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2026/06/10

うつ病のときどう過ごす?療養・休職中の過ごし方とセルフケアを精神科医がやさしく解説

「休職の診断書は出しました。では、明日から何をして過ごしますか」——この問いに、すぐ答えられる方はほとんどいません。ずっと働き続けてきた人ほど、「休む」の中身を知らないのです。

そして、休みに入った初日から、多くの方が同じ罠にはまります。平日の昼間、家にいることへの居心地の悪さ。「何かしなければ」という焦り。気づけば資格の勉強を始めていたり、たまった家事を一気に片付けようとしていたり。休養と精神療法の記事で書いたとおり、休むことは治療です。でも、その治療の「やり方」は、誰も教えてくれません。

この記事では、うつ病の療養期間をどう過ごすのかを、時期ごとに、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。そもそも自分の状態がどの段階なのか迷っている方は、うつ病の主な症状気分の落ち込みとの違いもあわせてご覧ください。

大前提——回復は直線ではなく、ジグザグに進む

最初に、この一点だけは頭に入れておいてください。うつ病の回復に、右肩上がりの直線はありません。良い日のあとに悪い日が来ます。3歩進んで2歩下がる。これが正常な経過です。

この波を知らないと、調子が戻った日に「治った」と喜び、翌日沈んで「振り出しに戻った」と絶望する——という消耗を、何度も繰り返すことになります。長い目で見れば波の底は少しずつ浅くなっているのに、日々の上下だけを見ていると、それが見えません。だから診察では、必ず「先月と比べてどうですか」と聞きます。比べる相手は昨日ではなく、先月なのです。

第1期:ひたすら休む——「何もしない」に耐える時期

症状が重い時期にやるべきことは、たった一つ。休むことです。眠れるだけ眠っていい。一日中横になっていていい。テレビもスマホも見る気力がなくても、それでいい。

この時期にいちばん多い相談が、「休んでいるのに、罪悪感で休んだ気がしない」というものです。なりやすい人の記事で書いたとおり、うつ病になるのは責任感が強く手を抜けない方たちですから、当然といえば当然です。ただ、その罪悪感自体が、思考が自責に偏るといううつ病の症状でもあります。罪悪感が消えてから休むのではなく、罪悪感を抱えたまま休んでください。回復とともに、罪悪感のほうが先に軽くなります。

とくに、仕事に全力を注ぎ続けた末に動けなくなった方——燃え尽き症候群に近い経過をたどった方は、この「何もしない」に耐えるのがひときわ難しいものです。

この時期のセルフケアで意味があるのは、次の3つくらいです。

第2期:生活のリズムを取り戻す——回復のサインが出てきたら

エネルギーが戻り始めると、「散歩でもしてみようか」という気持ちが自然に湧く日が出てきます。ここからが第2期。目標は、活動量を増やすことではなく、生活の骨組みを立て直すことです。

朝、起きて、光を浴びる

まずここから。起きる時間を一定にして、カーテンを開けて朝の光を浴びる。体内時計が整うと、夜の眠りの質が上がり、日中の調子も安定しやすくなります。昼夜が逆転していた方は、まずここの立て直しからです。

食事を三度、決まった時間に

おいしく食べられなくても構いません。時間を決めて口に入れる、それだけで生活の骨組みになります。

散歩から始める、ゆるやかな運動

近所を10分歩く。それで十分な運動です。運動が気分に良い影響を与えることはよく知られていますが、大事なのは「続けられる量」であって、追い込むことではありません。歩けた日を基準にせず、歩けない日があっても構わない、という構えでいてください。体のだるさや不調が抜けないときは、自律神経失調症の記事一覧も参考になるはずです。

回復期こそ、無理をしがち

皮肉なことに、この時期がいちばん危ないとも言えます。少し動けるようになった手応えから、一気に予定を詰め込んで、反動でどんと沈む。「昨日できたのに今日できない自分はだめだ」——これも自責の症状です。良い日にこそブレーキを、と覚えておいてください。

やらないほうがいいこと

大きな決断をしない

これがいちばん大事な「やらないこと」です。退職、離婚、引っ越し、大きな買い物。うつ病のさなかは、思考が悲観の方向へ強く偏っています。その状態で下した決断は、回復してから後悔することが多いのです。

「辞めたい」しか考えられなくなっている方こそ、この罠のただ中にいます。辞めるかどうかを決めるのは、回復してからでいい。そのために休職があるのです。休職・復職の記事一覧もあわせてご覧ください。

お酒に頼らない

眠れないからお酒で、というのは、最も避けたい対処です。眠りの質は確実に落ち、気分を下げる方向にも働き、薬とも相性が悪い。つらさを一時的に麻痺させる代わりに、回復を遅らせます。

SNSと情報を浴び続けない

横になったままスマホで人の充実した日常を眺め続けるのは、自責を煮詰める行為です。うつ病の症状を検索し続けるのも同じ。通知が気になって休まらない方は、療養中こそ仕事のチャットの通知を切ってください。「見ない」を守ることも治療です。在宅で誰とも話さない日が続く状態にも近づきやすい時期なので、人との接点は「量」より「安心できる相手か」で選んでください。

復職の予定日を、自分で早めない

「来月には戻れるはず」と自分で締め切りを設定して、間に合わないことに焦る——この構図もよく見ます。回復のペースは、意思では決められません。

周りとの距離——連絡と、家族のこと

職場からの連絡に、どう対応するか。基本は、窓口を一本に絞り、頻度を最小にすることです。同僚一人ひとりからの善意の連絡が、実はかなりの負担になります。人事や上司の一人に窓口を集約してもらう、といった調整は、診断書と一緒に依頼できます。職場のストレス・ハラスメントの記事一覧で扱っているような環境が背景にある場合は、なおさら距離の設計が大切です。

家族との距離も大切です。良かれと思っての「散歩でも行ったら」「そろそろ動かないと」が、本人を追い詰めてしまうことがあります。ご家族にどう振る舞ってもらうと助けになるのかは、次の記事(ご家族の支え方)で詳しく書きます。ご家族に読んでもらうと、家庭の空気がずいぶん変わるはずです。

お金の不安を、放置しない

療養中の焦りの、かなりの部分は経済的な不安から来ています。ここは気力の問題ではなく、情報と手続きの問題なので、手を打てます。

傷病手当金は、健康保険から給与の一定割合が支給される制度です。通院費用については、自己負担が原則1割になる自立支援医療があります。手続きは制度・お金の記事一覧で解説していますし、診断書や申請書類の相談は診察で受け付けています。「使える制度がある」と知るだけで、眠りが少し楽になった方を何人も見てきました。

通院を、療養のペースメーカーに

療養中の通院は、症状の確認と薬の調整のためだけではありません。休養と精神療法の記事で書いたとおり、話して整理すること自体が治療です。そして、「先月と比べてどうか」という定点観測を一緒にしてくれる人がいることが、波の中で方向を見失わないための羅針盤になります。

みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区を中心に、みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。祝日以外は土日も診療しており、WEB予約は当日予約にも対応しています。日本医師会認定産業医の資格を持つ医師が在籍しており、職場との調整や復職の設計まで見据えた相談ができます。初めての方は当日予約と初診の流れのご案内をどうぞ。

よくある質問

休職中に旅行や外出をしてもいいのですか?

回復期に入って、本人が楽しめる範囲であれば、悪いことではありません。「療養中なのに遊んでいると思われないか」と気にする方が多いのですが、気力が戻って行動範囲が広がるのは回復のサインです。ただし、急性期に無理をして出かけるのは逆効果。時期を見て、診察で相談してください。

復職はいつ判断すればいいですか?

気分が戻っただけでは足りません。決まった時間に起きられるか、日中に活動を保てるか、通勤に耐えられるか——生活の骨組みが戻っているかどうかが判断材料になります。休職・復職の記事一覧で段階を追って解説しています。焦って戻って再休職になるのが、いちばん遠回りです。出社そのものが苦痛という段階なら、戻り方の設計から相談してください。

何もできない日が続くと、自分が怠けているように思えます。

その感覚自体が症状です。骨折した人が「歩けない自分は怠けている」とは思わないでしょう。うつ病では、その当たり前の理屈が本人にだけ届かなくなります。診察でその話をしてください。何度でもお伝えします。

療養が長引いていて、このまま治らないのではと不安です。

回復のペースには個人差があります。長引いているように感じるときこそ、「先月と比べて」の視点で一緒に振り返りましょう。また、経過の中で見立てそのものを点検し直すこともあります(うつ病と間違われやすい病気の記事)。行き詰まりを感じたら、抱え込まず診察で言葉にしてください。


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監修:田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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