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2026/09/28
低気圧で頭が痛いのはなぜ?|台風・雨の前の頭痛と片頭痛の関係、受診の目安を横浜・関内の精神科医が解説
「天気予報より先に、頭痛で雨が分かる」「台風が近づくと、こめかみがずきずきして仕事にならない」。気圧の変化による不調のなかで、もっとも多く聞かれるのが頭痛です。
毎回のことなので、「そういう体質だから仕方ない」とあきらめて、市販の頭痛薬でなんとかやり過ごしている方も多いのではないでしょうか。けれど、天気による頭痛の多くには名前があり、合った対処や治療があります。
この記事は、気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説から始まるシリーズの第1章です。低気圧と頭痛の関係、頭痛の種類の見分け方、自分でできること、受診の目安を、横浜・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医がお伝えします。
この記事の要点
- 天気の変化で起きる頭痛の多くは、片頭痛か緊張型頭痛です。気圧の低下と片頭痛との関係は、天気の不調のなかでは比較的データがそろっています
- 片頭痛と緊張型頭痛では、痛み方も、楽になる方法も異なります。自分の頭痛がどちらに近いかを知ることが、対処の第一歩です
- 頭痛薬を月に10日以上使う状態が続くと、薬の使いすぎによって頭痛が増えることがあります
- 片頭痛のある方は、気分の落ち込みや不安を抱えやすいことが分かっています。頭痛とこころの不調は、一緒に見ていくことが大切です
- 突然の激しい頭痛や、しびれ・ろれつが回らないなどを伴う頭痛は、天気とは関係なく、すぐに救急を受診してください
「雨の前に頭が痛くなる」は、気のせいではありません
天気と頭痛の関係は、天気による不調のなかでも研究が進んでいる分野です。日本の片頭痛のある方を対象にした研究(Kimotoら、2011年)では、気圧が下がった日に片頭痛の発作が起こりやすかったことが報告されています。スマートフォンのアプリで頭痛の記録と気圧を照らし合わせた日本の研究でも、気圧の低下と頭痛との関係が示されています。
ただし、気圧が下がれば誰でも頭痛が起きるわけではありません。影響を受けやすいのは、主にもともと片頭痛がある方や、首や肩のこりが強い方です。天気は頭痛の「原因」というより、もともとある頭痛の「引き金」の一つと考えると分かりやすいと思います。
日本の調査(Sakaiら、1997年)では、片頭痛のある方は人口のおよそ8.4%、特に女性に多いと報告されています。同じ調査では、片頭痛のある方の多くが医療機関を受診したことがないことも分かっています。「ただの頭痛」と思われて、見過ごされやすい病気なのです。
天気で起きやすい頭痛は、主に2種類
天気の変化で起きたり強まったりする頭痛の多くは、「片頭痛」か「緊張型頭痛」のどちらかです。二つは痛み方がちがい、楽になる方法も正反対のところがあります。自分の頭痛がどちらに近いか、振り返ってみてください。
片頭痛:ずきずき脈打つ痛み
- 頭の片側(両側のこともあります)が、脈打つようにずきずきと痛む
- 痛みが強く、仕事や家事を続けるのがつらい
- 階段の上り下りや、体を動かすと痛みが強くなる
- 吐き気がする、光や音がいつもよりまぶしく、うるさく感じる
- 一度起きると、数時間から長いと3日ほど続く
- 頭痛の前に、視界にぎざぎざした光が見える方もいます(閃輝暗点:せんきあんてん)
気圧の低下との関係が特に指摘されているのは、こちらの片頭痛です。
緊張型頭痛:締めつけられるような重い痛み
- 頭全体、または後頭部からこめかみにかけて、締めつけられるように重く痛む
- 痛みは軽いものから中くらいで、なんとか動ける程度のことが多い
- 体を動かしても痛みはあまり強くならない
- 首や肩のこりを伴うことが多い
- 夕方にかけて強くなりやすい
緊張型頭痛は、首や肩の筋肉のこわばり、長時間のパソコン作業、ストレスや疲れと深く関わっています。天気が崩れるときの体のこわばりや、冷え、気分の張りつめが重なることで、起きやすくなると考えられています。ストレスと首・肩のこり、頭痛の関係は、当院のストレスによる頭痛・肩こりを解説した記事(自律神経失調症シリーズ)でもくわしく扱っています。
実際には、片頭痛と緊張型頭痛の両方を持っている方も少なくありません。「雨の前は重い頭痛、ひどいときはずきずきに変わる」という場合は、二つが重なっている可能性があります。
低気圧で、なぜ頭が痛くなるのか
内耳と自律神経を通じた変化
シリーズのピラー記事でお話ししたように、気圧の変化は耳の奥にある内耳で感じ取られ、自律神経にはたらきかけると考えられています。気圧の研究で知られる佐藤純先生のグループは、動物の実験で、気圧を下げると痛みに敏感な状態になることを報告しています。
片頭痛は、脳の血管のまわりにある神経が刺激され、痛みの物質が放出されることで起きると考えられています。気圧の変化が、この「刺激されやすい状態」をつくる引き金になっているのではないか、というのが現在の有力な考え方です。
ただし、このしくみは主に動物の研究にもとづくもので、人の体でどこまであてはまるかは、まだ研究が続いている段階です。
気圧以外の引き金が重なる
天気が崩れる時期には、気圧のほかにも頭痛の引き金が重なりやすくなります。
- 雨や湿気で眠りが浅くなる、寝る時間がずれる
- 気温の変化で体が冷える、首や肩がこわばる
- 食欲が落ちて、食事を抜いてしまう
- 「また頭が痛くなるかも」という身構えで、緊張が高まる
片頭痛は、ほかにも女性の月経の時期、空腹、睡眠のとりすぎや不足、忙しさから解放された週末などにも起きやすいことが知られています。天気の悪い日に、こうした引き金がいくつも重なると、頭痛が起きやすくなります。
頭痛とこころの関係——精神科の目から見て
精神科・心療内科で頭痛のお話をうかがうことには、理由があります。
片頭痛のある方は、うつや不安を抱えやすい
片頭痛とうつ病の関係を調べた研究(Breslauら、2003年)では、片頭痛のある方はうつ病になりやすく、反対にうつ病のある方も片頭痛を起こしやすいという、双方向の関係が報告されています。不安の病気とも、同じような結びつきがあることが知られています。
これは、どちらかが気の持ちようで起きているという意味ではありません。痛みや気分の調整に関わる脳のしくみが、一部重なっているためと考えられています。くり返す頭痛でやりたいことをあきらめる日が続けば、気持ちが沈むのも自然なことです。
「頭痛が来るかも」という不安が、頭痛を呼ぶこともある
台風のたびに頭痛に苦しんできた方ほど、天気予報を見るだけで身構えてしまうことがあります。この「予期不安」が緊張を高め、首や肩をこわばらせ、眠りを浅くして、かえって頭痛を起こしやすくすることがあります。
頭痛そのものの治療と合わせて、不安や緊張をやわらげていくことで、頭痛の回数が落ち着いていく方もいらっしゃいます。不安のしくみについては、当院の不安についての記事でもくわしく解説しています。
頭痛が起きそうなとき・起きたときにできること
気圧の予報と、頭痛の記録をつける
気圧の変化を予報してくれるアプリや天気サイトを使うと、「いつごろ気圧が下がるか」を前もって知ることができます。あわせて、頭痛が起きた日時、痛み方、そのときの天気、睡眠、月経、食事などを簡単に記録しておくと、自分の頭痛のパターンが見えてきます。
この記録は「頭痛ダイアリー」と呼ばれ、頭痛外来でも診断や治療の材料として大切にされています。受診のときに持参していただくと、とても役立ちます。
片頭痛のときは、冷やして、暗く静かな場所で休む
片頭痛が起きたときは、できれば暗く静かな場所で横になり、痛むところを冷たいタオルなどで冷やすと、楽になることがあります。体を動かすと痛みが強くなるため、無理に動かず休むことが大切です。入浴やマッサージで温めると、かえって痛みが強くなることがあります。
緊張型頭痛のときは、温めて、ほぐす
緊張型頭痛の場合は反対に、首や肩を温めたり、ゆっくり伸ばしたりすることで楽になることが多いです。長時間同じ姿勢が続いているときは、少し立ち上がって肩を回すだけでも助けになります。
自分の頭痛がどちらか分からない場合は、「動くと悪化するか」を目安にしてみてください。動くとずきずき強くなるなら片頭痛寄り、動いても変わらないなら緊張型頭痛寄りです。
崩れる前の日は、眠りと食事を整えておく
気圧が大きく下がりそうな日の前は、いつもの時間に寝て、いつもの時間に起きることを意識してください。寝不足も寝すぎも、片頭痛の引き金になります。食事を抜かないこと、水分をきちんととることも大切です。
耳のまわりを温める・ほぐす
内耳のまわりの血の巡りを良くすると天気の不調が和らぐ、と考える専門家もいます。ただ、この方法の効果を確かめた研究はまだ少ないのが正直なところです。緊張型頭痛の方が首や肩と一緒にほぐす、という形で、無理のない範囲で試していただくとよいと思います。
頭痛薬との付き合い方
頭痛がつらいときに、市販の頭痛薬を使うことは悪いことではありません。痛みを我慢しすぎないことも大切です。
ただし、頭痛薬を月に10日以上使う状態が続いている方は、注意が必要です。薬を使いすぎることで、脳が痛みに敏感になり、かえって頭痛の回数が増えてしまう「薬剤の使用過多による頭痛」という状態があるためです。国際的な頭痛の分類でも、一つの病気として位置づけられています。
「最近、頭痛薬を飲む回数が増えた」「前より効きにくくなった」と感じる方は、自己判断で量や回数を増やさず、一度医療機関にご相談ください。頭痛の種類に合った治療に切り替えることで、薬の量を減らしていける場合があります。
医療機関で受けられる治療
片頭痛には、発作が起きたときに使う専用の薬や、発作の回数を減らすための予防の薬があります。近年は、片頭痛のしくみに直接はたらきかける新しいタイプの予防薬も使えるようになりました。「市販薬でしのぐしかない」とあきらめていた方にも、選択肢は広がっています。
片頭痛の治療を本格的に進める場合は、頭痛外来や脳神経内科が中心になります。一方で、頭痛の背景に、ストレスや睡眠の乱れ、不安、うつ、自律神経の不調が関わっている場合は、心療内科・精神科でのご相談が向いています。一部の抗うつ薬は、頭痛の予防に使われることもあります。天気の不調に対して、漢方薬が使われることもあります。
こんな頭痛は、すぐに受診してください
頭痛のなかには、天気とは関係なく、命に関わる病気が隠れていることがあります。次のような場合は、ためらわずに救急を受診してください。
- 突然、経験したことのないような激しい頭痛が起きた
- 頭痛とともに、手足のしびれや力が入らない、ろれつが回らない、ものが二重に見えるといった症状がある
- 高い熱や首の強いこわばりを伴う
- 頭を打ったあとから頭痛が続いている
また、次のような場合も、早めに頭痛外来や脳神経内科、内科を受診してください。
- 50歳を過ぎてから、初めて頭痛が起きるようになった
- 頭痛の回数や強さが、だんだん増している
- いつもの頭痛と、痛み方がちがう
心療内科・精神科に相談していただきたいとき
次のようなときは、心療内科・精神科でもご相談いただけます。
- 頭痛に加えて、気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が2週間以上続いている
- 天気予報を見るだけで不安になり、眠れない日がある
- 頭痛のために、仕事や家事、外出をあきらめることが増えている
- 頭痛のほかに、だるさ、めまい、動悸など、いくつもの不調が重なっている
- どこに相談すればよいか分からない
気分の落ち込みが続くときの見分け方は、当院の気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線でもくわしく解説しています。
みなとメンタルクリニックでできること
当院では、頭痛がいつ、どんなときに起きるのか、ほかにどんな不調があるのかをていねいにうかがいます。そのうえで、片頭痛の専門的な治療が必要と考えられるときは、頭痛外来や脳神経内科など、適した医療機関をご案内します。
頭痛の背景に、ストレスや睡眠の乱れ、不安、うつ、自律神経の不調が関わっている場合は、生活の整え方をご一緒に考えながら、必要に応じてお薬による治療や、カウンセリング的アプローチを組み合わせていきます。自律神経の不調について全体を知りたい方は、自律神経失調症とは?症状・原因・受診の目安を横浜・関内の精神科医が解説もあわせてご覧ください。
みなとメンタルクリニックは関内駅からすぐの場所にあり、横浜市中区を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからも通っていただきやすい立地です。土日も診療しており、当日のご予約にも対応しています。頭痛の記録をお持ちでしたら、ぜひ持ってきてください。
このシリーズの記事(気圧の変化による不調)
- ピラー:気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説
- 第1章:低気圧で頭が痛いのはなぜ?片頭痛と気圧の関係(この記事)
- 第2章:低気圧でだるい・眠い・起きられないのはなぜ?
- 第3章:気圧の変化でめまい・耳が詰まる感じがするのはなぜ?
- 第4章:天気が崩れると気分が沈む・不安になるのはなぜ?
- 第5章:「気圧のせい」と思っていた不調が続くとき——受診の目安
よくあるご質問
天気による頭痛は、何科を受診すればいいですか?
頭痛そのものの治療を本格的に進めたい場合は、頭痛外来や脳神経内科が向いています。頭痛に加えて、気分の落ち込みや不安、眠れない、だるいといった不調が重なっている場合は、心療内科・精神科にご相談ください。どちらか迷う場合も、まずはご相談いただければ、適した診療科をご案内します。
市販の頭痛薬を飲み続けても大丈夫ですか?
ときどき使う程度であれば、大きな問題はありません。ただし、月に10日以上使う状態が続いている場合は、薬の使いすぎによって頭痛が増えている可能性があります。自己判断で量を増やさず、一度医療機関にご相談ください。
片頭痛は治りますか?
片頭痛は体質による面が大きく、完全になくすことが難しい場合もあります。ただ、発作が起きたときの薬や、回数を減らす予防の薬、生活の整え方を組み合わせることで、生活への影響を小さくしていくことは十分に期待できます。年齢とともに落ち着いていく方もいらっしゃいます。
当日の予約はできますか?
はい、当日のご予約にも対応しています。土日も診療していますので、平日にお休みが取りにくい方も、どうぞご相談ください。
すぐに受診できないときの相談先
頭痛とともに気持ちのつらさが強く、すぐに受診するのが難しいときは、次のような公的な相談窓口もあります。一人で抱え込まず、話せる場所を頼ってみてください。
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの地域の相談窓口につながります)
- まもろうよ こころ(厚生労働省):電話やSNSで相談できる窓口がまとめられています
関連ページ
- 気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説
- ストレスによる頭痛・肩こり(自律神経失調症シリーズ)
- 天気と自律神経の関係(自律神経失調症シリーズ)
- 自律神経失調症とは?症状・原因・受診の目安を横浜・関内の精神科医が解説
- 気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線
- 横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れ
参考にした主な資料
- Kimoto K, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Internal Medicine, 2011.
- Sakai F, Igarashi H. Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey. Cephalalgia, 1997.
- Breslau N, et al. Comorbidity of migraine and depression: investigating potential etiology and prognosis. Neurology, 2003.
- 佐藤純 ほか:気圧変化と痛み・前庭系に関する研究(日本生気象学会、日本頭痛学会での報告など)
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会:頭痛の診療ガイドライン 2021
- 国際頭痛分類 第3版(ICHD-3):片頭痛、緊張型頭痛、薬剤の使用過多による頭痛
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。