Blog ブログ
2026/07/13
仕事が続かない・転職を繰り返してしまうのは性格?考えられる背景と相談の目安を横浜・関内の精神科医が解説
「また辞めてしまった」——履歴書の職歴欄が、また一行増えた。
入社したときは、今度こそ長く働くつもりだった。最初の数か月は順調だった。それなのに、気づけば同じ苦しさが始まり、朝起きられなくなり、辞める理由を探している自分がいる。3社目、4社目、5社目。「自分は根気がないダメな人間だ」「どこに行っても同じだ」と、職歴を見るたびに胸が重くなる——。
最初にお伝えしたいことがあります。仕事が続かないことを「性格」や「根性」の一言で片づけている限り、次も同じことが起こります。なぜなら、性格論は「なぜ続かないのか」を何も説明していないからです。精神科の視点から見ると、仕事が続かない背景には、いくつかの典型的なパターンがあります。そしてパターンが特定できれば、打ち手は具体的に変わります。
この記事は、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックがお届けする「現代の働き方とメンタル不調」ガイドの一記事です。転職を繰り返す背景として診察室でよく出会う4つのパターンと、自分のパターンの見つけ方、相談の目安を、精神科医が解説します。働き方による不調の全体像は現代の働き方とメンタル不調——テレワーク・常時接続・成果主義がなぜ心を削るのかにまとめています。
今まさに「もう辞めたい」の渦中にいる方は、WEB予約はこちらから当日のご予約も可能です。土日も診療しています。
まず、責めるのをやめて「記録」に変える
転職回数そのものは、病気のサインではありません。キャリアアップの転職を重ねる人もいれば、合わない環境を見切る判断の早さが強みになる人もいます。問題にすべきなのは回数ではなく、「本人は続けたいのに、続けられない」というパターンが繰り返されているかどうかです。
そこで、責める代わりに、これまでの離職を記録として並べてみてください。それぞれの職場について、①辞めた直接のきっかけ、②つらくなり始めた時期(入社何か月目か)、③つらさの中身(人間関係か、ミスか、飽きか、体調か)——この3点です。
診察室でこの作業を一緒にやると、ご本人が「バラバラの失敗」だと思っていた職歴に、驚くほど一貫したパターンが浮かび上がることがよくあります。毎回、入社半年前後で人間関係がこじれている。毎回、ミスの叱責から歯車が狂っている。毎回、体調を崩して辞めている——。パターンの発見は、自己否定の終わりであり、対策の始まりです。
診察室でよく出会う4つのパターン
① ミスと抜け漏れの積み重ねで、居づらくなる——ADHDの可能性
ケアレスミスが減らない。締切や約束をすっぽかす。マルチタスクで頭が真っ白になる。最初は「新人だから」で許されても、半年、1年と経つにつれ叱責が増え、職場に居づらくなって退職——この繰り返しなら、背景にADHD(注意欠如多動症)の特性がある可能性を考えます。
ADHDは子どもの障害と思われがちですが、成人期に、仕事の負荷が上がって初めて表面化するケースが多くあります。重要なのは、ADHDの困りごとは「工夫と環境と、必要に応じた治療」で大きく変わるということです。診断がつくことで、根性論の反省会から、特性に合った具体的な対策へと、初めて土俵が変わります。仕事のミスが続いて自信を失っている方は、仕事のミスが増えた・集中できない——「思考の鈍さ」と背景にある不調と大人の発達障害(ADHD・ASD)についての解説記事一覧をご覧ください。当院はADHDの診断・治療に対応しています。
② 人間関係が毎回こじれる・暗黙のルールが分からない——ASD特性の可能性
業務そのものはこなせるのに、「空気が読めない」と言われる。雑談の輪に入れない。正論を言って角が立つ。曖昧な指示が理解できず、確認すると嫌がられる——人間関係の摩擦が毎回退職の引き金になっているなら、ASD(自閉スペクトラム症)の特性が関わっている可能性があります。この場合も、特性の理解と職場選び(暗黙の了解が少なく、役割が明確な仕事)で、働きやすさは大きく変わります。
③ 環境が変わるたびに心身を崩す——適応障害の反復
新しい環境に入って数か月で、不眠、頭痛、気分の落ち込みが始まり、限界まで我慢して退職。辞めるとしばらくは元気になるが、次の職場でまた同じことが起こる——このパターンは、適応障害を繰り返している形です。環境の変化そのものへの脆弱性に加え、「限界まで我慢してから一気に辞める」という対処スタイルが反復の核になっていることが多く、早い段階でストレスに気づいて調整する練習が、悪循環を断つ鍵になります(適応障害についての解説記事一覧)。なお、繰り返すうちに休日も回復しなくなってきたら、うつ病への移行を疑う必要があります(うつ病についての解説記事一覧)。
④ 過剰に気を使い、消耗しきって辞める——気質と環境のミスマッチ
周囲の機嫌や感情を細かく察知し、頼まれると断れず、常に気を張って働く。数か月から数年かけて静かに消耗し、燃え尽きるように退職する——刺激や対人関係に敏感な気質の方が、刺激の多い職場・感情労働の強い職場を選び続けている場合に起こるパターンです。この場合、問題は気質ではなく、気質と環境の組み合わせにあります(繊細さ・生きづらさ(HSP)についての解説記事一覧/燃え尽き症候群についての解説記事一覧)。
なお、これらのパターンは重なり合うこともあります。たとえばADHD特性のある方が叱責を受け続けて二次的にうつ状態になる、という経過は非常に多く、この場合は特性への対策と、うつの治療の両方が必要になります。
相談の目安——「次の転職の前」が最良のタイミング
受診を考えていただきたいのは、次のいずれかに当てはまるときです。
- 「続けたいのに続かない」パターンが3回以上繰り返されている
- 離職の記録を並べたとき、毎回同じ種類のつらさが見つかる
- 現在の職場で、すでに不眠・食欲低下・朝起きられないなどの体の症状が出ている
- 「自分はどこでも通用しない」という考えが頭から離れず、気分が沈み続けている
とくにお伝えしたいのは、タイミングです。多くの方は、退職して、次の職場でまたつらくなってから受診されます。しかし本当は、「次を探す前」こそが相談の最良のタイミングです。パターンが分からないまま次の職場を選ぶのは、地図なしで同じ森に入り直すようなものだからです。特性や気質が分かれば、避けるべき環境と活きる環境が具体的に見えてきます。すでに今の職場で症状が出ていて「行きたくない」が限界に近い方は、「仕事に行きたくない」は甘え?受診の目安と背後にある病気で緊急度の目安を確認してください。衝動的に辞めたくなっている方は仕事を辞めたい——衝動的な決断の前に確認したいこともあわせてどうぞ。
受診すると、何が変わるのか
初診では、現在の症状に加えて、これまでの職歴とつまずきのパターンを丁寧にうかがいます。先ほどの「離職の記録」をメモでお持ちいただけると、非常に役立ちます。
そのうえで、必要に応じて発達特性の検査を行い、パターンの正体を一緒に特定していきます。ADHDと分かれば、環境調整の工夫に加えて薬物療法という選択肢が生まれます。適応障害の反復と分かれば、ストレスの早期察知と対処の練習を治療として行えます。うつ状態が併存していれば、まずその治療から始めます。
また、在職中の方であれば、「辞める」以外の選択肢——配置転換の相談、勤務配慮、休職して立て直す——を検討する余地があります。当院の医師は日本医師会認定産業医の資格を持ち、職場との調整の実務にも通じています。辞め急ぐ前に、使える手段を一緒に棚卸ししましょう(休職・復職についての解説記事一覧)。
よくあるご質問
Q. 転職回数が多いだけで、症状は特にありません。それでも受診していいですか?
A. はい。「続けたいのに続かない」が繰り返されていて、その理由を知りたい——それは受診の立派な理由です。発達特性の評価は、症状の有無にかかわらず受けられます。パターンを知ることは、次の職場選びの精度を上げる投資だと考えてください。
Q. 大人になってからADHDと診断されることは、本当にあるのですか?
A. あります。むしろ成人になって、仕事の要求水準が上がって初めて特性が表面化し、診断に至る方は多くいらっしゃいます。子どもの頃は成績や周囲のサポートで補えていたものが、マルチタスクと自己管理を求められる社会人生活で補いきれなくなる、という経過が典型的です。
Q. 診断がつくと、就職や転職で不利になりませんか?
A. 診断を応募先に申告する義務はなく、通院歴が自動的に伝わることもありません。診断を開示して配慮を受けながら働くか、開示せず一般枠で働くかは、ご自身で選べます。診断は不利になるものではなく、選択肢を増やすための情報です。
Q. 平日は仕事があります。土日に相談できますか?
A. はい。当院は祝日を除く土曜・日曜も診療しています。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅からも徒歩5分です。会社帰りに通える心療内科をお探しの方へもご参考のうえ、WEB予約はこちらから、当日予約も可能です。
まとめ
仕事が続かないのは、性格や根性の問題ではなく、多くの場合、繰り返されるパターンに理由があります。ミスの積み重ね(ADHD)、人間関係の摩擦(ASD特性)、環境変化への脆弱性(適応障害の反復)、気質と環境のミスマッチ——離職の記録を並べてパターンを見つけることが、自己否定を終わらせ、対策を始める第一歩です。そして相談の最良のタイミングは、次の職場を探す前。地図を手に入れてから、次の森に入ってください。
横浜・関内エリアで「仕事が続かない」悩みを抱えている方は、みなとメンタルクリニックにご相談ください。土日も診療しています。WEB予約はこちらからどうぞ。
働き方別・場面別|現代の働き方とメンタル不調の関連記事
総合ガイド:現代の働き方とメンタル不調——テレワーク・常時接続・成果主義がなぜ心を削るのか
特定の場面(朝・週明け・出社)でつらい
- 会社に行きたくない・仕事に行けない——「甘え」ではないサインと対処
- 日曜の夜になると憂うつになる——「サザエさん症候群」と、その先にあるもの
- 月曜の朝に体調を崩す——吐き気・腹痛・動悸が出るのはなぜか
- 在宅から出社に戻るのがつらい——出社回帰(RTO)ストレスへの向き合い方
働き方そのものが負荷になっている
- テレワークで気分が落ち込む——在宅勤務うつの仕組みと対策
- リモートワークがつらい・孤独を感じる——在宅勤務の孤立とメンタル
- 通知が気になって休めない——常時接続・「つながらない権利」とストレス
- 働きすぎで疲れが取れない・眠れない——過重労働と睡眠の悪循環
キャリア・役割の悩みとして現れている
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症)」「適応障害」
- 厚生労働省「雇用動向調査」
- 日本精神神経学会「精神疾患の診断と治療に関する資料」
- Kessler RC, et al. The prevalence and correlates of adult ADHD in the United States. Am J Psychiatry. 2006
- 日本うつ病学会「日本うつ病学会診療ガイドライン」
この記事の監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)/医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安症・睡眠障害・認知症などを中心に診療しています。詳しくは田邊陽一郎の理事長プロフィールをご覧ください。