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2026/09/28
天気が崩れると気分が沈む・不安になるのはなぜ?|雨の日の憂うつと天気の影響を受けやすい人の特徴、「天気のせい」で片づけないための目安を横浜・関内の精神科医が解説
「雨が続くと、理由もなく気持ちが沈む」「台風が近づくと、そわそわして落ち着かない」「どんよりした空を見るだけで、何もやる気が起きない」。天気と気分の関係は、多くの方が日々の暮らしの中で感じていることだと思います。
一方で、「天気くらいで落ち込むなんて、気持ちが弱いのでは」と自分を責めてしまう方や、反対に、気分の落ち込みをずっと「天気のせい」にしてきて、あとから別の原因に気づく方もいらっしゃいます。
この記事は、気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説から始まるシリーズの第4章です。天気と気分の関係について、研究で分かっていることを正直にお伝えしながら、天気の影響を受けやすい方の特徴、自分でできる工夫、そして「天気のせい」で片づけないための目安を、横浜・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医がお話しします。
この記事の要点
- 天気が気分に与える影響は、たくさんの人の平均で見ると小さいことが分かっています。ただし、人による差がとても大きく、雨の日に気分が下がりやすい方が一定数いることも示されています
- 気分への影響は、気圧そのものより、日の光の少なさ、外に出る機会の減少、頭痛やだるさなど体の不調が重なることで生まれている面が大きいと考えられます
- 不安が強い時期や、疲れがたまっている時期ほど、天気の影響を受けやすくなります
- 天気が回復しても気分が戻らない、晴れの日も同じようにつらい場合は、うつ病や不安の病気が隠れていないか、一度相談していただくのがおすすめです
- 「天気のせい」と考えることは、自分を責めすぎないためには役立ちますが、つらさが続くときの受診を遅らせてしまうこともあります
天気と気分の関係——研究で分かっていること
天気と気分の関係は、昔から語られてきたわりに、研究の結果は意外なものでした。ここでは、研究の強さを分けて、正直にお伝えします。
平均すると、影響は小さい
ドイツで千人を超える方を対象に、毎日の気分と天気を記録した研究(Denissenら、2008年)があります。その結果、気温や日照、風などの天気が日々の気分に与える影響は、平均するとごく小さいものでした。「天気が悪いと、誰もが気分が沈む」というわけではない、ということです。
けれど、人によって大きくちがう
ところが、同じドイツの研究でも、天気の影響の受け方には、人によって大きな差があることが示されていました。これを一人ひとりのタイプに分けて調べたのが、オランダで行われた研究(Klimstraら、2011年)です。
この研究では、全体のおよそ半数の方は天気の影響をほとんど受けていませんでした。一方で、残りの方は、夏の晴れた日に気分が上がる方、反対に夏の暑さで気分が下がる方、そして雨の日に気分が下がりやすい方など、はっきりしたタイプに分かれていました。さらに、親子で同じタイプになりやすい傾向も見られました。
つまり、「天気で気分が変わるのは、気のせいではない。ただし、全員に起きるわけではない」というのが、いまの研究から言えることです。天気の影響を受けやすい方にとって、「平均すると小さい」という数字は、実感とかけ離れて聞こえるかもしれません。それは、あなたの感じ方がおかしいのではなく、平均の中に、影響を強く受ける方と、ほとんど受けない方が混ざっているためです。
日の光と、脳の中のセロトニン
気分への影響として、比較的しっかりした裏づけがあるのは、気圧よりも「日の光」のほうです。オーストラリアの研究(Lambertら、2002年)では、気分の安定に関わる脳内の物質セロトニンが、日照時間の長い日ほど多くつくられていることが示されました。
台風や雨の日は、気圧が下がるだけでなく、日の光も少なくなります。天気の悪い日に気分が沈むのは、気圧そのものの影響に加えて、日の光が足りないことも関わっていると考えられます。
気圧そのものと気分の関係は、まだよく分かっていません
正直にお伝えすると、気圧の変化が直接、気分を落ち込ませたり不安を強めたりするかどうかは、まだはっきりしていません。気圧と頭痛の関係にくらべると、研究が少ないのが現状です。
そのため、この記事では、「気圧が気分を変える」と言い切るのではなく、天気が崩れる日に重なるさまざまな変化が、気分に影響していると考えてお話しします。
天気が崩れる日に、気分が沈みやすくなる理由
体の不調が、気持ちを引っぱる
天気が崩れる日には、頭痛、だるさ、眠気、めまいといった体の不調が出やすくなります。体がつらいと、気持ちも自然と沈みがちになります。やりたいことができない日が続けば、「また今日も何もできなかった」と自分を責める気持ちも生まれやすくなります。
体の不調については、このシリーズの第1章(頭痛)、第2章(だるさ・眠気)、第3章(めまい・耳の症状)でくわしくお話ししています。
外に出る機会が減り、生活が小さくなる
雨の日は、散歩や買い物、人と会う予定を控えがちです。体を動かすことや、人と話すこと、外の景色を見ることは、気分を支える大切な要素です。そうした機会が減ると、一日が単調になり、考えごとが頭の中をぐるぐる回りやすくなります。
眠りが浅くなり、疲れがたまる
湿気や雨音、急な冷え込みで眠りが浅くなると、疲れが抜けにくくなります。睡眠不足は、気分を落ち込ませ、不安を感じやすくする大きな要因の一つです。
天気が崩れる日に、不安が強まりやすい理由
体の変化を、不安のサインと感じてしまう
気圧の変化で自律神経が乱れると、動悸がする、息が浅くなる、ふわふわする、落ち着かないといった体の変化が起きることがあります。こうした変化は、不安を感じたときの体の反応とよく似ています。そのため、体の変化をきっかけに「何か悪いことが起きるのでは」という不安が呼び起こされ、不安がさらに体の反応を強める、という悪循環が生まれることがあります。
「また調子が悪くなるかも」という身構え
台風のたびに体調を崩してきた方ほど、天気予報を見るだけで「また頭が痛くなるかもしれない」「また動けなくなるかもしれない」と身構えてしまいます。この予期不安が緊張を高め、実際に不調を起こしやすくすることもあります。
嵐や台風そのものが怖いこともあります
強い雨や風の音、停電や交通の乱れへの心配など、台風そのものが不安を呼ぶこともあります。以前に大きな災害を経験された方は、嵐の気配だけで、そのときの気持ちがよみがえることもあります。こうした反応は、とても自然なものです。つらさが強いときは、一人で抱えずにご相談ください。
不安のしくみについては、当院の不安についての記事でもくわしく解説しています。
天気の影響を受けやすい方の特徴
天気と気分の関係には個人差がありますが、次のような時期や状態にある方は、天気の影響を受けやすくなるといわれています。
- 仕事や家庭のストレスが続いていて、疲れがたまっている
- 睡眠が足りていない、生活のリズムが乱れている
- もともと不安を感じやすい、心配ごとが頭から離れにくい
- 片頭痛やめまいなど、天気で出やすい体の不調をもっている
- うつ病や不安の病気の治療中、または回復の途中にある
こうして見ると、天気の影響を受けやすいかどうかは、生まれつきの体質だけでなく、そのときのこころと体の状態にも左右されることが分かります。「最近、前より天気に振り回されるようになった」と感じる場合は、こころや体に疲れがたまっているサインかもしれません。
「天気のせい」で片づけないための目安
天気の悪い日に気分が沈むのは、自然なことです。「天気のせいだから仕方ない」と考えることは、自分を責めすぎないためには役に立ちます。
ただ、その考え方が、つらさが続いているときの受診を遅らせてしまうこともあります。精神科の診察室でも、「ずっと天気のせいだと思っていた」という方のお話をうかがうことがあります。次のような場合は、天気以外の原因が隠れていないか、一度考えてみてください。
目安1:天気が回復しても、気分が戻らない
天気による気分の落ち込みであれば、晴れた日が来ると、少しずつ気持ちが軽くなることが多いです。晴れが続いても気分が沈んだまま、という場合は、天気以外の原因を考える必要があります。
目安2:2週間以上、ほとんど毎日つらい
気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が、2週間以上ほとんど毎日続いている場合は、うつ病の可能性も考えられます。うつ病は、気持ちの弱さや怠けではなく、治療で良くなっていく病気です。
目安3:生活に支障が出ている
仕事や家事、学校に行くことができない日が増えている、人と会うのを避けるようになった、眠れない日や食欲がない日が続いている、という場合は、早めの相談をおすすめします。
目安4:不安が天気と関係なく続いている
天気が良い日も不安で落ち着かない、突然の強い不安とともに動悸や息苦しさが押し寄せることがある、という場合は、不安の病気やパニック障害の可能性もあります。パニック障害については、当院のパニック障害の解説記事でくわしくお話ししています。
気分の落ち込みが続くときの見分け方は、当院の気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線でくわしく解説しています。また、気分の落ち込みや無気力について幅広く知りたい方は、気分の落ち込み・無気力についての記事一覧もあわせてご覧ください。
天気が崩れる日の、気持ちの整え方
曇りや雨の日こそ、光を取り入れる
曇りや雨の日でも、屋外や窓辺の光は、室内の照明よりずっと明るいものです。朝はカーテンを開け、窓の近くで過ごす時間をつくってみてください。雨が弱い時間に、少しだけ外に出てみるのも助けになります。
気分と天気を、一緒に記録してみる
毎日の気分を、天気と一緒に簡単に記録してみると、自分と天気の関係が見えてきます。「やっぱり雨の日に沈みやすい」と分かれば、前もって備えることができます。反対に、「晴れの日も同じくらい沈んでいた」と気づくこともあります。その気づきは、天気以外の原因に目を向けるきっかけになります。記録は、受診のときにも役立ちます。
気圧の予報を見て、予定を軽くしておく
気圧の変化を予報してくれるアプリや天気サイトで、天気が崩れそうな日を前もって知っておくと、その日に負担の大きい予定を入れないように調整できます。「今日は調子が下がりやすい日」と分かっているだけでも、不意打ちの落ち込みに振り回されにくくなります。
雨の日の小さな楽しみを用意しておく
好きな飲み物、読みかけの本、気に入っている音楽など、雨の日にだけ楽しむものを決めておくと、天気の悪い日が少しだけ待ち遠しいものに変わることがあります。
誰かと話す
外に出られない日でも、家族や友人と電話やメッセージでやりとりするだけで、頭の中でぐるぐる回っていた考えが、少し落ち着くことがあります。一人で抱え込まないことは、どんな天気の日にも大切です。
「沈む日があってもいい」と考える
天気の悪い日に気分が沈むことは、多くの方に起きる自然なことです。「沈んではいけない」と思うほど、沈んだ自分を責めてしまいます。「今日はそういう日」と受け止め、無理に元気を出そうとしないことも、立派な対処の一つです。
心療内科・精神科に相談していただきたいとき
- 天気が回復しても、気分の落ち込みが戻らない
- 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が2週間以上続いている
- 天気と関係なく、不安で落ち着かない日が続いている
- 突然の強い不安とともに、動悸や息苦しさ、めまいが押し寄せることがある
- 天気予報を見るだけで不安になり、眠れない日がある
- 嵐や台風の気配で、過去のつらい経験がよみがえって苦しい
- 仕事や家事、学校に行くことに支障が出ている
みなとメンタルクリニックでできること
当院では、気分の落ち込みや不安がいつ、どんなときに強まるのか、天気との関係、眠りや食欲、体の症状の様子をていねいにうかがいます。そのうえで、天気の影響が中心なのか、うつ病や不安の病気、自律神経の不調が背景にあるのかを、ご一緒に見きわめていきます。
治療は、生活リズムや光の取り入れ方など、日々の整え方をご一緒に考えることから始め、必要に応じて、お薬による治療や、カウンセリング的アプローチを組み合わせていきます。自律神経の不調と、うつ・不安との違いについては、当院の自律神経失調症とうつ病・不安障害の違いを解説した記事もあわせてご覧ください。
みなとメンタルクリニックは関内駅からすぐの場所にあり、横浜市中区を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからも通っていただきやすい立地です。土日も診療しており、当日のご予約にも対応しています。「天気のせいかもしれないけれど、念のため話を聞いてほしい」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
このシリーズの記事(気圧の変化による不調)
- ピラー:気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説
- 第1章:低気圧で頭が痛いのはなぜ?片頭痛と気圧の関係
- 第2章:低気圧でだるい・眠い・起きられないのはなぜ?
- 第3章:気圧の変化でめまい・耳が詰まる感じがするのはなぜ?
- 第4章:天気が崩れると気分が沈む・不安になるのはなぜ?(この記事)
- 第5章:「気圧のせい」と思っていた不調が続くとき——受診の目安
よくあるご質問
雨の日に気分が沈むのは、うつ病でしょうか?
雨の日に気分が沈むこと自体は、多くの方に起きる自然なことで、それだけでうつ病というわけではありません。ただ、晴れの日も気分が戻らない、2週間以上ほとんど毎日つらい、生活に支障が出ている、という場合は、うつ病の可能性も考えられます。気になるときは、一度ご相談ください。
天気で気分が変わりやすいのは、性格の問題ですか?
性格の問題ではありません。研究でも、天気の影響の受け方には大きな個人差があることが分かっています。また、疲れやストレス、睡眠不足があると、誰でも天気の影響を受けやすくなります。自分を責めず、こころと体を休めるサインとして受け止めてみてください。
冬になると気分が沈むのも、同じものですか?
日照時間が短くなる秋から冬にかけて気分が沈み、春になると回復することを毎年くり返す場合は、「季節性感情障害」という、季節と関わるうつ病の可能性があります。天気の日ごとの変化による気分の波とは、少しちがうものです。毎年同じ時期に調子を崩す方は、ご相談ください。
当日の予約はできますか?
はい、当日のご予約にも対応しています。土日も診療していますので、平日にお休みが取りにくい方も、どうぞご相談ください。
すぐに受診できないときの相談先
気持ちのつらさが強く、すぐに受診するのが難しいときは、次のような公的な相談窓口もあります。一人で抱え込まず、話せる場所を頼ってみてください。
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの地域の相談窓口につながります)
- まもろうよ こころ(厚生労働省):電話やSNSで相談できる窓口がまとめられています
関連ページ
- 気圧の変化で体調を崩すのはなぜ?|台風・低気圧の頭痛・だるさ・めまいと「気象病」の正体を横浜・関内の精神科医が解説
- 気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線
- 気分の落ち込み・無気力についての記事一覧
- 不安についての記事一覧
- パニック障害の解説
- 自律神経失調症とうつ病・不安障害の違い(自律神経失調症シリーズ)
- 横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れ
参考にした主な資料
- Denissen JJA, et al. The effects of weather on daily mood: a multilevel approach. Emotion, 2008.
- Klimstra TA, et al. Come rain or come shine: individual differences in how weather affects mood. Emotion, 2011.
- Lambert GW, et al. Effect of sunlight and season on serotonin turnover in the brain. The Lancet, 2002.
- DSM-5-TR(アメリカ精神医学会):うつ病、季節型の特徴
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。