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2026/08/26

横になると動悸・息苦しさが出る|夜だけ心臓が気になる理由を横浜・関内の精神科医が解説

この記事は、みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)の「場面で出る体の症状について」ガイドの一記事です。全体像は総合ガイドをご覧ください。


電気を消して、布団に入る。静かになる。

すると、枕越しに自分の心臓の音が聞こえてくる。ドッ、ドッ、ドッ。一度気づいてしまうと、もうそこから離れられません。速い気がする。いや、いま一拍飛んだのではないか。息も、なんだか浅い。

体を起こしてみると、少し落ち着く。また横になると、戻ってくる。

そのうち、「このまま心臓が止まったらどうしよう」という考えが浮かんでくる。日中はそんなことを考えもしないのに、夜の暗い部屋では、その考えがやけに現実味を帯びてしまう。

もし心当たりがあるなら、この記事はその方に向けたものです。夜に動悸を強く感じることには、はっきりした理由があります


▼ 受診をお考えの方へ
当院は関内駅から徒歩圏(馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます)にあり、土日も診療しています。空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。

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先に、心配な方へ

動悸という症状の性質上、まずここからお伝えします。

次のような場合は、時間帯にかかわらず、まず循環器内科などで心臓の側を確認してください

  • 胸の痛みや、締めつけられるような感じを伴う
  • あごや左肩、背中に広がる痛みがある
  • 意識が遠のく、実際に失神したことがある
  • 脈がはっきり不規則で、それが長く続く
  • 運動したときや、階段を上ったときに強く出る
  • じっとしていても脈がずっと速いままである
  • もともと心臓の病気を指摘されたことがある
  • 血縁者に、若くして突然亡くなった方がいる

とくに「動いたときに出る」という点は重要です。緊張による動悸は、静かに横になっているときに強く感じられるのが特徴です。逆に、体を動かしたときに悪化するなら、心臓の側の確認が先になります。

当院でも、必要と判断した場合には適切な医療機関をご紹介しています。ご心配であれば、一度確認しておくこと自体に価値があります。「異常なし」と分かることが、そのまま治療の一部になるからです。

なぜ、夜だけ強く感じるのでしょうか

ここからが本題です。夜の動悸には、いくつもの条件が重なっています。

静かだから、聞こえてしまう

もっとも大きいのがこれです。

日中、心臓は同じように動いています。でも、周りに音があり、体も動いているので、意識に上りません。夜の寝室は、一日でいちばん静かな場所です。テレビも、話し声も、車の音もない。そこで初めて、体の内側の音が聞こえてきます。

さらに、枕に耳をつけて横になると、血管の拍動が直接伝わります。心臓が速くなったのではなく、聞こえ方が変わっただけ、ということが実際にはよくあります。

横になると、心臓の仕事が変わる

これは意外に知られていない点です。

立っているときは重力があるので、血液は下半身にたまりがちです。横になると、その血液が上半身に戻ってきます。心臓に返ってくる血液の量が増えるので、一回の拍動が大きくなります。

つまり、横になった直後に拍動を強く感じるのは、体の正常な変化です。「横になった途端にドクンとする」という訴えの多くは、これで説明がつきます。

注意が体の内側に向く

日中は、注意が外に向いています。仕事、会話、画面、移動。

夜、暗い部屋で横になると、注意を向ける先が自分の体しかなくなります。すると、普段なら素通りしている感覚が、はっきり拾われるようになります。

体の内側の状態を感じ取る力には個人差があり、感度の高い方は、同じ変化をより強く自覚します。これは弱さではなく、体質に近いものです。

切り替えが済んでいない

そしてもちろん、実際に心拍が上がっていることもあります。

一日中気を張っていた日は、活動側から休息側への切り替えが進んでいません。体はまだ構えたままです。横になっても、内側は昼のまま。この状態については布団に入ると体が緊張して眠れないで詳しくご説明しています。

明日への構えが、すでに始まっている

体は、これから起きることを予測して先に準備します。翌朝に気の重い場面が待っているなら、その準備は前の晩から始まります。仕組みは予期不安の記事でご説明しています。

気づくことが、動悸を強めます

夜の動悸には、他の症状にはない特徴があります。気づいた瞬間から、悪循環が始まるという点です。

  • 静かな部屋で、心臓の音に気づく
  • 「速いのでは」と思う
  • 確かめようとして、脈を測る、意識を胸に集中させる
  • 注意が向くほど、はっきり感じられる
  • 「やはり異常だ」と感じ、不安が強まる
  • 不安によって、実際に心拍が上がる
  • ますます強く感じられる

ここで重要なのは、確かめる行為そのものが、症状を強めているという点です。脈を測る、胸に手を当てる、スマートウォッチの数値を見る。どれも安心するためにしていることですが、注意を体に集中させるので、結果として逆に働きます。

そして、不安の対象が移っていきます。最初は日中の出来事に反応していたはずが、だんだん「動悸そのもの」への恐怖に変わっていく。この段階に入ると、日中の状況が改善しても症状が残ることがあります。

脈拍計・スマートウォッチについて

最近、この点のご相談が増えています。

睡眠中の心拍数が記録されるようになり、朝起きて数値を確認するのが習慣になっている方がいらっしゃいます。

データそのものは有用です。ただ、夜の動悸を気にしている時期にこれを見続けると、注意を体に向け続けることになります。「昨夜は心拍が高かった」と知ることで、次の夜への身構えが強まってしまう。

また、こうした機器の数値は医療機器の測定とは精度が異なり、体動などで実際とずれることもあります。症状が強い時期は、いったん記録を見ないでおくことをおすすめしています。心配な点は、診察で一緒に確認していきましょう。

パニック症との境目

夜の動悸がパニック症の形をとることがあります。とくに、眠りかけたところで急に始まるタイプです。

次のような特徴があれば、その可能性を考えて診ていきます。

  • 症状が数分のうちに一気に強まる
  • 動悸、息苦しさ、めまい、ふるえ、汗、しびれが同時に起こる
  • そのとき「このまま死ぬのではないか」という強い恐怖を感じる
  • 10分から20分ほどでピークを越え、おさまる
  • 眠りかけた瞬間に起こることがある
  • 夜以外——電車、エレベーター、会議中などでも起こる

眠りかけに起こるものは、とくに恐怖が強くなりがちです。「寝るのが怖い」という状態につながりやすいためです。

ここでお伝えしておきたいのは、パニック症は治療の道筋がはっきりしている状態だということです。放っておくと生活の範囲が狭まりますが、手を打てば戻していけます。

その夜、できること

まず、上半身を少し起こす

横になった姿勢で強く感じるなら、枕を高くする、クッションを重ねて上半身を少し起こすだけで軽くなることがあります。心臓に戻る血液の量が変わるためで、理屈にかなった対処です。

脈を測らない、胸に手を当てない

確かめたくなるお気持ちはよく分かります。ただ、確かめることが注意を集中させ、症状を強めます

すでに検査で異常がないと確認できているなら、その事実に立ってください。「測らなくていい」と決めておくことが、この症状ではかなり効きます。

吐く息を長くする

これは、動悸に対して直接的に効きます

息を吸うときは心拍が少し速くなり、吐くときは少し遅くなります。健康な人にも起こる自然な変動です。ですから、吐く時間を長くすれば、心拍は実際に落ち着きます。

4つ数えて吸い、6つから8つ数えてゆっくり吐く。数分続けてみてください。数えることで注意が胸から離れるという利点もあります。

注意の向け先を、外へ

体の内側に向いた注意を、意図的に外へ移します。

  • 静かな音楽やラジオを小さくかける(無音は、内側の音を目立たせます)
  • 足の裏や、布団に触れている背中の感覚に注意を向ける(体の感覚でも、胸から遠い場所なら悪循環になりにくいです)
  • 簡単な計算や、しりとりを頭の中でする

それでも収まらなければ、いったん起きる

20分ほど経っても落ち着かないなら、寝室を出てください。横になっている姿勢そのものが症状を強めていることがありますし、寝室と不安の結びつきを避ける意味もあります。

暗めの部屋で静かに過ごし、落ち着いてから戻る。「布団で耐える」より、ずっと有効です

夕方以降のカフェインとアルコール

カフェインは、心拍を上げます。効果は数時間続き、感受性には個人差があります。午後以降のコーヒーや緑茶を控えるだけで変わる方がいらっしゃいます。

アルコールも、寝つきは良くしますが、数時間後に心拍を上げ、眠りを浅くします。夜中に動悸で目が覚めるという方は、まずここを疑ってみてください。

受診を考えていただきたいとき

  • 夜の動悸で寝つけない日が、週に3日以上ある
  • その状態が1か月以上続いている
  • 眠るのが怖いと感じるようになった
  • 脈やスマートウォッチを確認するのがやめられない
  • 夜以外の場面でも動悸が出るようになった
  • 動悸を避けるために、行動を変え始めている
  • 気分の落ち込みや、朝の不調を伴う

とくに「眠るのが怖い」という感覚は、早めにご相談いただきたいサインです。眠りは毎日必ず訪れるものですから、そこが恐怖の対象になると、生活全体に響きます。

診察では何をするのか

まず、動悸の出方を具体的に伺います。急に始まるのか、じわじわか。どのくらい続くか。横になった直後か、しばらくしてからか。夜以外にも出るか。この情報が、診立てを大きく前に進めます

すでに心臓の検査を受けておられるなら、その結果を教えてください。まだであれば、必要に応じてご案内します。

そのうえで、背景を見立てます。適応障害不安症、パニック症、うつ病、自律神経のバランスの乱れ——どれに当たるかで進め方が変わります。

職場や生活の負荷が背景にあるなら、そちらへの手当てを検討します。当院理事長は日本医師会認定産業医でもありますので、働き方の調整もご相談いただけます。

症状が強くて眠れない状態が続いているときには、お薬で下支えすることもあります。必要な期間だけ使い、落ち着いたら整理していく前提でご説明します。

あわせて、体の感覚への注意の向け方を扱うカウンセリング的アプローチもお伝えしていきます。この症状では、ここがとくに効きます

よくあるご質問

検査で異常なしと言われましたが、症状はあります

矛盾しません。心臓の形や動きに異常がないことと、拍動を強く感じることは別のことです。異常がないと分かったからこそ、次は「なぜ夜だけ強く感じるのか」を診る段階に進めます。

心臓が止まるのではと怖くなります

その恐怖自体が、緊張時にはよく生じるものです。心臓の検査で問題がないと確認されているのであれば、その結果に立っていただいて大丈夫です。恐怖が強く出てしまうことも含めて、診察でお話しください。

スマートウォッチは外したほうがいいですか

症状が強い時期は、睡眠中の心拍記録を見ないでおくことをおすすめしています。装着自体をやめる必要はありませんが、朝に数値を確認する習慣は、しばらく休んでみてください。

平日は仕事で行けません

当院は土日も診療しており、夕方以降のご予約も可能です。会社帰りに通える心療内科をご覧ください。関内駅から徒歩圏で、馬車道・桜木町・みなとみらいからもお越しいただけます。

今日つらいのですが、当日でも診てもらえますか

空き状況によっては当日のご予約にも対応しています。Web予約で当日枠が出ていない場合も、お電話でご相談いただければ調整できることがあります。初診の流れはこちらです。


静かな部屋で、心臓の音に気づいてしまう夜に

夜の動悸がつらいのは、ひとりだからという部分が大きいと思います。暗い部屋で、誰にも言えず、時計だけが進んでいく。

でも、静かで、横になっていて、注意を向ける先が自分の体しかない——これは、症状を強く感じるための条件がすべてそろった状況です。そこで強く感じることに、おかしなところはありません。

「夜、横になると動悸がするんです」——診察室では、その一言から始めていただければ十分です。

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みなとメンタルクリニック(横浜市中区・関内)/土日診療・当日予約に対応


関連ページ


参考

  • 日本循環器学会 不整脈に関する診療ガイドライン
  • 日本睡眠学会 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
  • DSM-5-TR(American Psychiatric Association)
  • ICD-11(World Health Organization)

この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)

医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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