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2026/07/07

音や光がつらい「感覚過敏」とは?原因とHSP・発達障害との関係を横浜・関内の精神科医が解説

音や光がつらい「感覚過敏」とは?原因とHSP・発達障害との関係を横浜・関内の精神科医が解説

職場で電話が鳴るたび、体がびくっとする。近くの人の話し声やキーボードの音が重なり、仕事に集中できない。駅や商業施設へ行くだけで、頭の中がいっぱいになってしまう。

蛍光灯の光がまぶしく、目の奥が痛くなる。香水や柔軟剤のにおいで気分が悪くなる。服のタグや生地のこすれる感触が気になり、着ているだけで落ち着かない。

まわりの人は平気そうにしているのに、自分だけがつらい。「神経質すぎるのでは」「我慢が足りないのでは」と思いながら、毎日、刺激に耐えている方もいるのではないでしょうか。

こうした感覚のつらさは、単なる好き嫌いとは限りません。音、光、におい、味、肌ざわりなどを人より強く受け取り、それによって苦痛や疲労が生じる状態は、一般に感覚過敏と呼ばれます。

感覚過敏そのものは、一つの病名ではありません。生まれ持った感受性、発達特性、片頭痛、強いストレス、不安、睡眠不足など、さまざまな背景で起こります。

そのため、「自分はHSPだから」と決めつけるだけでも、「発達障害に違いない」と考えるだけでも、十分ではありません。いつから始まったのか、どの刺激がつらいのか、ほかにどのような症状があるのかを整理することが大切です。

このページでは、感覚過敏の種類、HSPや発達障害との関係、心身の不調によって敏感さが強まる仕組み、日常生活でできる工夫、医療機関へ相談する目安まで、横浜・関内のみなとメンタルクリニックが解説します。

このページは、「繊細さ・生きづらさ(HSP)」全5回シリーズの第5回です。HSPという言葉の意味から確認したい方は、第1回のHSP(繊細さん)とは?疲れやすさの原因と「治療できるつらさ」との見分け方からお読みください。

「読むより先に、現在のつらさを相談したい」という方へ。当院は関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分です。祝日を除き土曜日・日曜日も診療し、空きがある場合は当日のご予約にも対応しています。WEB予約はこちらからご確認ください。


感覚過敏とは

私たちのまわりには、常にさまざまな刺激があります。

エアコンの音、隣の人の話し声、窓から入る光、洋服が肌に触れる感覚、食べ物のにおい。脳は、入ってきた情報のなかから必要なものを選び、重要ではない刺激をある程度、背景へ追いやっています。

感覚過敏があると、ほかの人なら背景として流せる刺激まで、強く意識へ入ってきます。

音が単に「気になる」のではなく、耳や頭へ刺さるように感じる。照明が少しまぶしいのではなく、目を開けていること自体が苦痛になる。服のタグを忘れられず、ほかのことへ集中できない。

本人にとっては、確かに起きている感覚です。「気にしないようにしよう」と考えただけで消えるものではありません。

また、感覚過敏は、それだけで診断が決まるものでもありません。どの感覚がつらいか、いつから続いているか、生活へどの程度影響しているかによって、考えられる背景や相談先が変わります。

感覚過敏は、どのように表れるのか

感覚過敏は音や光だけではありません。五感に加え、体の動きや位置、暑さや寒さ、空腹など、体の内側の感覚に敏感な方もいます。

聴覚の過敏さ

  • 電話の呼び出し音や食器のぶつかる音に、強く驚く
  • 人の話し声が重なる場所では、会話の内容を聞き取れない
  • 電車のブレーキ音や工事の音が、痛いほどつらい
  • 咀嚼音、鼻をすする音、キーボード音など、特定の音に強く反応する
  • 時計や電化製品の小さな音が気になり、眠れない
  • 子どもの泣き声や高い声を聞くと、頭が混乱する

音へのつらさには、さまざまな形があります。

多くの音が必要以上に大きく、あるいは痛く感じられる状態もあれば、咀嚼音やペンを鳴らす音など、特定の音に強い不快感や怒りが生じる場合もあります。

片側の耳だけに症状がある、急に聞こえにくくなった、耳鳴りや耳の痛みを伴う場合は、精神的な問題と決めつけず、耳鼻咽喉科へ相談してください。

視覚の過敏さ

  • 蛍光灯やLED照明がまぶしい
  • 日ざしが強いと、目を開けていられない
  • パソコンやスマートフォンの画面ですぐ疲れる
  • 人や物が多い場所では、目から入る情報に圧倒される
  • 点滅する光や映像で気分が悪くなる
  • 柄の多い床や棚を見ると、目が落ち着かない

光への過敏さは、片頭痛に伴うことがあります。ズキズキする頭痛、吐き気、音やにおいへの敏感さを繰り返す場合は、神経内科や脳神経外科、頭痛外来などへの相談も考えてください。

目の痛み、急な視力低下、片目だけの強い症状がある場合は、眼科での確認が必要です。

嗅覚の過敏さ

  • 香水や柔軟剤のにおいで気分が悪くなる
  • 飲食店や電車内のにおいに耐えられない
  • タバコや整髪料のにおいが、いつまでも鼻に残る
  • 食べ物のにおいだけで、吐き気がする
  • ほかの人が気づかないにおいを、すぐに感じ取る

嗅覚が敏感な方は、においから逃げにくい場所で強く消耗します。職場や公共交通機関では、自分だけでは刺激を調整できないことも多く、外出そのものが負担になる場合があります。

触覚の過敏さ

  • 服のタグ、縫い目、生地の感触が気になる
  • 首元やウエストの締めつけに耐えられない
  • 人に突然触れられると、強く驚く
  • 髪を切る、歯を磨く、爪を切ることが苦痛になる
  • マスクやアクセサリーを長時間つけられない
  • 汗や水滴が肌につくと、ほかのことを考えられない

本人にとっては、単なる違和感ではなく、痛みや強い不快感に近いことがあります。衣服や身だしなみに関する困りごとを、「わがまま」「だらしない」と評価しないことが大切です。

味覚や食感の過敏さ

  • 特定の味やにおいを強く感じる
  • 食材が混ざった料理を食べられない
  • やわらかい、ぬるぬるした食感が苦手
  • 温度が少し違うだけで食べられない
  • 決まった食品しか安心して食べられない

食べられるものが限られていても、栄養や健康に大きな問題がなければ、無理にすべてを克服する必要はありません。

ただし、体重が減っている、栄養が偏っている、食事への恐怖が強いといった場合は、内科、小児科、精神科などで相談してください。

暑さ、寒さ、空腹などへの敏感さ

温度の変化、空腹、痛み、疲労、心拍など、体の内側の変化を強く感じる方もいます。

少し暑いだけで頭が働かなくなる。空腹になると強くイライラする。心拍が上がったことにすぐ気づき、不安になる。

反対に、疲れや空腹、痛みに気づきにくく、限界を越えてから体調を崩す方もいます。感覚には「敏感すぎる」だけでなく、「気づきにくい」という偏りもあります。

「気にしすぎ」でも「わがまま」でもありません

感覚過敏のある方は、まわりから理解されにくいことがあります。

「そのくらいの音、みんな我慢している」

「照明がまぶしいなんて、考えすぎでは」

「好き嫌いを言わずに食べなさい」

そう言われ続けると、自分でも「我慢できない自分が悪い」と考えるようになります。

けれど、同じ刺激でも、受け取り方は人によって違います。

たとえば、同じ音量でも、ほとんど意識しない人がいる一方、注意を向けずにはいられない人もいます。問題は、我慢する力の強さだけではありません。

無理に耐え続けると、集中するための力が刺激への対応に使われ、仕事や会話へ回す余裕がなくなります。帰宅後に動けなくなったり、頭痛や吐き気が出たり、人との接触を避けるようになったりすることもあります。

まず必要なのは、「この刺激が苦手なのは事実だ」と認めることです。苦手なものを認めることと、生活のすべてを諦めることは違います。困り方が分かれば、刺激を減らす工夫を考えられます。

HSPと感覚過敏は同じものですか?

HSPは、刺激を受け取りやすく、物事を深く処理する感受性の傾向を表した心理学上の考え方です。医学的な病名や診断名ではありません。

HSPという言葉で説明される方のなかには、音、光、におい、人混みなどに疲れやすい方がいます。

ただし、感覚過敏があるからHSP、HSPだから感覚過敏になる、と単純に決められるものではありません。

感覚の敏感さは、発達特性、片頭痛、耳や目の病気、睡眠不足、不安、疲労などでも起こります。また、HSPという言葉に当てはまると感じても、実際に困っていることが感覚面だけとは限りません。

HSPについて全体から確認したい方は、第1回のHSP(繊細さん)とは?をご覧ください。

発達障害と感覚過敏の関係

感覚過敏は、発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)の方に見られることがあります。

音、光、におい、肌ざわりなどを強く感じるだけでなく、複数の刺激を同時に整理することが難しく、騒がしい場所で会話の内容を聞き分けられないこともあります。

ただし、感覚過敏があるだけで、発達障害と診断されるわけではありません。

発達障害について考えるときは、感覚の特徴だけでなく、子どものころからの経過を確認します。

  • 幼いころから、特定の音や衣服を強く嫌がっていた
  • 急な予定変更に強い負担を感じる
  • 曖昧な指示を理解しにくい
  • 人との会話や距離感で、同じつまずきを繰り返す
  • 興味のあることへ強く集中する
  • 決まった手順や習慣が変わると、混乱しやすい
  • 学校や職場で、集団の刺激に強く疲れる

こうした特性が幼少期から続き、学校、仕事、人間関係などに影響している場合は、発達特性を含めて整理することがあります。

詳しくは、大人の発達障害とは?ADHD・ASDの特徴・診断・治療をご覧ください。

感覚過敏だけで、発達障害と決めつけないでください

インターネットで感覚過敏について調べると、発達障害やASDという言葉が多く出てきます。そのため、「音が苦手だから、自分は発達障害なのでは」と心配になる方もいます。

感覚過敏は、発達特性のない方にもあります。片頭痛、耳や目の不調、強い疲労、不安、睡眠不足などでも敏感さは強まります。

また、発達障害は大人になって突然始まるものではありません。子どものころから続く特性と、現在の困りごとを合わせて判断します。

セルフチェックで当てはまる項目が多いことや、感覚過敏があることだけで、診断を決めることはできません。

診断名を急ぐより、「何に困っているか」「どのような環境なら過ごしやすいか」を先に整理したほうが、実際の生活には役立ちます。

片頭痛でも、光や音がつらくなります

光や音、においへの敏感さは、片頭痛の発作に伴うことがあります。

次のような症状がまとまって起こる場合は、片頭痛の可能性を考えます。

  • ズキズキ、脈打つような頭痛がある
  • 体を動かすと頭痛が悪化する
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 頭痛中は、暗く静かな部屋にいたくなる
  • 光、音、においがいつも以上につらい
  • 頭痛の前に、視界へ光やギザギザした線が現れる
  • 月経、天候、睡眠不足などをきっかけに繰り返す

「感覚過敏だと思っていたけれど、実は頭痛の発作と連動していた」ということもあります。

頭痛のある日と感覚のつらさを記録すると、関連が見えやすくなります。頭痛を繰り返す方は、脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来などへ相談してください。

頭痛や肩こりとストレスとの関係は、頭痛・肩こりがとれないのはストレスのせい?でも解説しています。

ストレスや疲労で、急に敏感になることがあります

もともとは気にならなかった音や光が、忙しい時期になると急につらくなることがあります。

強いストレスが続いていると、体はまわりの変化を警戒しやすい状態になります。睡眠が足りず、疲れがたまると、刺激を受け流す余裕も減ります。

普段なら背景へ追いやれる話し声が、すべて耳へ入ってくる。少しの照明でも、ひどくまぶしく感じる。家族の生活音にまで、強くいら立つ。

これは、性格が急に悪くなったわけでも、わがままになったわけでもありません。心と体の余裕が減り、刺激へ反応しやすくなっている可能性があります。

特に、次の変化が同時に起きている場合は、疲労やこころの不調が重なっていないか確認してください。

  • 以前は平気だった刺激が、最近になってつらくなった
  • 眠れない、夜中に何度も目が覚める
  • 朝から体が重く、休んでも疲れが取れない
  • 不安や緊張が強くなった
  • 気分の落ち込みが続いている
  • 人と会ったり、外出したりすることを避けている
  • 動悸、めまい、胃の不調、頭痛などが増えた

体の不調がいくつも重なっている方は、自律神経失調症とは?症状・原因・受診の目安も参考にしてください。

不安が強いと、刺激へ注意が集まりやすくなります

不安が強くなると、人は危険がないかを細かく確認するようになります。

周囲の音、光、人の動き、体の変化へ注意が集まり、一度気になった刺激から意識を離しにくくなります。

「また大きな音が鳴るのではないか」

「この場所にいたら、具合が悪くなるかもしれない」

そう考えながら刺激を待っていると、実際の音や光をさらに強く感じることがあります。

これは、感覚のつらさが気のせいだという意味ではありません。もともとの刺激に、不安による警戒が重なり、苦痛が大きくなっている状態です。

外出や電車、人混みへの不安が強い方は、不安とは?不安症の種類と治療もあわせてお読みください。

感覚過敏の原因を考えるときの三つの手がかり

1.いつから続いているか

子どものころから一貫して特定の音や感触が苦手であれば、生まれ持った感受性や発達特性が関係している可能性があります。

一方、以前は平気だったのに、最近になって急に敏感になった場合は、疲労、睡眠不足、不安、うつ、片頭痛、耳や目の不調などを考えます。

2.どの刺激が、どのようにつらいか

すべての音が大きく感じるのか。特定の音だけに強く反応するのか。光と一緒に頭痛が起こるのか。衣服だけが苦手なのか。

「感覚過敏」という一言だけでは、困り方が分かりません。具体的な刺激と、そのとき起きる症状を整理します。

3.ほかの症状があるか

頭痛、吐き気、耳鳴り、聴力低下、視力の変化、不眠、気分の落ち込み、強い不安などがないかを確認します。

感覚の敏感さ以外の症状がある場合は、その症状を扱う診療科での確認が必要になることがあります。

セルフチェック――どのような場面で困っていますか

次の項目は、診断を確定するためのものではありません。現在の困り方を整理するために使ってください。

  • 人混みや騒がしい場所にいると、すぐに疲れ切ってしまう
  • 電話、食器、工事などの音に強く驚く
  • 複数の人が話していると、必要な声を聞き分けられない
  • 蛍光灯やパソコン画面がまぶしい
  • 光や音のつらさと一緒に、頭痛や吐き気が起こる
  • 香水、柔軟剤、食べ物のにおいで気分が悪くなる
  • 服のタグ、縫い目、締めつけが苦痛になる
  • 特定の味や食感を受けつけない
  • 刺激の多い場所から帰ると、何もできなくなる
  • 疲れている日ほど、音や光がつらくなる
  • 刺激を避けるため、外出や人づきあいが減っている
  • 感覚のつらさによって、仕事や学校に支障が出ている
  • 以前は平気だった刺激が、最近になってつらくなった
  • 子どものころから、同じ刺激への苦手さが続いている

当てはまる数だけで、原因や診断が決まるわけではありません。

記録するときは、「どの刺激か」「どの場所か」「何分ほどでつらくなるか」「睡眠や疲労の状態」「頭痛などの症状」を書いておくと、対策や受診先を考えやすくなります。

感覚過敏への対処は、「我慢」より「調整」です

感覚過敏への基本的な対処は、刺激に慣れるまで無理に耐えることではありません。

刺激の種類を知り、避けられるものを減らし、避けられない場面では負担を小さくします。

「全部の刺激をなくす」ことは難しくても、いくつかの工夫を重ねることで、一日に受ける負担を減らせることがあります。

音がつらいときの工夫

  • 騒がしい場所では、耳栓やイヤーマフを使う
  • 移動や休憩の時間を、混雑の少ない時間帯へずらす
  • 職場では、電話、出入口、コピー機から離れた席を相談する
  • 集中する作業は、静かな場所や会議室で行う
  • 家電の通知音や音量を下げる
  • 休憩時間は、できるだけ静かな場所で過ごす

耳を守る道具は、必要な場面で使って構いません。ただし、道路の横断、自転車や車の運転など、周囲の音を聞く必要がある場面では安全を優先してください。

また、一般的なノイズキャンセリングイヤホンは、不快な環境音を減らす助けにはなりますが、大きな工事音や機械音から聴力を守る専用の保護具とは異なります。危険な騒音環境では、職場の安全基準に合った耳栓やイヤーマフを使用してください。

光がつらいときの工夫

  • 画面の明るさや色温度を調整する
  • 白い背景がつらい場合は、表示設定を変える
  • 蛍光灯の直下を避ける
  • 窓からの光が強い場合は、ブラインドや席の向きを調整する
  • 屋外では帽子やサングラスを使う
  • 長時間の画面作業では、短い休憩を入れる
  • 片頭痛がある場合は、光と頭痛の記録をつける

常に部屋を真っ暗にしなければ過ごせない、急に光がつらくなった、目の痛みや見え方の変化を伴う場合は、眼科や神経内科などへ相談してください。

においがつらいときの工夫

  • 無香料の洗剤や日用品を選ぶ
  • 飲食店では、厨房や喫煙場所から離れた席を選ぶ
  • 職場では、換気しやすい席について相談する
  • においが強い時間帯や場所を記録する
  • 外出先から戻ったら、着替えや洗顔をする
  • 短時間で外へ出られる経路を確認しておく

香りに関する感じ方は、人によって大きく異なります。相手を責める形ではなく、「強い香りで体調が悪くなることがあるため、可能な範囲で配慮してほしい」と、症状と必要な対応を具体的に伝えると話し合いやすくなります。

肌ざわりがつらいときの工夫

  • タグを切る、縫い目の少ない服を選ぶ
  • 素材や形が合う服を、色違いで用意する
  • 締めつけの強い服や下着を避ける
  • マスクや靴下などは、複数の素材を試す
  • 突然触れられるのが苦手なことを、身近な人へ伝える
  • 制服や指定服が苦痛な場合は、学校や職場へ相談する

「みんなが着ているから」という理由だけで、苦痛の強い衣服を我慢し続ける必要はありません。外見上ほとんど変わらない代替品や、素材の変更で負担を減らせる場合があります。

刺激を受けたあとの回復時間を確保する

刺激の多い場所に行った日は、本人が思っている以上に疲れていることがあります。

人と会ったあとに予定を詰め込まない。帰宅後すぐに連絡へ返信しない。照明を落とした静かな場所で過ごす。入浴や着替えで、肌やにおいの刺激を切り替える。

休息を「余裕があったら取るもの」にすると、ほかの用事で埋まってしまいます。刺激の多い予定のあとには、回復する時間も予定として入れてください。

人との予定や周囲への気遣いで休めない方は、気を使いすぎて疲れる・断れないのは性格?も参考になります。

職場で相談できる配慮

感覚過敏によって仕事に支障が出ている場合、本人の工夫だけで解決しようとせず、環境の調整を相談する方法があります。

  • 出入口、電話、プリンターから離れた席へ移動する
  • 照明の直下を避ける
  • 集中作業の時間だけ、静かな場所を使う
  • イヤーマフや耳栓の使用を認めてもらう
  • 昼休みに静かな場所で休む
  • 口頭だけでなく、文字でも指示をもらう
  • 在宅勤務や時差出勤を相談する
  • 刺激の強い業務を、可能な範囲で分担する

相談するときは、「感覚過敏があります」だけでなく、何が起こり、どのような調整があると仕事を続けやすいかを具体的に伝えます。

たとえば、次のような伝え方があります。

「電話の音が重なると、話の内容を聞き分けにくくなります。集中作業の時間だけ、電話から離れた席を使えないでしょうか」

「蛍光灯の直下では頭痛が起こりやすいため、席の位置を相談したいです」

「休憩を静かな場所で取ると、その後の仕事を続けやすくなります」

体調不良や発達特性が関係している場合は、主治医や産業医を通して、職場への配慮を相談する方法もあります。

避けすぎて、生活が狭くなっていないかも確認する

つらい刺激を避けることは必要です。ただし、不安が強くなり、実際の刺激以上に多くの場所を避けるようになることもあります。

電車が怖くなり、外出しなくなった。音が鳴るかもしれないため、人と会わなくなった。体調を崩すことが心配で、新しい場所へまったく行けなくなった。

このような場合、感覚の敏感さに加えて、予測する不安が生活を狭くしている可能性があります。

無理に苦手な場所へ行く必要はありませんが、「実際に刺激が強い場所」と「起きるかもしれないことが不安な場所」を分けて考えることが役立ちます。

不安や恐怖によって外出範囲が狭くなっている場合は、精神科や心療内科へ相談してください。

感覚過敏について、何科へ相談すればよいですか

相談先は、中心となっている症状によって変わります。

耳鼻咽喉科

急な聴力低下、片側だけの症状、耳鳴り、耳の痛み、めまいを伴う場合は、耳鼻咽喉科へ相談します。

眼科

目の痛み、視力の変化、片目だけの症状、目の充血などがある場合は、眼科で確認します。

脳神経内科・脳神経外科・頭痛外来

光や音への過敏さと一緒に、繰り返す頭痛、吐き気、視界の変化などがある場合は、片頭痛を含めて相談します。

精神科・心療内科

強いストレス、不眠、不安、気分の落ち込みと一緒に感覚の敏感さが強くなった場合や、発達特性を含めて生きづらさを整理したい場合は、精神科・心療内科が相談先の一つになります。

最初から一つの診療科で原因が決まるとは限りません。体の病気を確認しながら、必要に応じて複数の診療科で整理することもあります。

こんな症状がある場合は、早めに受診してください

感覚過敏の多くは、緊急性の高い状態ではありません。ただし、急な変化やほかの症状を伴う場合は、自己判断で様子を見続けないでください。

  • 突然、片方の耳が聞こえにくくなった
  • 耳鳴りや激しいめまいを伴う
  • 急に視力が低下した、視野が欠けた
  • 目の強い痛みや充血がある
  • 突然、経験したことのない激しい頭痛が起きた
  • 手足のしびれや脱力、ろれつの回りにくさを伴う
  • 物が二重に見える、意識がもうろうとする
  • 頭を打ったあとから、光や音がつらくなった
  • 食べられるものが極端に減り、体重が落ちている
  • 不眠や気分の落ち込みが強く、生活できない
  • 消えてしまいたい、自分を傷つけたいと感じる

突然の激しい頭痛、麻痺、言葉の出にくさ、意識の変化などがある場合は、救急医療への相談が必要です。生命に関わるおそれがあるときは、119番への連絡をためらわないでください。

精神科・心療内科では何をするのか

精神科・心療内科では、「感覚過敏を我慢できるようにする」ことだけを目指すわけではありません。

まず、いつから続いているか、どの刺激がつらいか、どのような環境で強くなるかを確認します。

子どものころからの特徴、学校や仕事での困りごと、睡眠、不安、気分、頭痛、体調の変化なども含めて整理します。

生まれ持った感受性や発達特性が中心であれば、刺激を減らす環境づくりや、職場・家庭での伝え方を考えます。

不安、うつ、不眠、強いストレスなどが重なっている場合は、その不調を治療することで、刺激への反応が和らぐことがあります。

必要に応じて、耳鼻咽喉科、眼科、脳神経内科、内科などへの受診をおすすめすることもあります。

目標は、感じ方を無理に変えることではありません。刺激によって生活が崩れないようにし、自分の特性に合った環境をつくることです。

診察へ持っていくと役立つメモ

診察では、感覚のつらさを言葉で説明しにくいことがあります。

次の内容をメモしておくと、状態を整理しやすくなります。

  • 苦手な刺激の種類
  • 特につらい場所や時間帯
  • 子どものころから続いているか
  • 最近になって悪化したか
  • 刺激を受けたときの症状
  • 頭痛、吐き気、耳鳴りなどの有無
  • 睡眠や疲労との関係
  • 仕事、学校、家事への影響
  • 現在行っている対策
  • 服用している薬

「音がつらい」「職場へ行くと疲れ切る」という短いメモだけでも、相談の入口になります。

みなとメンタルクリニックでのご相談

みなとメンタルクリニックでは、音や光などへの敏感さによって生活に支障が出ている方、感覚過敏と発達特性との関係を整理したい方、最近になって刺激への反応が強くなった方のご相談を受けています。

「HSPなのか、発達障害なのか分からない」「昔から音が苦手だが、最近さらにひどくなった」「職場の刺激に耐えられず、帰宅すると動けない」といった段階でも構いません。

診察では、感覚の敏感さだけでなく、子どものころからの経過、仕事や家庭の環境、睡眠、不安、気分、体調を含めて整理します。

体の病気を先に確認したほうがよい場合には、症状に応じた診療科をご案内します。発達特性や心身の不調が関係している場合は、環境の調整や治療について一緒に考えます。

当院は関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区、みなとみらいエリアからも通院しやすい場所にあります。祝日を除き土曜日・日曜日も診療しています。

受診を希望される方は、WEB予約から空き状況をご確認ください。初めて受診される方は初診の方へ、受診前に確認したいことがある方はよくある質問もご覧ください。

よくある質問

感覚過敏は病気ですか?

感覚過敏そのものは、一つの病名ではありません。感受性の個人差、発達特性、片頭痛、耳や目の病気、強いストレス、不安、睡眠不足など、さまざまな背景で起こります。

音や光がつらいのは、HSPだからですか?

HSPと呼ばれる感受性の高さが関係することはありますが、それだけでは決められません。片頭痛、発達特性、疲労、不安、耳や目の不調などでも、音や光がつらくなることがあります。

感覚過敏があれば、発達障害ですか?

感覚過敏だけで発達障害とは診断できません。発達障害については、子どものころから続く特徴、コミュニケーション、こだわり、予定変更への反応、生活上の困りごとなどを総合して判断します。

大人になってから、発達障害による感覚過敏が始まることはありますか?

発達特性そのものは、子どものころから存在します。ただし、仕事や生活環境が変わり、刺激が増えたことで、大人になってから困りごとが目立つことはあります。急に敏感になった場合は、疲労、睡眠不足、片頭痛、心身の不調なども確認します。

耳栓を使ってもよいですか?

騒がしい場所で負担を減らすために使って構いません。ただし、交通や機械音など、周囲の安全を確認する必要がある場面では注意してください。危険な騒音環境では、用途に合った保護具を使用してください。

光がつらく、頭痛もあります。精神科へ行けばよいですか?

頭痛、吐き気、視界の変化などを伴う場合は、片頭痛などを確認するため、脳神経内科、脳神経外科、頭痛外来などへの相談を考えてください。目の痛みや視力の変化がある場合は、眼科が適しています。

ストレスで感覚過敏が悪化することはありますか?

あります。疲労や睡眠不足、不安が強いときは、刺激を受け流す余裕が減り、普段なら気にならない音や光までつらく感じることがあります。

感覚過敏は治りますか?

背景によって異なります。生まれ持った感受性や発達特性が関係している場合は、敏感さをなくすより、環境を整え、負担を減らすことが中心になります。疲労、不眠、不安、片頭痛などが背景にある場合は、その状態を治療することで過敏さが和らぐことがあります。

職場へ、どのように伝えればよいですか?

診断名だけを伝えるより、「どの刺激で、仕事へどのような影響が出るか」「どのような調整があれば働きやすいか」を具体的に伝えると、相談しやすくなります。必要に応じて、主治医や産業医へ相談してください。

診察では、必ず発達障害の検査を受けますか?

必ず検査を行うわけではありません。現在の困りごとや幼少期からの経過をうかがい、必要性を検討します。感覚過敏があっても、発達障害以外の背景を先に確認したほうがよい場合があります。

横浜・関内で、音や光などの感覚過敏に悩んでいる方へ

感覚のつらさは、外から見えません。

音で頭がいっぱいになっていても、光で目の奥が痛くても、服の感触に耐えていても、まわりからは「普通に過ごしている」ように見えることがあります。

そのため、本人も限界まで我慢してしまいます。

けれど、ほかの人が平気だからといって、あなたも平気でなければならないわけではありません。

苦手な刺激から離れること。道具を使うこと。休むこと。環境の調整を頼むこと。どれも、逃げや甘えではありません。

大切なのは、敏感さを無理に消すことではなく、何に困っているかを知り、生活が崩れない方法を見つけることです。

また、以前より急に敏感になった、頭痛や不眠、気分の落ち込みが重なっているという場合は、治療できる不調が隠れている可能性があります。

「自分が神経質なだけ」と決めつける前に、一度、現在の状態を整理してみてください。

みなとメンタルクリニックでは、感覚の敏感さを否定せず、生まれ持った特性によるものなのか、その上に治療できる不調が重なっているのかを一緒に見ていきます。

ご相談を希望される方は、WEB予約はこちらからご確認ください。


HSPシリーズを最初から読む

このページは、「繊細さ・生きづらさ(HSP)」シリーズの最終回です。

HSPの基本的な意味、繊細な気質と治療できる不調との違いを確認したい方は、第1回からお読みください。

▶ シリーズ最初のページ:HSP(繊細さん)とは?疲れやすさの原因と「治療できるつらさ」との見分け方を横浜・関内の精神科医が解説

繊細さ・生きづらさ(HSP)シリーズ(全5回)


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参考文献・情報源


この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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