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2026/07/07
ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)とは?効果・副作用・依存の注意点を横浜・関内の精神科医が解説
「セルシン(ホリゾン)を処方されたけれど、どんなお薬なのだろう」「昔からある薬と聞いたが、大丈夫なのか」「ほかの抗不安薬から、この薬に変えると言われた」——ジアゼパムについて、このような疑問を感じていませんか。お薬の名前を検索して、このページにたどり着いた方もいらっしゃると思います。
ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のなかでも、古くから使われてきた代表的なお薬です。不安をやわらげるだけでなく、筋肉の緊張をゆるめる作用やけいれんを抑える作用もあり、幅広い場面で用いられます。また、体からゆっくり抜けるという性質から、ほかの抗不安薬をやめていくときの「置き換え先」として使われることもある、少し特別な位置づけのお薬です。このページでは、ジアゼパムがどのようなお薬なのか、効果、副作用、依存や減らし方の注意点までを、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。
なお、ここでご紹介するのは、お薬を理解していただくための一般的な情報です。実際に使うかどうか、どのくらいの量にするかは、お一人おひとりの症状や体質、これまでの経過をふまえて医師が判断します。自己判断での服用・中止は避けてください。抗不安薬全体については抗不安薬についてのページも、あわせてご覧ください。
ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)とは
ジアゼパムは、ベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬です。「セルシン」「ホリゾン」は同じ有効成分(ジアゼパム)の別々の商品名で、後発医薬品も発売されています。以下では一般名の「ジアゼパム」として説明します。
ジアゼパムは、世界的にも古くから使われてきた、ベンゾジアゼピン系のいわば代表選手です。長く広く使われてきたため、ほかのベンゾジアゼピン系のお薬の強さを比べるときに、ジアゼパムを「ものさし」として基準にする、という使われ方もされてきました。それだけ、性質がよく知られたお薬だということです。
ジアゼパムの特徴は、不安をやわらげる作用(抗不安作用)に加えて、筋肉の緊張をゆるめる作用(筋弛緩作用)、けいれんを抑える作用(抗けいれん作用)、寝つきを助ける作用(催眠作用)を、バランスよく併せ持っていることです。このため、不安症だけでなく、肩こりや腰痛にともなう筋肉のこわばり、一部のけいれん性の病気など、幅広い場面で用いられます。
どのように効くのか(作用の仕組み)
脳の中では、たくさんの神経が、たえず信号をやりとりしています。不安や緊張が強いときは、この神経の活動が過剰に高ぶっている状態だと考えられています。
私たちの脳には、こうした高ぶりをしずめる「ブレーキ役」の仕組みがあります。その中心となるのが、GABA(ギャバ)という物質です。GABAは、神経の興奮をおさえ、気持ちを落ち着かせる方向にはたらきます。ジアゼパムをはじめとするベンゾジアゼピン系のお薬は、このGABAがはたらく場所に結びついて、GABAの「ブレーキ」をより効きやすくします。いわば、もともと備わっているブレーキの効きを、後押しするお薬です。
このため、ジアゼパムは飲むと比較的すみやかに不安や緊張がやわらぎます。抗うつ薬が、時間をかけて脳の土台を整えていくお薬であるのに対し、ベンゾジアゼピン系は「いま強い不安を、その場でやわらげる」ことが得意なお薬だといえます。
ジアゼパムの大きな特徴——「長く効く」こと
ジアゼパムを理解するうえで、いちばん大切なのが「効いている時間の長さ」です。
ベンゾジアゼピン系のお薬は、効果が続く時間の長さによって、短いものから長いものまで幅があります。ジアゼパムは、このなかでも「長く効くタイプ(長時間型)」に入ります。しかも、ジアゼパムは体の中で分解されたあとにできる物質にも、もとの薬と似たはたらきがあり、それがさらに長く体内にとどまります。結果として、ジアゼパムの効果は、とてもゆっくりと、なだらかに続いていきます。
この「ゆっくり効いて、ゆっくり抜ける」性質は、大きな意味を持ちます。血液中の濃度が急に上がったり下がったりしにくいため、効き目が安定しやすく、そして次に述べるように、お薬をやめていくときの助けにもなるのです。
抗不安薬をやめるときの「置き換え先」として
ジアゼパムが、ほかの抗不安薬と少し違う役割を持つのが、減薬のときです。
体からすばやく抜けるタイプのベンゾジアゼピン系(たとえばエチゾラム=デパスなど)は、効果を実感しやすい反面、急にやめたり飲み忘れたりすると、離脱症状が出やすいという面があります。血液中の濃度が、山と谷のように大きく上下するためです。
そこで、いったん、体からゆっくり抜けるジアゼパムに置き換えてから、少しずつ減らしていく、という方法がとられることがあります。ジアゼパムは血中濃度がなだらかなので、減らしていく途中の「谷」が浅くなり、離脱症状が出にくくなるのです。これは、抗不安薬をやめていくときの、確立された工夫のひとつです。実際の減らし方については、抗不安薬をやめたい・減らしたい人向けの実践ガイドもあわせてご覧ください。もちろん、こうした置き換えや減薬は、必ず医師と相談しながら進めます。
どんなときに使われるのか
ジアゼパムは、その幅広い作用から、次のような場面で用いられます。
- 不安症・緊張が強い状態(気持ちの落ち着かなさ、動悸、緊張など)
- 体の病気にともなう不安や緊張
- 筋肉のこわばり・緊張(肩こり、腰痛、首の痛みなどにともなうもの)
- 一部のけいれん性の病気
- ほかの抗不安薬からの置き換え(減薬を進めるため)
どの目的で使うか、どのくらいの量にするかは、症状や体の状態をふまえて医師が判断します。同じジアゼパムでも、不安に対して使う場合と、筋肉の緊張に対して使う場合とで、使い方が変わってきます。
飲み方の考え方
ジアゼパムは、症状に応じて、決まった時間に飲む場合と、不安が強いときに頓服として飲む場合があります。長く効くお薬なので、頻繁に飲まなくても効果が続きやすいのが特徴です。
大切なのは、自己判断で量を増やさないことです。「効きが足りない気がするから、もう一錠」といった飲み方を続けると、後で述べる依存や耐性につながりやすくなります。飲み方に迷ったときは、自分で調整せず、主治医に相談してください。具体的な量や飲み方は、必ず主治医の指示に従ってください。
注意したい副作用
眠気・ふらつき
ジアゼパムで最も多いのが、眠気、だるさ、ふらつきです。脳の高ぶりをしずめるお薬なので、その作用が強く出ると、眠気やぼんやりした感じにつながります。とくに飲み始めや、量が多いときに出やすくなります。
転倒に注意(とくに高齢の方)
筋肉をゆるめる作用とふらつきが重なるため、とくに高齢の方では、転倒に注意が必要です。夜間にトイレへ立つときなどは、特に気をつけてください。ふらつきが強い場合は、量の調整を相談しましょう。
集中力の低下・物忘れ
一時的に、集中力が落ちたり、ぼんやりしたり、物忘れのような状態が出たりすることがあります。車の運転や、危険をともなう作業は、眠気やふらつきがあるあいだは避けてください。
まれに注意すべきこと
まれに、かえって興奮や不安、いらだちが強まること(脱抑制と呼ばれます)があります。また、呼吸器の病気がある方などでは、慎重に使う必要があります。飲んで気になる変化があれば、早めにご相談ください。
依存・耐性について
ベンゾジアゼピン系のお薬で、必ず知っておいていただきたいのが、依存と耐性です。ジアゼパムも例外ではありません。
長く飲みつづけると、体がお薬に慣れて、同じ量では効きにくく感じられること(耐性)や、お薬がないと落ち着かない状態(依存)が生じることがあります。ただし、ジアゼパムは体からゆっくり抜ける性質のため、すばやく抜けるタイプのお薬に比べると、こうした問題はやや起こりにくいとも言われます。
とはいえ、油断は禁物です。大切なのは、漫然と長く飲みつづけないこと、必要な量を必要な期間だけ使うこと、そして減らすときは急がずゆっくり進めることです。
やめるとき——急にやめない
ジアゼパムも、長く飲んだあとに急にやめると、離脱症状(不安のぶり返し、不眠、いらだち、手のふるえ、まれにけいれんなど)が出ることがあります。体からゆっくり抜けるお薬のため、すばやく抜けるお薬に比べれば離脱症状は出にくいほうですが、それでも自己判断で急にやめるのは避けてください。
やめるときは、状態が安定していることを確認したうえで、時間をかけて少しずつ減らしていきます。前に述べたとおり、ジアゼパムはそのなだらかな性質から、減薬を助ける役割も果たすお薬です。「そろそろ減らしたい」と感じたら、自己判断せず、まずその気持ちを診察でお伝えください。減薬の進め方については、抗不安薬をやめたい・減らしたい人向けの解説もご参照ください。無理のない計画を一緒に立てていきます。
飲み合わせ・生活上の注意
- アルコール:お酒と一緒に飲むと、眠気やふらつき、呼吸をおさえる作用が強まり、危険です。飲酒は避けてください。
- ほかの眠気を起こす薬:睡眠薬、ほかの抗不安薬、一部の痛み止めや風邪薬などと重なると、眠気やふらつきが強まることがあります。
- 運転・危険をともなう作業:眠気やふらつきが出ているあいだは、車の運転や高所での作業などは避けてください。
- ほかに飲んでいる薬:飲み合わせの確認が必要です。市販薬やサプリメントも含めて、使っているものはお伝えください。詳しくは飲み合わせで注意する薬のページをご覧ください。
妊娠・授乳を考えている方へ
妊娠中・授乳中のベンゾジアゼピン系の使用については、時期や状況によって慎重な検討が必要です。自己判断で急に中止すると、かえって離脱症状などのリスクがあります。妊娠を計画している方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断で中止せず、必ず事前に主治医に相談してください。
よくあるご質問(FAQ)
古くからある薬と聞きました。効果や安全性は大丈夫ですか?
ジアゼパムは長く使われてきた実績のあるお薬で、性質がよく知られています。古いこと自体は心配の理由になりません。むしろ、その安定した効き方から、今も幅広く用いられています。依存や眠気といった注意点を押さえて使えば、有用なお薬です。
ほかの抗不安薬から、この薬に変えると言われました。なぜですか?
ジアゼパムは体からゆっくり抜けるため、減薬を進めやすいという特徴があります。すばやく抜けるお薬から、いったんジアゼパムに置き換えてから、少しずつ減らしていく——という方法をとることがあります。減薬に向けた前向きな工夫だとお考えください。
肩こりや腰痛で出されました。精神科の薬なのに、なぜですか?
ジアゼパムには、筋肉の緊張をゆるめる作用があります。このため、精神科以外でも、筋肉のこわばりや痛みをやわらげる目的で使われることがあります。抗不安薬だからといって、心配する必要はありません。
お酒を飲んでもいいですか?
飲酒は、眠気やふらつき、呼吸をおさえる作用を強め、危険です。ジアゼパムを飲んでいるあいだは、飲酒は避けてください。
横浜・関内でジアゼパムについて相談したい方へ
「セルシン(ホリゾン)を始めるべきか迷っている」「いま飲んでいるが、このままでよいか相談したい」「依存が心配」「そろそろ減らしたい」——そうした不安は、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。みなとメンタルクリニックは、横浜市中区・関内駅から徒歩2分の精神科・心療内科クリニックです。一人ひとりの状態や希望をうかがいながら、無理のない治療を一緒に考えていきます。馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。
受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約ください。初めて受診される方は初診の方へ、受診前に確認したいことがある方はよくある質問もあわせてご覧ください。
関連ページ
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参考文献・情報源
本記事の内容は、ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)およびベンゾジアゼピン系抗不安薬に関する以下の資料を参考にしています。個々の薬剤の薬物動態・効能・副作用については、最新の添付文書・インタビューフォーム(IF)を出典としています。
- セルシン錠・ホリゾン錠(ジアゼパム)添付文書・インタビューフォーム
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)|医薬品の適正使用に関する情報
- 厚生労働省|こころの健康・こころの病気に関する情報
- 日本神経精神薬理学会|関連ガイドライン
- DSM-5-TR|アメリカ精神医学会による精神疾患の診断基準
- ICD-11|世界保健機関による国際疾病分類
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。