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2026/06/17
ADHD治療薬の違い|コンサータ・ストラテラ・インチュニブの特徴|横浜・関内の精神科が解説
「コンサータとストラテラ、どちらがいいんですか」
診察室で、よく聞かれます。ネットで調べれば調べるほど、情報が錯綜していて、何が正しいのかわからなくなる。当然のことです。
結論から言えば——どちらが「良い薬」かという問いは、成立しません。3つの薬は、効き方も、速さも、持続時間も、副作用も、まったく違うからです。
あるのは、「あなたの症状の形と、生活に合う薬はどれか」という問いだけ。
この記事では、日本で成人に使える3つのADHD治療薬——コンサータ、ストラテラ、インチュニブを、脳での働き方から副作用の仕組みまで、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が解説します。
ADHDの薬でお悩みの方へ
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分(桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分)。祝日以外は土日も診療しており、当日予約にも対応しています。コンサータ処方の登録医が在籍し、心理検査も保険適用で実施しています。他院で診断を受けた方のご相談も承ります。
▶ WEB予約はこちら(当日予約可)/初めての方は初診の方へをご覧ください。
まず、地図を描きます
3つの薬は、脳のどこに、どう働くかで分かれます。
大人のADHDの記事で書いたとおり、ADHDの実行機能の偏りには、ドパミンとノルアドレナリンという2つの神経伝達物質が関わっています。脳の司令塔である前頭前野が、この2つを使って、注意を配分し、衝動を抑え、計画を立てている。
3つの薬は、この伝達を底上げしますが、やり方がまったく違います。
- コンサータ:ドパミンとノルアドレナリンの回収を止め、放出も促す——最も直接的
- ストラテラ:ノルアドレナリンの回収だけを止める——じわじわ、確実に
- インチュニブ:受け取る側の感度を上げる——まったく別の発想
コンサータ(メチルフェニデート徐放錠)
脳で、何をしているか
神経細胞は、ドパミンやノルアドレナリンを放出して信号を伝えたあと、放出したぶんを回収して再利用しています。
コンサータは、この回収口を塞ぎます。回収されなければ、放出された伝達物質は神経のすきまに長くとどまり、その分だけ働き続けられる。加えて、放出そのものを促す作用もあるとされます。
つまり、最も直接的に、伝達を強める薬です。だから、効果を実感しやすい。
「SR」ならぬ「OROS」——1日1回の仕掛け
コンサータの正体は、精巧な放出制御装置です。
錠剤の外側にすぐ溶ける層があり、内側には水を吸って膨らむ層がある。飲むと、まず外層が溶けてすぐに効き始め、その後、内部の浸透圧で薬が少しずつ押し出されていく。
この仕組みにより、朝1回の服用で、日中を通して効果が持続します。だから、錠剤を割ったり噛んだりしてはいけません。この装置が壊れると、薬が一気に放出されてしまいます。
効果の特徴
- 効き始めが速い:服用後、比較的早く効果を感じる方が多い
- 効果を実感しやすい:「頭の中が静かになった」と表現されます
- 日中に効いて、夜には切れる:これは利点でも欠点でもあります(後述)
注意点
- 食欲低下:最も多い副作用です。昼食が食べられなくなる方も。体重の変化を見ながら調整します
- 不眠:覚醒側に働く薬なので、飲む時間が遅いと夜に響きます。朝、決まった時間に飲むのが原則です
- 動悸、血圧の上昇:心臓に持病のある方では慎重に。血圧を測りながら使います
- 頭痛、口の渇き
- 「切れ際」の反動:薬が切れる夕方に、疲労感やイライラが出ることがあります
登録制度——ここが重要です
コンサータには、適正流通のための登録制度があります。処方できる医師、扱える薬局が限定されており、患者様の登録も必要です。
これは、この薬が厳格に管理されるべきものだからです。そして、この制度のために「処方してくれる医療機関が見つからない」という方が多くいます。
当院には、コンサータ処方の登録医が在籍しています。他院で診断を受けた方のご相談も承ります。その場合は、これまでの経過がわかるもの(紹介状、お薬手帳など)をお持ちください。詳しくはコンサータの効能についての記事一覧もご覧ください。
ストラテラ(アトモキセチン)
脳で、何をしているか
ストラテラは、ノルアドレナリンの回収口だけを塞ぎます。ドパミンには直接作用しません。
ただし、面白いことに——前頭前野では、ドパミンもノルアドレナリンの回収口を通って回収されるため、結果的に前頭前野のドパミンも増えるとされます。狙った場所にだけ、効く仕組みです。
効果の特徴
- 効果が出るまで、時間がかかる:数週間の単位で見ます。「飲んですぐ効かない」からと自己判断でやめないでください。ここが最も多い失敗です
- 一日を通して、安定して効く:血中濃度の変動が緩やかなため、「切れ際」の反動が少ない
- 効き方が穏やか:コンサータのような劇的な変化ではなく、じわじわと。「気づいたら、以前より落ち着いている」という効き方
- 依存性がない
- 登録制度がなく、処方の制限がない
注意点
- 吐き気・食欲低下:飲み始めに出やすい。少量から慣らしていきます
- 眠気、頭痛、口の渇き
- 肝機能への影響:まれですが、定期的な確認が必要な場合があります
- 血圧・脈への影響
詳しくはストラテラについての記事一覧で解説しています。
インチュニブ(グアンファシン)
脳で、何をしているか——発想が違います
この薬は、他の2つとまったく異なる仕組みで働きます。
コンサータもストラテラも、「送り手側」——伝達物質を増やす薬でした。
インチュニブは、「受け手側」に働きます。前頭前野にある特定の受容体(α2A受容体)を刺激して、信号を受け取る感度そのものを上げるのです。
アンプの音量を上げるのが他の2剤なら、インチュニブはスピーカーの性能を上げる——そんなイメージです。
効果の特徴
- 衝動性・イライラへの効果:とくにこの領域で期待されます。「カッとなる」「待てない」といった症状に
- 効果が出るまで、時間がかかる:ストラテラと同様、数週間の単位
- 一日を通して、安定して効く
- 依存性がない
- もともと血圧の薬:この薬は、高血圧の治療薬から出発しました。だから——
注意点
- 眠気:最も多い副作用です。とくに飲み始め。夜に飲むことで、これを味方につけられる場合もあります(不眠を伴うADHDでは、利点になりうる)
- 血圧の低下、脈が遅くなる:もともと血圧の薬なので、当然の作用です。血圧を測りながら使います
- めまい、立ちくらみ
- 急に中止しない:血圧が反動で上がることがあります
詳しくはインチュニブについての記事一覧で解説しています。
3剤を、どう選び分けるのか
診察室での、実際の考え方を開いてみます。
症状の形で選ぶ
- 不注意が主役、日中の集中を上げたい→ コンサータが第一候補になりやすい
- 一日を通して安定させたい、効果の波を避けたい→ ストラテラ
- 衝動性・イライラが主役→ インチュニブ
生活で選ぶ
- 朝から夕方まで、仕事に集中したい→ コンサータ(日中に効いて、夜に切れる設計が合う)
- 夜も含めて、一日中安定したい→ ストラテラ、インチュニブ
- 飲み忘れが多い→ 効果が持続するタイプのほうが、影響が小さい
- 不眠がある→ コンサータは慎重に。インチュニブの眠気が味方になることも
体の事情で選ぶ
- 心臓の持病、高血圧→ コンサータは慎重に
- 血圧が低め→ インチュニブは慎重に
- 肝機能に問題→ ストラテラは確認しながら
そして——実際に試してみる
正直に書きます。どの薬が合うかは、飲んでみないとわかりません。
この3剤は、効き方の個人差が大きい。ある人に劇的に効いた薬が、別の人にはまったく効かないことがあります。
だから、少量から始めて、効果と副作用を見ながら調整する。合わなければ、変更する。この試行錯誤は失敗ではなく、あなたに合う薬を絞り込む正規の手順です。
当院は、向精神薬の多剤投与・大量投与・長期処方を可能な限り控える方針です。効果と副作用を包み隠さずお伝えし、飲むかどうかも含めて相談しながら決めます。
薬だけでは、足りません
最後に、これだけは。
薬は、土台を底上げするものです。特性を消すものではありません。
薬で集中しやすくなった状態で、環境調整と対処の工夫を積み上げる——この組み合わせで、生活は確実に変わります(大人のADHDの治療の記事/仕事の困りごとの記事)。
そして、うつ病や不安症といった二次障害があるなら、そちらの治療も並行します。
受診の目安
- ADHDと診断されたが、薬を試していない
- いま飲んでいる薬が、合っていない気がする
- コンサータを処方してくれる医療機関を探している
- 副作用がつらいが、相談できていない
- 「もしかしてADHDでは」と思っているが、受診をためらっている
みなとメンタルクリニックは関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分。横浜市中区・関内を中心に、馬車道・桜木町・みなとみらいエリアからもお越しいただけます。祝日以外は毎日診療しており、当日のご予約にも対応しています(枠の状況によります)。コンサータ処方の登録医が在籍し、心理検査は保険適用で実施しています。女性医師も在籍しています。通院費用が心配な方には、自己負担が原則1割になる自立支援医療の制度があります。
よくある質問
コンサータは、依存しませんか?
医師の指示のもと、定められた用法で使用する限り、問題となる依存は生じないとされています。だからこそ、適正流通のための登録制度があり、厳格に管理されているのです。自己判断で量を増やしたり、他人に譲渡したりすることは、絶対にしないでください。不安があれば、そのまま診察でお聞かせください。
ストラテラを2週間飲みましたが、効きません。
まだ判断が早いです。ストラテラは効果が出るまで時間がかかる薬で、数週間の単位で見ます。ここで自己判断でやめてしまうのが、最ももったいない失敗です。つらい副作用があるなら別ですが、「効かない」という理由なら、もう少し続けてみましょう。
コンサータの効果が、夕方に切れてつらいです。
「切れ際」の反動は、よく相談を受けます。飲む時間の調整、量の見直し、あるいは一日を通して安定するタイプへの変更——打てる手はあります。我慢せず、診察で伝えてください。
2種類を、併用することはありますか?
状態によっては検討することもありますが、当院は多剤投与を可能な限り控える方針です。まず単剤で十分に評価することを優先します。
薬を飲まない選択もありますか?
あります。環境調整と対処の工夫だけで、生活が大きく改善する方もいます。「薬は使いたくない」というご希望は、最初に伝えてください。それを前提に治療を設計します。
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参考文献・情報源
- 厚生労働省|発達障害|こころの病気について知る
- 日本精神神経学会|ADHDの診断・治療に関する資料
- 各医薬品の添付文書・患者向け医薬品情報
- コンサータ錠 適正流通管理委員会
この記事の監修者
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医・難病指定医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。