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2026/09/02

日が短くなると気分が沈むのはなぜ?|秋うつと季節性感情障害(冬型)の入口・見分け方・10月からの備えを横浜・関内の精神科医が解説

「日が短くなってきたころから、なんとなく気分が沈む」「秋になると毎年、やる気が出なくなる」「夕方に暗くなるだけで、気持ちまで暗くなる気がする」。9月の終わりから10月にかけて、横浜・関内のみなとメンタルクリニックには、こうした「秋うつ」のご相談が少しずつ増えていきます。

日が短くなると気分が沈むのは、感傷でも気のせいでもありません。光の量が脳のリズムと気分の土台に直接影響している、というしくみがあります。この記事では、日照の減少がなぜ気分に効くのか、「秋うつ」と呼ばれる状態の中身、その先にある季節性感情障害(冬型)という病気の入口、そして秋のうちにできる備えを、精神科医の立場からお伝えします。

秋の不調の全体像は秋に心と体が不調になるのはなぜ?|秋バテ・秋うつ・季節の変わり目のだるさと気分の落ち込みを横浜・関内の精神科医が解説でまとめています。この記事はその第3章、「日照と気分」を掘り下げる、シリーズの中心になる回です。

秋、光はどのくらい減るのか

東京・横浜の昼の長さは、9月のはじめには13時間近くありますが、10月の終わりには11時間を切り、12月には10時間を下回ります。秋の3か月で、昼が3時間近く短くなる計算です。しかも、朝の日の出は遅くなり、夕方の日の入りは早まるので、通勤前と帰宅時という、多くの方が外の光を浴びる時間帯が、両方とも暗くなっていきます。

夏の間は、意識しなくても十分な光を浴びていました。秋は、意識しなければ光が足りなくなる季節です。

光が減ると、なぜ気分が沈むのか

朝の光が、体内時計を「前に進める」合図になっている

脳の奥には体内時計の中枢があり、目から入る光の情報を受け取って、一日のリズムを外の世界に合わせています。とくに朝の光は、体内時計を前に進め、「今日が始まった」という合図を全身に送る役目を持っています。朝の光が弱く遅くなると、この合図も弱く遅くなり、体内時計が少しずつ後ろにずれていきます。

メラトニンの出方が変わり、眠気が朝に残る

体内時計のずれは、眠りをつくるホルモンであるメラトニンの出方に表れます。本来、メラトニンは夜に出て朝の光で止まりますが、朝の光が弱いと止まりきらず、朝になっても眠気が残ります。同時に、夜に出始める時刻も後ろにずれ、夜はなかなか眠くならない。この「朝がつらく、夜が遅くなる」状態が、秋の気分の沈みの土台になります。この点は第4章「秋になると朝起きられない・眠くて仕方ないのはなぜ」で詳しく扱います。

日光とセロトニンの関係

もうひとつ、光は気分の安定に関わる脳内の神経伝達物質、セロトニンの働きにも影響します。海外の研究で、脳内のセロトニンの回転が、その日に浴びた日光の量と関連していることが報告されています。明るい日ほどセロトニンがよく働き、暗い日は働きが鈍る。日照が減る秋は、この面からも気分が沈みやすい方向に傾きます。

体のリズムがずれると、気分も遅れてついてくる

こうして、光の減少→体内時計の後ろずれ→朝の眠気と夜の覚醒→セロトニンの働きの低下、という流れが重なると、朝起きるのがつらく、日中もぼんやりし、意欲がわかず、夕方には気分が沈む、という一日ができあがります。これが「秋うつ」と呼ばれる状態の、体の側から見た中身です。

「秋うつ」とは何か。3つのものを見分ける

「秋うつ」は医学用語ではなく、秋に気分が沈む状態を広く指す生活の言葉です。診察室では、この言葉の中に3つの異なるものが混ざっていると感じます。

1. 秋バテの延長にある、軽い気分の沈み

夏の消耗と寒暖差で体がだるく、そのだるさに引きずられて気持ちも沈んでいる状態です。体が回復するにつれて気分も戻ってきます。第1章「秋バテ」で扱った範囲です。

2. 季節性感情障害(冬型)の始まり

日照の減少に体が強く反応し、秋から冬にかけて毎年うつ状態になり、春に軽くなる、という季節のパターンをもつうつ病です。次の節で詳しく説明します。

3. 季節と関係のないうつ病が、秋に表に出たもの

もともと抱えていた疲れやストレスによる落ち込みが、秋の負担が重なったことで表に出てきた状態です。この場合、光や季節が原因ではないので、季節が進んでも自然には軽くなりません。見分け方は気分の落ち込みが続く——「ただの落ち込み」と「受診すべきうつ」の境界線でお伝えしている、期間・広がり・生活への影響という3つの物差しが基本になります。

この3つは、対処が違います。1は休養と生活リズムで戻り、2は光と生活リズムの調整を軸に、必要なら薬を組み合わせて冬を浅くする備えをし、3は季節を待たずに治療を考えます。「秋うつ」とひとくくりにせず、自分がどれに近いかを見ておくことが大切です。

季節性感情障害(冬型)とはどんな病気か

1980年代に見つかった「季節で繰り返すうつ」

季節性感情障害は、1984年にアメリカの研究者らが、冬になるとうつ状態になり、春になると自然に回復する患者さんの一群を報告したことで知られるようになりました。日照の少ない高緯度の地域ほど多いことが確かめられ、光との関係が早くから注目された病気です。

診断の考え方

現在の診断基準では、季節性感情障害は独立した病名ではなく、うつ病や双極性障害に「季節型」という特徴が付くもの、という位置づけです。目安として、うつ状態の始まりと終わりが特定の季節と重なること、それが少なくとも2年続いていること、季節と関係のないうつ状態よりも季節性のものが多いこと、などが挙げられています。日本での有病率は欧米より低く、報告によりますが1%前後とされています。

冬型の症状は「普通のうつ」と反対に出る

ここが大切な特徴です。一般的なうつ病では、眠れない・食べられない・体重が減る、という形が多いのですが、冬型の季節性感情障害では反対に、

  • いくら寝ても眠い、朝起きられない(過眠)
  • 甘いものや炭水化物を強く欲しがる、食べる量が増える(過食)
  • 体重が増える
  • 体が鉛のように重い、だるい
  • 人と会うのが億劫になる

といった形で出ます。夏ピラーでお伝えした夏型(不眠・食欲低下)とはちょうど逆で、「秋から眠くて、食べて、動けなくなる」のが冬型の典型です。この過眠と過食については、第4章と第5章でそれぞれ詳しく扱います。

いつ始まり、いつ軽くなるか

冬型の症状は、冬に突然始まるのではなく、日が短くなり始める10〜11月ごろから静かに立ち上がり、1〜2月にもっとも重くなり、日が長くなる3〜4月ごろに軽くなっていきます。「毎年この流れ」という方は、秋のうちに気づいておくことで、冬の落ち込みを浅くする備えができます。

秋のうちにできる備え。10月から始める光と生活リズム

朝の光を、毎日、意識して浴びる

季節性感情障害の治療の柱は光です。高照度の光を朝に浴びる光療法は、冬型に対して効果があることが複数の研究で示されています。専用の器具がなくても、起きてすぐカーテンを開ける、朝のうちに10〜15分外に出る、通勤を一駅ぶん歩く、といった形で、外の光を浴びる時間を意識してつくることが備えの第一歩です。曇りの日でも、屋外の光は室内照明よりはるかに強く、十分に意味があります。

起きる時間をそろえる

体内時計の後ろずれを防ぐには、寝る時間より起きる時間をそろえることが効きます。休日も平日と1〜2時間以内の差に収めてください。秋のうちにこの習慣ができていると、日照がさらに減る冬に入っても、リズムが崩れにくくなります。

夕方以降は、部屋を明るくしすぎない

朝の光を強く、夜の光を弱くすることで、体内時計のメリハリがつきます。夜遅くまで強い照明やスマートフォンの画面を見ていると、メラトニンの出始めがさらに遅れます。

体を動かす時間を、日中に置く

運動が気分に良い影響を与えることは、季節に関係なく知られています。秋は屋外で体を動かしやすい季節でもあるので、日中の散歩や軽い運動は、光と運動の両方の効果を一度に得られます。

「毎年こうなる」なら、症状が出る前に相談を

冬型の季節性感情障害では、症状が本格化してから治療を始めるより、秋のうちに備えを始めるほうが冬を軽く過ごせます。必要に応じて、薬による治療を早めに始めたり、前の冬に効いた治療を秋から再開したりする方法もあります。「毎年、秋から冬に調子を崩す」という自覚がある方は、症状が出る前の10月ごろのご相談がおすすめです。

受診を考えていただきたい目安

  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しくない感じが、ほぼ毎日2週間以上続いている
  • 体のだるさは軽くなってきたのに、気持ちだけが戻ってこない
  • 朝起きられない、日中の眠気が強い日が続き、仕事や家事に支障が出ている
  • 甘いものや炭水化物を強く欲しがり、食べる量と体重が増えてきた
  • 毎年、秋から冬にかけて同じように調子を崩し、春に軽くなる
  • 人と会うのが億劫になり、予定を断ることが増えた

何をしても楽しめない感じが強いときは何をしても楽しくない状態についての記事も、朝起きられない状態が続くときは朝起きられない状態についての記事もご参考ください。

夜間や休日など、すぐに受診できないときに相談できる公的な窓口もあります。

  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・通話無料)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話・SNSでの相談窓口をまとめたサイト

横浜・関内で秋うつ・季節性感情障害をご相談いただくには

みなとメンタルクリニックは、関内駅から徒歩圏内、横浜市中区・馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからも通いやすい場所にあります。土日も診療しており、当日のご予約にも対応していますので、「秋になると毎年こうなる」と思い当たる方は、冬を待たずにお気軽にご相談ください。

診察では、いまの落ち込みが秋バテの延長なのか、季節性感情障害の始まりなのか、季節と関係のないうつ病なのかを、これまでの季節ごとの経過も含めてお話をうかがいながら一緒に整理します。光と生活リズムの調整を中心に、必要に応じてカウンセリング的なアプローチや薬による治療を組み合わせ、冬を浅く過ごすためのお手伝いをします。会社帰りの受診については会社帰りに通える心療内科をお探しの方へ|横浜・関内で夜間・土日も診療、当日予約に対応を、初診の流れは横浜関内で心療内科を当日予約したい方へ|今日つらいときの受診目安と初診の流れをご覧ください。

秋のメンタル不調シリーズ(全6章)

夏型の季節性感情障害と夏の不調については夏に心と体が不調になるのはなぜ?|夏バテ・夏うつ・夏の不眠・冷房病を横浜・関内の精神科医が解説をご覧ください。

よくあるご質問

秋うつは放っておけば春に治りますか?

季節性感情障害(冬型)であれば、春に自然に軽くなることが多いのは事実です。ただ、冬の数か月を重い状態で過ごすことになりますし、季節と関係のないうつ病が混ざっている場合は春を待っても軽くなりません。秋のうちに見立てをして、冬を浅くする備えをするほうが、結果として楽に過ごせます。

光療法の器具を自分で買って使ってもいいですか?

市販の器具もありますが、使う時刻や時間によって効果や体への影響が変わりますし、双極性障害の傾向がある方では注意が必要な場合もあります。始める前に一度ご相談いただくのがおすすめです。器具がなくても、朝の外の光を浴びることは今日から始められます。

当日に予約して受診できますか?

はい。当日のご予約に対応しています。土日も診療していますので、平日にお休みが取りにくい方もご利用ください。


この記事の監修者

田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)

医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。

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