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2026/06/20
双極性障害の治療|双極スペクトラム・再発予防をガイドラインに沿って横浜・関内の精神科医が徹底解説
「双極性障害は、どうすれば再発を防げるの?」「症状が落ち着いたら、薬はやめていいの?」「安定を長く保つために、自分でできることはある?」——双極性障害の治療、とくに「再発予防」について、こうした疑問をお持ちの方は、少なくありません。まずは、この記事の要点です。
- 双極性障害は再発をくり返しやすい病気——治療の目標は「再発を防ぎ、安定を保つ」こと
- 症状が落ち着いたあとも続ける「維持療法」が、再発予防の柱になる
- 再発の主なきっかけは服薬の中断・対人ストレス・生活リズムの乱れの3つ
- 再発のサインに早く気づくことが、波を小さく抑える助けになる
- 薬物療法に、生活リズムを整える・病気を知る(心理教育)を組み合わせる
双極性障害は、躁(軽躁)とうつをくり返す病気ですが、適切な治療を続けることで、その波を小さくし、安定した時期を長く保つことができます。このページでは、双極性障害の治療の全体像と、とくに大切な「再発予防」の考え方を、日本うつ病学会の診療ガイドラインなどをふまえながら、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。双極性障害そのものについては「双極性障害(躁うつ病)とは」を、使うお薬の各論については「双極性障害の薬物療法|気分安定薬・抗精神病薬・再発予防」もあわせてご覧ください。
双極性障害の治療|「再発を防ぎ、安定を保つ」が目標
双極性障害の治療は、大きく3つの局面に分けられます。今、躁状態にあるときの治療、うつ状態にあるときの治療、そして症状が落ち着いた後の「再発予防(維持療法)」です。このうち、双極性障害でとりわけ重要なのが、3つめの再発予防です。
なぜなら、双極性障害は、気分のエピソード(躁やうつの波)を、生涯にわたってくり返しやすい病気だからです。とくにⅠ型では、一度躁状態を経験した方が再び気分の波を経験する割合は非常に高いと報告されています。そして、波をくり返す回数が多いほど、その後の経過に影響することが知られています。つまり、「今ある症状を抑える」だけでなく、「次の波を防ぎ、くり返しを減らす」ことが、長い目で見た安定に、直接つながるのです。
治療のゴールは、症状をゼロにすることそのものよりも、「波に振り回されず、自分らしい生活を続けられる状態」を、長く保つことにあります。完璧を目指して気負うのではなく、安定した時期を少しずつ延ばしていく——そんなイメージで、一緒に取り組んでいきます。
再発予防の柱|維持療法(お薬を続けること)
再発予防の中心になるのが、「維持療法」です。これは、症状が落ち着いたあとも、次の波を防ぐために、お薬を続けていく治療です。双極性障害は、症状が治まったからといって薬をやめると、続けた場合に比べて再発しやすいことが、診療ガイドラインでもはっきりと示されています。逆に、十分な量・期間の維持療法を続けることが、再発予防の土台になります。
維持療法に用いられるのは、気分の波を抑える気分安定薬(リチウム、ラモトリギンなど)や、一部の第二世代(非定型)抗精神病薬です。とくにリチウムは、躁・うつ双方の再発予防効果に加え、自殺のリスクを下げる効果が示されており、維持療法の要となるお薬とされています。ラモトリギンは、とくにうつの再発を防ぐ働きにすぐれ、うつが目立つ方や、軽いうつがなかなか抜けない方に用いられることが多いお薬です。どのお薬を、どのくらいの期間続けるかは、型(Ⅰ型・Ⅱ型)や、これまでの経過に応じて、医師が一緒に考えていきます。お薬の一つひとつの特徴は「双極性障害の薬物療法」でくわしく解説しています。
ここで大切なのが、「症状がないのに、なぜ薬を続けるのか」という点です。これは、風邪が治ったあとに薬をやめるのとは、考え方が異なります。双極性障害の維持療法は、「今の症状を治す」ためではなく、「次の波を防ぐ」ために続けるものです。症状がない安定した時期こそ、その安定を守るために、治療を続ける意味があるのです。ここが腑に落ちると、治療がぐっと続けやすくなります。
再発は、なぜ起こるのか|3つの主なきっかけ
双極性障害が再発する背景には、よくあるパターンがあります。研究や患者向けの解説では、再発の主なきっかけとして、次の3つが挙げられています。これを知っておくことは、再発を防ぐうえで、とても役立ちます。
- 服薬が続かなくなる:症状が落ち着くと「もう大丈夫」と自己判断でやめてしまい、しばらくして再発する
- ストレスの多い出来事(とくに対人関係):人間関係のトラブルや、大きな環境の変化が、波の引き金になる
- 生活リズム(社会リズム)の乱れ:睡眠や生活の時間が不規則になると、とくに躁のきっかけになりやすい
裏を返せば、この3つに気をつけることが、そのまま再発予防につながります。お薬を続けること、ストレスとの向き合い方を工夫すること、そして生活リズムを整えること——この3本柱が、安定を支えます。以下で、お薬以外の2つについても、くわしくお伝えします。
生活リズムを整えることの大切さ
双極性障害では、生活リズム、とくに睡眠のリズムを整えることが、再発予防にとても重要です。睡眠不足や、昼夜が逆転するような不規則な生活は、躁状態の引き金になりやすいことが知られています。「眠れないほど活動的になる」のは躁のサインでもありますが、逆に「睡眠を削る生活」が躁を呼び込むこともある、という双方向の関係があります。だからこそ、睡眠を守ることは、双極性障害の再発予防の、いわば生命線です。
毎日、なるべく決まった時間に起き、決まった時間に眠る。食事や活動、人と接する時間も、できるだけ一定に保つ。こうした規則正しい生活が、気分の波を穏やかにする、土台になります。日々の気分や睡眠を簡単に記録しておくと、自分のリズムのパターンや、波の予兆が見えやすくなり、とても役立ちます。手帳やアプリに、その日の気分(10段階など)と睡眠時間をメモするだけでも十分です。
また、アルコール・カフェイン・たばこ、強い光の浴び方なども、リズムや気分に影響します。夜更かしにつながる習慣や、寝る前の刺激を見直すことも、安定に役立ちます。当院でも、こうした生活面の工夫を、無理のない範囲で一緒に考えていきます。すべてを完璧にする必要はありません。「まず睡眠から」で構いません。
病気を知ること(心理教育)が、力になる
双極性障害の治療では、ご本人とご家族が、病気について正しく知ることが、大きな力になります。これを「心理教育」と呼びます。日本うつ病学会の診療ガイドラインでも、双極性障害は長期の服薬継続が望まれる病気であり、本人・家族が自発的・主体的に治療に参加することが重要で、そのために支持的な関わりと心理教育が大切だとされています。
病気の仕組みや、再発のきっかけ、お薬の意味を知ることで、「なぜ治療を続けるのか」が腑に落ち、納得して治療に取り組めるようになります。また、自分の波のパターンや、再発の予兆を知っておくことで、「調子が上がりすぎているかも」「そろそろ落ちてくるかも」と早めに気づき、対処できるようになります。病気を、得体の知れない怖いものではなく、「パターンの分かる、つき合っていける相手」として理解していくこと——それが、安定への大きな一歩になります。当院では、診察のなかで、こうした病気の理解を、少しずつ一緒に深めていきます。
再発のサインに、早く気づく
双極性障害の再発は、多くの場合、いきなり起こるのではなく、予兆(サイン)があります。この予兆に早く気づけると、大きな波になる前に、対処しやすくなります。人によって予兆はさまざまですが、たとえば次のようなものです。
- 躁・軽躁のサイン:睡眠時間が減っても平気になる、口数が増える、次々にやりたくなる、買い物が増える、気が大きくなる、いらいらしやすくなる
- うつのサイン:朝がつらくなる、興味がわかない、疲れやすい、眠りすぎる、自分を責めがちになる、決断できなくなる
こうした「自分なりのサイン」を、あらかじめ把握しておき、ご家族とも共有しておくと、早めの受診・対処につながります。とくに躁の予兆は、本人が気づきにくい(むしろ心地よく感じる)ことがあるため、ご家族の「いつもと違う」という気づきが、大切な手がかりになります。「このサインが出たら、早めに受診する」「大きな買い物や決断は、いったん保留する」といった対処法を、あらかじめ決めておくと、いざというときに動きやすくなります。こうした自分だけの”再発対応プラン”を、診察のなかで一緒に作っていくこともできます。
ご家族・周囲の支え
双極性障害の再発予防では、ご家族の理解と関わりが、大きな支えになります。とくに、躁・軽躁の予兆に早く気づくこと、生活リズムを一緒に整えること、そして本人が治療を続けられるよう見守ることは、大きな力になります。診療ガイドラインでも、本人だけでなく家族が治療に参加することの重要性が示されています。
一方で、ご家族が「再発させないように」と気を張りつめすぎると、ご家族自身が疲れてしまいます。ご家族もまた、支えられてよい存在です。「監視する」のではなく、「一緒に見守る」くらいの距離感が、長続きのコツです。接し方に迷ったとき、ご家族自身がつらくなったときも、遠慮なくご相談ください。当院では、ご本人だけでなく、ご家族からのご相談にも対応しています。躁の時期の関わり方については「なぜ躁状態で元気が出ても治療が必要なの?」も参考になります。
双極スペクトラムという考え方
双極性障害の診断基準を完全には満たさないものの、気分の波や、軽い高揚の傾向をもつ方もいます。こうした「うつ病と双極性障害の間」に位置づけられる状態を、まとめて「双極スペクトラム」と捉える考え方があります。これは、はっきりと診断がつかない場合でも、双極性の要素を見落とさず、その方に合った治療につなげるための視点です。
たとえば、「うつ病」として治療してもなかなか良くならない方のなかに、この双極スペクトラムに位置づけられる方がいることがあります。この視点をもつことで、抗うつ薬だけに頼らず、気分の波を安定させる方向からの治療を検討できます。「白か黒か」ではなく、グラデーションのなかでその方をとらえ、柔軟に対応していく——それが、双極スペクトラムの考え方です。うつ病との見分けについては「双極性障害とうつ病の違い」もご覧ください。
治療を続けるうえで、大切にしたいこと
自己判断で、やめないこと
再発予防の最大の敵は、自己判断による服薬の中断です。実際、再発のもっとも多いきっかけが、この服薬中断です。「調子が良いから、もういらない」と感じたときこそ、その安定は治療のおかげかもしれません。減らす・やめるときは、必ず医師と相談しながら、慎重に進めます。「やめたい」という気持ちも、大切な相談ごととして、お聞かせください。頭ごなしに否定することはありません。一緒に考えます。
焦らず、長い目で
双極性障害は、長くつき合っていく病気です。すぐに完璧な安定を目指すより、少しずつ波を小さくし、安定した時期を延ばしていく——そんな長い目線が、結果的に良い経過につながります。うまくいかない時期があっても、それは失敗ではなく、経過の一部です。一緒に、根気よく続けていきましょう。
「自分らしい生活」を目標に
治療のゴールは、症状を抑えることそのものではなく、あなたが「自分らしい生活」を送れるようになることです。仕事、家庭、趣味——大切にしたいものを続けられるよう、治療を組み立てていきます。働きながらの治療については「双極性障害と仕事・休職・復職」もご覧ください。
よくある質問
症状が落ち着いたら、薬はやめられますか?
双極性障害は再発しやすいため、症状が落ち着いた後も、再発予防のために服薬を続けることが多い病気です。ただし「一生」と決まっているわけではなく、経過が安定していれば、医師と相談しながら調整していくこともあります。自己判断での中止は再発につながりやすいため、必ずご相談ください。
きちんと薬を飲んでいても、再発することはありますか?
あります。再発には、生活リズムの乱れや、ストレスの多い出来事なども関わるため、お薬だけで完全に防げるわけではありません。だからこそ、生活面の工夫や、再発サインへの早めの気づきを、あわせて大切にします。再発しても、それは治療の失敗ではなく、対応していけるものです。落ち込みすぎず、また立て直していきましょう。
再発を防ぐために、自分でできることはありますか?
はい。規則正しい生活リズム(とくに睡眠)を保つこと、気分や睡眠を記録すること、自分の再発サインを知っておくこと、そして服薬を続けることが、大きな助けになります。すべてを一度にではなく、無理のない範囲で、少しずつ取り入れていきましょう。
Ⅱ型でも、再発予防の治療は必要ですか?
Ⅱ型でも、重いうつをくり返す場合や、双極性障害の家族歴がある場合などには、再発予防の治療がすすめられます。必要性はケースによって異なるため、これまでの経過をふまえて、一緒に判断していきます。Ⅰ型・Ⅱ型の違いについては「双極性障害I型とII型の違い」もご覧ください。
カウンセリングは、双極性障害に役立ちますか?
お薬による治療が基本ですが、病気を知り、生活リズムやストレスとの向き合い方を整えるための、カウンセリング的なサポートや心理教育は、再発予防の助けになります。お薬と組み合わせて進めていきます。
再発を防ぐために、生活で最初に見直すとよいのは何ですか?
まずは睡眠リズムです。睡眠不足や不規則な睡眠は、とくに躁の引き金になりやすいため、起きる時間・寝る時間を一定に保つことが、いちばん取り組みやすく、効果的な第一歩になります。
当院の特徴|関内駅2分・平日夜間診療・当日予約対応・女性医師在籍
みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分の、通いやすい立地にあります。祝日以外は毎日診療しており、平日は夜19時まで診療しているため、お仕事を続けながらの通院にも対応しています(土曜・日曜も診療)。当日のご予約にも対応していますが、枠の状況によっては、ご希望に添えない場合もございます。双極性障害のように長い経過をたどる病気では、できるだけ同じ医師が継続して診療し、腰を据えて再発予防に取り組むことを大切にしています。血液検査による安全確認、生活リズムの相談、ご家族へのサポートも含め、長期的な安定を一緒に支えます。女性医師も在籍し、保険適用の心理検査にも対応しています。うつ病、不安症、双極性障害、不眠症、自律神経失調症、適応障害、発達障害など、こころの不調全般を診療しています。
横浜・関内で、双極性障害の治療をお考えの方へ
「再発をくり返してしまう」「安定を長く保ちたい」「今の治療でいいのか相談したい」——どんなことでも、不安や希望をそのままお聞かせください。双極性障害は、お薬による維持療法と、生活リズムを整える工夫、再発サインへの気づき、そして周囲の支えによって、波を小さくし、安定した生活を長く続けていける病気です。何度もくり返してきた方も、どうか、あきらめないでください。安定への道は、いまからでも十分に描けます。長い経過を、一緒に支えていきます。
横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。祝日以外は毎日診療し、平日は夜間まで、土日も診療しています。当日のご予約にも対応しており(枠の状況によります)、みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町エリアからもお越しいただけます。受診をご希望の方は、WEB予約はこちらから。
「こんなことで受診していいのだろうか」と、ためらう必要はまったくありません。気分の波のつらさは、我慢するものではありません。初めての方も、緊張されて当然です。私たちは、その一歩を、ていねいにお迎えします。
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この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。