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2026/07/06
アパシー(意欲低下)のセルフチェックと家族の対応——横浜・関内の精神科医が解説
「最近、何をするのもおっくうだ」「家族が、以前と変わって何もしなくなった」——アパシー(意欲障害)は、本人にとっても、周りで見守るご家族にとっても、どう向き合えばいいのか分かりにくい状態です。責めても始まらないことは、なんとなく分かる。でも、放っておいていいのかも分からない。そんな戸惑いのなかにいる方は、少なくありません。
このページは、横浜・関内のみなとメンタルクリニックがお届けするアパシー(意欲低下)シリーズ・全14回の第13回です。ここまでの各回を踏まえ、アパシーかもしれないと感じたときのセルフチェックと、ご家族の具体的な対応を、実際に役立つ形でまとめます。専門的な背景は、アパシー全体の解説である[apathy]何をしても心が動かない・感情がわいてこない——「アパシー(意欲障害)」を横浜・関内の精神科医が解説や、次回の[apathy-treatment]アパシー(意欲低下)の治療と回復への道筋——横浜・関内の精神科医が最新研究にもとづき解説もあわせてご覧ください。
読むより先に、まず相談したい方へ
「これはアパシーだろうか」「家族として、どう関わればいいのか」——チェックしてみて気になった段階でのご相談で、まったく構いません。ご本人からでも、ご家族だけのご相談でも歓迎しています。横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、祝日以外は土日も診療し、当日のご予約にも対応しています。
- WEB予約はこちら(当日予約も可能)
- お電話でのご予約・お問い合わせ:045-663-5925(診療時間内にて承ります)
本人向け・セルフチェック
まず、ご自身のための簡単なチェックです。ここ2週間ほどの状態を思い浮かべながら、当てはまるものを数えてみてください。これは診断ではなく、「専門家に相談したほうがよいか」を考えるための、目安です。
- 以前は楽しめていたことに、興味がわかなくなった
- 「やらなきゃ」と分かっていても、体が動き出さない
- 自分から何かを始めることが、めっきり減った
- うれしい・悲しいといった感情が、動きにくくなった
- 身だしなみや部屋のことが、どうでもよくなってきた
- 人と会ったり、連絡を取ったりするのが、面倒になった
- 将来のことを考えたり、計画を立てたりしなくなった
- 周りから「変わったね」「元気ないね」と言われることがある
いくつも当てはまり、それが2週間以上続いている場合は、一度、専門家に相談することをおすすめします。とくに大切なのは、次の点です。もし、この意欲の低下に加えて、「気分が沈んで一日中つらい」「消えてしまいたいと感じる」といった強い落ち込みや、つらさを伴う場合は、アパシーというより、うつ病の可能性があります。その場合は、早めの受診が特に大切です。アパシーとうつの違いは[apathy-vs-depression]アパシーとうつ病の違い|「やる気が出ない」の見分け方を横浜・関内の精神科医が解説で解説しています。
逆に、「意欲は落ちているが、そのこと自体はあまり苦にならない」という場合も、油断はできません。背景に、体の病気や、脳に関わる変化が隠れていることがあるからです。いずれにせよ、「気のせい」で片づけず、背景を一度整理しておくことに、意味があります。
ご家族向け・見守るときの視点
ここからは、意欲の低下したご家族を見守る方に向けてお話しします。まず知っていただきたいのは、アパシーは「症状」であって、本人の性格でも、甘えでも、努力不足でもないということです。本人の多くは、「動きたいのに動けない」もどかしさを、内側に抱えています。
そのうえで、ご家族が観察しておくと、受診のときに役立つポイントがあります。「いつ頃から変わったか」「どんなふうに変わったか(何をしなくなったか)」「物忘れや体の不調など、ほかに気になる変化はないか」「飲んでいる薬に変化はなかったか」。こうした情報は、背景を見極めるうえで、とても大きな手がかりになります。気づいたことを、メモしておかれるとよいでしょう。高齢のご家族の変化については[apathy-elderly-family]高齢の親が何もしなくなった・一日中ぼんやりしている——ご家族へ、その変化の見分け方を横浜・関内の精神科医が解説もご参照ください。
ご家族が「してよいこと」
アパシーへの関わりには、コツがあります。まずは、心がけたい対応から。
- さりげなく、きっかけをつくる。アパシーのある方は、自分からは動けなくても、外から誘われれば動けることが多いものです。「一緒に散歩でもどう?」と、そっと誘ってみる。命令ではなく、お誘いの形で。
- 目標を、うんと小さくする。「片づけて」ではなく「この一枚だけ、一緒に片づけようか」。本人が「それならできそう」と思えるところまで下げるのがコツです。
- できたことを、一緒に喜ぶ。小さな一歩でも、「できたね」と認める。この積み重ねが、「やれば報われる」感覚を取り戻す土台になります。
- 本人のペースを尊重する。回復は、ゆっくり進みます。焦らせず、待つ姿勢が、結果的にいちばんの支えになります。
- ご家族自身も、抱え込まない。見守る側の負担は、決して小さくありません。ご家族だけでの相談も可能です。
ご家族が「避けたいこと」
一方で、よかれと思ってやってしまいがちだけれど、逆効果になりやすい対応もあります。
- 「怠けている」「甘えないで」と責める。これがもっともつらい対応です。責められると、本人は「動いてもどうせ責められる」と感じ、意欲はさらに冷え込みます。
- 「しっかりして」「気合いが足りない」と叱咤する。アパシーは気合いで解決するものではありません。叱咤は、本人を追い詰めるだけになりがちです。
- 大きすぎる要求をする。「ちゃんと働きなさい」「元の生活に戻して」——正論でも、いまの本人には負担が大きすぎて、動けなくさせてしまいます。
- すべてを先回りして、やってあげる。心配のあまり何もかも代わりにやると、本人が動く機会を奪ってしまうことも。小さな役割を残すバランスが大切です。
- 無理やり説得して、受診させようとする。本人が抵抗する場合、力ずくは逆効果になりがちです。まずはご家族だけで相談する道もあります。
こんなときは、早めに相談を
次のような場合は、様子を見るより、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
- 意欲の低下に加えて、強い気分の落ち込みや、つらさを伴っている
- 「消えてしまいたい」といった言葉が聞かれる(この場合は、すぐに相談を)
- 物忘れや、手の震え、歩きにくさなど、体や脳に関わる変化を伴っている
- 意欲の低下が、急に始まった、あるいは急速に進んでいる
- 食事や水分をとらない、身の回りのことができないなど、生活に支障が出ている
とくに、強い落ち込みやつらい気持ちを伴う場合、急に始まった場合、体の症状を伴う場合は、背景に対処すべき病気が隠れていることがあります。こうしたサインは、「様子見」ではなく「相談のきっかけ」と受け止めてください。
よくあるご質問
本人が「病院に行きたくない」と言います。どうすれば?
アパシーでは、「受診しよう」という意欲自体が低下しているため、これはよくあることです。無理に説得するより、まずご家族だけで相談することから始められます。ご家族が状況を整理し、関わり方の助言を受けるだけでも、状況が動き出すことがあります。「本人を連れてこなければ」と気負わなくて大丈夫です。
セルフチェックで多く当てはまりました。すぐ受診すべきですか?
当てはまる項目が多く、2週間以上続いているなら、一度相談されることをおすすめします。緊急ではなくても、背景を早めに整理しておくことで、対処の糸口が見つかります。とくに、つらさや落ち込みを伴う場合は、早めの受診をお考えください。
家族として、どこまで手を貸せばいいのか分かりません。
「すべてやってあげる」でも「突き放す」でもなく、その中間——小さなきっかけをつくり、できたことを認めるのが基本です。本人が動く機会を残しながら、そっと後押しする。このさじ加減は難しいので、迷ったときは、ご家族の関わり方も含めて、一緒に考えていきましょう。
その日のうちに受診できますか?
当院は当日のご予約にも対応しています。祝日以外は土日も診療していますので、平日にお時間を取りにくい方も、通いやすい体制を整えています。まずはWEB予約、またはお電話(045-663-5925)でご相談ください。
横浜・関内で相談したいとき
みなとメンタルクリニックは、JR関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・みなとみらいエリアで、ご本人にもご家族にも通いやすい場所にあります。祝日以外は土日も診療しており、当日のご予約にも対応しています。「これはアパシーだろうか」「家族として、どう関わればいいのか」——チェックしてみて気になった方は、ご本人はもちろん、ご家族だけでのご相談もできます。背景の見極めから、日々の関わり方まで、一緒に考えていきます。ご予約はWEB予約から。受診にあたってのご不明な点はよくある質問もご参照ください。
アパシー(意欲低下)シリーズ・全14回もくじ
- 第1回:[apathy]何をしても心が動かない・感情がわいてこない——「アパシー(意欲障害)」を横浜・関内の精神科医が解説
- 第2回:[apathy-brain-mechanism]アパシー(意欲低下)はなぜ起きる?——脳のしくみ・ドパミン・3つのタイプを横浜・関内の精神科医が徹底解説
- 第3回:[no-motivation]何もしたくない・やる気が出ない——それは「怠け」ではなく、心のエネルギー切れのサインです
- 第4回:[loss-of-interest]何にも興味がわかなくなった・趣味が楽しめない——興味・関心の喪失を横浜・関内の精神科医が解説
- 第5回:[emotional-blunting]感情がわかない・喜怒哀楽が乏しくなった——心が動かない状態を横浜・関内の精神科医が解説
- 第6回:[brain-fog]頭に霧がかかったように働かない——「ブレインフォグ」の正体と、背景にある心身の不調
- 第7回:[apathy-vs-depression]アパシーとうつ病の違い|「やる気が出ない」の見分け方を横浜・関内の精神科医が解説
- 第8回:[negative-symptoms-apathy]統合失調症の「陰性症状」としての意欲低下・感情の平板化——横浜・関内の精神科医が解説
- 第9回:[dementia-apathy]認知症とアパシー(意欲低下)|物忘れより先に現れることもある——横浜・関内の精神科医が解説
- 第10回:[parkinson-apathy]パーキンソン病とアパシー(意欲低下)|ドパミンと意欲の深い関係を横浜・関内の精神科医が解説
- 第11回:[post-stroke-apathy]脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の意欲低下・アパシー|リハビリが進まない背景を横浜・関内の精神科医が解説
- 第12回:[apathy-elderly-family]高齢の親が何もしなくなった・一日中ぼんやりしている——ご家族へ、その変化の見分け方を横浜・関内の精神科医が解説
- 第13回:[apathy-checklist]アパシー(意欲低下)のセルフチェックと家族の対応——横浜・関内の精神科医が解説(このページ)
- 第14回:[apathy-treatment]アパシー(意欲低下)の治療と回復への道筋——横浜・関内の精神科医が最新研究にもとづき解説
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監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)/医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て現職。うつ病・不安症・睡眠障害などを中心に診療しています。詳しくは田邊陽一郎の理事長プロフィールをご覧ください。