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2026/06/17
大人の発達障害の診断・検査の流れ|心理検査でわかること|横浜・関内の精神科が解説
「検査を受ければ、はっきりするんでしょうか」
発達障害の相談で、最初に聞かれることです。何十年も「自分はダメだ」と思ってきた人が、その正体を知りたいと願う。当然のことです。
けれど、正確にお答えします。発達障害の診断は、一つの検査で白黒がつくものではありません。
血液検査で数値が出るわけでも、画像で影が写るわけでもない。では、何をどう調べて、何がわかるのか。そして、検査で何がわからないのか。
この記事では、診断と検査の実際を、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が、包み隠さず解説します。
検査を検討している方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。心理検査は保険適用で実施しています。費用を理由に、ためらう必要はありません。
▶ WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は初診の方へをご覧ください。
診断は、3つの材料を組み合わせて行います
発達障害の診断で用いる材料は、大きく3つです。どれか一つでは決まりません。
- いまの困りごと(問診)
- 子どもの頃からの経過(生育歴)
- 心理検査
そして、これらと同じくらい重要なのが——4つ目、他の疾患の除外です。
材料①:いまの困りごと
最初に伺うのは、「いま、何に困っているか」です。
- 仕事で、どんなミスが起きているか
- 対人関係で、どうつまずくか
- 生活(片付け、金銭管理、時間管理)はどうか
- 感覚の過敏さはあるか
- 気分、睡眠、不安はどうか
ここで、大切なことをお伝えします。診断名は、ゴールではありません。困りごとを整理し、対処を組み立てるための道具です。だから、「困りごとを言語化する」というこの作業自体が、すでに治療の一部なのです。
うまく話せなくても構いません。メモを書いて持ってきてください。質問に答える形のほうが話しやすければ、こちらから順に聞いていきます。
材料②:生育歴——ここが、最も重要です
発達障害は、生まれ持った特性です。大人になってから発症するものではありません。
したがって、診断の絶対条件がこれです。子どもの頃から、特性が存在していたこと。
だから、必ず伺います。
- 忘れ物、失くし物は多かったか
- 授業中、座っていられたか。話を聞けていたか
- 友人関係はどうだったか。集団に馴染めたか
- こだわりや、変化への苦手さはあったか
- 先生から、どんなことを言われていたか
持ってきていただけると助かるもの
- 通知表——所見欄が、驚くほど雄弁なことがあります。「忘れ物が多い」「集中が続かない」「マイペース」といった記載は、貴重な記録です
- 母子手帳
- 作文や絵などの、当時の記録
ご家族に同席していただけると、精度は格段に上がります。本人が覚えていない幼少期の様子を、親御さんが記憶していることが多いからです。
ただし——記録も家族の証言もなくても、診断はできます。ご本人の記憶と、現在の様子から、慎重に見立てを立てます。「資料がないから受診できない」と諦めないでください。
材料③:心理検査——当院は保険適用です
心理検査は、「診断を確定させる装置」ではありません。ここは、正確に理解していただきたい点です。
心理検査が明らかにするのは、「あなたの認知の凸凹」です。何が得意で、何が苦手か。その差はどれくらいか。
知能検査(WAIS)
成人の発達障害の評価で、中心的に用いられる検査です。
「知能検査」と聞くと、「頭の良し悪しを測られる」と身構える方がいます。違います。見ているのは、総合点ではありません。その内訳の、バラつきです。
WAISでは、複数の領域を測定します。おおまかには——
- 言語理解:言葉で考え、説明する力
- 知覚推理:目で見た情報から、法則を見つける力
- ワーキングメモリ:情報を一時的に頭に保持して、操作する力
- 処理速度:単純な作業を、正確に速くこなす力
発達障害の方では、この4つのあいだに、大きな差が出ることがあります。
たとえば——言語理解は非常に高いのに、処理速度が極端に低い。すると、「難しい理屈は理解できるのに、単純な事務作業でミスが出る」という、周囲から見ると理解しがたい現象が起きる。「頭はいいのに、なぜこんな簡単なことができないんだ」と言われてきた理由が、ここで数字として見えるのです。
この「見える化」には、計り知れない意味があります。何十年も「怠けている」と責められてきたことが、脳の特性として説明される。多くの方が、この瞬間に涙を流されます。
その他の検査
症状の傾向を確認する質問紙などを、必要に応じて組み合わせます。どの検査を行うかは、状態に合わせて決めます。
費用について——保険適用です
当院では、心理検査を保険適用で実施しています。
「発達障害の検査は高額」というイメージから、受診をためらう方がいます。自費で数万円という医療機関もあるためです。当院では、その心配は不要です。
さらに、通院費用そのものについては、自己負担が原則1割になる自立支援医療の制度もあります。費用を理由に、自分を知る機会を諦めないでください。
カウンセリング・心理検査をご希望の場合は、医師の診察のうえで、患者様と検査のスケジュールをご相談します。
材料④:他の疾患の除外——これを飛ばすと、誤診します
ここが、実は最も重要かもしれません。
「集中できない」「ミスが多い」「忘れっぽい」——これらの症状は、発達障害以外でも、大量に起こります。
- うつ病:思考力・集中力の低下は、うつ病の中核症状です
- 睡眠障害:慢性的な睡眠不足は、確実に注意力を削ります。睡眠時無呼吸症候群も含めて評価します
- 双極性障害:躁状態の多弁・衝動性は、ADHDとよく似ます
- 不安症:心配が頭を占めていれば、集中できません
- 社交不安障害:対人場面の苦手さは、ASDと紛らわしい
- 体の病気:甲状腺機能異常、貧血。血液検査で確認します
決定的な見分けのポイント
「いつから、その症状があるか」——これに尽きます。
発達障害の特性は、子どもの頃から一貫して存在します。
だから、「大人になってから、急に集中できなくなった」なら、それは発達障害ではない可能性が高い。うつ病、睡眠障害、体の病気を、まず疑うべき状況です(ミスが増えた・集中できない方の記事)。
ここを飛ばして「ADHDです」と診断してしまうと、本来治療できたはずのうつ病が見逃されます。だから、除外に時間をかけます。
診察の流れ
初診
いまの困りごと、経過、生育歴を伺います。必要に応じて、体の病気を除外するための検査を行います。
初診で診断が確定することは、あまりありません。それは慎重に見ているからであって、時間稼ぎではありません。
心理検査
医師の診察のうえで必要と判断された場合、スケジュールをご相談して実施します。検査には、ある程度の時間がかかります。
結果のフィードバック
ここが、いちばん大切な時間です。
検査結果は、数字を渡して終わりではありません。その凸凹が、あなたの日常のどの困りごとと、どうつながっているか。それを一緒に読み解いていきます。
「処理速度が低いから、この事務作業でミスが出ていた」
「ワーキングメモリが弱いから、口頭の指示が抜け落ちていた」
——ここまで来て、はじめて「じゃあ、どうするか」の話ができます。メモを取る。指示を文字でもらう。作業を分割する。環境を変える。
検査は、対処に接続してこそ意味を持ちます。
「診断がつかなかったら」どうなるのか
これを心配して、受診をためらう方がいます。
診断がつかなくても、困りごとは残ります。そして、その困りごとには対処できます。
「グレーゾーン」——特性はあるが、診断基準は満たさない。そういう方は、大勢いらっしゃいます。
けれど、診断名の有無で、対処法が変わるわけではありません。ワーキングメモリが弱ければ、メモを取る。感覚が過敏なら、環境を調整する。診断がつこうがつくまいが、やることは同じです。
だから、「診断がつくかどうか」を心配して受診をためらう必要は、まったくありません。
診断がつくと、何が変わるのか
① 自責が、ほどけます
これが、最大の効用です。
「怠けていたのではない。脳の特性だった」——この理解が入ると、何十年も自分に向けてきた刃が、下ろせるようになります。
② 対処が、具体的になります
漠然と「頑張る」のではなく、自分の凸凹に合わせた、狙いを定めた工夫ができるようになります。
③ 環境を、変えられます
職場への配慮依頼は、医師の意見書を通じて正式に行えます。当院には日本医師会認定産業医の資格を持つ医師が在籍しています(産業医・休職・復職のご相談ページ)。
④ 治療の選択肢が、開きます
ADHDには、コンサータ、ストラテラ、インチュニブといった、効果のある薬があります。診断がなければ、この選択肢にたどり着けません。
受診の目安
- 子どもの頃から、忘れ物やケアレスミスが多かった
- 対人関係で、繰り返し同じつまずき方をする
- 仕事でミスが続き、叱責されることが多い
- 仕事が続かない、転職を繰り返している
- うつや不安で治療しているが、なかなか良くならない
- ネットのセルフチェックで、当てはまる項目が多かった
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。祝日以外は毎日診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。心理検査は保険適用で実施しています。女性医師も在籍しています。
よくある質問
心理検査は、いくらかかりますか?
当院では保険適用で実施しています。自費で高額になる医療機関もありますが、当院ではその心配は不要です。さらに、通院費用については自立支援医療(自己負担1割)の制度も利用できます。
初診で、すぐ検査を受けられますか?
まず診察で、いまの困りごとと経過を伺います。そのうえで、検査が必要と判断された場合に、スケジュールをご相談します。検査ありきではなく、まず話を聞くところから始めます。
子どもの頃の記録が、何もありません。
診断できます。ご本人の記憶と、現在の様子から見立てを立てます。記録や家族の証言があれば精度は上がりますが、なければ診断できないというわけではありません。諦めずにお越しください。
ネットの診断テストで、当てはまる項目が多かったのですが。
セルフチェックは、受診のきっかけとしては有用です。ただし、診断はできません。うつ病や不安症、睡眠障害でも、同じような項目に当てはまります。自己判断で決めつけず、一度ご相談ください。
診断されたら、会社に報告する義務はありますか?
ありません。伝えるかどうか、どこまで伝えるかは、あなたが決めることです。診療情報が、あなたの同意なく職場へ伝わることは、決してありません。
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参考文献・情報源
- 厚生労働省|発達障害|こころの病気について知る
- 日本精神神経学会|発達障害の診断に関する資料
- DSM-5-TR(アメリカ精神医学会)/ICD-11(世界保健機関)
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。