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2026/08/05
体の病気・薬・睡眠不足によるイライラ|「心の問題」と決める前に確かめたいことを横浜・関内の精神科医が解説
怒りっぽさが続いているとき、多くの方が「自分の性格」か「ストレスのせい」のどちらかで説明しようとします。
ですが、診察でまず確かめるのは、そのどちらでもありません。体のほうです。まずは要点です。
- いらだちは、甲状腺・貧血・低血糖・睡眠時無呼吸など、体の病気でも起こる
- 睡眠不足は、単独で怒りっぽさを作る。これは画像研究で示されている
- 薬が原因のこともある——ステロイド、一部の睡眠薬、市販の鼻炎薬まで
- カフェイン、アルコール、ニコチン。切れるときにも、いらだちは出る
- とくに「急に始まった」「年齢が高い」場合は、体の要因を優先して調べる
横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が、エビデンスをふまえて解説します。この記事は、イライラが止まらない・怒りが抑えられない|背景にある病気と対処という総合ガイドの一部です。
原因のわからないイライラでお悩みの方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。必要に応じて血液検査で体の状態も確認します。お薬手帳をお持ちください。
▶ WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れをご覧ください。
まず、睡眠
体の要因のなかで、圧倒的に多く、そして最も見過ごされているのが睡眠です。
睡眠不足だけで、ブレーキは効かなくなる
健康な方を一晩眠らせずにおいて脳を調べた実験では、不快な刺激に対する扁桃体の反応が大きくなり、同時に、それを抑える前頭前野との結びつきが弱まっていたことが報告されています。
アクセルが強まり、ブレーキとの連絡が悪くなる。これが、たった一晩で起こります。
ですから、慢性的に睡眠が足りていない方が怒りっぽいのは、性格でも心の弱さでもなく、脳のはたらきとして当然のことです。
眠っているつもりで、眠れていない
やっかいなのは、本人が睡眠不足だと気づいていない場合です。代表が睡眠時無呼吸です。
夜中に呼吸が止まるたび、脳は短く覚醒します。本人に自覚はありません。「7時間寝ている」と思っていても、実際には何十回も分断されている。
日中の眠気、だるさ、集中しにくさ、気分の落ち込み、そしていらだち。すべてが揃います。
いびきを指摘されたことがある方は、必ずお伝えください。何年も続いた「怒りっぽさ」の正体が、夜の呼吸だったという例は珍しくありません。とくに、体重が増えてから怒りっぽくなった、という経過には注意します(不眠・睡眠障害について)。
リズムのずれ
時間は足りていても、寝る時刻と起きる時刻がばらばらだと、体は時差ボケに近い状態になります。夜勤や交代勤務、休日の寝だめ。ここも確認します。
ホルモンと代謝
甲状腺
いらだちの原因として、まっさきに確認すべき体の病気です。
機能が高すぎる場合は、いらだち、落ち着かなさ、動悸、発汗、手の震え、体重減少、暑がりとして現れます。「イライラして、じっとしていられない」という訴えが、不安症や躁状態とよく似ます。
機能が低すぎる場合は、だるさ、気分の落ち込み、集中しにくさ、むくみ、寒がりとして現れます。こちらはうつ病とよく似ます。
どちらも血液検査でわかります。長く不調が続いていて、一度も調べていないなら、確認する価値があります。
血糖
血糖が下がると、冷や汗、動悸、手の震えとともに、強いいらだちや落ち着かなさが出ます。
糖尿病の治療を受けている方では、薬の効きすぎで起こることがあります。治療を受けていない方でも、食事を抜く習慣があると、夕方に強いいらだちが出ることがあります。「昼を抜いた日は、夕方に必ず荒れる」という自覚がある方は、まずそこを整えてみてください。
鉄欠乏
疲れやすさ、集中しにくさ、頭痛、動悸。そして、いらだち。月経のある女性では珍しくありません。これも血液検査でわかります。
女性のライフステージ
月経の前だけ別人のようになる、更年期に入ってから怒りっぽくなった——時期に連動しているなら、ホルモンの変動を考えます(PMS・PMDDとは?生理前のイライラ・落ち込み・涙の原因と治療/更年期の心の不調|不安・うつ・不眠・イライラの原因と治療)。
痛み・体の不快
慢性の痛みがあると、いらだちは確実に増えます。頭痛、腰痛、肩こり、歯の痛み。痛みは注意を奪い、睡眠を削り、余力を減らします。
本人は痛みに慣れてしまっていて、「これが普通」と思っていることがあります。診察では、痛みの有無も確認します(心身症について/自律神経失調症について)。
脳に関わる要因
ここは頻度としては多くありませんが、見落とすと影響が大きいため、確認します。
高齢の方で「急に怒りっぽくなった」
これは、重要なサインです。
- 認知症の初期:性格が変わったように見えるのが特徴です。とくに、前頭側頭型と呼ばれるタイプでは、抑えが外れることが最初の症状になります。物忘れより先に、言動の変化が現れます
- せん妄:数日のうちに急に始まり、時間帯によって変動します。体の病気、脱水、薬が引き金になります。これは急いで対応が必要な状態です
ご家族が「本人らしくない」と感じたなら、その直感は重要な情報です。ご家族だけのご相談も承っています。
頭部の外傷、けいれん、脳の血管の病気
頭を強く打ったあとから性格が変わった、けいれんを起こしたことがある、脳梗塞や脳出血のあとから怒りっぽい——いずれも、脳の抑制の働きに関わる可能性があります。心当たりがあれば、必ずお伝えください。
飲んでいるもの、吸っているもの
カフェイン
取りすぎると、落ち着かなさ、いらだち、動悸、不眠が出ます。そして不眠が、さらにいらだちを増やす。
意外な落とし穴は、エナジードリンクです。コーヒー換算で相当量を含むものがあり、複数本飲めばかなりの量になります。「夕方以降は飲まない」だけで変わる方がいます。
また、切れるときにも症状が出ます。普段たくさん飲んでいる方が飲まなかった日に、頭痛といらだちが出る——これはカフェインの離脱です。
アルコール
2つの経路で、いらだちを作ります。
飲んでいるとき:抑える働きを直接外します。「酒が入ると人が変わる」と言われる方は、ここが最大の対処点です。
抜けるとき:翌朝の不快感、そして日常的に飲んでいる方では、抜けはじめの時間帯にいらだちや落ち着かなさが出ます。「飲むと落ち着く」のではなく「飲まないと落ち着かない」状態になっていることがあります。
加えて、飲酒は睡眠の後半を壊すため、翌日のいらだちにもつながります(睡眠薬とお酒)。
注意:毎日大量に飲んでいる方が自己判断で急にやめると、危険な症状が起こることがあります。減らしたい場合は、診察でご相談ください。
ニコチン
禁煙してすぐの時期に、いらだちが出るのはよく知られています。ただし、喫煙を続けている方でも、吸えない時間が続けば同じことが起こります。会議が長引くと機嫌が悪くなる、という形で現れます。
薬が、原因になっていることがあります
これは、見落とされやすい領域です。薬を始めた時期と、いらだちが強まった時期が一致していないかを確認してください。
- ステロイド:気分の変動、落ち着かなさ、いらだちが出ることがあります。喘息、皮膚疾患、膠原病などで使われます
- ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬:本来は落ち着かせる薬ですが、まれに逆に興奮やいらだちが出ることがあります(逆説反応)。高齢の方や、お酒と一緒のときに起こりやすいとされます(抗不安薬について/睡眠薬について)
- 同じ薬を減らすとき:急に減らすと、反動でいらだちや不安が強まることがあります
- 抗うつ薬の飲み始め:一時的に落ち着かなさやいらだちが出ることがあります。また、双極性の要素がある方では気分が不安定になることも。開始後に怒りが強まったら、必ずお知らせください(怒りっぽさと双極性障害)
- ADHDの治療薬:コンサータでは、効果が切れる夕方に反動としていらだちが出ることがあります。飲む時間の調整で対応できます(コンサータとは/ADHDと怒り・イライラ)
- 市販の鼻炎薬・かぜ薬:眠気を起こす成分や、鼻づまりを取る成分が、落ち着かなさや不眠を招くことがあります
- 甲状腺の薬:量が合っていないと、いらだちや動悸が出ます
- 禁煙のための薬:気分の変化が報告されています
お薬手帳をお持ちください。市販薬やサプリメントも含めて確認します。ここは、記憶に頼るより記録のほうが正確です。
要注意のサイン
次のいずれかに当てはまるなら、体の要因を優先して調べます。
- 急に始まった:数週間以内に、はっきり変わった
- 年齢が高い:とくに中年以降で「性格が変わった」場合
- 体の症状を伴う:動悸、発汗、体重の変化、震え、むくみ、頭痛
- 薬の開始・変更と時期が一致する
- いびきを指摘されている
- 時間帯や食事と、はっきり連動する
- これまで、血液検査を一度も受けていない
診察では、何を調べるか
お話をうかがったうえで、必要と判断すれば血液検査を行います。甲状腺の働き、貧血、血糖、肝腎機能などを確認します。
加えて、次のことをうかがいます。
- 睡眠:時間、寝つき、中途覚醒、いびき、日中の眠気
- 飲酒量、カフェインの量、喫煙
- 服用中の薬(市販薬・サプリを含む)
- 体の症状:動悸、発汗、体重、痛み
- いらだちが強まる時間帯と、食事との関係
睡眠時無呼吸が疑われる場合は、検査ができる医療機関をご紹介します。
まず試せること
受診を待つあいだ、次の4つは自分で試せます。どれかひとつで変わる方が、実際にいます。
- 睡眠時間を1時間増やす:一週間だけでも
- 夕方以降のカフェインをやめる:エナジードリンクを含めて
- 食事を抜かない:とくに昼食
- お酒を減らす:まず週に2日、飲まない日を作る
そして、記録をつけてください。「いつ・何があって・どのくらい怒ったか」を数行で。時間帯の偏り、食事との関係、睡眠との関係。これが見えると、原因の特定が一気に進みます。
受診を検討する目安
- いらだちが、数週間のうちに急に強まった
- 動悸、発汗、体重の変化、震えなど、体の症状を伴う
- いびきを指摘されている、日中に強い眠気がある
- 薬を始めてから、怒りっぽくなった
- 家族から「性格が変わった」と言われた(とくに高齢の方)
- お酒が増えている、やめられない
- 物を壊す、手が出るといった行動がある
気持ちがつらいとき
いらだちの裏に、消耗が隠れていることがあります。今すぐ誰かに聞いてほしいときは、次の窓口が使えます。診療時間外でも受け付けています。
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・通話無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」 電話・SNSの相談窓口が一覧になっています
ご家族の方へ
「性格が変わった」という印象は、診断のうえで非常に重要な情報です。とくに次の点を、受診の際にお伝えください。
- いつから変わったか:数週間か、数か月か、数年か
- きっかけになりそうな出来事:薬の開始、病気、けが、環境の変化
- いびきや、日中の居眠り:本人は気づきません
- 飲酒量の変化
- 時間帯の偏り:夕方だけ、朝だけ、といった規則性
高齢の方で急な変化がある場合は、できるだけ早くご相談ください。せん妄や認知症の初期であれば、対応の時期が結果を左右します。
よくある質問
内科で「異常なし」と言われました。
一般的な健康診断では、甲状腺の働きが項目に入っていないことがあります。何を調べたかを確認する価値があります。結果をお持ちいただければ、追加で必要な検査を判断します。
血液検査だけで、原因はわかりますか?
すべてはわかりません。睡眠時無呼吸は別の検査が必要ですし、薬の影響や生活要因は、お話をうかがって判断します。検査は手がかりのひとつです。
カフェインは、どのくらいまでなら大丈夫ですか?
個人差が大きく、一律の基準は示しにくいところです。目安としては、夕方以降を避けることと、やめた日に頭痛やいらだちが出るなら量が多いと考えることです。
睡眠薬を飲んでいますが、かえってイライラします。
まれに、落ち着かせるはずの薬で逆に興奮が出ることがあります(逆説反応)。そのまま診察でお伝えください。薬の変更で対応できます。
お酒を減らしたいのですが、やめると眠れません。
寝酒は、寝つきをよくする一方で、眠りの後半を壊します。そのため、翌日のいらだちにつながります。減らし方については診察でご相談ください。毎日大量に飲んでいる方の急な中止は危険な場合があります。
親が急に怒りっぽくなりました。認知症でしょうか。
その可能性もありますし、せん妄、体の病気、薬の影響も考えます。急な変化は、早めの受診をおすすめします。ご家族だけでのご相談も承ります。
体に問題がなかったら、どうなりますか?
そのときは、心の側の要因を丁寧に見ていきます。体を確認しておくことに意味があるのは、除外できるからです。順番として、先に確かめておくのが確実です。
横浜・関内で、原因のわからないイライラにお悩みの方へ
怒りっぽさを「性格」や「ストレス」で説明してしまう前に、確かめられることがあります。そして、そこに原因があった場合、対処はずっと具体的になります。
横浜・関内のみなとメンタルクリニックでは、うつ病、双極性障害、不安症、発達障害、不眠症など、心の不調全般の診療を行っています。必要に応じて血液検査で体の状態も確認し、専門的な検査が必要な場合は連携先をご紹介します。ご家族だけのご相談も承ります。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅からも徒歩5分。土日も診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。女性医師による診療にも対応しています。
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参考・情報源
- Yoo SS, et al. The human emotional brain without sleep: a prefrontal amygdala disconnect. Curr Biol. 2007
- American Psychiatric Association. DSM-5-TR(他の医学的疾患による精神疾患、物質・医薬品誘発性の記述、せん妄)
- 日本甲状腺学会|甲状腺疾患診断ガイドライン
- 日本呼吸器学会|睡眠時無呼吸症候群(SAS)診療ガイドライン
- PMDA|各医薬品 添付文書(ベンゾジアゼピン系薬剤の刺激興奮・錯乱、副腎皮質ステロイドの精神症状、抗うつ薬の投与初期の注意)
- 厚生労働省|e-ヘルスネット(カフェイン・アルコールと健康)
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。