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2026/06/29
パニック障害と間違えやすい病気とは?心臓病・甲状腺・他の不安障害との見分け方を精神科医が解説
突然の動悸、息苦しさ、めまい、強い不安――これらはパニック発作の代表的な症状ですが、じつは体の病気でも、よく似た症状が起こります。「心臓発作かと思って救急に駆け込んだのに、検査では異常なしと言われた」「内科をいくつも回ったけれど、原因がわからない」――そんな経緯をたどって、ようやく精神科・心療内科にたどり着く方は、本当に多いものです。
だからこそ、パニック障害の診断では、まず体の病気が隠れていないかを確認することが、とても大切になります。このページでは、パニック障害と間違えやすい体の病気・心の病気を取り上げ、それぞれの見分け方を、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。パニック障害全体の解説は、パニック障害とは?症状・原因・治療もあわせてご覧ください。
なぜ「まず体の病気を確認する」ことが大切なのか
パニック発作の症状――動悸、息苦しさ、発汗、ふるえ、めまいなど――は、心臓やホルモンの病気といった、命や健康に関わる体の病気の症状と、見かけのうえでとてもよく似ています。もし体の病気が背景にあるのに「パニック障害」とだけ判断してしまえば、本当に必要な治療が遅れてしまうおそれがあります。
逆に、体の検査をきちんと行って「異常がない」と確認できれば、それ自体が、「この苦しさは、命に関わる体の病気ではない」という大きな安心になります。そのうえで、落ち着いてパニック障害の治療に取り組める。当院でも、必要に応じて体の病気が隠れていないかを確認し、慎重に診断していきます。では、間違えやすい病気を、順に見ていきましょう。
間違えやすい「体の病気」
心臓の病気(不整脈・狭心症など)。動悸や胸の痛みは、不整脈――とくに発作性上室性頻拍など――や狭心症でも起こります。見分けの手がかりのひとつが、症状が出るタイミングです。心臓の病気では運動時や体を動かしたときに症状が出やすいのに対し、パニック発作は安静時や、思いがけないときにも突然起こることが多いとされます。心電図、ホルター心電図(24時間記録)、心エコーなどで確認します。胸痛がくり返す場合は、まず循環器内科での確認が大切です。
甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症・バセドウ病)。甲状腺ホルモンが過剰になる病気では、動悸、汗、ふるえ、体重減少、イライラ、強い不安感などが現れ、パニック障害と非常によく似ます。これらは、血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることで区別できます。パニック障害を疑うとき、あわせて確認しておきたい代表的な病気です。
低血糖。血糖値が急に下がると、発汗、ふるえ、動悸、強い不安感、めまいなどが起こります。とくに糖尿病で、お薬やインスリンによる治療を受けている方では、低血糖の発作がパニック発作と似た症状を起こすことがあります。空腹時や、食事のあとしばらくして症状が出る場合は、血糖の問題も考えます。
褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)。副腎などにできる、まれな腫瘍です。アドレナリンなどのホルモンが過剰に分泌され、発作的な動悸・頭痛・高血圧・大量の発汗などを引き起こします。頻度は高くありませんが、パニック障害と紛らわしい病気のひとつとして知られ、血液や尿の検査などで確認します。
呼吸器の病気(気管支ぜんそく・COPDなど)。息切れや息苦しさは、ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器の病気でも起こります。呼吸機能の検査などで区別します。なお、過換気症候群(過呼吸発作)は、パニック発作にともなって起こることも多く、両者は深く関係していますが、それ自体は体の病気というより、不安と呼吸の問題として扱われます。
このほか、てんかん(意識を失う点がパニック発作と異なります)、貧血(動悸・ふらつき)、更年期やホルモンの変化にともなう症状、月経前のつらさ(月経前症候群)なども、似た症状を起こすことがあります。また、カフェインのとりすぎや、一部のお薬の副作用が、動悸や不安の原因になっていることもあります。
間違えやすい「心の病気」(ほかの不安の病気など)
パニック発作のような症状は、パニック障害以外の心の病気でも起こることがあります。治療の方針が変わることもあるため、見分けが大切です。
社交不安症(社交不安障害)では、人前で話す、人から注目される、人と食事をするといった「社交的な場面」に限って、強い不安や動悸が起こるのが特徴です。パニック障害が「予期しない発作――きっかけなく突然起こる発作」を含むのに対し、社交不安症の不安は、人の目がある特定の場面に結びついています。「人前でなければ発作は起きない」という場合は、社交不安症の可能性を考えます。社交不安障害とは?もご覧ください。
全般不安症(全般性不安障害)では、特定の発作というより、仕事・健康・家族のことなど、さまざまなことについての心配が、慢性的に続くのが特徴です。「漠然とした不安がいつもある」という形で、パニック障害の予期不安と重なる面もありますが、突然の激しい発作が中心ではない点が異なります。全般不安症とは?もご覧ください。
広場恐怖症は、「逃げられない場所」を恐れて避ける点がパニック障害と共通し、しばしば合併します。区別の手がかりは、予期しないパニック発作があるかどうか。発作はなく「特定の状況を避けること」が中心の場合は、広場恐怖症として捉えることもあります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)では、強い心の傷となる出来事――事故、災害、被害体験など――のあとに、その記憶がよみがえる場面で、動悸や強い恐怖の発作が起こることがあります。きっかけとなるトラウマ体験があるかどうかが、見分けの手がかりになります。
うつ病は、パニック障害としばしば合併します。パニック障害の方の半数以上が、経過のどこかでうつ病を経験するという報告もあるほどです。気分の落ち込みや興味の低下が強い場合は、うつ病もあわせて治療していくことが大切です。うつ病とは?もご覧ください。
診断で行われること
精神科・心療内科では、これらの病気を見分けるために、いくつかのことを行います。まずくわしい問診。いつ、どんな状況で、どんな症状が、どのくらい続くか。きっかけの有無や、生活への影響などを、ていねいにうかがいます。次に体の病気の確認。必要に応じて、血液検査(甲状腺ホルモン・血糖・貧血など)や心電図で、体の病気が隠れていないかを確かめます。すでに内科などで検査済みの場合は、その結果も参考にします。そしてほかの心の病気との整理。症状のあらわれ方から、社交不安症やうつ病など、ほかの病気との関係を整理していきます。
すでに内科や救急で「異常なし」と言われている場合、その検査結果は、診断にとても役立ちます。受診の際は、これまでに受けた検査やお薬の情報を、お持ちいただけるとスムーズです。
「異常なし」と言われて、つらかった方へ
「検査では異常なし」「気のせいでしょう」「ストレスですね」と言われ、それでも続く症状を抱えて、孤独や不安を感じてきた方は、少なくありません。けれど、体に異常がないのに、動悸や息苦しさがくり返すこと自体に、ちゃんと理由があります。それがパニック障害であれば、適切な治療によって、良くなることが期待できます。
「異常なし」は、終わりではありません。「体の病気ではないと分かった」という、治療への出発点です。原因のわからないつらさを、どうか一人で抱えこまず、ご相談ください。
横浜・関内で、パニック障害かもしれないとお悩みの方へ
みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅からも徒歩5分。横浜市中区・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。「内科では異常なしだったが、症状がくり返す」「これは何の病気なのか知りたい」という方も、どうぞご相談ください。土日も診療しておりますので、平日に通いにくい方もお越しいただけます。WEB予約はこちらから、ご不明な点はよくある質問もご覧ください。
関連ページ
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- パニック障害になりやすい人とは?原因・性格・引き金/不安とは?不安症(不安障害)の種類と治療
- 動悸や息苦しさは不安のせい?
参考文献・情報源
- 厚生労働省|不安障害|こころの病気について知る
- 日本不安症学会|パニック症の診療ガイドライン
- 日本循環器学会|不整脈に関する資料
- 日本精神神経学会|精神疾患の診断と治療に関する資料
- DSM-5-TR(アメリカ精神医学会)/ICD-11(世界保健機関)
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。