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2026/06/23
発達障害の配慮を職場にどう伝える?診断書・意見書の使い方と産業医面談を横浜・関内の精神科医が解説
職場に配慮をお願いしたい。でも、どう切り出せばいいのか、見当もつかない。そもそも、発達障害であることを、どこまで伝えるべきなのか。診断書はもらえるけれど、それをいつ、誰に、どう使えばいいのか。産業医との面談があるらしいが、何を話せばいいのか、考えるだけで気が重い――。発達障害(ADHD・ASD)の特性を抱えて働く方が、いざ職場に配慮を求めようとするとき、こうした「伝え方の壁」にぶつかることは、本当に少なくありません。
必要な配慮があるのに、それをうまく伝えられないばかりに、結局また無理を続けてしまう。これは、あまりにもったいないことです。横浜・関内のみなとメンタルクリニックの外来でも、「配慮してほしいけれど、伝え方が分からない」というご相談を数多くお受けします。このページでは、職場に配慮をどう伝えればよいのか、開示するかどうかの判断、そのまま参考にできる伝え方の具体例、診断書・意見書の使い方、産業医面談の活用、そして困ったときの相談窓口まで、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医・産業医が、実務に即して、ていねいにご説明します。発達障害と休職・復職の全体像は「発達障害(ADHD・ASD)と休職・復職|つまずきやすい理由と職場での工夫」もご覧ください。
「伝えること」は、配慮を受けるための第一歩です
合理的配慮を受けるには、まず、自分の特性や困りごと、必要な配慮を、職場に伝える必要があります。当たり前のようですが、ここがいちばんの関門です。職場は、本人から伝えられて、はじめて「では、どんな調整ができるか」を検討できる。「言わなくても、察してほしい」という気持ちはとても自然なものですが、見た目に分かりにくい発達障害では、伝えなければ配慮にはつながりにくいのが、残念ながら現実です。
とはいえ、やみくもに打ち明ければいい、というものでもありません。何を、誰に、どこまで伝えるかは、慎重に考えたほうがよい場面もあります。だからこそ、伝え方をあらかじめ準備しておくこと。これが、安心して配慮を求めるためのいちばんの支えになります。この記事では、その準備の進め方を具体的にお伝えしていきます。行き当たりばったりで伝えるより、ずっと心強いはずです。
「開示する/しない」は、あなたが選べます
そもそも、発達障害であることを職場に伝える(開示する)かどうか。これは、ご本人が選べることであって、義務ではありません。まずは、開示することの利点と、慎重に考えたい点を、フラットに整理しておきましょう。
開示する利点としては、合理的配慮を正式に求めやすくなること、困りごとへの理解が得られて誤解されにくくなること、無理を隠して取りつくろう負担(カモフラージュ)から解放されること、そして体調を崩したときに相談しやすくなることが挙げられます。一方、慎重に考えたい点もあります。相手や職場の理解度によっては、伝わり方に差が出ること。一度伝えると、撤回は難しいこと。そして、「どこまで」「誰に」伝えるかで、その後の働きやすさが変わってくること。
ここで大切なのは、「全員に伝える」必要はまったくない、ということです。人事や直属の上司など、配慮の調整に実際に関わる人にだけ伝える、という形でも十分に成り立ちます。どの範囲に、どう伝えるのが自分にとっていいのかは、一人で抱え込まず、主治医や産業医と相談しながら決めていくと安心です。
「全部伝える」か「隠す」かの、二択ではありません
開示というと、「発達障害だと洗いざらい打ち明けるか、それとも完全に隠し通すか」という、ゼロか百かの選択に感じられるかもしれません。でも、実際には、そのあいだの伝え方がちゃんとあります。ここを知っておくと、ぐっと気が楽になります。
たとえば、診断名そのものは伝えずに、「こういう作業が苦手なので、こうしてもらえると助かります」という、困りごとと依頼だけを伝える方法があります。「ADHDです」「ASDです」と明かさなくても、具体的な配慮を求めることは十分に可能なのです。逆に、しっかり開示したうえで、障害者雇用枠での手厚い配慮を受ける、という選択肢もあります。どのレベルで伝えるかは、職場の状況やご自身の希望に応じて選んでいい。グラデーションのなかから、自分に合った濃さを選べる、と考えてください。
何を伝えると、配慮につながりやすいか――「3点セット」で伝える
いざ配慮を求めるとき、じつは「発達障害です」という診断名だけを伝えても、職場は具体的に何をすればいいのか、かえって分からないことがあります。大切なのは、診断名よりも、「何に困っていて、どんな配慮があれば働きやすいか」を、具体的に伝えることです。
コツは、次の3点をセットで伝えること。これがそろうと、配慮が現実的なものになり、職場の納得も得やすくなります。ひとつめが、困っていること――具体的な場面で、何に困るのか。ふたつめが、あると助かる配慮――どうしてもらえると働きやすいか。みっつめが、自分でしている工夫――すでに取り組んでいる努力。
なぜ、この3点なのか。「困りごと」だけを伝えると、職場は「で、どうすればいいの?」と戸惑ってしまう。「依頼」だけをぶつけると、ときにわがままに聞こえてしまう。そこに「自分の努力」を添えることで、「本人も、できる工夫はしたうえで、この配慮を求めているんだ」という誠実さが伝わる。この誠実さが、職場の協力を引き出す、何よりの潤滑油になります。一方的なお願いではなく、歩み寄りの提案として届くのです。
そのまま使える、伝え方の具体例
では、実際にどう言えばいいのか。場面ごとの例を挙げます。そのまま読み上げるためのものではなく、自分の状況に合わせて言葉を入れ替える「型」として参考にしてください。
- ADHDの特性がある方の例:「複数の仕事が同時に来ると、優先順位がつけられず、ミスが増えてしまいます(困りごと)。指示を一つずつ、できれば文書やチャットで出していただけると、抜け漏れを防げます(依頼)。自分でも、タスクをリスト化して管理するようにしています(工夫)。」
- ASDの特性がある方の例:「『適当に』『いい感じに』といったあいまいな指示だと、どこまでやればよいか分からず、固まってしまいます(困りごと)。『いつまでに・何を・どの順で』と具体的に示していただけると、きちんと取り組めます(依頼)。指示はメモして、自分で手順書を作るようにしています(工夫)。」
- 感覚過敏がある方の例:「周囲の音や話し声が気になって、集中が途切れてしまいます(困りごと)。可能であれば、静かな席や、イヤホン(イヤーマフ)の使用を認めていただけると助かります(依頼)。集中したい時間帯を決めて取り組むようにしています(工夫)。」
どの例も、先ほどの3点セットの形になっているのが、お分かりいただけると思います。こうした言い回しを、一人で組み立てるのが難しいときは、診察のなかで一緒に準備することができます。とくに、その場で言葉にするのが苦手な方は、伝えたいことをあらかじめ書き出して、紙にして持参する方法がとても役立ちます。口で言えなくても、渡せばいい。それも立派な伝え方です。
診断書・意見書の役割
職場に配慮を求めるとき、医師が作成する診断書や意見書が、客観的な根拠として大きな力を発揮します。「本人がつらいと言っている」だけだと、職場も判断に迷いますが、そこに医学的な裏づけが加わると、対応をぐっと検討しやすくなる。あなたの訴えに、専門家の後ろ盾がつくイメージです。この二つは、役割が少し違います。
診断書は、診断名や病状、就労や休養に関する医師の判断などを記したもの。休職の手続き、復職の可否、配慮の必要性を職場に示すときの、基本的な書類です。一方、意見書(就労に関する意見書など)は、診断名だけでなく、「どんな配慮があると働きやすいか」という具体的な中身まで記すことができます。たとえば「業務量の調整が望ましい」「段階的な復帰が望ましい」「指示は具体的・明確に伝えることが望ましい」といった形で、職場が取り組むべき調整の方向性を、医師の名前で示せる。配慮を具体化したいときに、とりわけ役立ちます。当院では、診断書や、就労・復職に関する意見書の作成に対応しており、どんな内容を記載するか、どこまで職場に伝えるかについても、ご本人と相談しながら進めます。
「何を書いてもらうか」も、相談できます
ここは、意外と知られていない、大事なポイントです。診断書・意見書は、ただ黙って受け取るものではなく、「何を、どう書いてもらうか」を、こちらから相談できるものなのです。たとえば、診察で、こんな希望を伝えることができます。
- 「診断名は伏せて、必要な配慮の内容だけを記してほしい」
- 「具体的な配慮の例(業務量・指示の出し方など)を、盛り込んでほしい」
- 「段階的な復帰が望ましい、という方針を記してほしい」
- 「通院のための時間への配慮を、記してほしい」
職場にどこまで伝えたいか、どんな配慮を求めたいかによって、書類に書くべき中身は変わってきます。「何を書いてもらえば、職場に伝わりやすいだろう」と迷ったときは、その迷いごと、診察で一緒に考えていきましょう。書類は、あなたの代わりに、医師の言葉で職場に語りかけてくれる、心強い味方です。
産業医面談を、味方につける
一定規模以上の事業場には、産業医がいます。産業医は、働く人の健康管理を担い、休職・復職の場面では、復職の可否や必要な配慮について、職場に意見を述べる立場です。発達障害のある方にとって、産業医面談は、配慮を「絵に描いた餅」で終わらせず、現実のものにするための、重要な機会になります。
ここで、主治医と産業医の役割の違いが効いてきます。主治医が「病状」を診るのに対し、産業医は「その職場で、安全に働き続けられるか」という、職場に即した視点を持っています。主治医の意見書をもとに、産業医が、職場の実情をふまえて、具体的な配慮や働き方を、職場とのあいだで調整していく。この連携が、配慮を、机上の理想から、実際に回る仕組みへと落とし込んでくれるのです。
産業医面談では、どんな業務・場面でとくに負担を感じるか、どんな配慮があれば働きやすくなるか、現在の体調や通院・治療の状況、(復職の場合)どのくらいのペースで戻りたいか、自分なりにしている工夫――こうしたことを伝えると、調整が進みやすくなります。
産業医面談、緊張する方へ――準備のコツ
「面談で、うまく話せる自信がない」。そう不安に感じる方は、とても多いです。そういうときこそ、事前の準備が、あなたを助けてくれます。いちばん効くのは、伝えたいことを箇条書きにしたメモを作り、当日持参すること。緊張で頭が真っ白になっても、メモさえあれば、伝え漏らしを防げます。話すのが苦手なら、そのメモを見せながら、あるいは渡しながら話してもいい。
さらに、主治医に「産業医に、こういうことを伝えたい」とあらかじめ相談し、それを意見書に反映してもらうのも、有効な手です。そうすれば、あなたが口頭でうまく言えなくても、書面が代わりに語ってくれます。とくに、ASDの特性などで、その場で言葉にするのが難しい方には、この「書いて持参する・書面に託す」という方法が、大きな助けになります。一人で、ぶっつけ本番でのぞむ必要はないのです。
職場に産業医がいない場合
小規模な事業場では、産業医がいないこともあります。でも、その場合でも、配慮を求めることをあきらめる必要はまったくありません。主治医の診断書・意見書をもとに、人事や上司と直接相談する形になります。
当院では、精神科の診療に加えて、産業医の視点からの相談にも対応しています。職場に産業医がいない場合でも、「どんな配慮を、どう求めればいいか」「書類に、何を書いてもらえばいいか」「面談や相談の場で、どう話せばいいか」といったことを、ご相談いただけます。職場との対話の進め方を、一緒に準備していけます(仕事のストレスや休職・復職の相談全般は仕事のストレスで限界を感じている方へ|産業医・休職・復職のご相談もご覧ください)。
復職するときの「職場復帰支援」の流れ
休職から復職する場合、多くの職場では、段階を踏んだ職場復帰支援が行われます。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、こうした段階的な進め方が示されています。一般的な流れは、次のようなものです。
- 1.主治医による「復職可能」の判断:症状の回復を確認し、診断書を作成
- 2.産業医・職場との面談:働き方や必要な配慮を調整
- 3.職場復帰支援プランの作成:勤務時間・業務内容・段階的な戻し方を計画
- 4.試し出勤・段階的復帰:短時間や軽い業務から慣らしていく
- 5.フォローアップ:復帰後も定期的に状態を確認し、調整
発達障害のある方では、この流れのなかに、特性に合った配慮をしっかり組み込んでおくことが大切です。「復帰できるか」だけでなく、「どんな配慮があれば、続けられるか」まで、復帰プランに書き込んでおく。この一手間が、再休職を防ぐ、いちばんの予防策になります。
配慮を求めても、不利益な扱いは禁じられています
「配慮を求めたら、評価が下がるんじゃないか」「面倒な人だと思われて、居づらくならないか」――こうした不安から、声を上げることをためらう方は少なくありません。その不安は、よく分かります。でも、知っておいてください。障害を理由とする不当な差別的取扱いは、法律で禁じられています。合理的配慮を求めたことを理由に、不利益な扱いをすることは、法の趣旨に反する行為です。配慮を求めるのは、あなたの正当な権利なのです。
もし、配慮の求めに対して適切な対応が得られず、職場との話し合いだけでは解決が難しい場合には、外部に相談できる窓口があります。一人で泣き寝入りする必要はありません。
困ったときの、相談先
職場との調整がうまくいかないとき、一人で抱え込まないでください。次のような相談先があります。
- 地域障害者職業センター:職場復帰支援(リワーク支援)、職場との調整の支援、ジョブコーチによる支援など
- ハローワーク(専門援助部門):障害のある方の就労相談
- 障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面の相談
- 各都道府県の労働局:差別や合理的配慮をめぐる相談・紛争解決の援助
- 就労移行支援事業所:復職・就労に向けた訓練と支援
これらの機関と、医療機関が連携しながら支えていくこともできます。当院でも、必要に応じて、こうした地域の支援機関と連携しながら、復職や、その後も働き続けることを支えていきます。
配慮は、「対話」で決めていくもの
最後に、いちばん根っこにある考え方をお伝えします。合理的配慮は、本人が一方的に要求するものでも、職場が一方的に決めるものでもありません。本人と職場が、対話しながら、現実的な調整点を見つけていくものです。事業主に過重な負担とならない範囲で、という前提もあります。
だから、「これができないなら、もう無理です」と一方的に突きつけるより、「こういう困りごとがあるのですが、こんな調整は可能でしょうか」と、相談のかたちで持ちかけるほうが、対話はずっとスムーズに進みます。診断書・意見書や産業医面談は、この対話を支えるための「材料」です。そして、その材料の準備を、医療機関が手伝うことができる。あなたは、丸腰で交渉のテーブルにつく必要はないのです。使える材料と支援を、しっかり活用しながら進めていきましょう。
よくある質問
診断名を職場に知られたくありません。配慮は受けられますか?
診断名を伏せ、必要な配慮の内容だけを伝える形も可能です。意見書の書き方も相談できます。どこまで伝えるかは、ご本人が選べますので、ご安心ください。
診断書は、すぐに書いてもらえますか?
診察のうえで、診断書や意見書の作成に対応しています。内容や記載のしかたについても、ご本人と相談しながら進めます。
産業医面談で、不利なことを言われないか心配です。
産業医は、働く人が安全に働き続けられるよう支える立場であり、あなたを評価して不利にする立場ではありません。不安な点は、事前に主治医に相談し、伝えたいことをメモに整理しておくと安心です。
配慮をお願いしたら、評価や立場に影響しませんか?
障害を理由とする不利益な取扱いは、法律で禁じられています。それでも対応に困った場合は、労働局や地域障害者職業センターなどの窓口、あるいは医療機関にご相談ください。
伝え方を、どう準備すればいいか分かりません。
診察のなかで、「何に困っているか」「どんな配慮を求めるか」を一緒に整理し、伝え方やメモの作り方まで準備することができます。一人で抱え込まず、ご相談ください。
上司に理解がありません。どうすればいいですか?
上司個人に伝わりにくい場合は、人事や産業医を通す、診断書・意見書という客観的な材料を使う、地域の支援機関に間に入ってもらう、といった方法があります。状況に応じて、進め方を一緒に考えます。
横浜・関内で、発達障害の職場配慮を相談したい方へ
配慮を求めることは、わがままでも甘えでもありません。あなたが、これからも働き続けるための、正当で前向きな一歩です。ただ、その一歩を、たった一人で踏み出すのは心細い。だからこそ、伝え方の準備も、書類の用意も、面談の備えも、一緒にやらせてください。丸腰で立ち向かう必要はないのです。
みなとメンタルクリニックでは、発達障害(ADHD・ASD)の診断・治療に対応し、職場への配慮の伝え方、診断書・意見書の作成、産業医の視点からの相談にも応じています。精神保健指定医・精神科専門医といった専門資格を持つ医師が診察にあたり、さらに日本医師会認定産業医も在籍しているため、精神科の診療と産業医の視点の両面から、「どう職場に伝え、どう働き続けるか」を一緒に考えていきます。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。土日も診療しており、お仕事帰りや休日にも通いやすい立地です。当日予約にも対応し、女性医師も在籍しています。「配慮をどう求めればいいか分からない」「書類に何を書いてもらえばいいか相談したい」「面談の準備を手伝ってほしい」という方は、一人で抱え込まず、どうぞご相談ください。WEB予約はこちらから、ご不明な点はよくある質問もご覧ください。
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参考・情報源
本記事は、以下の公的情報をもとに作成しています。制度の詳細や最新の取り扱いは、公式情報や各窓口でご確認ください。
- 厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
- 厚生労働省|障害者差別解消法(2024年4月 事業者の合理的配慮の提供義務化)
- 厚生労働省|障害者雇用促進法(合理的配慮・法定雇用率)
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構|地域障害者職業センター・職場復帰支援
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・発達障害などを中心に診療。産業医として、休職・復職や職場のメンタルヘルスにも対応。