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2026/06/24
過換気症候群(過呼吸)とは?発作の対処法・原因・治療を横浜・関内の精神科医が徹底解説
「急に息が苦しくなり、いくら吸っても空気が足りない」「手足や口のまわりがしびれて、こわばってくる」「心臓がドキドキして、このまま死んでしまうのではと、強い恐怖におそわれる」「一度経験してから、また起きるのではと、こわくて電車や人混みを避けるようになった」——こうした発作と、その後の不安に、苦しんでいませんか。
その発作は、過換気症候群(過呼吸)かもしれません。強い不安や緊張をきっかけに、呼吸が速く浅くなり、息苦しさ・しびれ・動悸などのつらい症状が現れる状態で、けっしてめずらしいものではありません。とても多くの方が経験し、そして、その後の不安にひとりで悩んでいます。発作の最中は「死んでしまうのでは」と感じるほど苦しいものですが、過換気症候群そのものが命に関わることは、基本的にありません。正しい対処法を知り、背景にある不安に向き合っていくことで、発作をしずめ、くり返しを防いでいくことができます。
このページでは、まず「発作が今まさに起きているとき」「家族の発作を目の前にしたとき」の対処からお伝えし、続いて、なぜ起こるのか(体の中で起きていること)、なりやすい人、場面別の対策、パニック症との関係、治療、再発予防まで、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が、できるだけくわしく、ていねいに解説します。長い記事ですが、知っておくことが安心につながりますので、気になるところからご覧ください。ストレスが体に出る心身症全般については、心身症とは?もあわせてご覧ください。
【今つらい方へ】発作が起きているときの対処
もし今、発作のさなかにこのページを見ているなら、まずこれだけ思い出してください。この苦しさは、過換気によるもので、命に関わるものではありません。酸素は足りています。必ずおさまります。そのうえで、次のことを試してみてください。
- 「吐く」ことに集中する:過呼吸のときは、息を吸いすぎています。吸うことはいったん忘れて、口をすぼめて、ろうそくの火をそっと消すように、ゆっくり長く吐くことだけを意識してください。「4秒吸って、6〜8秒かけて吐く」イメージです
- お腹で呼吸する:お腹に手を当て、お腹をふくらませながら吸い、へこませながら、ゆっくり吐きます。胸ではなく、お腹を動かすのがポイントです
- 楽な姿勢で、体の力を抜く:座るか横になって、肩・手・あごの力をゆるめます。握った手を、ゆっくり開いてみてください
- 意識を「今ここ」に戻す:見えるものを3つ数える、足の裏が床につく感覚を感じる、近くの物に触れるなど、呼吸以外に注意を向けると、過呼吸から気持ちがそれて、落ち着きやすくなります
- 「すぐおさまる」と自分に言い聞かせる:恐怖が呼吸を速めます。「大丈夫、これは過呼吸、いつもおさまっている」と、心の中でくり返すことが、悪循環を止めます
多くの場合、呼吸がゆっくりになれば、しびれや動悸も、数分〜数十分でしずまっていきます。あせらず、ただ「吐く息」に集中してください。今は、それだけで大丈夫です。
【ご家族・周囲の方へ】目の前で発作が起きたときの対処
大切な人が過呼吸の発作を起こすと、見ている側も動揺し、「どうにかしなければ」とあせってしまいます。けれど、周囲が落ち着いていることが、本人を落ち着かせる、いちばんの助けになります。あなたが慌てないことが、何よりの手当てです。
- あわてず、落ち着いた声で話しかける:「大丈夫だよ」「すぐおさまるよ」「一緒にゆっくり吐こう」と、穏やかに、ゆっくり、くり返し伝えます
- 一緒に、ゆっくり吐く呼吸をやってみせる:「いっしょに、ふー…っと吐こうか」と、自分が見本を見せながら、本人の呼吸をゆっくりした呼吸に誘導します。本人は、つられて呼吸を合わせやすくなります
- 背中をさすったり、手を握ったり、そばにいたりする:「一人じゃない」と伝わることが、安心につながります
- 「落ち着いて!」と強く言わない・急かさない・問い詰めない:責めたり、あせらせたり、「どうしたの」と質問を重ねたりすると、不安が強まり、逆効果です。今は静かに寄り添うときです
- 紙袋は使わない:後で述べるとおり、危険なので絶対に行わないでください
ほとんどの発作は、しばらくすれば自然におさまります。ただし、次のような場合は、過換気症候群ではない可能性もあるため、ためらわず救急(119)を呼んでください。意識がはっきりしない・呼びかけへの反応が鈍い、唇や顔色が紫色になる(チアノーゼ)、胸の強い痛みが続く、けいれんがおさまらない、明らかにいつもの発作と様子が違う、初めての発作で судが判断に迷う——こうしたときは、自己判断せず、医療につなげることが大切です。「過呼吸だと思ったら別の病気だった」という事態を防ぐためにも、迷ったら受診・相談が安全です。
過換気症候群(過呼吸)とは
過換気症候群とは、強い不安や緊張、ストレスをきっかけに、呼吸が必要以上に速く・深くなり(過換気)、その結果、息苦しさや手足のしびれ、動悸などのさまざまな症状が現れる状態です。「過呼吸」とも呼ばれます。
もっとも特徴的で、そして多くの方を戸惑わせるのが、実際には体に酸素が十分足りているのに、本人は「うまく息が吸えない」「酸素が足りない」と強く感じることです。発作のときに、指にはさんで酸素を測る機器(パルスオキシメーター)を使っても、ほとんどの場合、酸素はしっかり足りていて、むしろ多いくらいです。それでも、苦しさはとてもリアルで、強い恐怖を伴います。「気のせい」では決してなく、体の中で、これからお話しする実際の変化が起きているのです。
過換気症候群は、思春期から20〜30代の若い方、とくに女性に多くみられますが、年齢や性別を問わず、子どもから高齢の方まで、誰にでも起こりえます。発作は数十分〜数時間でおさまることがほとんどで、後遺症を残すことも、基本的にはありません。けれど、一度経験すると「また起きるのでは」という不安が強く残り、その不安が生活を縮めていく——ここに、この病気のつらさの本質があります。
「なぜ、吸っているのに苦しいのか」という最大の謎
過換気症候群を理解するうえで、いちばんの鍵になるのが、この問いです。たくさん息を吸っているのに、なぜ「酸素が足りない」と感じるのか。一見、矛盾しているように思えますが、ここにこの病気の本質があります。
答えはこうです。足りなくなっているのは酸素ではなく、二酸化炭素のほうだからです。私たちは「酸素=大事、二酸化炭素=いらないもの」と思いがちですが、実は二酸化炭素は、体のバランスを保つために、ある程度の量が必要なものです。過呼吸で二酸化炭素を吐き出しすぎると、そのバランスが崩れ、息苦しさやしびれが起こります。つまり、過換気症候群の苦しさは「吸い足りない」のではなく「吐きすぎている」ことから来ているのです。だからこそ、対処は「もっと吸う」ではなく「ゆっくり吐く(吐く量を減らす)」が正解になります。このしくみを、次でくわしく見ていきましょう。
過換気症候群の症状
発作のときには、次のようなさまざまな症状が、一度に現れます。多くの症状が重なるのが特徴です。
呼吸の症状
- 息苦しさ、空気が吸えない感じ(空気飢餓感)
- 呼吸が速く、浅くなる
- のどがつまる感じ、ため息が増える、あくびが出る
しびれ・筋肉の症状
- 手足の指先や、口のまわりのしびれ
- 手指のこわばり・けいれん(テタニーといい、手が「助産師の手」のような形にこわばることがあります)
- 全身のこわばり、ふるえ
循環器・全身の症状
- 動悸、胸の圧迫感・痛み
- めまい、ふらつき、頭がぼーっとする、視界がせまく感じる
- 吐き気、冷や汗、体のほてりや冷え
- ひどいときには、意識が遠のく・失神する
気持ち・感覚の症状
- 強い不安・恐怖感、追い詰められる感じ
- 「このまま死ぬのでは」「気が変になるのでは」という思い
- 現実感がうすれる、自分が自分でない感じ(離人感)
これらが一度に押し寄せるため、初めての発作では、本人も周囲も「心臓発作では」「重い病気では」とパニックになりがちです。けれど、症状の一つひとつには、これからお話しする、はっきりした理由があります。正体を知っておくことで、落ち着いて対応できるようになります。
なぜ過換気症候群が起こるのか|体の中で起きていること
過換気症候群の症状は、ひとつの流れで、すっきりと説明できます。少していねいに、順を追って見ていきましょう。このしくみを知っておくこと自体が、発作のときに落ち着く、何よりの薬になります。
① 不安・緊張が、呼吸を速くする
強い不安や緊張を感じると、自律神経のうち、体を活動モードにする交感神経が優位になり、呼吸が速く・浅くなります。これは本来、危険に立ち向かう・逃げるために、体に酸素を取り込もうとする、自然な反応です(闘争・逃走反応)。けれど、実際には逃げる必要のない場面でこれが起こると、「息苦しい」という感覚だけが残り、「もっと吸わなければ」という気持ちがはたらいて、さらに呼吸の回数が増えていきます。
② 二酸化炭素を、吐き出しすぎてしまう
呼吸を速くしすぎると、体から二酸化炭素が、必要以上に吐き出されてしまいます。酸素は足りているのに、二酸化炭素だけが減りすぎる、というアンバランスが起こります。先ほどお話ししたとおり、この「二酸化炭素の減りすぎ」こそが、つらい症状の正体です。二酸化炭素は、体の酸性・アルカリ性のバランス(pH)を保つ、大切な役割を担っているのです。
③ 血液がアルカリ性に傾く(呼吸性アルカローシス)
血液中の二酸化炭素が減ると、血液がアルカリ性に傾きます。これを呼吸性アルカローシスといいます。すると、体に2つの大きな変化が起こり、これがさまざまな症状を生みます。
ひとつは、血管が収縮すること。とくに脳の血管が収縮して、脳への血流が一時的に減るため、めまい、頭がぼーっとする感じ、視界がせまくなる感じ、ひどいときには失神が起こります。「酸素は足りているのに頭がくらくらする」のは、このためです。
もうひとつは、血液中のカルシウムのバランスが変化すること。アルカリ性に傾くと、神経や筋肉が刺激に敏感になり、手足や口のまわりのしびれ、手指のこわばり(テタニー)が起こります。これらは、体が壊れたのでも、カルシウムが不足したのでもなく、二酸化炭素が減ったことによる、一時的で、二酸化炭素が戻れば必ず元に戻る反応です。
④ 「息苦しい→もっと吸う」の悪循環
そして、ここがこの病気のいちばんやっかいなところです。しびれ・動悸・めまいといった症状が出ると、それ自体が「何か大変なことが起きている」という新たな恐怖を生み、その恐怖がさらに呼吸を速くする——こうして、「息苦しい→もっと吸う→二酸化炭素が減る→症状が悪化→もっと怖くなる→もっと吸う」という悪循環に陥ります。発作が長引いたり、強くなったりするのは、このループのためです。
逆に言えば、このループのどこかを断ち切れば、発作はしずまっていきます。「ゆっくり吐いて二酸化炭素をためる」「正体を知って恐怖をやわらげる」という対処は、まさにこのループを止めるためのものです。発作のとき、頭の片隅で「これはあのループだ」と思い出せれば、それだけで一歩、落ち着きに近づけます。
急に起こるタイプと、慢性に隠れているタイプ
過換気には、はっきりとした発作として現れるタイプのほかに、本人も気づかないうちに、慢性的に少しだけ過呼吸ぎみになっているタイプもあります。後者では、はっきりした発作はないものの、ふだんから息苦しさ、ため息の多さ、胸のつまり感、疲れやすさ、集中力の低下などが続きます。「なんとなくいつも息が浅い」「ため息ばかり出る」という方は、慢性的な過換気が隠れていることがあります。こうしたタイプも、呼吸の整え方やストレスへの対応で、楽になっていくことができます。
やってはいけない対処|ペーパーバッグ法はなぜ危険か
かつては、紙袋を口と鼻に当てて、自分の吐いた息(二酸化炭素を多く含む)を吸い直す「ペーパーバッグ法(紙袋再呼吸法)」が、過呼吸の対処として広く知られていました。映画やドラマでも見かけるため、「過呼吸には紙袋」というイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、この方法は、現在では推奨されていません。むしろ、行ってはいけない対処です。
理由は、血液中の酸素が下がりすぎてしまう危険があるからです。紙袋の中の空気は二酸化炭素が増えるぶん、酸素が減っていきます。過呼吸だと思っていた症状が、実は喘息の発作や、心臓・肺の病気だった場合、紙袋で酸素を制限することは、命に関わる事態を招きかねません。実際に、ペーパーバッグ法による重い事故や、死亡例も報告されています。
安全で効果的なのは、何度もお伝えしている「口をすぼめて、ゆっくり長く吐く呼吸」です。道具も要らず、危険もなく、二酸化炭素をやさしくためることができます。もし周囲に「紙袋を」とすすめる方がいても、行わないでください。
過換気症候群になりやすい人・きっかけ
過換気症候群は誰にでも起こりえますが、次のような方や状況で、起こりやすい傾向があります。これは「あなたが弱いから」ではなく、対応の手がかりになる情報です。
なりやすい傾向
- まじめで責任感が強く、がんばりすぎてしまう
- 不安や緊張を感じやすい、心配性の傾向がある
- 感情を表に出すのが苦手で、ため込みやすい
- 完璧を求める、人の評価を気にしやすい
- もともと、緊張すると体に症状が出やすい
発作のきっかけになりやすいこと
- 強いストレス、緊張する場面(試験・面接・発表・人前)
- 過労、睡眠不足が続いている時期
- 人間関係の悩み、環境の変化
- 過去に発作を起こした場所・状況(電車、人混みなど)
- カフェインのとりすぎ、はげしい疲労
なぜ若い女性に多いのか
過換気症候群が思春期〜20〜30代の女性に多い理由は、完全には解明されていませんが、女性ホルモンの変動が自律神経や不安の感じ方に影響すること、この年代がライフステージの変化(進学・就職・出産など)で強いストレスを受けやすいことなどが、関わっていると考えられています。けれど、男性にも、年配の方にも、子どもにも起こります。「自分は当てはまらないから違う」と決めつけず、症状があれば相談してよいものです。
こんな場面で、困っていませんか|場面別の悩み
過換気症候群のつらさは、発作そのものだけでなく、「あの場所でまた起きたら」という不安が、生活の範囲をだんだん狭めていくことにあります。こんな経験に、心当たりはないでしょうか。
- 電車・バス:満員電車や、各駅で降りられない急行で、発作が起きないか不安。各駅停車しか乗れなくなった
- 会議・授業・式典:静かで、途中で抜けにくい場面で、息苦しくなるのではと気が気でない
- 人混み・行列:すぐに離れられない場所が怖い
- 仕事・プレゼン:緊張する場面の前に、発作の不安がよぎる
- 学校:子どもが、授業中や行事で過呼吸を起こし、登校をしぶるようになった
- 一人のとき:発作が起きても助けを呼べないのではと、外出がこわい
こうして、行ける場所・できることが少しずつ減っていくと、「自分はだめだ」と自分を責めてしまいがちです。けれど、これは性格や根性の問題ではなく、不安と発作のしくみによるものです。そして、適切な対応で、この「縮こまり」は、ふたたび広げていくことができます。
過換気症候群と、パニック症の関係|ここがとても大切です
過換気症候群を理解するうえで、絶対に外せないのが、パニック症(パニック障害)との関係です。両者は、とても深くつながっています。
症状(息苦しさ、動悸、しびれ、めまい、強い恐怖)が大きく共通しており、研究では、過換気症候群の方のかなりの割合がパニック症を併せ持ち、パニック症の方の多くが発作のときに過換気を起こすとされています。両者が重なっている方は、とても多いのです。
大まかな違いを整理すると、過換気症候群は「呼吸の異常(過呼吸)」という体の現象を中心に見た呼び方で、もともと内科・救急の場面で使われてきた言葉です。一方、パニック症は、「予期しない強い不安発作(パニック発作)をくり返し、『また起きるのでは』という不安(予期不安)に苦しみ、発作が起きそうな場所を避けるようになる」状態を指す、精神科・心療内科の診断名です。
ここが重要なポイントです。発作をくり返している場合や、「また起きたら」という不安で生活が制限されている場合は、単なる過換気の発作ではなく、パニック症としての治療が必要なことが多いのです。発作をその場でしのぐだけでは、根本的な解決になりません。背景にある「発作への不安」そのものに、しっかり対応していくことで、発作の回数を減らし、避けていた場所にも戻っていけるようになります。当院では、過換気の発作と、その奥にあるパニック症・不安症を、セットで見立てて対応していきます。
念のため、確認しておきたい体の病気
息苦しさや胸の症状は、過換気症候群以外の体の病気でも起こります。とくに初めての発作のときや、いつもと様子が違うとき、年齢が高めの方は、まず体の病気がないかを確認することが大切です。次のような病気が、似た症状を示すことがあります。
- 気管支ぜんそく(呼吸の病気)
- 気胸(肺が部分的にしぼむ)
- 肺の血管がつまる病気(肺塞栓症)
- 心臓の病気(不整脈、狭心症・心筋梗塞など)
- 甲状腺の働きの異常、貧血、電解質の異常など
これらは、診察や、必要に応じた検査(心電図、胸のレントゲン、血液検査など)で見分けられます。当院では、必要に応じて内科・呼吸器内科・循環器内科などと連携し、体の病気がないことを確認したうえで、過換気症候群と、その背景にある不安への対応を進めていきます。「重い病気ではない」とはっきりすること自体が、不安をやわらげ、発作を減らす大きな助けになります。
受診を検討する目安
次のような場合は、一度ご相談ください。「これくらいで受診していいのか」と、ためらう必要はありません。
- 過呼吸の発作を、くり返している
- 「また発作が起きたら」という不安で、外出や予定が制限されている
- 電車・人混み・会議など、特定の場面で起こりやすい
- 発作への不安から、行ける場所・できることが減ってきている
- 動悸や息苦しさが、発作以外の場面でも気になる
- 気分の落ち込みや、強い不安もあわせて感じている
- お子さんが、学校などで過呼吸をくり返している
受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約いただけます。
過換気症候群の治療
過換気症候群の治療は、発作そのものへの対応と、背景にある不安への対応の、両面から進めます。一度きりの発作で終わる方もいますが、くり返す場合は、根っこにある不安に向き合うことが、再発を防ぐ何よりのカギになります。治療は、次の柱を組み合わせて進めていきます。
① 病気を正しく理解する(心理教育)
治療の出発点であり、もっとも大切な部分です。「発作のときに体で何が起きているのか」「酸素は足りていて、命に関わるものではないこと」「ゆっくり吐けばよいこと」を、きちんと理解していただきます。正体が分かると、発作への恐怖そのものが小さくなり、悪循環が起こりにくくなります。「次に起きても、こうすれば大丈夫」という安心感が育つこと自体が、発作を確実に減らしていきます。実際、正しい理解を得るだけで、発作が大きく減る方も少なくありません。
② 呼吸法・リラックス法を身につける
ゆっくり長く吐く腹式呼吸を、発作のときだけでなく、ふだんから練習しておくことが大切です。落ち着いているときに体に覚えさせておくと、いざ発作が起きたときに、自然と落ち着いた呼吸に戻しやすくなります。あわせて、体の緊張を順番にゆるめていくリラックス法(筋弛緩法)や、自律神経を整える方法、ストレスとの付き合い方を身につけていきます。
③ 薬物療法|脳のしくみにはたらきかける
発作がつらいとき、くり返すとき、背景に強い不安があるときには、お薬を用いることがあります。お薬は、それぞれ違うしくみで、不安と発作にはたらきかけます。
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系):強い不安や、発作時の頓服として用いられることがあります。脳の興奮を抑える物質(GABA)のはたらきを強めることで、高ぶった神経を落ち着かせ、不安をすみやかにやわらげます。効き目が早いのが特長ですが、長く使い続けると体が慣れてしまうことがあるため、頓服や短期間を基本に、医師と相談しながら使います
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):とくにパニック症を併せ持っている場合には、SSRIが治療の中心(第一選択)になります。脳内では、気分や不安の安定にかかわるセロトニンが、神経から放出されたあと、再び取り込まれて回収されます。SSRIは、この回収(再取り込み)をゆるやかに抑えることで、脳内で使えるセロトニンを増やし、不安に反応しやすくなっている脳のはたらきを、土台から安定させていきます。これにより、発作の起こりやすさそのものが下がり、予期不安もやわらいでいきます。効果が現れるまでに2〜4週間ほどかかるため、すぐ効く頓服とは役割が異なり、じっくり続けることで、根っこから安定させていく薬です。少量から始め、体の慣れを見ながら、ゆっくり調整します
各SSRIの個性やくわしい特徴については、SSRIの種類と特徴もご覧ください。お薬はいずれも、効果や特徴、見込まれる経過をていねいにご説明したうえで、あなたの希望をうかがいながら検討します。「薬に頼りたくない」というお気持ちも、遠慮なくお聞かせください。自己判断で中止せず、医師と相談しながら進めることが大切です。
治療はどのように進むのか
まず、発作の様子やきっかけ、くり返しの有無、避けている場面、生活への影響などを、時間をかけてうかがいます。必要に応じて、体の病気がないことを確認します。そのうえで、病気の理解(心理教育)と呼吸法を土台に、必要に応じて薬物療法を組み合わせていきます。背景にパニック症や不安症がある場合は、そちらの治療も並行して進め、避けていた場面に、少しずつ無理なく戻っていけるよう支えます。
目標は、発作におびえずに、行きたい場所へ行き、やりたいことができる毎日を取り戻すことです。過換気症候群は、再発することもありますが、正しい理解と対応があれば、十分にコントロールしていけます。一人で抱え込まず、一緒に取り組んでいきましょう。
再発を防ぐために|日々のセルフケア
発作を減らし、くり返さないために、ふだんの生活で意識できることがあります。無理のない範囲で、できることから取り入れてみてください。
- 睡眠を整える:睡眠不足は、不安と発作を起こりやすくします。起きる時間をそろえるところから
- 腹式呼吸を習慣にする:1日数分でも、ゆっくり吐く呼吸を練習しておくと、いざというときの備えになります
- カフェイン・アルコールを控えめに:とりすぎは、動悸や不安を強めることがあります
- 適度に体を動かす:軽い運動は、自律神経を整え、不安をやわらげる助けになります
- 「発作が起きても大丈夫」という経験を積む:避けていた場面に、少しずつ慣れていくことが、予期不安をやわらげます(これは、医師と相談しながら、無理のない範囲で進めます)
- 一人で抱え込まない:信頼できる人に、発作のことや対処法を伝えておくと、安心につながります
よくある質問
過呼吸は、命に関わりますか?
過換気症候群そのものは、基本的に命に関わるものではありません。発作のときも酸素は足りており、症状は二酸化炭素が減ったことによる一時的な反応です。ただし、初めての発作や、いつもと様子が違うときは、念のため体の病気がないかを確認することが大切です。
発作のとき、紙袋を使ってもいいですか?
いいえ。紙袋を使う方法(ペーパーバッグ法)は、酸素が下がりすぎる危険があり、現在は推奨されていません。代わりに、口をすぼめて、ゆっくり長く息を吐く腹式呼吸を行ってください。
パニック障害と何が違うのですか?
症状は大きく重なります。過換気症候群は「呼吸の異常」を中心に見た呼び方、パニック症は発作をくり返し、予期不安に苦しむ状態を指す診断名です。発作をくり返している場合は、パニック症として治療することで、根本的な改善が期待できます。両者が重なっている方はとても多く、当院ではセットで対応します。
一度起きると、またくり返しますか?
くり返すこともありますが、正しい対処法を身につけ、背景の不安に対応することで、発作を確実に減らしていけます。「また起きても大丈夫」と思えるようになることが、回復の大きな一歩です。
子どもが過呼吸をくり返します。どうすればいいですか?
お子さんの過呼吸も、不安や緊張が背景にあることが多く、対応の考え方は同じです。まわりが落ち着いて、ゆっくり吐く呼吸に誘導してあげてください。学校でくり返す場合や、登校をしぶる場合は、背景の不安への対応も含めて、一度ご相談ください。
薬を飲まずに治せますか?
軽い場合や、発作の回数が少ない場合は、病気の理解と呼吸法だけで落ち着いていく方もいます。お薬を使うかどうかは、つらさの程度やくり返しの頻度に応じて、ご希望をうかがいながら決めていきます。「薬に頼りたくない」というお気持ちも、大切にします。
発作が怖くて、外出や電車がこわいです。これも相談していいですか?
もちろんです。その「予期不安」と「場面の回避」こそが、もっとも対応すべき、つらい部分です。少しずつ、こわい場面に戻っていけるよう、一緒に支えていきます。
横浜・関内で過呼吸・過換気の発作にお悩みの方へ
過換気の発作は、その瞬間はとても苦しく、「また起きたらどうしよう」という不安が、じわじわと生活に影を落としていきます。電車に乗るのが、人混みに行くのが、一人で出かけるのが、こわくなってしまう方も少なくありません。行ける場所が減り、「自分はだめだ」と感じてしまう方もいます。けれど、それは性格や弱さの問題ではなく、発作と不安のしくみによるものです。そして、発作の正体を知り、正しい対処を身につけ、背景にある不安に向き合っていくことで、その恐怖から自由になっていくことができます。一人で抱え込み、発作におびえ続ける必要は、もうありません。
横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、心療内科・精神科として、過換気症候群や、その背景にあるパニック症・不安への対応を行っています。発作をその場でしのぐだけでなく、くり返しを防ぎ、避けていた場所に戻っていけるよう、心と体の両面から支えます。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分、土日も診療し、当日予約にも対応しています。みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。
「この発作と、ずっと付き合っていくしかない」と、あきらめないでください。まずは、お話を聞かせていただくところから始めましょう。受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約いただけます。受診前に確認したいことがある方は、よくある質問もご覧ください。
関連ページ
- 心身症とは?ストレスが体の症状に出るしくみ・治療
- パニック障害とは?発作の症状・原因・治療
- 動悸や息苦しさは不安のせい?パニック発作との関係
- 不安症(不安障害)とは?
- 自律神経失調症について
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参考文献・情報源
本記事の内容は、過換気症候群に関する以下の資料を参考にしています。
- 日本心身医学会|心身症に関する資料
- 日本女性心身医学会|過換気症候群に関する資料
- 厚生労働省|こころの健康に関する情報
- MSDマニュアル|過換気症候群
- 各医薬品の添付文書・患者向け医薬品情報
医学監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。