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2026/07/02

夜勤・交代勤務で眠れない方へ|睡眠リズムの整え方を産業医・精神科専門医が解説

夜勤明けの午前9時。カーテンを閉め切った部屋で、アイマスクをして布団に入る。外は明るい。宅配便のチャイムが鳴る。隣の部屋から掃除機の音。近所の子どもの声。

やっと眠りかけた頃、体は「もう昼だぞ」と言い出す。3時間ほどで目が覚めて、そこからもう眠れない。今夜もまた夜勤なのに——。

交代勤務で働く方の睡眠は、根性や工夫だけではどうにもならない部分を含んでいます。体内時計という、意志の届かない仕組みと戦っているからです。この記事では、その現実を踏まえたうえで、何ができるのかを、産業医でもある横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。不眠全体の地図は不眠症とは|4つのタイプ・原因・治し方・受診の目安にまとめてあります。


夜勤・交代勤務で眠れない方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。日本医師会認定産業医の資格を持つ医師が在籍しており、勤務体制を踏まえた現実的な相談が可能です。
WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は初診の流れのご案内をご覧ください。


まず、これだけは言わせてください——あなたのせいではない

交代勤務で眠れない方が、こう言うことがあります。「同僚は平気そうなのに、自分だけ適応できない。弱いんでしょうか」。

違います。あなたが戦っているのは、生物としての設計そのものです。

睡眠の仕組みの記事で書いたとおり、人間には体内時計があり、朝の光でリセットされ、夜に眠るようにできています。深部体温は明け方に最も低くなり、メラトニンは暗くなると分泌され、コルチゾールは朝に高まる。これらは、意志で書き換えられません。

夜勤とは、この設計と真っ向から逆行して働くことです。体は「いま眠るべき時間だ」と言い、仕事は「起きていろ」と言う。日中に眠ろうとすれば、体は「いま起きるべき時間だ」と言う。常に、体と勤務表が喧嘩している状態なのです。

そして個人差があります。夜型の人、体内時計の柔軟性が高い人は、比較的適応できる。若いうちは順応しやすく、加齢とともに難しくなる。同僚が平気で、あなたが苦しいのは、体質と年齢の問題であって、根性の問題ではありません。

交代勤務が体に与えるもの

正直に、リスクも書いておきます。知らずに消耗し続けるより、知ったうえで手を打つほうがいいからです。

  • 慢性的な睡眠不足:日中の睡眠は、夜の睡眠より短く、浅くなりがちです。同じ時間眠っても、回復量が違います。
  • 心の不調のリスク:交代勤務者ではうつ病のリスクが高まることが知られています。不眠とうつ病は互いを強め合うため、眠りの崩れが心を削っていきます。
  • 体への負担:高血圧、糖尿病、心血管疾患のリスク上昇が報告されています。
  • 事故のリスク:深夜帯——とくに午前2時から6時は、生理的に最も覚醒度が下がる時間帯です。判断力も反応も落ちる。ここで働くこと自体が、リスクを含んでいます。

これは脅しではなく、だからこそ対策に投資する価値があるという話です。

夜勤中——覚醒を保つために

職場を、明るくする

光は、体内時計に対する最強の号令です。夜勤中に強い光を浴びると、体は「まだ活動時間だ」と判断し、覚醒が保たれます。可能なら、職場の照明は明るく。とくに勤務の前半に、しっかり光を浴びてください。

カフェインは、勤務の前半に

カフェインは体から抜けるのが遅い——半減期は平均4〜6時間です。明け方に飲めば、帰宅後の眠りを妨げます。使うなら、勤務の前半に。勤務終了の数時間前からは避けるのが原則です。

仮眠を、戦略的に取る

可能な職場なら、深夜帯に短い仮眠を挟むことで、覚醒度と安全性が改善します。長く眠りすぎると起きたときに頭が働かない時間(睡眠慣性)が出るため、短めに。職場の制度として仮眠室があるなら、遠慮せず使ってください。

夜勤明け——ここが勝負どころ

帰宅時、光を遮る

これが、夜勤明けの最重要ポイントです。

朝の光は、体内時計に「朝だ、活動しろ」と号令をかけます。夜勤明けに朝日を浴びながら帰宅すると、これから眠ろうという体に、真逆の指令が入ってしまう。

だから、サングラスをかけて帰る。これは見た目の問題ではなく、生理学的な対策です。そして帰宅したら、寝室を徹底的に暗くする。遮光カーテン、アイマスク。「暗い」ではなく「真っ暗」を目指してください。

寝室を、静かに・涼しく

日中の生活音は避けられません。耳栓やホワイトノイズを使う。宅配便は再配達や宅配ボックスへ。家族には、眠る時間を共有しておく。

温度も大事です。日中は暑い。深部体温が下がらないと眠りは深くなりません。空調は遠慮なく使ってください。

帰宅後の寝酒は、やめる

夜勤明けに一杯やって寝る——気持ちはわかります。ですが、アルコールは眠りを浅くし、中途覚醒を増やし、ただでさえ削られている日中の眠りを、さらに削ります。もっとも避けたい習慣です。

眠り方は、勤務パターンで変える

次の勤務が近いか遠いかで、戦略が変わります。

  • 連続夜勤の途中:体を夜型に保ったほうが楽です。帰宅後にしっかり眠り、夕方に起きる。日中の光を避ける。
  • 夜勤明けから日勤・休みへ戻るとき:帰宅後の睡眠を短め(数時間)にとどめ、午後は起きて過ごし、夜に通常どおり眠る。この方が、日常のリズムへ戻しやすい。長く寝すぎると、その夜に眠れず、リズムの戻りが遅れます。

ただし、これは体力を要する方法でもあります。眠気が強すぎて危険なら、無理せず眠ってください。運転中の眠気だけは、絶対に我慢しないこと。

勤務体制そのものを、見直せないか

ここからは、産業医としての話です。個人の工夫には限界があります。

交代勤務のつらさは、シフトの組み方に大きく左右されます。医学的には、日勤→夕勤→夜勤という「後ろ回り」のローテーションのほうが、逆回りより体への負担が軽いことが知られています。体内時計の周期が24時間より少し長いため、後ろへずらすほうが順応しやすいのです。

また、シフトの切り替え間隔が短すぎる、連続夜勤が多すぎる、勤務間インターバルが不十分——こうした条件は、健康リスクを直接高めます。

「そんなことを会社に言えるわけがない」と思われるかもしれません。ですが、睡眠障害や心身の不調が業務に支障をきたしている場合、医師の意見書をもとに勤務調整を求めることは、正当な手続きです。当院には日本医師会認定産業医の資格を持つ医師が在籍しており、職場への配慮依頼を見据えた診断書の作成や相談が可能です。職場のストレスの記事一覧休職・復職の記事一覧もご覧ください。

受診を考えてほしいとき

次のような状態なら、一度ご相談ください。

  • 休みの日でも、眠れない・リズムが戻らない
  • 勤務中の眠気が強く、危険を感じることがある
  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない感覚を伴う
  • 眠るためのお酒の量が増えている
  • 眠っているのに疲れが取れない、大きないびきを指摘される

とくに最後の項目は、交代勤務とは別に睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。次の記事で詳しく扱いますが、当院では自宅でできる検査・治療に対応しています。

治療では、生活とシフトに合わせた光と眠りの設計を組み立てます。薬を使う場合も、翌日の勤務に響かない選択が必要です。メラトニン受容体作動薬は体内時計のずれに働きかける薬で、交代勤務の方には理にかなった選択肢のひとつです。持ち越しの眠気が出やすい従来型の睡眠薬は、運転や危険作業のある方では慎重に考えます。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区を中心に、みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。祝日以外は土日も診療しており、WEB予約は当日予約にも対応しています。勤務表をお持ちいただければ、それを見ながら設計を組み立てられます。

WEB予約はこちら(当日予約可)

よくある質問

夜勤明けに、どうしても眠れません。

体が「起きる時間だ」と言っている時間に眠ろうとしているので、当然といえば当然です。光を遮る(サングラス、遮光カーテン、アイマスク)、寝室を涼しく静かに、帰宅後のカフェインとアルコールを避ける——この3点を徹底するだけで、変わることがあります。それでも眠れないなら、薬の力を借りることも含めてご相談ください。

休みの日は、生活を昼型に戻すべきですか?

難しいところです。完全に昼型へ戻すと、次の夜勤で一からやり直しになり、かえって消耗します。かといって夜型のままだと、家族や社会生活と噛み合わない。勤務パターンと生活の優先順位によって最適解が変わるので、一律の正解はありません。勤務表を持って相談していただくのが確実です。

交代勤務を続けるのが限界かもしれません。

そう感じているなら、それは重要なサインです。ただ、「辞めたい」しか考えられない状態のときは、思考が悲観に傾いている可能性もあります。大きな決断の前に、まず体の状態を評価させてください。勤務調整で解決できることもありますし、休養が必要な状態かもしれません。判断は、回復してからでも遅くありません。


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監修:田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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