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2026/07/02

寝ても疲れが取れない・ぐっすり眠った気がしない(熟眠障害)の原因と対処法

7時間眠った。寝つきも悪くなかった。夜中に目が覚めた記憶もない。それなのに、朝、体が鉛のように重い。

「昨日、ちゃんと寝たはずなんだけどな」——そうつぶやきながら、コーヒーを淹れる。会社に着く頃には、もう疲れている。午後には、目を開けているのがつらくなる。

眠っているのに、休めていない。この熟眠障害は、4つの不眠のタイプのなかで、最も本人が自覚しにくく、最も見過ごされやすいものです。「眠れている」と思っているから、不眠だと気づけないのです。この記事では、その正体を、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。不眠全体の地図は不眠症とは|4つのタイプ・原因・治し方・受診の目安にまとめてあります。


寝ても疲れが取れない方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。当院では自宅でできる睡眠時無呼吸の検査・治療にも対応しています。
WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は初診の流れのご案内をご覧ください。


「時間」は足りているのに、「中身」が足りていない

眠りは、時間の長さだけで測れるものではありません。中身があります。

一晩の眠りは、深い眠りと浅い眠り、そして夢を見るレム睡眠が、約90分の周期でくり返される構造をしています。このうち、脳と体の回復に最も効くのが、深い眠り(徐波睡眠)です。とくに眠り始めの数時間に集中して現れ、ここで成長ホルモンが分泌され、疲労が処理されていきます。

熟眠障害とは、この深い眠りが削られている状態です。時間は7時間、8時間あっても、中身が浅い眠りばかりなら、回復は起こらない。コップに水を7杯注いだつもりが、実は薄めたお茶だった——そんな状況です。

そして本人は、眠っている間のことを観測できません。だから「眠れている」と思い込んだまま、日中の重さの理由がわからず、途方に暮れることになります。

深い眠りを削っているもの

① 睡眠時無呼吸症候群——最大の容疑者

熟眠障害で、まず疑うべきはこれです。

睡眠中に呼吸が止まると、体は酸素不足に陥り、脳が覚醒して呼吸を再開させます。この「覚醒」は、本人が目覚めたと自覚しないレベルのごく短いものも含みます。つまり、自覚のないまま、一晩に何十回、何百回と眠りが分断されている。深い眠りにたどり着く前に、そのたびに引き戻されているのです。

だから、こうなります。眠った時間は十分。夜中に目覚めた記憶もない。それなのに、朝すっきりせず、日中どうしようもなく眠い。中途覚醒の記事でも書きましたが、次のサインがあれば検査を考えてください。

  • 大きないびきをかく(家族に指摘される)
  • いびきが途中で止まる、と言われたことがある
  • 起床時の頭痛、口の渇き
  • 会議中や運転中の、抗いがたい眠気

当院では自宅でできる睡眠時無呼吸の検査・治療に対応しています。「眠れている」と思っている方こそ、一度確かめる価値があります。

② お酒——深い眠りを、確実に減らす

アルコールは、寝つきを早める代わりに、深い眠りを減らします。この点で、寝酒は熟眠障害の直接の原因になります。

厄介なのは、飲んだ本人が「よく眠れた」と感じることです。寝つきが早かった記憶だけが残るから。実際には、後半の眠りはずたずたになっているのですが、それは観測できません。「毎晩よく眠れているのに、なぜか疲れが取れない」という方の中に、この構図はかなりの割合で潜んでいます。

③ カフェイン——「眠れている」人も削られている

カフェインの記事で書いたとおり、カフェインは寝つきを妨げるだけでなく、深い眠りの量そのものを減らします。「コーヒーを飲んでも眠れます」という方でも、眠りの中身は削られている可能性があるのです。

そして、日中の重さをコーヒーで補い、そのコーヒーが今夜の眠りをまた浅くする。この循環が、熟眠障害を静かに育てます。

④ むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害

睡眠中に脚がぴくつく周期性四肢運動障害では、そのたびに眠りが浅くなります。本人にはまったく自覚がなく、家族に指摘されて初めて気づくことも多い。「原因不明の熟眠感のなさ」の裏に潜んでいることがあります。

⑤ うつ病

うつ病では、眠りの構造そのものが変化し、深い眠りが減ることが知られています。「たっぷり眠っているのに疲れが取れない」「休日に丸一日寝ても回復しない」——この訴えは、うつ病の典型的な症状の一つです。

とくに、気分の落ち込みや、何をしても楽しめない感覚を伴うなら、眠りだけの問題ではありません。燃え尽き症候群慢性的な疲労の文脈で語られてきた不調が、実はうつ病だった、ということもあります。

⑥ ストレスと自律神経

長時間労働で神経が張りつめたままだと、眠っている間も交感神経が高いままになり、体が休息モードに入りきれません。眠っているのに、警戒態勢が解けていない。自律神経失調症の文脈で語られる「休んでも回復しない」状態は、これに当たります。

⑦ 睡眠薬の影響

意外に思われるかもしれませんが、従来型の睡眠薬——ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系は、眠りの構造を変え、深い眠りを減らす方向に働くことがあります。「薬で眠れているのに、疲れが取れない」という訴えの背景に、これがあることも。翌日への持ち越しによるだるさも重なります。

「疲れが取れない」の、別の可能性

眠りの話をしてきましたが、熟眠感のなさは、眠り以外が原因のこともあります。貧血、甲状腺の異常、糖尿病、その他の体の病気。必要に応じて血液検査で確認します。「精神科に来たのに採血?」と驚かれますが、体の病気を除外するのは、順番として先なのです。

どうすればいいのか

まず、原因を特定する

熟眠障害は、自力での改善が最も難しいタイプです。理由は明確で、原因の多く(無呼吸、脚の動き、眠りの構造の変化)が、自分では観測できないところにあるからです。「眠れている」という自己認識が、正しい原因究明を妨げます。

だから、この症状は、検査と診察の出番です。とくに、大きないびきと日中の強い眠気があるなら、迷わず検査を受けてください。

すぐできること

  • 寝酒をやめる。熟眠障害の対策として、最も効果が確実な一手です。
  • カフェインは昼まで深い眠りを守るために。
  • 横向きで寝てみる。いびきや軽度の無呼吸は、仰向けで悪化しやすいことが知られています。
  • 寝室を涼しく。深部体温が下がらないと、深い眠りに入れません。
  • 起床時刻を一定にする。リズムが安定すると、眠りの質も安定します。詳しくは生活習慣と睡眠リズムの記事で。

治療

無呼吸があれば、その治療。うつ病が背景なら、休養薬物療法で、うつ病そのものを治療する。従来型の睡眠薬が眠りの質を落としているなら、減薬や、依存性の低い薬への切り替えを検討します。オレキシン受容体拮抗薬のように、眠りの生理に沿って働く薬は、眠りの構造を壊しにくいという利点があります。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区を中心に、みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。祝日以外は土日も診療しており、WEB予約は当日予約にも対応しています。「眠れているのに疲れが取れない」という訴えを、気のせいだと思わないでください。眠りの中身に、必ず理由があります。

WEB予約はこちら(当日予約可)

よくある質問

スマートウォッチで「深い眠りが少ない」と出ます。信用していいですか?

参考程度に、と考えてください。市販の機器は動きや脈から推定しているもので、医療機関の検査とは精度が異なります。数値に一喜一憂して眠りへの不安が募ると、それ自体が不眠のもとになります。ただ、「疲れが取れない」という実感と機器の結果が一致しているなら、受診のきっかけとしては十分です。

休日にたくさん寝ても、疲れが取れません。

眠りの「質」が確保できていないなら、量を足しても回復しません。むしろ、寝だめは体内時計を乱して、翌週の眠りをさらに悪くします。量ではなく質——つまり原因の特定が必要な状態です。

いびきをかいていないと言われますが、それでも無呼吸はありますか?

可能性はあります。とくに女性や痩せ型の方では、目立ついびきを伴わないこともあります。日中の強い眠気、起床時の頭痛、集中力の低下が続くなら、検査を検討する価値があります。


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監修:田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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