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2026/06/24
心身症と自律神経失調症の違いとは?見分け方と治療を横浜・関内の精神科医が解説
「自律神経失調症と言われたけれど、心身症とどう違うのだろう」「ストレスで体に症状が出るのは、どちらなのか分からない」「検査で異常がないと言われる不調に、名前がいくつもあって混乱する」——このような疑問を持ったことは、ありませんか。
心身症と自律神経失調症は、どちらも「ストレスや心の状態が、体の不調として現れる」という点でよく似ており、重なる部分も多いため、混同されやすい言葉です。けれど、両者には、見ている”切り口”に違いがあります。その違いと、両者に共通する「なぜストレスが体に出るのか」というしくみを知っておくと、自分の不調をどうとらえ、どこに相談すればよいかが、見えやすくなります。
このページでは、ストレスが体に出るしくみ、心身症と自律神経失調症の違い、見分けの考え方、治療について、横浜市中区・関内のみなとメンタルクリニックの精神科医が、やさしく、ていねいに解説します。それぞれについては、心身症とは?と、自律神経失調症についてのページも、あわせてご覧ください。
まず、共通していること
違いをお話しする前に、両者に共通している大切な点を押さえておきましょう。心身症も自律神経失調症も、
- ストレスや心の状態が、体の症状に関わっている
- 検査をしても、はっきりした異常が見つからないことが多い
- 「気のせい」でも「心が弱いから」でもなく、実際に体がつらい
- 心と体の両面から対応することで、楽になっていける
という点で、よく似ています。だからこそ混同されやすいのですが、まずは「どちらも、つらさは本物で、対応できる不調なのだ」と知っておいてください。名前の違いに悩むよりも、つらさに向き合うことのほうが、ずっと大切です。
そもそも、なぜストレスが体に出るのか
心身症と自律神経失調症の違いを理解するには、まず「なぜ、心のストレスが、体の症状になるのか」というしくみを知っておくと、とても分かりやすくなります。私たちの心と体をつないでいるのは脳で、ストレスは主に、3つの経路を通じて、体に影響します。
① 自律神経の経路
自律神経は、心臓の鼓動、呼吸、胃腸の動き、血圧、体温など、自分の意思とは関係なく、体を24時間自動で調整している神経です。アクセルの役割をする交感神経と、ブレーキの役割をする副交感神経が、シーソーのようにバランスを取り合っています。ストレスを受けると、交感神経が優位になり、心臓がドキドキし、胃腸の動きが乱れ、筋肉が緊張します。強いストレスや、長く続くストレスで、このバランスが崩れると、動悸・めまい・胃腸の不調・頭痛など、さまざまな体の症状が現れます。
② ホルモンの経路(ストレスホルモン)
ストレスを受けると、脳の指令で、コルチゾールなどの「ストレスホルモン」が分泌されます。これは本来、ストレスに立ち向かうための、体を守るしくみです。けれど、ストレスが慢性的に続くと、このホルモンの分泌の調整がうまくいかなくなり、疲れやすさ、気分の落ち込み、睡眠の乱れ、血圧や血糖への影響など、心と体の両方に、不調が広がっていきます。
③ 免疫の経路
自律神経やホルモンの乱れは、免疫のはたらきにも影響します。ストレスが続くと、体の防御や、炎症の調整のバランスが崩れ、アレルギーが悪化したり、感染症にかかりやすくなったり、さまざまな不調が出やすくなります。
このように、ストレスは、自律神経・ホルモン・免疫という経路を通じて、確かに体に影響します。「ストレスで体調を崩す」のは、根性や気の持ちようの問題ではなく、こうした、はっきりとした体のしくみによるものなのです。心身症も自律神経失調症も、この同じしくみから生まれてきます。違いは、その不調が「どんなかたちで現れるか」にあります。
心身症とは|「特定の臓器の病気」として現れる
心身症とは、日本心身医学会の定義では、身体の病気のうち、その発症や経過に、ストレスなどの心理社会的な要因が密接に関わっているものを指します。ポイントは、「特定の臓器に、はっきりした病気として現れる」ことです。
たとえば、ストレスが関わって、
- 腸に → 過敏性腸症候群(IBS)
- 胃に → 機能性ディスペプシア(FD)
- 頭に → 緊張型頭痛
- 呼吸に → 過換気症候群
といったように、「どの臓器の、どんな病気か」という、はっきりした病名がつくのが、心身症の特徴です。このほか、本態性高血圧、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、緊張型頭痛なども、ストレスが密接に関わっている場合は、心身症ととらえます。検査で異常が見つからない機能的なタイプと、潰瘍などの実際の変化を伴うタイプの、両方が含まれます。
なぜ「いちばん弱いところ」に出るのか
同じようにストレスを受けても、胃に出る人、腸に出る人、頭に出る人がいます。これは、その人の体質や、もともと弱いところ(弱点となりやすい臓器)に、ストレスの影響が集中して現れるためと考えられています。「ストレスがたまると、いつも同じところが不調になる」という方が多いのは、このためです。あなたの症状が出る場所は、あなたの体質を映した、いわば”こころの天気予報”のようなものともいえます。
心身症になりやすい心の傾向|失感情症(アレキシサイミア)
心身症を理解するうえで、とても大切な考え方に、失感情症(しつかんじょうしょう/アレキシサイミア)があります。これは、自分の感情に、気づいたり、言葉にしたりするのが苦手な傾向のことです。
つらいことや、嫌なことがあっても、いつも淡々としていて、「自分は平気」「特にストレスは感じていない」と思い込んでしまう。けれど、本当は心が負担を感じていて、その行き場のない感情が、言葉や気持ちとして表に出るかわりに、体の症状として現れてしまう——これが、心身症が起こりやすくなる、ひとつの背景です。
さらに、自分の体の状態の変化(疲れ、緊張など)にも気づきにくい傾向(失体感症)が重なると、「休んだほうがいい」というサインを見逃して、無理を重ね、症状を悪化させてしまうこともあります。まじめで、我慢強く、人に弱音を吐かずがんばってしまう方ほど、こうした傾向を持ちやすいのです。これは決して欠点ではなく、むしろ周りを思いやり、責任を果たそうとしてきた、その人の優しさの裏返しでもあります。治療では、こうした感情に、少しずつ気づいていくお手伝いも大切にしています。
自律神経失調症とは|「自律神経のバランスの乱れ」としてとらえる
一方、自律神経失調症は、先ほどお話しした自律神経のバランスが乱れることで、体のあちこちに、さまざまな不調が現れる状態を指す言葉です。ポイントは、「特定の臓器の病気」というより、全身に、いろいろな症状が散らばって現れる」ことです。
たとえば、動悸、めまい、ふらつき、だるさ、頭痛、肩こり、ほてり、冷え、胃の不調、息苦しさ、手足のしびれ——こうした症状が、あちこちに、日替わりで、移り変わるように現れるのが、自律神経失調症の特徴です。「今日は頭痛、明日はめまい、その次はお腹」というように、症状が一定せず、現れては消えていきます。「どこが悪いとはっきり言えないけれど、全身が不調」という、いわゆる不定愁訴(ふていしゅうそ)の状態をとらえる言葉、と考えると分かりやすいかもしれません。
なお、「自律神経失調症」は、医学的に厳密に定義された病名というより、こうした状態を分かりやすく説明するために使われる言葉、という側面もあります。背景には、ストレスのほか、生活リズムの乱れ、女性ホルモンの変動(更年期など)、過労や睡眠不足なども関わります。そして大切なのは、この背景に、うつ病や不安症、パニック症が隠れていることもあるという点です。だからこそ、ていねいに見ていくことが必要になります。
2つの違いを、整理すると
ここまでをまとめると、両者の違いは、次のように整理できます。
- 心身症:ストレスが、特定の臓器の「病気」として現れる(IBS、機能性ディスペプシア、緊張型頭痛など、病名がつく)。「切り口」は、臓器・病気ごと
- 自律神経失調症:ストレスが、自律神経の「バランスの乱れ」として、全身のあちこちに散らばって現れる。「切り口」は、自律神経全体の調子
たとえるなら、心身症は「ストレスという負担が、いちばん弱いところ(特定の臓器)に、病気として出た」状態。自律神経失調症は「ストレスで、体全体を調整する仕組みそのものが、揺らいでしまった」状態、というイメージです。同じ嵐(ストレス)でも、特定の場所に雨漏りするのが心身症、家全体が揺れるのが自律神経失調症、と考えてもよいかもしれません。
ただし、この2つははっきりと線を引けるものではなく、深く重なり合っています。たとえば、自律神経の乱れがあって、そのなかでも特に胃腸の症状が強ければ、心身症としての過敏性腸症候群、ととらえることもできます。「動悸」ひとつとっても、不整脈という体の病気の側面から見れば心身症的に、パニックや自律神経の乱れの側面から見れば別のとらえ方に、というように、同じ症状を、どの角度から見るかで呼び方が変わることも多いのです。ですから、「自分はどっちなんだろう」と悩みすぎる必要は、まったくありません。
うつ病・不安症との関係|ここは大切な区別です
もうひとつ、知っておいていただきたい区別があります。心身症の定義では、うつ病や不安症など、ほかの心の病気に伴って出ている体の症状は、心身症には含めないことになっています。
つまり、もし不調の中心に、強い気分の落ち込み(うつ病)や、くり返す強い不安・発作(不安症・パニック症)がある場合は、「自律神経失調症」や「心身症」という前に、まずそのうつ病・不安症そのものへの対応が必要になります。自律神経失調症と思われていた不調の背景に、実はうつ病が隠れていた、というケースは少なくありません。だからこそ、症状の現れ方だけでなく、心の状態も含めて、全体をていねいに診ていくことが大切なのです。これは、見逃すと回復が遠回りになる、とても大事なポイントです。
大切なのは「名前」より「つらさへの対応」
ここまで違いをお話ししてきましたが、いちばんお伝えしたいのは、名前を見分けること自体が目的ではない、ということです。心身症であっても、自律神経失調症であっても、
- ストレスや心の状態が、体に影響している
- つらさは本物で、対応する方法がある
- 心と体の両面から診ていくことで、楽になっていける
という点は、まったく同じです。大切なのは、どちらの名前がつくかではなく、あなたのつらさを、きちんと受け止めて、そのしくみに合った対応をしていくこと、そして背景にうつ病や不安症が隠れていないかを見極めることです。診察では、症状の現れ方や心の状態をていねいにうかがいながら、いちばん合った見立てと対応を、一緒に考えていきます。
どちらも、まず確認したいこと
心身症も自律神経失調症も、「検査で異常がない」ことが多いとはいえ、まず、体の病気が隠れていないかを確認することが大切です。たとえば、甲状腺の働きの異常(バセドウ病など)、貧血、心臓の病気、低血糖などが、動悸・だるさ・めまいといった、よく似た症状を示すことがあります。必要に応じて、内科などと連携し、体の病気がないことを確かめたうえで、安心して心身両面の対応に進んでいきます。「重い病気ではない」とはっきりすること自体が、不安をやわらげ、回復の助けになります。
治療の考え方は、共通しています
心身症も自律神経失調症も、治療の基本的な考え方は共通しています。体の症状をやわらげる対応と、背景にあるストレスへのケアを、両面から組み合わせて進めていきます。それぞれが、先ほどのしくみのどこにはたらきかけるのかも、あわせてお話しします。
① 生活の工夫|自律神経の土台を整える
睡眠・食事・運動を整えることは、乱れた自律神経のバランスを、根本から立て直す土台になります。とくに、起きる時間・寝る時間を一定にすることや、適度な運動、入浴は、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにし、自律神経を整える効果が期待できます。無理のない範囲で、できることから取り入れていきます。「あれもこれも」と一度にがんばる必要はありません。
② 体の症状への対応
つらい症状に対しては、その症状に応じたお薬を用いることがあります。胃腸の症状、頭痛、動悸など、現れている不調に合わせて対応します。体質や、冷え・むくみ・疲れやすさといった全体の調子を整える漢方薬が、自律神経の乱れによる不調に役立つことも多くあります。
③ ストレス・心への対応
症状の背景にあるストレスや、考え方・生活の負担を、お話のなかで一緒に整理していきます。先ほどお話しした失感情症の傾向がある方には、自分の感情に少しずつ気づいていくことも、大切なケアになります。不安や気分の落ち込みが強い場合や、背景にうつ病・不安症がある場合には、SSRIなどのお薬を用いることもあります。これらの薬は、気分を整えるだけでなく、脳と体をつなぐ神経の過敏さをやわらげ、体の症状そのものを軽くするはたらきも期待できます。「ストレスと体の症状がつながっている」と理解できること自体が、回復への大切な一歩になります。
よくある質問
自律神経失調症と心身症、どちらの診断になりますか?
症状の現れ方によります。特定の臓器の病気(胃腸・頭痛など)がはっきりしていれば心身症、全身にさまざまな不調が散らばっていれば自律神経失調症、ととらえることが多いですが、両者は重なり合っており、はっきり分けられないことも少なくありません。大切なのは、つらさに合った対応をしていくことです。
どちらも、何科を受診すればいいですか?
どちらも、心療内科・精神科が専門的に対応します。体の症状が強い場合は、内科などと連携しながら進めることもあります。「どの科に行けばいいか分からない」という方も、一度ご相談ください。
うつ病や不安症とは違うのですか?
うつ病や不安症は、気分の落ち込みや強い不安が中心の状態です。これらに伴う体の症状は、定義上は心身症に含めません。ただし、自律神経失調症の背景に、うつ病や不安症が隠れていることもあるため、ていねいに見分けていきます。ここを正しく見極めることが、回復への近道になります。
「気のせい」と言われたことがありますが…
心身症も自律神経失調症も、決して気のせいではありません。ストレスが、自律神経・ホルモン・免疫を通じて、実際に体に影響して起こる、現実の不調です。つらさを我慢せず、ご相談ください。
ストレスを感じている自覚がないのですが、それでも心身症になりますか?
はい、なることがあります。失感情症といって、自分ではストレスを感じていないつもりでも、心の負担が体の症状として現れることがあります。「特にストレスはないのに体調が悪い」という方ほど、知らないうちに無理を重ねていることもありますので、一度お話を聞かせてください。
横浜・関内で、ストレスによる体の不調にお悩みの方へ
「心身症」「自律神経失調症」——名前はいろいろあっても、共通しているのは、ストレスや心の状態が、体のつらさとして現れていて、それは対応できるということです。検査で異常がないと言われ、行き場をなくしてしまった方も、どうか「気のせい」と、ご自身を責めないでください。つらさには、自律神経やホルモンを通じた、はっきりとした理由があり、心と体の両面から向き合っていくことで、楽になっていけます。
横浜・関内のみなとメンタルクリニックは、心療内科・精神科として、ストレスが関わる体の不調に、おだやかに向き合います。背景にうつ病や不安症が隠れていないかも含めて、その方の全体をていねいに診ていきます。関内駅から徒歩2分、桜木町駅・馬車道駅から徒歩5分、土日も診療し、当日予約にも対応しています。みなとみらいエリアからも通院しやすいクリニックです。
まずは、お話を聞かせていただくところから始めましょう。受診をご希望の方は、WEB予約はこちらからご予約いただけます。受診前に確認したいことがある方は、よくある質問もご覧ください。
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参考文献・情報源
本記事の内容は、心身症・自律神経失調症に関する以下の資料を参考にしています。
- 日本心身医学会|心身症の定義・心身医学に関する資料
- 厚生労働省|こころの健康に関する情報
- 国立精神・神経医療研究センター|心身症に関する資料
- 各医薬品の添付文書・患者向け医薬品情報
医学監修
田邊 陽一郎(精神保健指定医・精神科専門医・日本医師会認定産業医)
医療法人鴻志会 みなとメンタルクリニック 理事長。秋田大学医学部卒業後、東北での精神科救急・被災地医療、神奈川での在宅医療を経て、現職。うつ病・不安障害・睡眠障害・認知症などを中心に診療。