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2026/07/01
その市販の睡眠改善薬、効かなくなっていませんか|市販薬と処方薬の違いを精神科医が解説
「ドラッグストアの睡眠改善薬を飲んでいるけれど、これで大丈夫だろうか」「市販の薬と、病院で出る睡眠薬は何が違うの?」「市販薬が効かなくなってきた」——市販の睡眠改善薬について、こうした疑問をお持ちの方は、とても多くいらっしゃいます。じつは、市販の睡眠改善薬と、医療機関で処方される睡眠薬は、成分も仕組みもまったく別のお薬です。まずは、この記事の要点です。
- 市販の睡眠改善薬は、かぜ薬などに入っている抗ヒスタミン成分の「眠くなる作用」を応用したもの
- 対象は「一時的な不眠」だけ——続く不眠・不眠症の方は、そもそも対象外
- 数日で効きにくくなる(耐性)ため、連用には向かない
- 市販薬が効かない・眠れない日が続くのは、受診を考えるサイン
- 医療用の睡眠薬は不眠のタイプに合わせて選べ、依存の少ないタイプも増えている
「病院に行くほどではないから、まず市販薬で」と考える方は多く、それ自体は自然なことです。けれど、市販の睡眠改善薬には、はっきりとした「守備範囲」と「限界」があります。このページでは、市販の睡眠改善薬と医療用の睡眠薬の違い、市販薬の正しい使いどころ、そして受診を考えるべきタイミングを、製品の添付文書などの情報もふまえながら、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックが、ていねいに解説します。睡眠薬そのものについては「睡眠薬とは(種類・作用・依存と安全なやめ方)」、不眠については「不眠・睡眠障害について」のページもあわせてご覧ください。
そもそも、市販の「睡眠改善薬」とは何か
まず知っておいていただきたいのが、市販の睡眠改善薬は、医療機関で処方される「睡眠薬」とは、まったく別の成分でできている、ということです。名前が似ているので混同されがちですが、中身はまるで違います。
ドラッグストアで買える睡眠改善薬(ドリエルなどが代表的です)の主成分は、「ジフェンヒドラミン」という抗ヒスタミン薬です。これは本来、かゆみ・くしゃみ・鼻水といったアレルギー症状をおさえたり、かぜ薬に配合されたりする成分です。この抗ヒスタミン薬には、「眠くなる」という副作用があります。市販の睡眠改善薬は、この“副作用としての眠気”を、逆に主作用として応用してつくられたお薬なのです。「かぜ薬を飲むと眠くなる」——あの眠気と、同じしくみと考えていただくと、分かりやすいでしょう。ちなみに、市販の睡眠改善薬は、商品名こそいくつもありますが、主成分と量はおおむね共通しています。
脳の中では、「ヒスタミン」という物質が、覚醒(起きている状態)を維持する働きをしています。抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンの働きをおさえるため、眠気が生じます。市販の睡眠改善薬は、この作用を利用しているわけです。一方、医療用の睡眠薬は、脳のブレーキ役であるGABAを強めたり、覚醒物質オレキシンをブロックしたり、体内時計を整えたりと、不眠に対して、より直接的に働くように設計されています。目的地は同じ「眠り」でも、そこへ向かう道すじが、まったく違うのです。
市販の睡眠改善薬は「一時的な不眠」のためのもの
ここが、もっとも大切なポイントです。市販の睡眠改善薬が対象としているのは、あくまで「一時的な不眠」だけです。
具体的には、「旅行や出張で環境が変わって眠れない」「明日の心配ごとで、今夜だけ寝つけない」「不規則な生活で、一時的にリズムが狂った」——そうした、原因がはっきりしていて、一過性の寝つきの悪さ・眠りの浅さが対象です。市販薬のパッケージや説明書にも、効能は「一時的な不眠(寝つきが悪い・眠りが浅い)」と、はっきり書かれています。
そして、見落とされがちですが、とても重要な注意書きがあります。市販の睡眠改善薬の説明書には、「日常的に不眠の人」「不眠症の診断を受けた人」は服用しないように、と明記されているのです。つまり、慢性的に眠れない方や、不眠症の方は、そもそも市販の睡眠改善薬の対象ではありません。「毎晩のように眠れないから、市販の睡眠改善薬を飲み続けている」という使い方は、本来の使い方から外れています。責めているのではありません。多くの方がそう使ってしまうのは、市販薬というものの位置づけが、あまり知られていないからです。だからこそ、ここでお伝えしておきたいのです。
市販薬が「効かなくなる」のには理由があります
「最初は効いていた市販の睡眠改善薬が、だんだん効かなくなってきた」——これは、とてもよくあるご相談です。じつは、これには明確な理由があります。
抗ヒスタミン薬による眠気は、数日から1週間ほど続けて飲むと、体が慣れてしまい(耐性)、次第に効きにくくなることが知られています。市販の睡眠改善薬が「連用に向かない」「一時的な使用にとどめるべき」とされるのは、このためです。効かなくなったからと自己判断で量を増やすのは、危険な使い方で、してはいけません。
そして、もっと大切なことがあります。市販薬が効かない、あるいは眠れない日が続くということは、その不眠が「一時的なもの」ではなくなっている可能性がある、ということです。市販薬で対応できる範囲を超えているサインかもしれません。背景に、ストレスによる脳の過覚醒、うつ病や不安症、睡眠時無呼吸など、別の原因が隠れていることもあります。「効かない市販薬を飲み続ける」より、「一度、専門家に相談する」ほうが、ずっと近道になります。眠れない夜を、ひとりで数えなくてよいのです。
見落としたくない、市販薬の注意点
「市販薬だから安全」と思われがちですが、いくつか知っておいていただきたい注意点があります。市販薬も“薬”である以上、正しく知って使うことが大切です。
翌日への持ち越し・口の渇きなど
抗ヒスタミン薬は、翌朝に眠気やだるさが残ったり、口の渇き・便秘・尿の出にくさといった、いわゆる「抗コリン作用」による症状が出たりすることがあります。翌日に車の運転をする際などは、とくに注意が必要です。
高齢の方は、とくに慎重に
市販の睡眠改善薬に使われる古いタイプの抗ヒスタミン薬は、高齢の方では、ふらつき・転倒や、頭が混乱する「せん妄」を引き起こすことがあり、注意を要する成分とされています。ご高齢の方が、市販の睡眠改善薬を安易に継続的に使うのは、避けたほうがよいでしょう。ご家族が高齢の方の市販薬使用に気づかれたときも、一度ご相談いただくと安心です。
持病や、ほかの薬との関係
緑内障や前立腺肥大などの持病がある方は、市販の睡眠改善薬を使えない場合があります。また、かぜ薬・鼻炎薬・ほかの抗ヒスタミン薬などと一緒に飲むと、同じ成分が重なって、作用が強く出すぎることがあります。市販薬であっても、こうした点には注意が必要です。飲んでいるお薬がある方は、購入時に薬剤師に相談されるとよいでしょう。
大量に飲むのは、非常に危険
市販薬だからと軽く考え、一度にたくさん飲むと、意識障害・せん妄・けいれん・不整脈など、命にかかわる重い症状を引き起こすことがあります。市販の睡眠改善薬の大量服用による、重篤な事例も報告されています。用法・用量を必ず守り、けっして多く飲まないでください。もし「たくさん飲んでしまいたい」という気持ちがよぎることがあるなら、それ自体が、つらさの限界を告げるこころのSOSかもしれません。どうか、一人で抱えず、私たちにお話しください。
医療用の睡眠薬は、何が違うのか
市販の睡眠改善薬が「一時的な不眠に、限定的に使うもの」であるのに対し、医療機関で処方される睡眠薬は、続く不眠・不眠症に対して、より的確に対応できるように作られています。おもな違いを挙げます。
- 不眠のタイプに合わせて選べる:寝つきが悪いのか、途中で目が覚めるのか、朝早く目覚めるのか——タイプに応じて、効きはじめの速さや作用時間の違うお薬を、選び分けられます。市販薬のように「一種類でとりあえず」ではなく、あなたの不眠に合わせられるのです。
- 依存の少ない新しいタイプがある:近年は、依存や耐性が生じにくいオレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ・ベルソムラ・クービビック・ボルズィ)や、体内時計を整えるメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)など、より安全性の高い選択肢が増えています。市販薬のように「数日で効かなくなる」ことも、起こりにくいお薬です。
- 背景の原因ごと診てもらえる:これがいちばん大きな違いかもしれません。不眠の奥にある、ストレス・うつ・不安・生活リズムの乱れなどを含めて、医師が全体を診たうえで、治療を組み立てます。眠れない「原因」に向き合えるのは、受診ならではです。市販薬は、原因までは診てくれません。
- やめ方まで、一緒に考えられる:医療用の睡眠薬は、飲み始めから「いつか減らしていく」出口を見据えて、医師と相談しながら使えます。減らし方も、支えてもらいながら進められます。
「市販薬より、病院の薬のほうが強くてこわい」というイメージをお持ちの方もいますが、実際はむしろ逆のこともあります。医師の管理のもとで、あなたに合ったお薬を、依存の少ないタイプも含めて選べるのは、受診の大きな安心材料です。
受診を考えたほうがよい、サイン
次のような場合は、市販薬で様子をみるより、一度受診されることをおすすめします。ひとつでも当てはまれば、相談する価値があります。
- 市販の睡眠改善薬が、効かなくなってきた
- 眠れない日が、2週間以上続いている
- 市販薬を、常用するようになっている(毎晩のように飲んでいる)
- 日中の眠気・だるさで、仕事や生活に支障が出ている
- 気分の落ち込み・不安・意欲の低下をともなう
- 大きないびきや、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
これらは、市販薬で対応できる範囲を超えているサインかもしれません。受診は、「大げさなこと」ではありません。むしろ、こじれる前の早めのご相談が、回復への近道です。不眠は、早く手を打つほど、楽に立て直せます。
よくある質問
市販の睡眠改善薬を、毎日飲んでいます。大丈夫ですか?
市販の睡眠改善薬は「一時的な不眠」のためのもので、毎日続けて飲むことは想定されていません。数日で効きにくくなるうえ、慢性的な不眠には、そもそも対象外です。毎晩のように必要な状態であれば、一度受診をご検討ください。より適したお薬や、根本的な対応が見つかることがあります。
市販薬と、病院の睡眠薬は、どちらが強いですか?
「強い・弱い」という単純な比較はできません。成分も仕組みも別物だからです。市販薬は一時的な不眠向け、医療用は続く不眠にタイプ別に対応するもの、と考えてください。大切なのは強さではなく、あなたの不眠に「合っているか」です。
市販薬が効かないのは、不眠が重いということですか?
必ずしも「重い」とは限りませんが、「一時的な不眠ではなくなっている」可能性はあります。市販薬の耐性で効きにくくなっている場合もあれば、背景に別の原因がある場合もあります。原因を見きわめるためにも、受診をおすすめします。
病院の睡眠薬のほうが、依存しそうでこわいのですが。
「病院の薬=依存」というイメージをお持ちの方は多いですが、近年は依存の生じにくいタイプ(オレキシン系・メラトニン系)が増えています。むしろ、市販薬を自己判断で飲み続けるより、医師の管理のもとで適切なお薬を使うほうが、安全なことも多いのです。不安な点は、遠慮なくお尋ねください。
市販薬をやめて、病院の薬に切り替えられますか?
はい、できます。現在飲んでいる市販薬の内容をお伝えいただければ、それをふまえて、より適した方針を一緒に考えます。切り替えの不安も含めて、ご相談ください。
市販薬を買うとき、薬剤師に相談したほうがいいですか?
はい、とくに持病がある方や、ほかのお薬を飲んでいる方は、購入前に薬剤師にご相談ください。使えないお薬や、飲み合わせの注意がある場合があります。そして、不眠が続くようなら、市販薬ではなく医療機関の受診を検討していただくのが安心です。
当院の特徴|関内駅2分・平日夜間診療・当日予約対応・女性医師在籍
みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分の、通いやすい立地にあります。祝日以外は毎日診療しており、平日は夜19時まで診療しているため、お仕事帰りにも立ち寄っていただきやすい時間帯があります(土曜・日曜も診療)。当日のご予約にも対応していますが、枠の状況によっては、ご希望に添えない場合もございます。できるだけ同じ医師が継続して診療し、お薬についても、ご納得いただきながら進めることを大切にしています。「市販薬を飲んでいたが効かなくなった」といったご相談も、よくお受けしています。女性医師も在籍し、保険適用の心理検査にも対応しています。うつ病、不安症、不眠症、自律神経失調症、適応障害、発達障害など、こころの不調全般を診療しています。
横浜・関内で、不眠についてご相談したい方へ
「市販の睡眠改善薬が効かなくなった」「毎晩、市販薬に頼っている」「そろそろ、きちんと診てもらいたい」——どんなことでも、不安や希望をそのままお聞かせください。市販薬で対応しきれない不眠には、必ず理由があります。その原因を一緒に見きわめ、あなたに合った方法を考えていきます。市販薬を卒業して、ぐっすり眠れる毎日を、一緒に目指しましょう。
横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。祝日以外は毎日診療し、平日は夜間まで、土日も診療しています。当日のご予約にも対応しており(枠の状況によります)、みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町エリアからもお越しいただけます。
「こんなことで受診していいのだろうか」と、ためらう必要はまったくありません。眠れないつらさも、お薬への不安も、我慢するものではありません。初めての方も、緊張されて当然です。私たちは、その一歩を、ていねいにお迎えします。
関連ページ
睡眠薬のタイプ・全体解説
- 睡眠薬とは(種類・作用・依存と安全なやめ方)
- 睡眠薬のやめ方・減らし方
- オレキシン受容体拮抗薬とは(デエビゴ・ベルソムラ・クービビック・ボルズィ)
- メラトニン受容体作動薬とは(ロゼレム)
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは(マイスリー・ルネスタ・アモバン)
不眠そのものについて
- 不眠・睡眠障害について
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。