Blog ブログ
2026/06/23
インチュニブの副作用|眠気・血圧低下・ふらつきとの付き合い方を横浜・関内の精神科医が解説
「インチュニブを飲み始めたら、日中の眠気が強い」「立ちくらみやふらつきが気になる」「血圧が下がると聞いて心配」「この眠気は、ずっと続くのだろうか」——インチュニブ(一般名:グアンファシン)を飲み始めた方から、こうした声をよく聞きます。
インチュニブは依存のリスクが低く、衝動性やイライラが目立つ方の選択肢になる薬ですが、ほかのADHD治療薬とは異なる副作用の出方をします。とくに、眠気と血圧への影響は、インチュニブで意識しておきたい点です。このページでは、インチュニブにみられる副作用と、その付き合い方について、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医がわかりやすくご説明します。
この記事は、ADHDの薬(ADHD治療薬)とは|コンサータ・ストラテラ・インチュニブの違い・効果・副作用・選び方という総合ガイドの一部です。インチュニブという薬そのものについてはインチュニブとは|効果・副作用・どんなときに使う薬かをご覧ください。
副作用の顔ぶれは、薬ごとに違います
最初に、全体の見取り図をお伝えします。ADHDの3剤は、効き方が違うのと同じくらい、出やすい副作用の顔ぶれも違います。
- コンサータ:食欲低下、寝つきにくさ、動悸——脳を覚醒方向に動かす薬だから
- ストラテラ:吐き気、食欲低下——飲み始めに消化器の症状が出やすい
- インチュニブ:眠気、血圧の低下、ふらつき——もともと血圧の薬だから
インチュニブの副作用は、ほとんどがこの「もともと血圧の薬」という一点から説明できます。理由がわかると、必要以上に不安にならずにすみますし、対処の見当もつきやすくなります。
インチュニブにみられる主な副作用
インチュニブには、ほかの薬と同じように副作用が起こることがあります。あらわれ方には個人差がありますが、一般に知られているものとして、次のようなものがあります。
- 眠気・だるさ:インチュニブで最も多い副作用とされ、日中に強い眠気を感じることがあります
- 血圧の低下・脈がゆっくりになる:もともと血圧を下げる作用を持つ成分のため、注意が必要です
- 立ちくらみ・ふらつき:血圧の低下に関連して起こることがあります
- 頭痛
- 口の渇き
- 気分の変化
- 便秘:自律神経への作用に関連して起こることがあります
これらは、すべての方に出るわけではありません。出る場合も、その程度はさまざまです。多くは飲み始めや、量を増やした時期に出やすいという傾向があります。
とくに多い「眠気」との付き合い方
インチュニブは、ADHD治療薬のなかでも眠気が出やすい薬とされています。気持ちを落ち着ける方向の作用を持つことと関連していますが、日中に強い眠気があると、仕事や生活に支障が出ることがあります。
なぜ、この薬でとくに眠気が出るのか
理由は、この薬が働きかけるα2受容体の「置き場所」にあります。
インチュniブが狙っているのは、前頭前野にあるα2A受容体です。ところが同じ種類の受容体は、脳幹の青斑核(せいはんかく)——覚醒を保つノルアドレナリン神経が集まっている場所——にも存在しています。しかもそこでは、神経自身の活動にブレーキをかける役目(自己受容体)を担っています。
つまり、薬が届くと、覚醒を保つ神経の活動も少し落ちる。だから眠気が出ます。狙った作用の裏返しであって、異常な反応ではありません。
ちなみに、同じα2受容体に働く薬は、医療現場では鎮静のためにも使われています。この系統が眠気をもたらすのは、薬の性質としてよく知られたことなのです。
運転・危険を伴う作業
とくに注意したいのが、車の運転や、危険を伴う作業です。眠気が強い時期は、これらを控えるか、十分に注意する必要があります。運転をする習慣がある方は、その旨を医師に伝えておきましょう。
お伝えいただければ、飲む時刻の設計や薬の選び方そのものが変わります。仕事で毎日運転する、通勤に自転車を使う、高所や機械を扱う——こうした事情は、遠慮せず最初に共有してください。
眠気を軽くする工夫
眠気は、飲み始めや増量の時期に出やすく、体が薬に慣れてくると軽くなっていくことがあります。ただし、生活に支障が出るほど強い場合や、なかなか改善しない場合は、服用するタイミングや量の見直しを相談してください。飲む時間帯の工夫で対応できることもあります。
具体的には、次のような手が考えられます。
- 飲む時刻を夜に寄せる:眠気のピークを睡眠時間に重ねる考え方です。不眠を伴う方では、これが利点にもなります
- 増やすペースをゆるめる:慣れる時間を長めにとると、眠気が乗り越えやすくなることがあります
- お酒を控える:アルコールは眠気を確実に強めます。飲み始めの時期はとくに
- ほかの薬を見直す:花粉症の薬、市販のかぜ薬や酔い止めなど、眠気を持つ薬が重なっていないか確認します
もうひとつ。眠気の原因が、薬ではないこともあります。もともと睡眠時間が足りていない、いびきが強く夜の呼吸が乱れている、うつの症状が背景にある——こうした場合は、薬をいじるより、そちらを整えるほうが早く解決します。診察では、この見きわめも一緒に行います。
血圧の低下・ふらつきに注意
インチュニブは、もともと血圧を下げる薬として開発された成分を用いています。そのため、ADHDの治療に使う場合でも、血圧が下がったり、脈がゆっくりになったりすることがあります。
仕組みとしては、脳から出ていく交感神経の指令が弱まることで、血管の緊張と心臓の拍動が落ち着く方向に動きます。これも、狙った作用がそのまま出たものです。
血圧が下がると、立ち上がったときの立ちくらみや、ふらつき、めまいなどが起こることがあります。急に立ち上がらない、動作をゆっくりにする、といった工夫が役立つこともあります。立ちくらみやふらつきが強い場合、また、もともと血圧が低めの方や、立ちくらみを起こしやすい方は、その旨を医師に伝えてください。
立ちくらみが起きやすい場面
診察でうかがっていると、次のような場面が繰り返し挙がります。心当たりがあれば、そこを避けるだけで楽になることがあります。
- 朝、布団から起き上がったとき:いったん座ってひと呼吸おいてから立つ
- 入浴後:湯温が高いほど血管が広がります。長湯と熱い湯を避ける
- 飲酒後:血管が広がるうえ、眠気も重なります
- 汗をかいた日、水分が足りていない日:夏場はとくに注意が要ります
- 食後:消化のために血流が消化管へ向かい、血圧が下がりやすい時間帯です
とくに、もともと血圧や心臓・脈に関わる病気がある方、ほかに血圧の薬を飲んでいる方は、慎重な確認が必要です。気になる症状があれば、自己判断せず相談してください。
家庭で血圧を測っておくと、調整が速くなります
ご家庭に血圧計があれば、飲み始めと量を変えた時期だけでも記録してみてください。朝と、ふらつきを感じたときの2場面で十分です。
「なんとなくふらつく」という訴えだけでは、血圧のせいなのか、眠気のせいなのか、別の原因なのかを見分けるのに時間がかかります。数字があると、続けるか・減らすか・時刻を変えるかの判断が一段速くなります。
飲み合わせで、副作用が強く出ることがあります
グアンファシンは、肝臓のCYP3A4という酵素で分解されます。この酵素の働きを強く妨げるもの(一部の抗真菌薬や抗菌薬など、それにグレープフルーツジュース)と一緒だと、薬が体内に残りやすくなり、眠気や血圧低下が強く出ることがあります。
逆に、この酵素の働きを強めるもの(一部の抗てんかん薬や結核の薬など)では、効きが弱まることがあります。
また、血圧を下げる薬とは作用が重なります。お酒や、眠気を持つほかの薬とも重なります。ほかの医療機関でもらっている薬、市販薬、サプリメントがある場合は、お薬手帳をお持ちください。
急にやめると、別の不調が出ることがあります
インチュニブで特に気をつけたいのが、急にやめたときの反応です。血圧に関わる作用を持つ薬であるため、自己判断で急に中止すると、血圧が上がったり、脈が速くなったりすることがあります。
これは、この系統の薬で古くから知られている現象です。血圧を下げる力が急に外れることで、抑えられていた交感神経の働きが一気に戻る。「依存」や「離脱」とは性質が違い、揺り返しと表現するのが正確です。だからこそ、時間をかけて減らせば避けられます。
これは、ほかのADHD治療薬と比べても、インチュニブでとくに注意したい点です。副作用がつらいと感じても、自分の判断で急にやめてしまうのは避けてください。やめる場合も、医師と相談しながら、様子を見て少しずつ進めていきます。減薬・中止の考え方についてはADHDの薬は飲み続ける?やめられる?増量・減薬・中止の考え方もご覧ください。
なお、飲み忘れが数日続いてしまったときも同じ理屈があてはまります。元の量にそのまま戻すと体への負担が大きい場合があるため、自己判断で再開せず、診察でご相談ください。
副作用は「飲み始め」に出やすい
インチュニブの副作用は、飲み始めの時期や、量を増やしたタイミングで出やすく、体が薬に慣れてくるにつれて、少しずつ落ち着いていくことが多いとされています。少ない量から始めて、様子を見ながら段階的に増やしていくのは、こうした副作用をできるだけ抑えるための進め方でもあります。
つまり、飲み始めにつらい症状があっても、続けるうちに軽くなっていく場合があるということです。ただし、無理にがまんする必要はありません。つらい症状があれば、医師に相談しながら、無理のないペースで進めていきます。
時間の見通しを持っておくと、乗り切りやすくなります。インチュニブは効果の判定にも数週間かかる薬です。「副作用は先に出て、効果は後から来る」という順序になりやすいため、最初の時期がいちばん割に合わなく感じます。そこを一緒に越えるのが、診察の役目だと考えています。
自己判断で中止しないことが大切です
副作用がつらいと、「もうやめてしまおう」と思うことがあるかもしれません。しかし、インチュニブは前述のとおり、急にやめると血圧の上昇などが起こることがあるため、自己判断での中止はとくに避けたい薬です。
つらいと感じたときこそ、自分で中断せず、その状態を医師に伝えてください。飲む時間の工夫、量の調整、別の選択肢の検討など、対応できることがあります。安全に治療を続けるためにも、変化は遠慮なく相談してください。
注意が必要な症状
多くの副作用は経過のなかで様子を見られるものですが、なかには早めの相談が必要なものもあります。失神するような強いふらつき、はっきりとした動悸や脈の乱れ、気分のひどい落ち込みなど、これまでにない強い不調を感じた場合は、自己判断せず、できるだけ早く医師に相談してください。
目安として、次のような場合は次の診察を待たずにご連絡ください。
- 意識が遠のく、実際に倒れた
- 脈が明らかに遅い、または乱れている感じが続く
- 立っていられないほどのふらつきが続く
- 気分の落ち込みが強く、日常が回らない
インチュニブを安全に使っていくために、気になる症状や変化は、小さなことでも遠慮なくお伝えください。とくに血圧や脈に関わる症状は、記録しておくと診察で伝えやすくなります。
副作用と効果のバランスで考える
薬を使ううえで大切なのは、副作用と効果のバランスです。副作用が軽く、効果が得られているなら続ける意味がありますし、副作用がつらく生活に支障が出ているなら、量の調整や別の薬への切り替えを検討します。
世界中の臨床試験を統合した比較研究(2018年、Corteseらによるネットワークメタ解析)でも、効果の大きさと「続けやすさ」は別の指標として扱われています。効果が大きい薬が、その人にとって続けられる薬とはかぎらない。実際の治療では、この2つを両方見ながら決めていきます。
このバランスをどう取るかは、その方の生活や状態によって変わります。だからこそ、自己判断ではなく、医師と一緒に見ていくことが大切です。薬剤全体の違いはADHDの薬(ADHD治療薬)とは|コンサータ・ストラテラ・インチュニブの違い・効果・副作用・選び方もご覧ください。
よくある質問
インチュニブの眠気は、いつまで続きますか?
飲み始めや増量の時期に出やすく、体が慣れてくると軽くなっていくことがあります。つらい場合や長く続く場合は、自己判断せず医師に相談してください。飲む時間帯の工夫で対応できることもあります。
眠気が強くて、運転が心配です。
インチュニブは眠気が出やすい薬です。日中の眠気が強い時期は、運転や危険を伴う作業を控えるか、十分に注意してください。運転の習慣がある方は、医師にお伝えください。
立ちくらみがします。大丈夫でしょうか?
血圧の低下に関連して起こることがあります。急に立ち上がらないなどの工夫が役立つこともありますが、強い場合は医師に相談してください。もともと血圧が低めの方は、その旨をお伝えください。
副作用がつらいので、やめてもいいですか?
自己判断での中止は避けてください。インチュニブは急にやめると血圧の上昇などが起こることがあります。まず診察でつらさを伝えていただければ、対応を検討できます。
副作用が出るのは、薬が合っていないということですか?
必ずしもそうではありません。飲み始めに出やすく、続けるうちに落ち着くことも多いものです。ただし、つらさが続く場合は合うかどうかを含めて見直します。
飲み忘れた日は、まとめて飲んでもいいですか?
まとめて飲まないでください。血圧や脈への影響が強く出るおそれがあります。飲み忘れが続いたときの再開のしかたは、診察でご相談ください。
グレープフルーツジュースは避けたほうがいいですか?
薬の分解に関わる酵素に影響するため、習慣的に飲む方はお伝えください。眠気や血圧低下が強く出ることがあります。
眠気が強いので、夜に飲んでもいいですか?
実際に、飲む時刻を夜に寄せる工夫をすることがあります。ただし自己判断で変えず、診察でご相談ください。効果の出方も一緒に変わるためです。
横浜・関内でインチュニブ・大人のADHDについて相談したい方へ
みなとメンタルクリニックでは、大人のADHDの診断・治療に対応しています。「インチュニブの眠気がつらい」「血圧が心配」「続けられるか不安」「別の薬も検討したい」という方も、状態を見ながら一緒に方針を考えていきます。コンサータ(登録医療機関として対応)・ストラテラ・インチュニブのいずれにも対応しています。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
当院は関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。土日も診療しており、お仕事帰りや休日にも通いやすい立地です。WEB予約のほか当日予約にも対応し、女性医師も在籍しています。また、産業医に相談できる体制があり、仕事のストレスや働きづらさについてもご相談いただけます。初めて受診される方は横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れもご覧ください。
受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約ください。当日予約も可能です。
関連ページ
ADHDの薬を知る
- ADHDの薬(ADHD治療薬)とは|コンサータ・ストラテラ・インチュニブの違い・効果・副作用・選び方
- インチュニブとは|効果・副作用・どんなときに使う薬か
- ADHDの薬は飲み続ける?やめられる?増量・減薬・中止の考え方
- ADHD治療薬の薬理学|作用機序・薬物動態・エビデンス
- コンサータとは|効果・作用時間・適正流通管理の仕組み
- ストラテラの副作用|吐き気・眠気・食欲低下との付き合い方
大人の発達障害・ADHDを知る
受診案内
参考・情報源
本記事は、以下の公的情報・添付文書・査読済み研究等をもとに作成しています。副作用への対応・薬剤の調整は、診察にもとづいて医師が判断します。
- PMDA|インチュニブ錠 添付文書・インタビューフォーム(副作用・相互作用・重要な基本的注意に関する情報)
- Cortese S, et al. Comparative efficacy and tolerability of medications for attention-deficit hyperactivity disorder in children, adolescents, and adults: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry. 2018
- Arnsten AFT. The use of α-2A adrenergic agonists for the treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder. Expert Rev Neurother. 2010
- 日本精神神経学会|成人期のADHDの診療に関する資料
医学監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北の精神科救急・被災地医療、神奈川の在宅医療を経て現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・発達障害などを中心に診療。