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2026/09/14

脳疲労で休職はできる?診断書は?|仕事を休むべきか迷ったときの考え方と、休職の前に使える選択肢を横浜・関内の精神科医(産業医)が解説

この記事は、みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)の「脳疲労について」ガイドの一記事です。全体像は総合ガイドをご覧ください。


朝、会社に向かう電車の中で、理由もなく涙が出た。デスクに座っても、画面の文字が頭に入らない。昨日のミスの後始末をしながら、今日もまた何か間違えるのではないかと怖い。帰りの電車で「明日も行くのか」と思うと、体が重くなる。

それでも、「休む」という選択肢は、頭の中でいつも打ち消されます。「脳疲労くらいで休職なんて、できるはずがない」「病気でもないのに、診断書なんて出るのだろうか」「周りに迷惑がかかる」「一度休んだら、戻れなくなる気がする」。

この記事は、そうやって迷っている方のために書いています。脳疲労で休職はできるのか、診断書はどうなるのか、休職の前にできることは何か、そして休まないと戻らない状態とはどんな状態なのか。正直に、順を追ってお伝えします。


▼ 今つらい方へ
当院は関内駅から徒歩圏(馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます)にあり、土日も診療しています。空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。

▶ Web予約はこちら / ▶ お電話(045-663-5925)


結論:「脳疲労」という病名では休職できません。けれども、休職が必要な脳疲労はあります

最初に、はっきりお伝えします。脳疲労は診断名ではないので、「脳疲労」という病名の診断書が出ることはありません。

ただし、それは「脳疲労では休めない」という意味ではありません。脳疲労という言葉の奥には、多くの場合、何らかの状態があります。うつ病、適応障害、不眠症、あるいは体の病気。診察でその状態が分かれば、休養が医学的に必要かどうかを判断し、必要であれば、その診断名で診断書を作成します。「脳疲労くらいで」と思っている方の中に、休養が必要な段階まで進んでいる方は、決して少なくありません。

つまり、順番はこうです。休職できるかどうかを先に考えるのではなく、まず、いま自分の脳と体に何が起きているのかを確かめる。休職が必要かどうかは、その結果として決まります。


休職は「根性」の問題ではなく、医学的な判断です

「休むべきか」を、ご自身の気持ちや意志の強さで決めようとすると、必ず行き詰まります。休みたい気持ちと、休めない事情と、罪悪感が、頭の中でぐるぐる回るだけだからです。

診察で私たちが判断しているのは、「休みたいかどうか」ではなく、「仕事を続けることが、回復を妨げているかどうか」です。具体的には、次のようなことを見ています。症状がどの段階まで進んでいるか。睡眠が保たれているか。仕事を続けながら治療を進めることが、現実的に可能か。ミスや判断力の低下が、ご本人や周囲の安全に関わる水準になっていないか。負荷を減らす調整が、職場でできそうか。

そして、もう一つ大切な視点があります。早い段階での短い休養は、遅い段階での長い休職を防ぐ、ということです。うつ病の研究を統合したGhioらの分析(2014年)では、治療を受けずに過ごした期間が長いほど、その後の回復が遅く、再発もしやすいことが示されています。また、OECDの報告(2015年)など複数の労働衛生の資料は、休業期間が長くなるほど職場復帰の確率が下がることを指摘しています。「限界まで頑張ってから休む」より、「限界の手前で短く休む」ほうが、結果として仕事を失わずに済むことが多いのです。


働きながら回復できる脳疲労と、休まないと戻らない脳疲労

脳疲労の多くは、働きながら回復できます。頭の症状が中心で、週末に休めば戻る段階(第一段階)、感情や眠りに波が出てきた段階(第二段階)であれば、睡眠の立て直しと負荷の調整、必要なら治療を並行することで、休職せずに回復する方がほとんどです。

一方で、次のような状態は、仕事を続けること自体が回復の妨げになっている可能性が高く、休養を考える段階です。

  • ミスが連続し、後始末がさらに負荷を増やす悪循環に入っている
  • 通勤の途中や職場で、涙が出る、動悸や吐き気が起きる
  • 眠れない夜が続き、朝が来るのが怖い
  • 休日は一日中横になっていて、それでも月曜に戻っていない
  • 以前は楽しめていたことが、休日にもまったく楽しめない
  • 仕事の負荷を減らす調整をしたのに、二週間たっても戻らない
  • 自分を責める気持ちが強く、「自分がいなければ」と考えることが増えた

最後の項目に心当たりがある方は、それが疲れの症状として現れることを、どうか知っておいてください。この場合は、休職を検討する以前に、まずご相談ください。限界が近づいているときのサインについては、もう限界かもしれないと感じたときで丁寧にご説明しています。


休職の前に、使える選択肢があります

休職は、選択肢の一つであって、唯一の選択肢ではありません。むしろ、その手前で使える方法で回復する方のほうが多いのです。

業務量や配置の調整。主治医として、業務量の軽減や配置の見直しについて意見をまとめることができます。「残業を減らす」「担当を一つ外す」「会議の数を減らす」といった調整だけで、脳の回復が消耗に追いつく状態に戻ることは珍しくありません。

産業医の面接指導。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労がたまっていると感じている場合、本人が申し出れば、会社は医師(産業医)による面接指導を行う義務があります(労働安全衛生法)。申し出たことを理由に不利益な扱いをしてはならない、と国の指針でも定められています。職場の産業医と主治医が連携することで、働き方の調整が具体的になります。

短い休暇で試す。有給休暇などを使って、まとまった数日から一週間ほど休んでみる方法です。これは「治すため」というより「確かめるため」の休みです。一週間しっかり休んで回復の兆しがあれば、休職ではなく負荷の調整で進められる可能性が高い。兆しがまったくなければ、休み方の問題ではない理由があるということで、休職を含めた次の段階を考えます。この「試し休み」は、ぜひ医師と相談しながら行ってください。休み方の順番を間違えると、確かめる材料になりません(脳疲労の治し方)。

働きながらの治療。脳疲労の奥にうつ病や適応障害、不眠症があると分かった場合でも、多くの方は働きながら治療を進められます。仕事を休むべきか迷っている段階の方は、仕事を休むべきか迷ったとき、心療内科で相談できることもあわせてご覧ください。


休職が必要なとき、診断書はどうなるのか

診察の結果、休養が必要と判断した場合、診断書を作成します。ここで、よく聞かれることにお答えしておきます。

診断名には、何が書かれるのか。脳疲労ではなく、診察で分かった状態——適応障害、うつ病、不眠症など——が記載されます。診断名は、診察で確かめた状態に基づいて医師が判断するもので、ご本人の希望で選ぶものではありません。

初診で出るのか。病状によります。休養の必要性が明らかであれば初診で作成することもありますし、経過を見てから判断することもあります。「初診で必ず出す」「必ず出さない」のどちらでもなく、その方の状態次第です。

期間はどう決まるのか。医師が状態から判断します。はじめから長い期間を設定するより、比較的短い期間で区切り、経過を見て延長するかどうかを判断する形を取ることが多いです。

会社には何が伝わるのか。会社に伝わるのは、ご本人が提出する診断書の内容だけです。診察で話した内容が、ご本人の同意なく会社に伝わることはありません。

休職の手続き全体や、診断書の扱いの詳細については、休職に必要な診断書についてをご覧ください。


休職を決めたら——最初の二週間

休職を決めた方に、最初にお伝えしていることがあります。最初の二週間は、回復しようとしなくてよい、ということです。

休職に入った直後は、多くの方が「休んでいる間に何かしなければ」「早く戻らなければ」と焦ります。けれども、休職の最初の時期は、積み上がった睡眠負債を返し、脳が非常時のモードから抜けるための時間です。眠れるだけ眠り、罪悪感が出てきたら「これは症状だ」と思ってください。仕事の連絡をどうするか、会社との窓口を誰にするかは、休職に入る前に決めておくと、休んでいる間の脳が守られます。

休職中の過ごし方や復職に向けた流れは、休職・復職について(カテゴリ一覧)に詳しい記事をそろえています。


こんなときは、ご相談ください

  • 休むべきかどうかを、一か月以上、一人で迷い続けている
  • 仕事の負荷を減らす調整をしたのに、二週間たっても戻らない
  • 通勤や職場で、涙・動悸・吐き気が出るようになった
  • 眠れない夜が続き、朝が来るのが怖い
  • ミスの連続で、自分でも仕事の安全が心配になっている
  • 「休職したい」と思うことに、強い罪悪感を覚えている
  • 自分を責める気持ちが強く、「自分がいなければ」と考えることが増えた

精神科・心療内科でできること

休職に関して、当院でできることは、判断と、調整と、支えの三つです。

判断。いまの状態が、働きながら回復できる段階なのか、休養が必要な段階なのかを、症状の組み合わせと経過から見立てます。ご本人の意志の強さではなく、医学的な視点で判断します。

調整。産業医の資格を持つ医師が診療にあたる当院では、休職に至る前の選択肢——業務量についての主治医の意見、職場の産業医との連携、面接指導の仕組みのご案内——をご一緒に検討します。休養が必要な場合は、診断書を作成し、休職中の経過を診ながら、復職の時期についても医学的な視点でご相談に応じます。

支え。休むことへの罪悪感や、「戻れなくなるのでは」という不安は、それ自体が回復を妨げます。診察では、カウンセリング的なアプローチで、その気持ちを整理しながら進めます。

何科に行けばいいのか、初診で何を聞かれるのかは、脳疲労は何科に行けばいい?精神科・心療内科で行うことと初診の流れでお答えしています。


すぐに受診できないときの相談先

つらさが強く、一人で抱えきれないと感じるとき、あるいはすぐには受診できないときには、次のような公的な相談窓口も利用できます。受付時間は、各窓口のご案内でご確認ください。

  • 働く人の「こころの耳」電話相談(厚生労働省):0120-565-455
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • よりそいホットライン:0120-279-338

よくあるご質問

脳疲労で、診断書は出ますか

「脳疲労」という病名の診断書は出ません。診察で奥にある状態が分かり、休養が医学的に必要と判断した場合に、その診断名で作成します。まずは、いま何が起きているのかを確かめにいらしてください。

休職すると、周りに迷惑がかかります

そのお気持ちは、責任感の表れです。ただ、限界まで働いてから長く休むことになるほうが、周りへの影響は大きくなります。早い段階での短い休養や、負荷の調整は、周りのためにもなる選択です。

一度休んだら、戻れなくなる気がします

休業期間が長くなるほど復職が難しくなる傾向があるのは事実です。だからこそ、限界まで待たずに、短い休養や調整で済む段階で手を打つことをおすすめしています。休職中も通院を続け、復職の時期を医学的に判断していくことで、戻りやすさは大きく変わります。

休職しないで治す方法はありますか

多くの方は、休職せずに回復しています。業務量の調整、産業医の面接指導、短い休暇での確認、働きながらの治療。これらを組み合わせることで、休職を避けられることは珍しくありません。

平日は仕事で行けません

当院は土日も診療しており、夕方以降のご予約も可能です。会社帰りに通える心療内科をご覧ください。関内駅から徒歩圏で、馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます。

今日つらいのですが、当日でも診てもらえますか

空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。Web予約で当日枠が出ていない場合も、お電話でご相談いただければ調整できることがあります。初診の流れはこちらです。


「休むべきか」を、一人で決めなくて大丈夫です

休むべきかどうかを一人で決めようとすると、休みたい気持ちと、休めない事情と、罪悪感が、頭の中で回り続けます。疲れた脳で、その答えを出すのは難しいことです。

その判断は、私たちと一緒にしてください。働きながら回復できる段階なら、そのための調整を。休養が必要な段階なら、そのための診断書と、休んでいる間の支えを。どちらであっても、限界まで待たないことが、いちばん仕事を守ることになります。

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みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)/土日診療・当日予約に対応


関連ページ


参考

  • 厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
  • 労働安全衛生法(長時間労働者への医師による面接指導)/厚生労働省 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのための指針
  • Ghio L, et al. Duration of untreated depression influences clinical outcomes of depressive disorders: a meta-analysis. Journal of Affective Disorders. 2014
  • OECD. Fit Mind, Fit Job: From Evidence to Practice in Mental Health and Work. 2015
  • ICD-11(World Health Organization)/DSM-5-TR(American Psychiatric Association)

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)

医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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