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2026/07/28

S-RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬)とは|ほかの抗うつ薬との違いを横浜・関内の精神科医が解説

「トリンテリックスはS-RIMという新しいタイプだと言われた」「SSRIと何が違うのだろう」「新しいほど良い薬なのだろうか」——S-RIMという聞き慣れない分類について、このような疑問を感じていませんか。まずは、この記事の要点です。

  • S-RIMは「セロトニンを増やす」だけでなく「届け先を選ぶ」という発想の抗うつ薬
  • 再取り込みを妨げる作用に、複数の受容体を個別に調節する作用を重ねている
  • 国内で該当するのはボルチオキセチン(トリンテリックス)1剤のみ
  • うつに残りやすい「頭の働きにくさ」という評価軸に目を向けた設計
  • 新しい=すべての人に優れている、ではありません。合うかどうかは人による

S-RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬)は、日本でもっとも新しい世代の抗うつ薬のグループです。これまでの抗うつ薬が「神経伝達物質の量」を動かすことに主眼を置いてきたのに対し、S-RIMはそこに「どの受け皿に届けるか」という設計を加えました。このページでは、S-RIMとはどういう考え方の薬なのか、ほかの系統と何が違うのか、どんな場面で検討されるのかを、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。

お薬そのもの(飲み方・副作用・やめ方)については、「トリンテリックス(ボルチオキセチン)とは」でくわしく扱っています。抗うつ薬全体のなかでの位置づけは「抗うつ薬(抗うつ剤)とは」をご覧ください。

なお、ここでご紹介するのはお薬を理解していただくための一般的な情報です。実際にどのお薬を使うか、どのくらいの量にするかは、お一人おひとりの症状や体質、これまでの経過をふまえて医師が判断します。自己判断での服用・中止は避けてください。


お薬のことで迷っている方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療し、平日は夜間まで診療しています。当日予約にも対応しています。他院で処方されている方は、お薬手帳をお持ちください。
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S-RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬)とは

S-RIMとは、Serotonin Reuptake Inhibitor and Serotonin Modulator の略で、日本語では「セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬」と訳されます。名前が長いのですが、要するに2つの仕事を同時にする薬だ、ということです。

  • セロトニン再取り込み阻害:セロトニンが回収されるのを妨げ、はたらく時間を長くする(SSRIと同じ)
  • セロトニン受容体調節:セロトニンが結びつく複数の受け皿を、それぞれ個別に刺激したり、ふさいだりする(S-RIM独自)

国内でこの分類に入るのは、ボルチオキセチン(商品名:トリンテリックス)1剤のみです。2019年に発売されました。

抗うつ薬の発展のなかでの位置づけ

S-RIMの意味は、これまでの抗うつ薬がたどってきた道を並べると、はっきりします。

  • 三環系・四環系(第1世代):セロトニンもノルアドレナリンも増やすが、関係のない場所にも広く作用してしまう。効果は高いが、口の渇き・便秘・眠気・立ちくらみなどが出やすい。
  • SSRI:セロトニンだけに的をしぼった。余計な副作用が減り、使いやすくなった。
  • SNRI:セロトニンにノルアドレナリンという柱を1本足した。意欲の低下や痛みに届く範囲が広がった。
  • NaSSA:回収を妨げるのではなく、放出そのものを増やすという別の道をとった。
  • S-RIM:増やしたセロトニンの行き先を選ぶところまで設計した。

ここまでの流れを一言でいえば、「量を動かす」から「配り方を決める」へということになります。

なぜ「行き先を選ぶ」必要があるのか

セロトニンの受け皿には、いくつもの種類があり、担当が分かれています。気分の改善に関わるもの、不安に関わるもの、吐き気に関わるもの、睡眠や性機能に関わるもの、認知機能に関わるもの——それぞれ別です。

SSRIは、セロトニンの量を全体的に増やします。すると、気分に効く受け皿に届くと同時に、届いてほしくない受け皿にも届いてしまいます。SSRIで吐き気や性機能への影響が出やすいのは、この「無差別に配られる」性質によるものです。

S-RIMは、あらかじめ一部の受け皿をふさぎ、別の受け皿は刺激する、という形で配り方を制御します。届けたいところに集中させ、届けたくないところは閉じておく。この考え方は「マルチモーダル(多面的)」と呼ばれます。

さらに、こうした受け皿の調節を通じて、セロトニン以外の神経伝達物質——ノルアドレナリン、ドパミン、アセチルコリン、ヒスタミンなど——のはたらきにも間接的に影響します。1剤で、脳のいくつものしくみに同時にはたらきかけるのが、この系統の特徴です。

「頭の働きにくさ」という新しい評価軸

S-RIMが注目されたもうひとつの理由が、うつの認知機能——集中力、考えのまとまり、記憶といった面に目を向けたことです。

従来、抗うつ薬の効果は「気分がどれだけ改善したか」で測られてきました。しかし実際の診療では、気分が回復したあとも「頭がうまく働かない」「会議の内容が入ってこない」「本が読めない」という状態が残り、それが仕事や家事への復帰をさまたげる、という場面によく出会います。

気分の指標だけを見ていると、この部分は見落とされます。S-RIMは、そこを治療の目標として掲げた設計になっており、「治った」の定義を一段広げたという意味で、考え方の転換でもありました。復職を控えている方にとっては、この視点は実際的な意味を持ちます(「休職・復職について」もご覧ください)。

ほかの系統との違いを、ひとことで

  • SSRIとの違い:再取り込みを妨げる点は同じ。S-RIMはそこに受け皿の調節が加わり、吐き気以外の副作用(性機能への影響など)が比較的少ないとされます。
  • SNRIとの違い:SNRIはノルアドレナリンに直接作用します。S-RIMは受け皿の調節を通じて間接的に影響します。痛みへの適応はS-RIMにはありません。
  • NaSSAとの違い:NaSSAは強い眠気と食欲増加という個性を持ちます。S-RIMにはその作用がなく、眠気を利用したい場面には向きません。

並べて分かるとおり、「新しいから優れている」という単純な話ではありません。眠れないうつにはNaSSAの眠気が利点になりますし、痛みをともなううつにはSNRIが届きます。S-RIMが向くのは、また別の場面です。

どんなときに検討されるのか

S-RIM(ボルチオキセチン)は、次のような場面で選択肢になることがあります。

  • 気分は上向いてきたが、集中力や思考のまとまりが戻らない
  • ほかの抗うつ薬で、性機能への影響や体重増加がつらかった
  • 復職や復学を控えていて、頭の働きを立て直したい
  • これまでのお薬で効果が不十分だった

一方で、比較的新しいお薬のため、長期の使用経験の蓄積という点では、SSRIなどに一日の長があります。妊娠・授乳を考えている方では、その点も含めて慎重に検討します。「新しい」ことには、良い面と、まだ分かっていない面の両方があります。当院では、そこを正直にお伝えしたうえで選んでいきます。

共通して知っておきたいこと

S-RIMも抗うつ薬である以上、ほかの系統と共通する注意点があります。

  • 効果を実感するまでに2〜4週間かかります。副作用のほうが先に出やすいのも共通です。
  • 飲み始めの吐き気が主な副作用です。多くは体が慣れて軽くなります。
  • 飲み始めや量を変えた時期は、不安・焦り・不眠が強まることがあります(賦活症候群)。とくに若い方では注意が必要です。
  • 24歳以下の方では、抗うつ薬に共通した注意喚起があります。飲み始めの時期はご家族にも見守っていただけると安心です。
  • 自己判断で急にやめない。S-RIMは体からゆっくり抜けるため中断症状は出にくい部類ですが、「出にくい」は「出ない」ではありません。

お薬そのものの詳細——飲み方、副作用への対処、飲み合わせ、やめ方は、「トリンテリックス(ボルチオキセチン)とは」にまとめています。実際に処方されている方は、そちらをご覧ください。


いま飲んでいるお薬が合っているか、確かめたい方へ
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これからの抗うつ薬

抗うつ薬の歴史は、「セロトニンやノルアドレナリンをどう動かすか」を軸に進んできました。S-RIMは、その軸のうえでの到達点のひとつです。

一方で近年は、その軸そのものから離れた薬も登場しています。たとえば2025年に承認されたザズベイ(ズラノロン)は、セロトニンではなく、脳のブレーキ役であるGABAに作用し、期間を区切って使うという、まったく異なる発想のお薬です(「ザズベイ(ズラノロン)とは」)。

選択肢が増えることは、合う薬に出会える可能性が増えるということです。「これまでの薬が合わなかった」という方にこそ、いま一度ご相談いただく意味があります。

よくあるご質問(FAQ)

S-RIMは、SSRIより優れているのですか?

一律に優劣はつけられません。副作用の出方に違いがあり、合う場面が異なります。SSRIで問題なく効いている方が、わざわざ変える必要はありません。

S-RIMの薬は、ほかにもありますか?

国内ではボルチオキセチン(トリンテリックス)1剤のみです。海外でも、この分類に入る薬は限られています。

うつの「頭の働きにくさ」は、薬で良くなりますか?

S-RIMはその面に配慮されたタイプとされていますが、効果の感じ方には個人差があります。また、頭の働きにくさは、睡眠不足や不安、疲労の影響も受けます。薬だけでなく、そちらの立て直しも並行して考えます。

新しい薬なので、副作用が心配です

比較的新しいお薬ではありますが、発売から年数を経て、使用経験は蓄積されています。主な副作用は吐き気で、多くは飲み始めの時期に限られます。心配な点は、診察で具体的にお尋ねください。

当院の特徴|関内駅2分・平日夜間診療・当日予約対応・女性医師在籍

みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分の、通いやすい立地にあります。祝日以外は毎日診療しており、平日は夜19時まで診療しているため、お仕事帰りにも立ち寄っていただきやすい時間帯があります(土曜・日曜も診療)。当日のご予約にも対応していますが、枠の状況によっては、ご希望に添えない場合もございます。できるだけ同じ医師が継続して診療し、お薬についても、ご納得いただきながら進めることを大切にしています。女性医師も在籍し、保険適用の心理検査にも対応しています。うつ病、不安症、不眠症、自律神経失調症、適応障害、発達障害など、こころの不調全般を診療しています。

横浜・関内で抗うつ薬について相談したい方へ

「新しいタイプの薬に変えたほうがいいのか」「いま飲んでいるお薬について相談したい」「頭の働きにくさが残っている」——そうした不安は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。一人ひとりの状態や希望をうかがいながら、無理のない治療を一緒に考えていきます。

横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。祝日以外は毎日診療し、平日は夜間まで、土日も診療しています。当日のご予約にも対応しており(枠の状況によります)、みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町エリアからもお越しいただけます。

「こんなことで受診していいのだろうか」と、ためらう必要はまったくありません。つらさも、お薬への不安も、我慢するものではありません。初めての方も、緊張されて当然です。私たちは、その一歩を、ていねいにお迎えします。
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参考文献・情報源

本記事の内容は、S-RIM(ボルチオキセチン)および抗うつ薬に関する以下の資料を参考にしています。個々の薬剤の薬物動態・効能・副作用については、最新の添付文書・インタビューフォーム(IF)を出典として、薬剤ページに記載しています。


この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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