。

申請には診断書が必要です。お住まいの市区町村の窓口で手続きします。詳しくは自立支援医療の記事一覧をご覧ください。

忘れがちな出費——社会保険料

ここで、多くの方が驚かれます。

休職中も、社会保険料(健康保険・厚生年金)の本人負担分は発生します。

給与から天引きされていたものが、給与がなくなると天引きできません。したがって——

  • 会社が立て替えて、後日精算する
  • 毎月、会社に振り込む
  • 復職後の給与から、まとめて天引きする

——など、会社によって扱いが異なります。

必ず、休職前に人事に確認してください。「傷病手当金が入ったと思ったら、社会保険料の請求が来て、手元にほとんど残らなかった」——こうした事態を防げます。

そのほかの選択肢

労災

仕事が原因と認められる場合、労災の対象になります。

長時間労働、パワーハラスメント——これらが原因で精神疾患を発症した場合、労災認定を受けられる可能性があります(職場のストレス・ハラスメントの記事一覧)。

労災が認められれば、休業補償給付など、傷病手当金より手厚い給付を受けられます。ただし、認定のハードルは低くありません。

労災を検討する場合は、労働基準監督署や、労働問題に詳しい専門家にご相談ください。当院は医療機関であり、労災の認定に関わる判断をする立場にはありませんが、診断書の作成など、医学的な部分では協力できます。

民間の保険

就業不能保険、所得補償保険などに加入していれば、給付の対象になることがあります。加入している保険を、一度確認してみてください。忘れている方が、意外に多いのです。

失業給付(退職した場合)

ここは、慎重にお読みください。

退職すると、傷病手当金は原則として終了します(一定の条件を満たせば継続できる場合もあります)。

そして、失業給付(雇用保険)は、「働ける状態にある人」が対象です。療養が必要で働けない状態では、原則として受給できません(受給期間の延長申請という手続きがあります)。

つまり——「辞めれば失業保険がもらえる」という単純な話ではないのです。

そして、これが最も重要です。療養中の退職は、経済的にも不利になることが多い。まず休職して、傷病手当金を受給しながら回復する——これが、多くの場合、合理的な選択です。

「辞めたい」しか考えられなくなっている状態での決断は、お金の面でも後悔を生みます。

お金の不安が、症状を悪化させる

最後に、医学的な話を。

経済的な不安は、それ自体が強力なストレス因です。不安で眠れなくなり、眠れないから回復が遅れ、回復が遅れるから休職が長引き、さらに不安が増す。——この悪循環に入ると、抜け出すのが難しくなります。

だからこそ、お金の見通しを立てることは、治療の一部です。

  • 傷病手当金で、いくら入るのか
  • いつから入るのか
  • その間の生活費は、足りるのか
  • 社会保険料は、どう払うのか

これを紙に書き出してみてください。漠然とした不安が、具体的な数字になるだけで、恐怖はかなり小さくなります。

そして、わからないことは、遠慮なく診察で聞いてください。制度のことも、一緒に整理します。

受診の目安

  • 休職を考えているが、お金が心配で踏み切れない
  • 傷病手当金の申請書に、医師の記入が必要
  • 朝、起きられない。会社に行こうとすると体調が悪くなる
  • 眠れない、食べられない
  • 「辞めるしかない」と思い詰めている

お金の不安で受診をためらっているなら、それこそ相談してほしいと思います。制度を知れば、選択肢が変わります。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。祝日以外は毎日診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。女性医師も在籍しています。

WEB予約はこちら(当日予約可)よくある質問

よくある質問

うつ病でも、傷病手当金は出ますか?

出ます。精神疾患も、体の病気と同様に対象です。「精神的な病気だから対象外では」と誤解して、申請していない方がいます。もったいないことです。

申請書は、いつ持っていけばいいですか?

医師が記入できるのは、すでに経過した期間についてです。したがって、通常は1か月ごとに、後から申請します。「先月分」の申請書を、診察にお持ちください。

会社に申請を知られたくないのですが。

申請書には事業主(会社)の記入欄があるため、会社を通さずに申請することは、原則としてできません。ただし、健康保険組合に直接提出できる場合もあります。まず、加入している健康保険にご確認ください。

休職中に、アルバイトをしてもいいですか?

おすすめしません。傷病手当金は「働けない状態」に対して支給されるものです。就労していると判断されれば、支給が停止される可能性があります。何より、療養にならない。

退職したら、傷病手当金はどうなりますか?

原則として終了しますが、一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できる場合があります(資格喪失日の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があること、など)。ただし、条件は細かく、判断が難しい。退職を考えているなら、その前に必ず健康保険組合に確認してください。そして、その決断自体を、いま急がないでください。

制度が変わることはありますか?

あります。この記事の内容も、変更される可能性があります。必ず、加入している健康保険組合や協会けんぽの最新情報をご確認ください。


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参考文献・情報源

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)|傷病手当金
  • 厚生労働省|傷病手当金について
  • 厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

※本記事の制度に関する記載は、執筆時点の情報に基づきます。制度は変更されることがありますので、必ず加入している健康保険組合・協会けんぽの最新情報をご確認ください。


この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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