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2026/06/08
うつ病とは、どれくらい身近な病気なのか|統計データから精神科医がやさしく解説
「うつ病になるなんて、自分くらいのものだ」——そう感じている方に、まず知っていただきたいことがあります。うつ病は、生涯のうちにおよそ15人に1人が経験する、とても身近な病気です。特別に弱い人がかかる珍しい病気ではありません。このページでは、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が、公的な統計をもとに、うつ病がどれくらいありふれた病気なのかを、できるだけていねいに解説します。まずは要点です。
- 日本での生涯有病率は約6.6%(およそ15人に1人が経験)
- 1年間に限っても、およそ50人に1人が経験している
- 女性は男性の約2倍かかりやすい
- 産後のうつ病は、出産した女性の約10人に1人にみられる
- 医療機関で治療を受ける人は増加傾向が続いている
- 世界では約2億8000万人がうつ病を抱えている(WHO推計)
「自分だけがこんなにつらいのか」と感じているなら、その孤独感を少しでも軽くできればと思って、このページを書いています。数字は冷たく見えるかもしれませんが、その一つひとつの向こうには、あなたと同じようにつらさを抱え、そして回復していった人たちがいます。
つらさを一人で抱えている方は、どうかご相談ください。
みなとメンタルクリニック(横浜・関内駅徒歩2分、祝日以外毎日診療)では、WEBから初診のご予約を受け付けています。WEB予約はこちら(24時間受付)
うつ病は何人に1人?|日本の生涯有病率
日本で行われた大規模な調査では、うつ病の生涯有病率——これまでの人生で一度はうつ病を経験する人の割合——は約6.6%と報告されています。単純に言いかえると、およそ15人に1人が、生涯のどこかでうつ病を経験する計算です。学校のクラスや職場の部署を思い浮かべてみてください。その中に、経験者が一人か二人いても、まったく不思議ではない。それくらい、うつ病は身近な病気です。
「日本人は我慢強いから、うつ病は少ないのでは」と思われることもありますが、実はそうとも言えません。日本の生涯有病率は欧米と比べるとむしろ低めで、国際的には3〜7%程度とされています。裏を返せば、うつ病は日本人に特別多いわけでも少ないわけでもなく、世界中の人々が同じように向き合っている病気だということです。
「生涯で15人に1人」と「今つらい人の数」は別の話
有病率の数字を読むときに、知っておくと誤解しにくいことがあります。「生涯有病率」は、一生のうちに一度でも経験する人の割合です。これに対して、「いま現在うつ病の状態にある人」は、もっと限られます。ある一年間に限ってうつ病を経験する人の割合(12か月有病率)は、日本ではおよそ2〜3%、つまり50人に1人ほどと報告されています。「一生のうち15人に1人」と「今この一年で50人に1人」。どちらも同じ病気の話ですが、見ている時間の幅が違うのです。いずれにしても、けっしてまれな数字ではありません。
治療を受けている人は、増え続けている
実際に医療機関でうつ病などの治療を受けている人の数も、長期的に増えています。厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査によると、精神疾患を有する総患者数は、2002年の約258万人から年々増加し、最新の令和5年(2023年)の調査では約603万人にのぼっています。そのなかでも、うつ病や双極性障害を含む「気分障害」は、もっとも多い分類のひとつで、直近でも170万人前後という規模で推移しています。
ただし、ここには読み取り方の注意が必要です。まず、この増加は「日本人の心が弱くなった」という意味ではありません。うつ病への理解が広がり、以前なら受診をためらっていた人が病院に相談できるようになったこと、診断の考え方が整理されてきたことが、数字が伸びた大きな背景と考えられています。つまり、隠れていた病気が見えるようになってきた、という側面が大きいのです。もうひとつ、2020年(令和2年)の調査から患者数の推計方法が変わっているため、それより前の数字と単純に「何倍になった」と比べることはできません。増加傾向そのものは確かですが、倍率の話は割り引いて受け取るのが正確です。
統計より、実際はもっと多いと考えられています
ここまで挙げてきた「治療を受けている人の数」は、あくまで医療機関にかかっている人の数です。ところが、うつ病を経験する人のうち、実際に受診している人は、決して多数派ではありません。生涯有病率が15人に1人であることを思えば、治療につながっている人は、そのうちの一部にすぎない、というのが実情です。つまり、統計に表れていない「隠れたうつ病」が、その背後にたくさんあると考えられています。
なぜ、相談につながりにくいのでしょうか。理由はいくつかあります。ひとつは、「これは病気ではなく、自分の甘えだ」と考えて、受診を思いつきもしないこと。もうひとつは、気分の落ち込みより先に、頭痛や倦怠感といった体の不調が出るため、内科をいくつも受診しても原因がわからず、精神科・心療内科にたどり着けないこと。そして、「精神科に行く」ことへの心理的なハードルの高さも、いまだに根強く残っています。だからこそ、「これくらいで受診していいのだろうか」という迷いは、ごく自然なものだと知っておいてください。その迷いのなかで一歩を踏み出せずにいる人が、実はとても多いのです。
うつ病は女性に多い|男女差の背景
うつ病には、はっきりとした男女差があることが知られています。生涯有病率を男女別に見ると、男性が約3.7%なのに対し、女性は約9.1%と、女性のほうが高くなっています。全体としては、女性のうつ病は男性のおよそ2倍とされ、受診している人の数で見ても、女性が多くを占めています。
女性にうつ病が多い背景には、体の要因と社会の要因の両方が指摘されています。体の面では、月経、妊娠、出産、更年期といった、女性ホルモンの大きな変動が関わります。社会の面では、仕事と家庭の両立、育児や介護の負担、役割の変化にともなうストレスなどが重なりやすいことが挙げられます。ホルモンと環境、その両方が同じ時期に押し寄せることが、女性の心に大きな負荷をかけるのです。
産後うつは、10人に1人
とくに知っておいていただきたいのが、産後のうつ病です。出産をした女性のおよそ10人に1人が経験するとされ、決してめずらしいものではありません。出産にともなうホルモンの急激な変化に、慣れない育児、睡眠不足、生活リズムの乱れが重なって起こります。出産直後に多くの方が経験する一時的な涙もろさ(マタニティブルーズ)とは異なり、症状が二週間以上続き、育児や生活に支障が出る場合は、産後うつ病として治療が必要です。「母親なのに、わが子をかわいいと思えない」と自分を責めてしまう方がいますが、それは愛情の問題ではなく、心と体が限界まで疲れているサインです。産後のうつ病を含むタイプ別の特徴は、うつ病の主なタイプでくわしく解説しています。
年代による違い|若者から高齢者まで
うつ病は、特定の年代だけの病気ではありません。10代から高齢の方まで、どの世代にも起こります。そのうえで、とくに手厚い対策が必要とされているのが、青年期、妊娠・出産期の女性、そして高齢者の3つの層です。きっかけになりやすい出来事は、世代によって変わります。若い世代では、学業や就職活動、人間関係の悩み。働く世代では、仕事の重圧や長時間労働、家庭内の問題。高齢の世代では、退職による役割の喪失、配偶者や友人との死別、体の病気。ライフステージごとに、うつ病の入り口も、症状の見え方も少しずつ異なります。
働く世代とうつ病
働く世代にとって、うつ病は他人事ではありません。仕事のストレスによる心の不調で、休職を余儀なくされる人は増えています。「メンタルの不調で会社を休む」ことが、以前より身近な話になってきた実感をお持ちの方も多いのではないでしょうか。まじめで責任感が強く、頼まれると断れない——そんな、職場で評価される人ほど、無理を抱えこんでうつ病に至りやすい、という面もあります。「自分がやらなければ」と踏ん張り続けた結果として、心のエネルギーが尽きてしまうのです。どんな人がなりやすいのかは、うつ病の原因となりやすい人で解説しています。
高齢者のうつ病
高齢の方のうつ病は、見逃されやすいことで知られています。気分の落ち込みよりも、物忘れや集中力の低下、食欲不振や体の痛みといった不調が前面に出ることがあり、認知症と間違われたり、「歳のせい」で片づけられたりしがちです。けれど、うつ病が原因の物忘れは、治療によって改善が期待できます。この見分けは、その後を大きく左右する大切なポイントです。くわしくは、うつ病と間違われやすい病気との違いをご覧ください。
一度回復しても、再発することがあります
うつ病について、もうひとつ知っておいていただきたいのが、再発のことです。うつ病は、適切な治療で回復が期待できる病気ですが、一度良くなっても、その後に再発することが少なくありません。しかも、再発をくり返すほど、次の再発が起こりやすくなる傾向があるとされています。だからこそ、症状が良くなったあとも、しばらくは治療を続けて、回復を安定させることが大切になります。「良くなったから、もう薬はいらない」と自己判断でやめてしまうと、ぶり返しの引き金になることがあります。
この話は、けっして脅かすためのものではありません。逆です。再発しやすい病気だからこそ、早めに、そしてしっかり治療して、良い状態を長く保つことに意味がある——そうお伝えしたいのです。治療の進め方については、うつ病の治療(1)|休養と精神療法からご覧いただけます。
世界のうつ病|約2億8000万人が抱えている
視野を世界に広げると、うつ病がいかに大きな課題かが見えてきます。世界保健機関(WHO)の推計では、世界でうつ病を抱える人はおよそ2億8000万人にのぼり、これは世界人口の約3.8%にあたります。女性に多いこと、中高年での発症も多いことは、世界共通の傾向です。さらに、新型コロナウイルスの流行後には、世界的にうつ病や不安症が大きく増えたことも報告されています。感染への不安、外出の制限による孤立、生活や仕事の変化が、多くの人の心に影響を及ぼしたと考えられています。うつ病は、いまや世界中で向き合われている、ごくありふれた病気です。WHOはこれを、世界の健康を左右する重大な課題のひとつと位置づけ、早急な対策を呼びかけています。
だからこそ、早めの相談が大切です
うつ病は、つらさが深まると、「消えてしまいたい」「自分などいないほうがいい」といった気持ちにまで及ぶことがあります。世界では、毎年70万人を超える人が自ら命を絶っており、その背景にうつ病をはじめとする心の不調があることは少なくありません。これは、うつ病を軽く見てはいけない理由であると同時に、「適切な治療につながることで、防げる可能性がある」ということでもあります。
もし、いま「消えてしまいたい」という気持ちが頭をよぎっているなら、どうか一人で抱えこまないでください。それは、あなたが弱いからではなく、心と体が限界を訴えているサインです。その苦しさは、適切な治療でやわらげていけます。早めに専門家に相談することを、ためらわないでください。
数字が伝えてくれること
これらの統計からわかるのは、うつ病が「ごく一部の特別な人がかかる病気」ではなく、「誰の人生にも起こりうる、ありふれた病気」だということです。生涯のうちに15人に1人が経験し、いま日本で数百万人規模の人が心の不調で治療を受けている。そしてその背後には、まだ相談できずにいる人が、さらにたくさんいる。そう考えれば、うつ病になることは、恥ずかしいことでも、特別なことでも、まして自分の弱さの証でもありません。
大切なのは、つらさを一人で抱え込まず、早めに相談することです。「これくらいで病院に行ってもいいのだろうか」と迷う必要はありません。あなたが感じているそのつらさは、たくさんの人が経験し、そして乗り越えてきたものです。なぜうつ病になるのか、その背景を知りたい方はうつ病の原因となりやすい人を、ふつうの落ち込みとの違いを知りたい方はうつ病とは——「気分の落ち込み」とどう違うのかをご覧ください。
よくある質問
うつ病は何人に1人がかかりますか?
日本では、生涯のうちに約15人に1人(生涯有病率およそ6.6%)が経験するとされています。1年間に限っても、およそ50人に1人が経験しており、決してめずらしい病気ではありません。
うつ病は女性と男性、どちらが多いですか?
女性のほうが多く、男性のおよそ2倍とされています。月経・妊娠・出産・更年期といったホルモンの変化や、社会的なストレスが背景にあると考えられています。産後のうつ病は、出産した女性の約10人に1人にみられます。
日本でうつ病の患者は増えていますか?
治療を受ける人は長期的に増加しています。ただしこれは、以前より相談しやすくなり、隠れていた病気が受診につながるようになった面が大きいと考えられています。統計に表れていない、潜在的な患者はさらに多いとみられます。
うつ病はどのくらいで治りますか?再発しますか?
回復までの期間には個人差がありますが、適切な治療で多くの方が回復に向かいます。一方で再発することもあるため、症状が良くなったあともしばらく治療を続け、回復を安定させることが大切です。
当日の予約はできますか?
枠の状況によりますが、当日のご予約にも対応しています。「今日つらい」というときは、まずWEB予約から空き状況をご確認ください。
横浜・関内でうつ病のご相談は、みなとメンタルクリニックへ
関内駅すぐのみなとメンタルクリニックでは、うつ病をはじめとする心の不調について、横浜市中区・関内エリアを中心に、地域のかかりつけ医として診療を行っています。「これくらいで受診してよいのか」とためらう段階でも、まったく問題ありません。つらさをうまく言葉にできなくても大丈夫です。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅からも徒歩5分。祝日以外は毎日診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからも通っていただけます。気分の落ち込みや不眠が続いてつらいときは、どうか一人で抱えこまず、ご相談ください。
受診をご希望の方は、WEB予約はこちら(24時間受付)からご予約ください。初めて受診される方は初診の方へ、受診前に気になることがある方はよくある質問もあわせてご覧ください。
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- うつ病の主なタイプ
- うつ病と間違われやすい病気との違い
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出典
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。