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2026/08/26

吐き気があるのに「検査で異常なし」と言われたら|次にどこを診ればいいのかを横浜・関内の精神科医が解説

この記事は、みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)の「場面で出る体の症状について」ガイドの一記事です。全体像は総合ガイドをご覧ください。


思い切って病院に行った。採血をして、胃カメラも飲んだ。結果を聞きに行ったら、「特に異常はありませんね」。

ほっとする——はずでした。でも実際に感じたのは、行き場のなさだったのではないでしょうか。

異常がないなら、この吐き気は何なのか。毎朝ちゃんと出ているのに、どこにも原因がないと言われてしまった。ではこの先、誰に相談すればいいのか。「気にしすぎ」ということなのだろうか。

診察室でも、このお話は本当によく伺います。そして毎回、同じことをお伝えしています。その検査結果は良い知らせであり、同時に、話はそこで終わりではありません

この記事では、なぜ検査に映らないのか、そして次にどこを診ればいいのかをご説明します。


▼ 受診をお考えの方へ
当院は関内駅から徒歩圏(馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます)にあり、土日も診療しています。空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。

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まず、その結果は良い知らせです

「異常なし」と言われたとき、多くの方が「原因が分からなかった」と受け取ります。でも、実際に起きたのはそれとは違います。

検査で確認されたのは、胃や食道に潰瘍や炎症、腫瘍といった目に見える病変がないということです。これは「分からなかった」ではなく、「はっきりした答えが一つ出た」ということです。

そして、これは決して小さな結果ではありません。心配な病気の可能性が、そこで確かに外れたのですから。もし検査を受けていなければ、今も「重い病気かもしれない」という不安を抱えたままだったはずです。その不安が一つ減っただけでも、検査を受けた意味は十分にありました

問題は、そのあとの説明が足りないまま、診察が終わってしまうことです。「異常なし、様子を見ましょう」で解散になると、では何を様子見すればいいのか分からないまま、患者さんだけが取り残されます。

なぜ、検査には映らないのでしょうか

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

検査が見ているのは「形」です

胃カメラは、胃の内側の形と表面を見る検査です。傷があるか、赤くなっているか、できものがあるか。血液検査は、炎症や貧血、肝臓や腎臓の数値を見ています。

どちらも非常に優れた検査ですが、見ているのは形と数値です。

一方、緊張によって起こる吐き気は、胃の「動き方」の問題です。自律神経を通じて胃の動きが落ち、中のものが停滞して、むかつきが生まれる。動きは、形を変えません。だから、写真を撮っても、そこには普通の胃が写ります。

例えるなら、時計の中身をすべて分解して部品を並べ、「どの部品も壊れていません」と確認したようなものです。部品は確かに正常です。でも、動かし方が狂っているという可能性は、この確認では分かりません。

しかも、検査のときには症状が出ていないことが多い

もう一つ見落とされやすいのが、タイミングです。

出勤前の吐き気は、平日の朝という決まった場面で出ます。ところが胃カメラを受けるのは、たいてい休みを取った日か、午前中の落ち着いた時間帯です。

つまり、症状がいちばん出ない条件で検査をしていることになります。仮に胃の動きを見る検査をしたとしても、そのときには通常の動きに戻っている可能性が高いのです。

「異常がない」と「症状がない」は別のことです

ここを混同されると、患者さんは非常につらい立場に置かれます。

検査に映らないことと、症状が本物であることは、まったく矛盾しません。頭痛も、めまいも、多くの痛みも、検査には映りません。それでも本物です。誰も「頭痛は気のせい」とは言いません。

吐き気も同じです。自律神経を介した体の反応は、臓器の形を変えないので画像には出ない。出ないだけで、確かにそこにあります

「機能」に注目する見方があります

医学の世界では、こうした状態を扱う考え方が確立しています。

形の異常はないけれど、機能——つまり動き方——に問題があって症状が出ている状態を、機能性の疾患と呼びます。胃であれば機能性ディスペプシア、腸であれば過敏性腸症候群がこれにあたります。

これらは、正式な病名です。診療ガイドラインもあり、多くの患者さんがいて、治療法も研究されています。「原因不明」の別名ではありません。

そして、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群には、ストレスや緊張との関わりが深いことが分かっています。脳と腸が自律神経を介して密に連絡し合っているためで、これを脳腸相関と呼びます。仕組みの詳細は予期不安で吐き気が起こる仕組みでご説明しています。

つまり、「異常なし」の先には、ちゃんと診るべき領域があるということです。

次に、どこを診ればいいのか

ここからが実際的な話です。検査で異常がなかったあと、確認していただきたいのは「いつ出るか」という一点です。

症状が出る場面を書き出してみてください

難しく考えず、思い出せる範囲で構いません。

  • 平日の朝には出るが、休日には出ない
  • 出社日には出るが、在宅勤務の日には出ない
  • 連休の初日はまだ残っているが、二日目には消える
  • 連休の最終日の夜から、また戻ってくる
  • 特定の相手に会う日、特定の会議がある日に強い
  • 朝がいちばん強く、午後には少し楽になる

このどれかに当てはまるなら、それが答えの半分です。体の病気は、曜日や場面を選びません。選んで出ているということは、体が特定の場面に反応しているということです。

この情報は、検査結果よりも診断に役立つことがあります。診察のときに教えていただけると、大きな手がかりになります。

逆に、こういう場合は体の側の確認を続けてください

一方で、次のような場合は、まだ体の病気の可能性を追う必要があります。

  • 休日も夜も、時間帯を問わず一日中続いている
  • 吐いたものに血が混じる、黒っぽいものが出る
  • 激しい腹痛や発熱を伴う
  • 短期間で体重が明らかに減っている
  • 強い頭痛やめまいを伴う
  • 飲み込みにくさがある
  • 妊娠の可能性がある

受けた検査が胃カメラだけで、まだ確認されていない領域があることもあります。当院でも、必要と判断した場合には適切な医療機関をご紹介しています。

「気にしすぎ」と言われてしまった方へ

「異常はないので、気にしすぎでしょう」と言われて、そこで受診をやめてしまった方が少なくありません。

お伝えしたいのは、この言い方は、実際に起きていることを正確には表していないということです。

体は、これから起きることを予測して先に準備する仕組みを持っています。緊張する場面が近づくと、心拍を上げ、筋肉に血を送り、消化を後回しにする。この準備が、吐き気の正体です。これは意識してやっていることではなく、意識より先に起きている反応です。

ですから、「気にしなければ治る」ものではありません。気にしないようにしようと努力すること自体が、その場面を意識することになってしまうからです。

むしろ、体はかなり正確に働いています。正確すぎて、生活のほうが押されてしまっている。だとすれば見直すべきは、そこまでの準備が必要になるほどの負荷が、本当にかかっていないかという点です

その負荷を、一緒に見ていきます

「異常なし」の先で診るのは、症状が出る場面と、その背景です。

もっとも多いのは適応障害です

特定の環境への反応として心身の不調が出ている状態で、「休日は平気なのに出勤前だけつらい」という形にいちばん当てはまります。詳しくは適応障害とはをご覧ください。

不安症・パニック症

不安が体の症状として前面に出ているタイプです。電車やエレベーターなど「すぐに出られない場所」で強く出る場合は、パニック症の観点からも診ていきます。不安についての記事もご用意しています。

うつ病

気分の落ち込みより先に、体の症状が出ることは珍しくありません。朝がいちばんつらく、夕方にかけて少し楽になるという日内の変動があるときは、注意して診ます。気分の落ち込みが続くときもご覧ください。

自律神経のバランスの乱れ

吐き気だけでなく、動悸・めまい・頭痛などが入れ替わり出ている場合は、自律神経失調症として全体を捉えたほうが分かりやすいことがあります。

診察では、どんなことをするのか

初診では、まず「いつ・どこで・どう出るのか」を一緒に整理します。玄関の前なのか、車内なのか、会社が見えたときなのか。うまく言葉にできなくても大丈夫です。

すでに受けた検査の結果は、分かる範囲で教えてください。「異常なし」という情報自体が、診断を進めるうえで役に立ちます。体の病気が外れているという前提で話を進められるからです。紹介状や検査結果をお持ちでなくても、受けた検査の種類と時期を覚えていれば十分です。

そのうえで、背景の見立てを立て、環境への働きかけを検討します。当院理事長は日本医師会認定産業医でもありますので、職場との関わり方についてもご相談いただけます。

症状が強くて生活が回らないときには、お薬で下支えすることもあります。必要な期間だけ使い、落ち着いてきたら整理していく前提でご説明します。

あわせて、場面と症状の結びつきをほどいていくためのカウンセリング的アプローチもお伝えしていきます。

よくあるご質問

検査を受け直したほうがいいですか

症状の出方が場面に限られているなら、多くの場合その必要はありません。ただし、休日も一日中続く、体重が減っている、といった変化があれば、改めて確認したほうがよいことがあります。診察でご一緒に判断します。

内科の先生に悪い気がして、他院に行きづらいです

その必要はありません。体の病気を除外することと、場面に対する反応を診ることは、役割が違うだけです。内科の先生が「異常なし」と確認してくださったからこそ、次の段階に進めます。

紹介状がなくても受診できますか

できます。お持ちであれば助かりますが、なくても問題ありません。受けた検査の種類と、いつ頃だったかを教えていただければ十分です。

精神科に行ったら、精神的な問題だと決めつけられませんか

決めつけません。むしろ、体の病気の可能性が残っていると判断すれば、そちらの検査をご案内します。「心の問題ということにする」場所ではなく、症状の出方から筋道を立てて診ていく場所だとお考えください。

平日は仕事で行けません

当院は土日も診療しており、夕方以降のご予約も可能です。会社帰りに通える心療内科をご覧ください。関内駅から徒歩圏で、馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます。

今日つらいのですが、当日でも診てもらえますか

空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。Web予約で当日枠が出ていない場合も、お電話でご相談いただければ調整できることがあります。初診の流れはこちらです。

心療内科と精神科、どちらですか

体の症状が前面に出ている場合は心療内科的な診療になりますが、当院ではどちらも同じ枠組みで診ています。違いについての記事もご参考にどうぞ。


「異常なし」は、終わりではなく、次の入り口です

検査で異常がなかったということは、心配な病気が外れたということ。そして、次はどこを診ればいいかがはっきりしたということでもあります。

症状は確かにあります。それを疑う必要はまったくありません。あとは、どんな場面で、なぜ出るのかを一緒に見ていくだけです。

「内科では異常なしと言われたのですが」——診察室では、その一言から始めていただければ十分です。

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みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)/土日診療・当日予約に対応


関連ページ


参考

  • 日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン(機能性ディスペプシア/過敏性腸症候群)
  • DSM-5-TR(American Psychiatric Association)
  • ICD-11(World Health Organization)
  • 厚生労働省 こころの健康/働く人のメンタルヘルス関連資料

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)

医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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